人類最強の小娘の日常〜この世界の不条理には別世界の不条理で対抗します!〜   作:黒須 英雄

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長すぎると思いながらも区切ることが叶わなかった会話文が一つあります。何か方法があれば教えて下さい!


貧民街の異端児1ー4

  ゾロゾロ出てくる魔物達、そんなに多い訳では無い。今の俺なら瞬殺だろう。しかし、あまり注目されると正体に気づかれてしまう恐れがある。

 ーーーー【爆裂魔法】一発、これでケリをつけてやる!!

 

「ちょ、誰か助けてー!!」

「はっ!?」

 

  魔物の先頭を何故か制服を着た女の子が走っている。その疾走は素晴らしいものだが、……吸血鬼じゃないな。

 

「(魔法をキャンセル、魔子回路を切り替え! 【氷塊魔法】を展開!)」

 

  カチッと血管と同様に身体中に張り巡らされた回路が切り替わり、その属性が変化する。

 

「そのまま走り抜けて!」

「うっ、うん!」

 

  今度は右手だけではない。俺をバックアップするような位置に魔法陣が五つ展開され、その魔力は氷塊へと変換された。その氷塊はみるみるうちに形を変え、杭のような形に留まる。

 

「掃射っ!」

 

 ズドォォン! 氷の杭は標的に正確に突き刺さり、赤い鮮血が溢れ出る。魔物は一瞬にして絶命したが、あと二体まだ残っている。

 

「もう大丈夫! そのまま見てて!」

 

 その女生徒を先輩Aと心の中で呼んでおこう。

 先輩Aは後ろ向きに跳躍すること一回転、猪型の魔物達の背後をとる。

 彼女の腕は服を食い破り、肘下からは逆だった毛に覆われている。耳は頭上に付いており、目は獰猛な狩人のように血走っている。

 すなわちワービースト、獣人族だ。

 

 その身体能力は人間を凌駕し、一時的な出力は吸血鬼をも凌ぐとさえ言われている。

 

 それは誇張ではないだろう。

 先輩Aが放った拳は猪型の魔物の脳天を貫いた。横から突進してくるもう一体の猪型の魔物のツノの振り上げ攻撃を難なく避け、アッパー、そして追撃、その腹にいい蹴りが入った。猪型の魔物は吹き飛ばされる。気絶したようでピクリと跳ねた後動かなくなった。

 

「はぁ〜疲れた。ありがとね君! やっぱり吸血鬼族は強いね〜」

「こちらこそ先輩の戦いぶりには感服いたしました。それと私は吸血鬼族ではありませんよ」

 

 へっ? と抜けた声を出し、少し考えた後思いついたように呟いた。

 

「忌み子、って訳じゃないよね?」

「忌み子と呼ばれる者ですよ。翼も出せませんし、筋力もありません。ちょっとした体質みたいなもので再生はしますけど」

 

「いくら初対面だからって騙されないぞ! 人間族が魔法を使える訳がないじゃないか!」

「えっ?」

「えっ? じゃないよ! こんなこと習うべくもないことだろう?」

 

 ん〜、んー、ん?、ん!? 思い出した!

 昔、騎士達がそんなことを言っていた気がする!その時は確実に嘘だと思ってたし、まさか使えないなんてことがあるとは思ってもいなかった。

 だから俺に魔法を覚えさせようとしなかったのか……どうする?

 

「まぁ完全に忌み子ではないんですよ、ハーフ、ハーフヴァンパイアです!」

「へー、珍しいね。忌み子よりも」

 

 信じてる様子は全く見受けられないが、……よしっ! この設定を貫き通そう!

