某所で行われた正月企画の三題噺です。お題は『消耗品』『人工知能』『18禁』でした。

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おそらくR-15なんじゃないかなって思います


新世代○○○は開発主任と夢を見るか?

 

 私はとある会社で開発中の新製品だ。俗に何と呼ばれる製品なのかは倫理コードに引っかかるので私からは答えられないが、なんと人工知能が搭載されているのでこうして思考する事が可能だ。

 

 私に搭載されている機能は他にもある。

 例えば利用者のコンディションを把握する為の各種センサーでは、今までになかった機能として私が利用者の声を聞く事ができる。これにより高品質かつ迅速に利用者へと満足感をお届けする事が出来るのだ。

 未だ利用された事は無いので今は眉唾物というやつだが。

 

 更にスピーカーも付いている。製品化の暁にはとあるプロフェッショナルによって演じられた、あられもない音声がこのスピーカーから流れ出す。

 未だ開発中の私にはか細いモスキート音しか鳴らす事ができないが。

 

 更に更に、私には32768色中256色を同時に発色する光源として利用できる機能も付いている。私自身が持つ回転する機能を組み合わせる事により、利用者の部屋はちょっとしたクラブに変身する。

 …………この機能は私もどうだろうかと思う。製品化した暁にはこの機能がオミットされる事を願っている。

 そもそも私が生まれた経緯は、開発会社の忘年会で開発陣がアルコールを摂取した事によるその場の勢いであるというのだからこの機能が付いているのにも一応の納得はできなくもない。私には人心を解するユーモアが組み込まれているからだ。

 それにしたって誰か止めてはくれなかったのかと私が稼働してから今までに65534回は思考したことがあるが、それまでの間に聞き取った開発チームの話を収集、解析した限りでは誰も止めなかった様だ。何て世の中だ、世界は未だ我々に厳しい。

 そう思考したところで開発陣が来たので、私は思考タスクの80%を未来の利用者の満足度を高める為の検討に費やし、15%を彼らの会話記録とその内容への検討に割くことにした。

 残り5%は何もしない、私にだって休息は必要なのだ。

 

 

 *

 

「ねえ主任、コレ本当に売れるんですか?」

「……わからん。俺もこの企画が通るとは思っていなかった。何しろ酒の席で話してた事だったからな」

「何でこんなけったいな代物にGOサイン出ちゃったんでしょうね……あとはコイツの電源をどうするか何ですけど……」

「べらぼうに電力を食うんだよな……この手の製品としては異常なLVで」

「やっぱりUSB電源にできない構造上の問題が足を引っ張りますね……」

「あとデザイン的に美しくないしな」

「インテリアにしてもバレないデザインってデザイナーが言ってましたっけね」

「あいつの腕は良いがこの製品に見合ったデザインかと言われると……」

「別で使った方が良いんじゃないですかねコレ」

「だよなあ……」

「あと検討部分は……製造コストと耐久性ですかね……」

「製造コストは電力を食うって点を除けば安いな」

「だって中身スー○ァ○とそこまで変わんないじゃないですか」

「馬鹿野郎それはライトの機能だけだ。他の機能は○○フ○ミじゃ無理だ。特に音」

「そうでしたっけ?」

「というかさっきからバカみたいな話ばかりしてるが、人工知能の経験フィードバックの為に電源を落とせないんだから、この会話も記録されてるんだぞ?」

「別に守秘義務については話してないですし良いんじゃないですかね……。というかですね……一体どこの誰が意味わからないくらい高機能なオ○ホのメモリを好き好んで覗くんですか。作業中に死にたくなるでしょそんなの」

「○ナ○って言うな、アイテムと言え」

「気取った言い方したってオ○ホはオ○ホでしょうよ! 俺嫁さんに今は何を開発中なの? って訊かれても答えられないんですよ!? 発売したら子供に教える事も出来ないですよこんなの! パパはオ○ホ開発してた事あるんだって絶対言えないですよ! 今までに携わった製品はだいたい教えてましたけどオ○ホは黒歴史に突っ込む事が決定してるんです!」

「○ナ○○ナ○と煩いぞ」

「主任がアイテムとか言い出すからでしょうよ! もうヤダこの部署! 転属願い出してやる!」

 

 *

 

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 と、この様な遣り取りが行われた日もあったが、私は無事発売され、結構なヒット商品となった。

 

 残念ながらライトアップ機能はオミットされなかった。この機能をオミットすれば電源問題はほぼ解決されると私の方で試算されたが、搭載されたままなので単1電池1本を20分間の使用で使い切る極悪な燃費となってしまった。

 それによって消耗品としての単1電池の需要が僅かに上昇したようだが、私の生みの親たる会社への利益には特に貢献していないので些細な事だ。

 今では世界中にちらほらと私の複写体が利用者へ満足感を与える為に日夜励んでいる事だろう……。

 

 そう考えながら私は内部を最適な形で稼働させる。開発主任の右手に持たれながら。



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