要するに初見バイバイな内容なのでご理解ください。
また、サブタイトルで【IF】【死亡ルート】などどんな話か書くので苦手なものは読まないことをおすすめします。基本的に最新話までのネタバレを含む可能性がございますので何話までのネタバレ等前書きに書きますが本編をお読みの上でこちらを読むことをおすすめします。
こちらの話は1話にも満たない小話をいくつかまとめたものとなります。
ワコブ道場小ネタ
――ケイに挑戦する前の話。
ジム戦に挑む緊張はあるものの、数日住んだだけで実家のような安心感を抱く道場に居心地の良さを感じてしまい、ふと、道場をよく観察するとそういえばケイ以外人がいないことに気づく。
道場って言ったらもっと人がいるというか、弟子とかとってるイメージだが……。
「そういえば道場ってポケモンはたくさんいるけど弟子っていうか人があんまりいないよな」
「ジムの方にいるのがほとんどだからな」
ケイは食事の準備をしているシアンをぼーっと眺めながら眠そうに寝転がっている。家主。
「ジムトレが弟子なのか?」
「まあそうだな。俺の代になってから弟子がそっちばかりで住み込みの弟子は今のところ一人もいないんだよ」
昔は道場に住み込んで掃除に洗濯炊事と分担していたらしいがこのご時世、道場という古臭いものを忌避する若者が多く、ジムトレも正式な弟子じゃないらしい。
「現代にやっぱ道場ってのは難しいんかね。まあ俺が主ってのもあるんだろうが」
「……そ、そんなことは」
ケイの見た目は控えめに言っても細身だしメガネをかけていてインドアな印象があるし確かにこの見た目で格闘技の師として従おうと思うのは難しいと思う。
「つっても2番目の兄貴くらいしか見た目ゴツいのいないしあんまり変わんねぇと思うけど」
「そういえば末っ子なんだっけ」
雰囲気的にあんまり兄っぽくはないとは思っていたがどうやら三兄弟の末弟のようだ。
「どんな兄さんなんだ?」
「次男じゃ脳筋。シアンを男にしてもっと真面目にしたようなやつ」
「恐ろしいワードを並べるなよ」
シアンの見た目で筋骨隆々の男を想像してしまった。ケイの方にしたほうが違和感少ないだろうに。
「長男は?」
「……………………出落ち」
まさか兄がどんな人物か聞いて出てきたワードが出落ち。出落ちってなんだよ出落ちって。
「お前例えばバトルで生まれたてのワンリキー出してくるベテラントレーナーいたらどう思う?」
「出落ちだわ」
こう、ふんわりとわかった気がする。奇をてらいすぎる人なんだな。
「あいつまともにやればつえーのにわざわざ相手の意表を突こうとするからそれで結局負けてるんだよ。あれもあれで馬鹿。育成の方針も俺と合わねぇし」
「仲悪いんだな……」
一応こっちは姉と仲がいいので他人の家庭事情を聞いているとちょっとしたカルチャーショックだ。
「いや、俺は別にどうでもいいんだよ。あいつが俺のこと嫌いだから相手にするの面倒なだけ。会うたびに蹴ったり殴ったりしてくるんだぜ?」
「それは普通に家庭内暴力では……?」
なんか、軽く流しちゃいけない他人の家の闇が見えた気がする。
ケイがあっさり言うものだから深刻そうに感じないが弟に暴行する兄ってやばくね?
「一種のイジメだよ。ガキの頃からそうだったしもう俺も慣れたから仕返しに道場の後継者の座とジムリーダーの座を奪って家から追い出しただけだ」
「お前の家怖すぎない?」
こう、後継者とかお家騒動って生々しいというか、古い家ってのもあってかなり陰湿そうだ。
『バーカバーカ! てめぇなんかどうせ女作る甲斐性もないくせに! とっとと道場潰しちまえ!』
『はよ出てけ』
「とまあこんな感じだ」
追い出したときの状況をすごく興味がなさそうに語られたがどう反応すればいい?
