人類最強の小娘の日常〜この世界の不条理には別世界の不条理で対抗します!〜   作:黒須 英雄

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貧民街の異端児1ー3

門の前にはワラワラワラワラワラワラ。昨日より人が多すぎやしないか? 全員が剣やなんやら武器を持っている。

 

「今日は初等部、中等部、上等部への入学試験を行う! 第一訓練所に上等部、第二に中等部、第三に初等部だ! 上等部の受験者は昨日行ったから分かると思うが訓練所内には魔物を飼育しているスペースもある! 非常に凶暴で危険だ。くれぐれも気をつけるように!」

 

「あ〜もうひとつ。試験は今話していた教頭と、この俺、校長が見学する! 入学後のことも考えて大いにアピールしてくれ!」

「「はい!」」

 

なーるほど。そりゃ多い訳だ。妙にがっしりとした奴もいるしな。同じ年とは思いたくもない。

しかし、世間的に見ると戦う女性は少ないイメージだが、この場ではそんなに男との差はない。

 

初等部、主に基礎的なことを学びつつ、迷宮に慣れる。十歳から十三歳までが受験資格であり、三年後の進級試験をパスすることが出来なければ退学。外部からの入学試験をパスするという方法があるが、入学費をもう一度払わなければならない。

 

中等部、基礎を学んだ上での技術、実力を身につける。十三歳から十五歳までが受験資格である。実際の迷宮の階層を更新することを目指し、ひたすら力をつける三年間になるだろう。これも初等部と同様に三年後に進級試験があり、パス出来なければ退学。

 

上等部、迷宮攻略を固定パーティーで行う実践が全てになる。十六歳から二十歳までが受験資格であり、期限などは特にない。『迷宮管理局』や『迷宮攻略冒険者』となるまではここにいることになるだろう。『迷宮攻略冒険者』になるには冒険者ギルドのサブマスター以上の権限を持つ人からの推薦が必要になる。

勿論、全員が華々しく学園を去れる訳ではない。パーティーメンバーが就職し、迷宮に挑むことが出来なくなった時点で自主退学という形をとり、普通の冒険者とならざるを得ない。

 

この学園は迷宮攻略に力を注ぎまくっている学校だ。主な就職先は冒険者ギルドとなるだろう。それを志して入学する者がほとんどだ。

そして、中々にシビアな制度となっている。入学が待ち遠しい。

 

「君がシャルテアさんだね? 早く行かないと置いていかれるよ」

「あっ!? ありがとうございます校長」

 

初等部の受験者は歩き出し、置いてきぼりになっている。声をかけてくれたのは校長だ。隣に教頭もいる。

 

「ああ、少し待ってくれ、君に謝らねばならないことがあるんだ。いや、…二ヶ月後の校長室で待っているから出向いてくれ!」

「はい!」

 

よぉ〜し、やる気が湧いてきたぞ! 特待生枠を絶対勝ち取ってやる!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「校長、本当に合格するとお思いですか?」

「勿論だ、彼女は絶対にやってくる。昨日の筆記試験を見ただろう?」

「それと実技は別ですよ。まあ、謝らねばならないことがあるのは私なので待ちますが」

 

なぜなの? どうやっても間に合わなかったはず、まさか魔法を使ったの? でもそんなことはありえないわ!いくら何でも()()()()()()()使()()なんて!

 

校長は合格することを願って、私は不合格を願って彼女を見送った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺は走り前の軍団に追いついた。周囲を見ても俺と同じように貧相な服を着ている人はいない。もしかしたら貴族に色々言われて心を折られたのかもしれない。

それならそこまでだったというだけだが。同じ貧民だろうが同情の念はない。世の中弱肉強食だからな。

 

「これより試験を始める。課題はゴーレムの破壊だ。常に五体のゴーレムを出現させる。近距離、中距離、遠距離、どんな戦法をとっても良い!制限時間内に出来るだけ破壊しろ!」

 

試験が始まった。昨日と同じ分け方で、AからDまでに分けられた。メンバーも変わっていない。訓練所を四つ同時に試験が行われている。

パッと見二メートル級のゴーレムが五体。大した動きはないが防御、攻撃ぐらいは組み込まれているのだろう。近距離戦を挑んだ受験者達が苦労している。

 

「次! ハーダック・ウィズマーク!」

 

一気に注目が集まる。期待の眼差しを背中に背負い一人の少年、ハーダック・ウィズマークは剣を抜いた。

 

「では、始め!」

 

制限時間は三分、たった三分だ。初めから全力でも体力は持つだろう。

すぐさまゴーレムの懐に飛び込む、そのまま足を切った、続けて剣を上に振り上げゴーレムを真っ二つにした。一体目が消滅した。

同時に歓声が上がる。未熟な者はただ剣の切れ味がよかっただけだとしか認識していないようだが、実際は全くそうではない。

剣に【摩擦魔法】と【分解魔法】を併用し、易々とゴーレムを倒したのだ。【抵抗力操作魔法】の下位魔法ではあるが、そもそも抵抗力に関する魔法を使える人は少ない。

 

