人類最強の小娘の日常〜この世界の不条理には別世界の不条理で対抗します!〜   作:黒須 英雄

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旅路の冒険 1ー2

「ここって、メイザス迷宮の派生のひとつだったんじゃなかったっけ?」

 

 吸血鬼の国の近くには大きな迷宮が一つあった。

 その名もメイザス迷宮という。メイザスという人が見つけたからそう付けられたらしい。

 この迷宮はポピュラーかつ、安全な迷宮だったはずだ。冒険者を目指す学生達のいい訓練場になると話していたのを聞いたことがある。

 

 ここもメイザス迷宮の入り口の一つと考えるのが妥当なところだ。

 しかし、神代の魔力が漂ってきていることに違和感がある。神代の魔力が流れている迷宮が生易しい物である覚えはない。

 

「でも、魔力がね」

「違うわね」

「神代のものですね!」

「えっ、魔力がどうしたのさ」

 

 タイトに対して神代のことを説明しても、時間の無駄に終わりそうだな……放っておこう。

 入るとしてもどのメンバーでいけばいいのか。迷宮中の魔力は迷宮の魔力が入り乱れていて探知しづらい。

 相手の戦力が分からない以上、危険ではあるのだが入らないわけにもいかない。

 

「……私とイアで中に入るから、タイトはフェーカスの中に入ってて。フェーカスもできるだけ戦闘は無しよ」

「了解です!」

「た、頼んだぞ、フェーカス!」

 

 迷宮外チームはそんなに心配していないのだ。問題は迷宮チーム、俺とイアだ。

 何があるか分からない迷宮の中に二人だけ。【爆裂魔法】は迷宮内では必然的に威力を抑えてしか使うことが出来ない。

 俺達には繊細な戦い方が求められるが、俺もイアもあまり得意なタイプではない。

 だからといって、失敗しちゃったで済む話でもない。崩落すれば、ここら一帯の生態系が道連れになる可能性が高い。

 それは出来る限り避けたいことだ。

 

「じゃあ行ってくる」

「お気をつけて!」

 

 中に入ると一気に暗くなるため、予め用意していた木の棒に火をつける。

 ボウっと松明の明かりが、洞窟のような壁に俺たちの影を映し出した。

 

「何もいないわね」

 

 しばらく歩き、下に降りるための坂が現れた。ここまでに出会った生物は何もいなかった。

 不気味なくらい静かな洞窟だ。

 

「いないと来た意味がないんだけどな〜」

「出来るだけ浅い層で出てきてくれた方が迷宮に負担をかけなくて済むのに……」

 

 俺達は迷宮を攻略するためにここに来た訳では無い。魔人達のアジトだと言うから来ているのだ。もっとわんさかいるものかと思ったのにな。

 

「とりあえず降りよう」

 

 坂を降りたところの壁に松明を取り付けた。松明に【材質強化魔法】をかけているので焼け落ちることはないだろう。

 これは各ポイント事に松明を置いていくことで人が入ったぞーという証になる。

 

 この迷宮にはさほど意味はないのだが、多くの人が挑戦するポピュラーな迷宮だと安全地帯を示したり、単純な灯りとしても活用される。

 そのため、この系統の無属性魔法を使える人達は親切心で置いていくことが多い。

 商売にも一応はなるのだが、何せ単価が低いので消費魔力と利益が釣り合わないので、ほとんどの人はしない。

 

「やっとお出ましよ」

「出来るだけ床に大きな衝撃は与えないでね! こっちから仕掛けるよ!」

「分かった!」

 

 T字路になっているところに、警戒を怠った魔人が二体現れた。

 俺の声に反応して、こちらに気づいたが遅い。既に勝負は決している。

 

 急いで腰の剣を抜いた魔人だが、防御をさせる間を与えることなく氷の剣で腕を落とす。流石に首を落とせる程の隙ではなかったが、それは武器の射程が短かったからだ。

 大剣を使うイアはしっかりと首を落としていた。

 

 そんな感じで特に危なげなく敵を葬り、二つ下の階層へ降りた。階層主が出てこない理由は、魔人達が既に倒していると考えるのが妥当だろう。

 洗脳系統の魔法を使えたならば、有能な防衛手段として使えたのに……勿体無い。

 

「イア……」

「分かってるわ、そろそろ来るわよ」

 

 ここに来て初めて魔力濃度が上がった。そして、空気がピリついている。地面の振動からして……もう少しで階層主レベルの魔物がやってくる。

 やはり、防衛手段として大事な箇所だけ守らせているのかもしれない。

 

「先手を取られる前に私が!(【氷塊魔法】で氷の杭を生成、【相対座標魔法】を付与)」

「ブオォォォォオ!」

 

 作り出された氷の杭は大きいが一本だけ。その氷の杭は拳の動きと共に前に突き出された。

 

 二足歩行の豚型魔物、もはや魔獣と言った方がいいかもしれない。豚型と言っても腹筋はバキバキのエイトパック、背中には裁ち包丁の様な剣が装備されていた。

 

 構わず突っ込みながら拳を前に出す。それと同じ動きをした氷の杭がその顔面に突き刺さった……はずだった。

 

「何っ!? 止められた、イア!」

「分かった!」

 

 氷の杭は先端から粉々に砕けている。俺は魔法を解除しながら、イアの太刀筋を空けた。

 俺が氷の杭を放った場所と同じところに大剣が叩き込まれたが、豚型魔物は倒れない。

 

 それどころか、傷一つ負っていなかった。

 

「ブオォォオ!? ブオォォオ!!」

 

 いきなり攻撃を仕掛けられたことに怒りを覚えたのか、猛突進してくる。その手には既に剣が握られており、俺達を横薙ぎにするように振るった。

 

 それを間一髪の所を狙ってしゃがみ、隙の出来た横腹に狙いを定め魔法陣を構築する。

 

「イア! こいつは【結界魔法】を使っている可能性が高い!」

「……っ! なら、叩き割るだけ!!」

 

 迷宮での初めての強敵との戦い。神代の魔力を帯びた迷宮の魔物として相応しい強さだ。

 それを俺達の知らない所から覗いている影に俺達はまだ気づいていなかった。




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