お正月企画三題噺シリーズ・ネクスト   作:ルシエド

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 お題は『かっちゃん』『餅つき』『ゼファー・ウィンチェスター』。
 この作品は『戦姫絶唱シンフォギア feat.ワイルドアームズ』と『課金厨のソシャゲ廃人がリリカルなのは世界に神様転生してまた課金するようです』の軽クロスかつ続編にあたります
 禁断の過去作クロス、シンフォギア・ワイルドアームズ・リリカルなのは・課金ソシャゲが交差する時、世界は終わる!


第一回:ゼファーVSかっちゃん 餅の大決戦

 餅。

 それは毎年老人が喉に詰まらせて死に至るもの。

 今、それが世界を滅ぼそうとしていた。

 

「申し訳ない、力を貸して欲しい」

 

 幾多の多次元宇宙を司る貴種守護獣すらも凌駕する力を得た男、ゼファー・ウィンチェスター。

 とはいえ過大な力で倒すべき敵も居ないため、彼の仕事はもっぱら美味しいパンを貧しい子供達に配ることであり、彼自身も戦うことより食わせることの方が良いことだと思っている人間であった。

 が。

 貧しい子供達を助けている途中、最近仕事面でよく助けて貰っている女性からの救援要請を受けて駆けつけ、そこで恐ろしい事案を聞くのだった。

 

「えーと、ミス・サンジェルマン。状況が読めないんだが」

 

「我々は食糧危機を乗り越えるべく、緊急で新しい食料を考案していた。

 そこで目をつけたのが日本の『餅』だったのだ。

 世界的にも餅を愛好しているアスリートは少なくないからな。

 そうして私達は、1の餅を100の餅に変える錬金術を発案した」

 

「すげえな錬金術師」

 

 クズ鉄を金に変える錬金術師すげえ、とゼファーは思うも、サンジェルマンは肩を落として。

 

「だが、うちの局長がそれを餅に術式として組み込んでしまった」

 

「……うん?」

 

「餅は五分ごとに術式が発動し、倍の大きさに増える。

 だが人に食べ切られると増えなくなる……と、アダム局長は思っていたようだ。

 ……無能な思考で。

 餅の自己判断は半分食べられても『まだ食べきられてないよ』と自己判断してしまった。

 半分食ってもまた増える。食べなくてもまた増える。

 餅は喉に詰まらせないためにはよく噛む必要があり、結果食事に時間がかかって……」

 

「……んんん?」

 

「餅がアフリカ大陸より大きくなってしまった」

 

「お前らバカしか居ねえの?」

 

「失礼なことを言うな! バカはアダムだけだ!」

 

 そんなやり取りをしている間にも、また餅は大きくなっている。

 

「私達の意見も聞かず、局長は『餅が増える前に』と決め餅を宇宙に廃棄した」

 

「局長……」

 

「この宇宙に並行宇宙と繋がる守護獣移動地点(ワープポイント)があることに目をつけ、その付近にな」

 

「局長」

 

「局長の狙い通り宇宙と宇宙を繋ぐ穴は餅を引き裂いた。

 だが餅の再生はそれでは止まらない。

 むしろ増え続け、多次元宇宙を巡るエネルギーの流れを阻害し……

 宇宙から宇宙へと流れてゆく守護獣の力が流れる穴を塞ぎ、詰まらせてしまったんだ」

 

「局長!」

 

「このままではこの宇宙も、別の宇宙も、拡大した餅に全て埋め尽くされてしまうだろう。

 守護獣の力の穴を使って、全多次元宇宙がその対象だ。

 いや、その前に、力の流れが詰まってしまったことで幾つかの宇宙が壊死し始める。

 この宇宙と平行宇宙に飛んでいった無数の餅を切り刻み焼き尽くさなければ、世界は滅ぶ!」

 

「局長ッッッ!!!」

 

「そうだ、局長が悪い!」

 

 能力がある無能とは、世界で最も危険な存在である。

 

「このままでは……宇宙が餅を喉に詰まらせて死んでしまう!」

 

「他に適切な表現はなかったのか!?」

 

「救えるのは貴方だけだ!