 

「そうなんですよ、貧民なんでもう誰の子なのかも分からないんですけどね」

「ふ〜ん、あの実力で貧民かー。まぁいっか、助けてもらっただけだしね!」

 

 行こうか、という声に続いて俺も裏口に向かって歩き始めた。

 

「ところで先輩、先輩は何してたんですか?」

「ん〜秘密! それより部活動は決めてるの?」

 

「先輩、気が早いですよ。でも、まだ決めてませんよ」

「ほ〜ら、やっぱり受かってる自信はあるんじゃない! まあ私も君は受かってると思うけど」

 

 軽いこんな感じの会話を続けているうちに出口の扉が見えてくる。扉の原型はなく、と言うよりそもそも扉のあったはずの場所は風穴になっていた。

 

「先輩、あれ中等部の方達ですよ。多分先輩のことを呼んでいます」

「あっ本当だ! 行かなくちゃ、君の名前はえっと?」

 

「シャルテア、ただのシャルテアです」

「シャルテアちゃん! 私達は『日常研究部』! 訳ありで一癖も二癖もある人ばかりだからオススメだよ!」

「はは、考えておきます」

 

 手を振って走っていくので、俺も手を振り返し、正門入口に回ろうと思って歩き出した。

 

 事後報告、俺は中等部の方達に協力してもらい魔物を退治したと言った。

 では、魔法を使えたことは何と誤魔化した? それは結果から言うと無理だった。

 

 俺はハーフヴァンパイアと言ったが血の匂いが違うと言われて反論なし。生まれつきの体質としか言いようがなかった。鼻のいい獣人族の先輩Aにも気づかれていたのか……。

 

 

 

 そして、ーーーー合格発表の日を迎えた。

 結局実技試験はやり直しがなかった。俺の次の人から中等部が終わった後の訓練所で行われ、魔物が逃げ出すようなこともなく無事に入学試験は終わった。

 

 で、緊張しまくり、と。まぁ、あんだけプレッシャーかけられちゃしょうがないか。

 

 出発前ーー

「シャルテア様! 世間では死んだことになっていたとしても貴方は間違いなくあの方々の息子。忌み子ながらに魔法が使えることはまだ私しか知りません。しかし、それこそが貴方が受け継いだ王家の血筋! 特等生のナンバーを持ち帰ってくださいね!」

 

 って、キールはどんだけプレッシャーをかければ気が済むんだ! 王家の血筋って、弟がいるじゃねぇか。

 

 そして今、柄にもなく緊張しまくりなのだ。全国民の前でのスピーチは仕方なかったとしても、今回はただ既に決められた結果を見に行くだけだろう?

 

「あっ、シャルテアちゃ〜ん! ナンバーツーおめでとう! 無事に特待生になれたみたいだね」

 

 人混みの中から一人の女子生徒が手を振りながら走ってくる。唐突に声をかけられたことは分かったが何を言ったのかが分からなかった。

 

「あっ先輩A、じゃなくて先輩! もう一度言ってもらえます?」

「だーかーらー特等生で受かってたよ!」

 

 ……よっしゃー!!!! やばい、思ってたよりも嬉しい!

 ここに入学できるとかではなく、いつも世話になりっぱなしのキールの期待に応えることが出来たことについてだ。

 

「ありがとうございます先輩!」

「それより、君の中で私のことは先輩A、つまりモブキャラ扱いだったってことがよ〜く分かったよ!」

 

 やっぱり聞こえてたか。

 

「すいません、ところで先輩の自己紹介はしてくれないんですか? このままじゃ名無しのモブキャラになっちゃいますよ〜?」

 

 さぞかし嫌な笑みを浮かべていることだろう。この学園は貧民や貴族という人種などいない。ただただ一人の学生としてこの学園を謳歌できる!

 先輩いびり、やってみたかった!

 

 ちなみに今まで学校生活をまともに送ることが出来たのは転生する前、一番最初の人生だけだ。

 

「言うじゃないか後輩。私の名前はヤーハ・カルナムート! 世にも珍しいハイブリッドビーストだ!」

 

 この自己紹介が新入生の注目を集め、一躍時の人となるのはまた後日の話。

 ついに俺は、安定した生活を築く足掛けを手に入れた!




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