『我が政権は、この度の欧州救援作戦での多大な貢献を以て六カ国目の常任理事国へと選出されました!』
某電波押し売りやくざの公共放送のチャンネルからは演説が聞こえてくる。
ゆっくりと、そしてどこか独特な抑揚で、誇らしげに演説をするお馴染みの日本国首相、熊坂晋三に与党議員は総立ちで拍手をする。
『所詮は人の手柄を取ることしか能のない政治屋ごときが偉そうなもんだ』
心の中ではそう思いつつ、口に出す勇気もない。どこで誰が聞いているのかも分からない。
通常兵器での撃破が困難な深海棲艦とそれを打倒することのできる唯一の手段である艦娘。そして一万人に一人の割合で生まれるという『提督適正』のある人間。国からすれば危険人物と危険物のような扱いであることは想像に難くない。
そしてその『危険物』と『危険人物』の集積所であるここ、横須賀鎮守府には相応の監視の目があると言っても良いだろう。
『今作戦に、命を賭して参加された艦娘と、提督方に敬意を表して……』
そこまで聞こえたところで横須賀鎮守府の提督を任されている俺は鎮守府大食堂に備え付けてある80インチの最新の薄型テレビを消した。
この後の展開など簡単に分かる。どうせ薄っぺらい謝辞が少々述べられるだけだ。
事実、食堂に集まる艦娘のうち、拍手喝采を上げる者はおろか、笑顔を浮かべる者すら誰一人居ない。
「さて、首相からお褒めの言葉を有り難く頂戴しようじゃないか」
そう言った俺の顔はうまく笑顔を作ることが出来ていなかったのだろう。艦娘たちの躊躇いがちな拍手がぱらぱらと聞こえた。
艦娘に対する世間的評価は未だ高いとは言えない。
『化け物を殺すためだけの道具』というのが艦娘に対する世間の評価だ。人の形をしていようと人外の化け物であることに変わりはない。
深海棲艦にも人の形を取るものがいると一般国民が知ればどうなる事だろうか。恐らく鎮守府の外で、毎日飽きもせず、騒いでいる自称平和活動家どもが沸騰することは間違いない。
陸路を塞いでいる連中のせいで、毎日のように支給品の遅延が起こり、海路で受け取ろうとしようものなら海に何百もの小舟を浮かべて妨害をしてくる。当然、そんなカスどもに対しての発砲許可は与えられていない。もう深海棲艦と手を組んで、この国を滅ぼした方が良いんじゃないかと秘書艦を務める古鷹が進言してきたのは記憶に新しい。
艦娘の中でも特に心の優しい古鷹をして、ここまで言わしめる者も中々いないだろう。
ちなみに、提督を務める者に対する世間的な評価は『人外の武器に欲情する変態野郎』だ。一万人に一人の割合で発言する『提督適正』は、分かりやすく言うなら欲と呪いの証である。同僚の提督たちの中には『提督適正』があったがために家族から縁を切られたという者も多いし、俺自身は当時付き合っていた彼女に、変態野郎と罵倒された挙句別れを告げられた。その一方で家族、いや、”元”家族たちは国からそこそこまとまった金を与えられるらしい。
『提督適正』を持つ者は国により管理され、情報は完全に秘匿されるので、それまでの自分は死んだも同然の状態になる。戸籍はなくなり、以前とは全く別の名前が与えられる。国に対していい感情を抱かないのも当然であろう。
「首相の仰ったように欧州救援作戦においては誰一人欠ける者なく遂行することが出来た。次なる作戦まで力と資材を貯めること。以上で解散」
まるで盛り上がらない祝勝会に対して辟易したわけではないが、おざなりな挨拶で誤魔化す。実際にまるで盛り上がらないのだから仕方がない。
艦娘が現れた頃は人類を守る盾だのなんだのと持ち上げていた連中はとっくに姿を消し、今では守ってもらって当たり前、それが出来なければ無能役立たずの烙印を押される。
感謝しろとは言わないが、せめて邪魔だけはしてくれるなと言うのが本音だ。自称平和活動家どもに何の対処も施さない腐れ与党と、連中を使って平和活動を煽るだけのゴミみたいな野党の議員にはあきれてものが言えない。現代に生まれた俺ですらこれなのだから、第二次世界大戦時の記憶を持つ彼女たちはどう感じるのだろうか。当時の政治家の方が優れていたとまではいわないが、民衆の精神やモラルでは確実に劣っているだろう。
そこまで考えて俺は執務室に戻り、首相の顔写真を貼った的にダーツの矢を投げつけるのだった。
現実社会に艦娘と提督が居たらこうなるだろうなと思ったので書いてみた。
センター試験直前に何やってんだろうな俺。受験頑張ります。