「チッ!」

 

倒したのにも関わらず舌打ちをした。その理由は明らかだろう。周りのゴーレムのせいで動けるスペースがどんどん小さくなってきているのだ。

バサッ! 背中から未熟ながらも大きな翼を出す。流石は吸血鬼だ、このアドバンテージは大きい。

中距離の位置に着陸し、時間を確認する。残り一分、まだ敵は三体しか倒せていない。それでも試験結果としては充分なのだが本人は納得いかない様子だ。

 

「……見てろ」

一瞬俺の方を見た気がしたが自意識過剰か?

 

ザシュッ。自前の剣で自分の両腕に傷を入れた。一同の喉がゴクリとなる。それは俺とて例外ではない。

 

「これが俺の力だ!」

 

溢れ出る血は止まるどころか勢いを増してゆく。しかしその血が地面に赤いシミとなることは無い。全て宙に漂っていた。

それが今、闘志溢れる声と共に形を成した。瞬時に十本もの剣が血によって生成されゴーレムの核を貫く。

 

「「う、うぉぉーーーー!!」」

 

驚きと嬉しさの歓声が訓練所に響き渡った。

その間も次々に血でできた剣は空を舞い、ゴーレムを貫いていった。

これを操っている本人の顔には汗が染み出て苦しそうではあるが、あと十秒だ。

 

「しゅっ、終了!」

 

その声とともに血は傷口から戻り、傷口も塞がった。

当の本人は満身創痍の状態だが、しっかりと自分の足で歩いている。

結果はぶっちぎりで一位だろう。まぁ……今のところだが。

 

「次、シャルテア。位置につきなさい」

 

全く、素晴らしい切り替えだ。俺の名前とともに空気は冷めきった。 しばらくしてから雑談が始まり騒がしくなるが試験官はそれを咎めようとはしない。

 

「何を使ってもいいのですね」

「言った通りです。始め」

 

こっちを見ているのは昨日青ざめていた受験者と第二王子だけだ。注目されるのは嫌いじゃないんだけどな。それに双子の弟に負けるってのは嫌だ。

 

魔力を解放する。昨日の十倍、つまり今の三十倍だ。

流石に鬱憤を爆発させてもいいだろう? 散々な言われようだったんだから!

 

「(【爆裂魔法】の魔方陣を展開、失った魔力を常に補給! 【抵抗力操作魔法】を発動、重力を反転!)」

 

ドゴォォォォーーーーーーーーン!!

紅蓮の魔法陣が発動し、魔力を事象に転換する。

その魔法はゴーレムの真上に飛翔した俺の手から放たれた。訓練所の地面を深々と削り取り、そのヒビは訓練所の至る所にまで及んだ。

 

「あっ、威力抑えるのを忘れた」

 

既に次の魔方陣は展開し終わり右手の前に現れている。後はゴーレムが出てくるのを待つだけだが、無駄だろうな。

十中八九地面に設置された魔方陣ごと破壊しただろうから。

 

「この場合はどうすればいいのですか? 言った通りだと常に五体のゴーレムが出現するはずだったのでは?」

「っ!? いっ、一時中断です。少しのあいだ待機しておいてください」

 

俺はその言葉に従い、魔方陣を吸収して魔力にもどす。魔力量も制御して元に戻し、地面に降りようとすると。

 

「シャルテア、そのままでいい。試験官、魔物が逃げたようです。殺しても?」

「なっ!? 魔物が? 危なすぎます! 訓練所から脱出し広場まで戻ります!」

 

おお、勇敢な第二王子よ、やはりしっかりと【魔力探知】を習得しているようだな。それでも流石に危険だ。魔力量に差がありすぎる。

 

「皆さんは正面入口から脱出してください。お、私は裏口から脱出します!」

「おいお前! 俺達を囮にして逃げる気か!?」

 

馬鹿か!? これだから貴族は。相手にしてられるか!

 

「お願いしますね先生。第二王子、貴方の力はこんな所で失っていいものではない。二度も息子を失う親の気持ちを考えてみてください」

 

「俺の力は国民を守るためにある! ここで使わなければどこで使うというのだ!?」

「正面入口が安全とは限らない。その時は貴方の【血脈操作】が頼りです。お願いします」

「……分かった」

 

よし、これで邪魔者はいなくなった。試験官達からしても魔物に貧民が食われたところで力不足と片付けられるばかりか、厄介な貧民が消えてくれて一石二鳥だろう。

 

「さぁ、この私になって最初の魔物狩りだ!」

 

不完全燃焼だった試験の代わりに魔物に八つ当たりをする。

その思いで俺は魔力を解放した。




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