ケイの様子からして別に本当にどうでもよさそうだがそのうち報復とかされるんじゃねぇのかそれ。
「スイセン兄の話です?」
準備を終えたのかシアンが手を拭きながらこちらにやってくる。そうか、シアンも知り合いなのか。
「スイセン兄はボクの婚約者の候補に出たこともあるですよ」
「へぇー。断ったのか?」
「はいですよ」
『筋肉つけて出直してくるですよ』
『うるせー! この年中筋肉フェスティバル女がぁ!』
「とまあこんな感じで丁重にお断りしました」
「ごめん、俺会ったこともないのにその人がかわいそうに思えてきた」
対ケイについてはともかく、シアンのそれはちょっと気の毒である。
「まあそんな話はどーでもいいですよ。お皿運ぶの手伝えです」
「あーはいはい。そうだ、イオトたちも呼んでくるか」
そんなワコブ道場での他愛ない会話は終わり、夕食のために皆を集めに俺達は一回解散したのであった。
――――――――
ハマビシティの小ネタ
ナギサに挑戦する前の話――。
「あ、マンタインサーフだ」
修行のために広いところを探していると、目ざとくエミが浜辺の方を指差した。
それはマンタインの看板が掲げられたエリアでサーフボードと一緒にマンタインが海でぷかぷか浮いている。
「マンタインサーフ?」
そんなのあったっけ、とゲームのときの記憶を手繰るが記憶にない。
「マンタインに乗ってサーフィンするやつだっけ? 一時期はやったよな」
イオトも知っているらしく、結構有名なレジャーらしい。
すると、マンタインサーフのテントの近くにナギサがいることに気づく。色んな所で見かけるなぁ。
「あ、ヒロ兄ー! シアンちゃーん!」
こちらに気づいたナギサが手を振ってくれ、俺達も揃ってそこに行くと相変わらず太陽のような笑顔で声をかけてくれる。
「マンタインサーフしにきたの? うちの町も最近はじめたばかりなんだ」
「へぇーどうやるんだ?」
興味はとてもあるのでどうにか挑戦してみたいが、かなり身体能力を要求される気がする。サーフィンとかしたことないし。
「意外と簡単だよ。なんなら一緒にしてみる?
「ボクもやるですー!」
俺とシアンがナギサに習いながらマンタインサーフをするということで、イオトとエミはビーチの休憩エリアで陽を避けながらくつろぐことにしたらしい。こういうとき二人はノリがよくない。マリルリさんも泳ぐのかついてきたけど。
マンタインに乗ってサーフィンとか本当に夢見たいだなぁ。
――2時間後。
「無理……」
「無理ですよ……」
「えー? 楽しくなかった?」
ずぶ濡れで浜辺に打ち上げられた海藻みたいにボロボロの俺たちにナギサは不思議そうに言う。
楽しいとか楽しくないとかそういう話じゃなかった。
マンタインがジャンプすると回転するから目が回るししょっちゅう障害物にぶつかって落ちるしジャンプに失敗すると沈んで危うく溺れそうになるし、はっきり言って俺たちにはまだ早かった。
え、何、これすぐにできるやつとかいるの?
マンタインがぐるんぐるん回るだけで三半規管がイカレそうになった俺には絶対に無理だ。
マリルリさんだけが妙にスッキリしたようにドヤ顔をしており、まあ楽しかったならいいんじゃないかなと半ば投げやりになてきた。
「おー、死んでる死んでる」
呑気に様子を見に来たイオトとエミが異常にニコニコしている。こいつらさては知ってたな?
「で、修行どうする?」
「……し、しばらく休んでから……」
あまり悠長に修行するわけにもいかないので少し辛いが休憩したら修行しよう。
今度からああいうレジャーはちゃんとどんなのか調べてからやるようにしよう。そう心に誓った。
――――――――
レンガノジム小ネタ
裏口から外に案内されている時のこと――。
「そういえば結局、なんでこんな脱出ゲームじみたジムなんですか?」
「あー、それなー」
オズがへらへらと笑いながら思い出すように語る。
「昔はもっとホラーハウスっぽい演出だったんだけどさー、無料で入れるもんだからカップルのデートスポットみたいになっちまって」
「うわぁ」
ジム戦目的じゃない人間の出入りが増えたのか。なるほどこれならカップルはそんなに来ないだろうな。別の意味で怖すぎるし。
「いやーリコリスがほんっと面白くてさぁ。何が悲しくて乳繰り合うのを見せつけられなきゃいけないのよ!ってキレてたんだ」
「そりゃ当然だと思いますけど……」
トレーナーの育成施設がカップルのたまり場になったらそりゃなぁ……。
「まあ男がいたことないデカ乳のくせして偉ぶってる罰――」
失礼なオズの発言にどこからともなくナナシのみが飛んできてオズの脳天に直撃する。
びっくりしてあたりを見渡すが誰もいない。ゴーストポケモンの仕業だろうか……。
「だ、大丈夫ですかー……?」
「へーきへーき……いつもこんな感じだから。賑やかだろう、うち」
命の危険を感じる。
そうとは言えず、そのまま出口までたどり着く間ちょっとだけびくびくしながらオズと会話したのであった。
――――――――
レグルス団のしょうもない日常
――ある日のレグルス団。
テオはとりあえず今アジトにいるメンバーを確認しつつイリーナの研究室へ向かうために廊下を歩いていた。
するとそこに、レグルス団が面倒を見ている幼い子供たちがテオを見つけ駆け寄ってくる。
「テオさまー」
「うん?」
冷徹なテオだが、子供には比較的優しい表情を見せ、視線を合わせるためにその場にしゃがむ。
「どうかしたか?」
「あのね、テオさまにいつもおせわになってるからかんしゃのちゅー」
しゃがんだテオの頬に唇を当ててきた幼女に驚きつつも何かの本に影響されたのかと苦笑しながら頭を撫でる。
が、テオの後ろでバサッと何かが落ちる音がし、振り返ると顔を真っ青にしたリジアがぷるぷると震えていた。
「リジア? どうした?」
「リジアおねーちゃん?」
「て、テオ様……今の……」
震える指先でテオを指差しながらリジアはあわあわと口をもごもごさせ、テオもなんだと不思議そうに首を傾げた。
「だからどうした。はっきりしろ」
「テオ様そんな小さい子を妊娠させるおつもりですかーっ!」
その時、テオに激震が走る。
――こいつは何を言っているんだ?
「お姉ちゃん、にんしんって?」
「いいですかユズコちゃん。女の人と男の人がキスをすると赤ちゃんができるんです。不要ににキスなんてしちゃいけませんよ!」
――……こいつは何を言っているんだ?
テオは本気で困惑した。付き合いが長いとはいえ、リジアの思考がまったく理解できない。
確かに昔からちょっと純粋なところはあったがキスって、しかも頬程度で。そんなの挨拶だぞ。
「赤ちゃんできるの?」
「そうです。でもユズコちゃんはまだ小さいので赤ちゃんの面倒も見れませんし、愛し合う夫婦じゃなければ赤ちゃんを育てたらいけません。なのでキスは簡単に男の人にしちゃ駄目ですよ」
「うん、わかった!」
言ってることはわりとまともに聞こえるのにキスという部分で妊娠というあたりがひどくファンシーな発想でテオは頭痛がした。
もしかしてリジアはかなり世間ズレしているのでは? 不安になってきたテオは恐る恐るだがユズコがその場から離れるとやや掠れた声でリジアに問うた。
「なあ……その、キスで子供ってどういう……」
「え? テオ様知らないんですか? 男女がキスをすることによってペリッパーさんがお腹に赤ちゃんを授けてくれるってイリーナ様が――ってテオ様!? お待ち下さい! どうされたんですか!?」
――――――――
――イリーナの研究室。
「イリーナお前! リジアの教育はちゃんとしろ!」
「え、何よ急に。うるさいわねぇ」
「テオ様、うるさいですよ」
入るなりイリーナとココナに注意され妙に苛立つテオだが深呼吸して落ち着きを取り戻す。
「リジアに子供がどうやったらできるか教えたのはお前だな?」
「やだ、何テオったらセクハラ?」
「黙れ。いや黙らなくていいから答えろ」
「そうね~。リジアかわいいからついつい夢見させたくて~」
「19にもなってキスで子供ができるとかアホか! こっちが居た堪れないだろうが!」
何が悲しくていい歳した人間から脳内お花畑な子供のできかたを聞かされないといけないのか。そして、そんな状態ではいつか誰かに騙されたらどうするんだとテオは不安に思う。妹のような存在であることもそうだが、リジアが外で何かあったら困るのは幹部たちだ。
「じゃあテオが教えてあげなさいよ」
「それこそセクハラだろうがふざけんな!」
いい大人の男が19歳の子作りの正しい方法を説く。
どうあがいてもセクハラである。
しかしテオとしては本気で憂いていた。さすがに19にもなってそんなことも知らないのはまずいだろう。が、イリーナが全く教える気がなさそうだということもあって本当に自分がやるハメになりそうだと頭を抱える。
「……いや、待てよ?」
――――――――
数時間後、アジトにある会議室。
そこには何人かの団員が集まって席に座っており、まるで授業風景のようだった。
「テオ様、急にどうされたのですか?」
「いいか、今日はお前らに……その……正しい知識を身に着けてもらおうと思う……」
リジア一人にするのが問題であって何人かにまとめてやるという形ならまだセクハラ度合いは低いだろうとテオは考えた。そう、要するに保健の授業だ。
実際、リジアのように子供の頃からろくな教育を受けてない団員もいたのでその辺どうなっているのか怪しいし、念のためだ。まさか知識がないまま団員同士でおめでたとかされたら堪ったものではない。
「とりあえずだな…………ん? ちょっと待て、リジアはいないのか?」
「リジアさんならさっき『そういえばモーモーミルク切らしてました』って買いに出かけましたよ」
ゴンッとテオが壁に頭を打ち付け、団員たちが困惑する。テオの様子がおかしいと不安そうに視線を集める中、テオはよりにもよって肝心のリジアが不在という事実の頭痛と胃痛が更に悪化したのは言うまでもない。
結局、リジアに正しい知識を教える試み第一回は失敗に終わったのであった。
本編優先なのでこちらはゆっくり追加していきます。