 もはや拡大した餅は銀河星団級を超え、太陽質量の15乗を超えている!

 おそらくは既に直径一億光年級……超銀河団級を超えているだろう!

 そのサイズの餅を『食べきられた』……

 つまり『咀嚼に等しい破壊』を行うには、貴方の一撃しかない!

 宇宙を救う餅つきを……頼む! 剣の英雄、ゼファー・ウィンチェスターッ!」

 

「表現……表現ッ!」

 

 宇宙を救うには、ゼファーが餅をつかなければならない。

 食わなくていいからぶっ壊さなければならない。

 ロードブレイザーに匹敵する、多元宇宙崩壊の危機だ。

 この事態に直面し、サンジェルマンは必死にゼファーに頭を下げ、アダムは特に罪悪感もなくフラフラとこの場に現れた。

 

「やあ」

 

「え、突然現れて誰」

 

「……うちの局長、アダム・ヴァイスハウプトだ」

 

「お前がかよ!」

 

「カストディアンをパン職人として雇ってる人が居ると聞いて。

 いやあ、あのカストディアン野郎を超える秘訣を聞きたいな、と。

 贅沢は言わないんであのカス野郎と並べるようになる秘密をお聞かせいただきたい」

 

「こ、腰が低い! 何か聞いてた話とイメージが違う!?」

 

 そして宇宙の餅を気にせずゼファーに擦り寄り始める。

 恐ろしいことに、恐ろしいほど敬語が似合っていない。

 ゼファーの背筋にぞわわっと鳥肌が立った。

 

 アダムの話曰く、アダムは人類の前に宇宙からの来訪者カストディアンが作った人類のプロトタイプなのだとか。

 その辺はカストディアンが始祖守護獣と呼ばれていた理由も知っているので、ゼファーもさして驚かない。

 アダムはカストディアンに『完全過ぎて発展性がない』と断じられてしまった"完全な失敗作"であり、神に等しいものになろうとするヒトモドキであった。

 なので、守護獣完全復活の立役者であり、守護獣の名を持ち、カストディアンを街のパン屋で働かせているゼファーはアダムにとって興味の対象なのだ。

 

 神の上を行くには、神に並び立つには、どうすればいい? そう、彼は問いかけている。

 

「アダム。あんた、何ができる?」

 

「錬金術を少々……」

 

「将来の夢は?」

 

「神を超えることです」

 

「熱中していることはある?」

 

「核融合で金玉を作ることです」

 

(……絵面が就職面接だ……)

 

 自動車免許も食品衛生関連の資格も持っていない無能なアダムであったが、ここでゼファー(パン屋店長)は彼らしい温情を見せた。

 

「よし、しばらくウチでパン焼いてくならいいぞ。

 お前は今日まで敵を焼いてきた火で、明日からはパンを焼くんだ」

 

「は……あ? 僕は、そんな機能を与えられてないんですが」

 

「人間だってそんな機能与えられて生まれて来てなんてねえよ。

 だから生まれた後、頑張って覚えて身に付けるんだ。そういうもんだろ」

 

 生まれた時から完全だったアダムと、生まれた時からずっとずっと完全でないゼファー。

 

「誰も教えてくれなかったのかもしれねえけどさ。

 お前にも誰かを笑顔にして、好かれて、神より美味いパンを作る権利はあるんだぜ」

 

「……カストディアンのパンより美味いパンを僕が……ふむ」

 

 アダムは太古の昔から生き続ける世界最大級の老人(外見は若い)であるが、世の中へのリサーチは欠かしていない。

 若者なゼファーにウケがいいフレーズは、一から十まで熟知していた。

 

「よろしくオナシャス!」

 

「……気持ち悪いくらい腰が低いッ!」

 

 まあでも、それでもちょっと古かったが。

 

 サンジェルマンに見送られ、ゼファーとアダムは複数の宇宙を埋め尽くす餅を切り刻み、焼き尽くすべく、はるか遠い宇宙へと飛び立っていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私ことティアナ・ランスターは課金バカと一緒にロストロギアの回収のため走っていた。

 

「課金したものが皆SRを手に入れられるとは限らん。

 しかし! 手に入れた者は皆すべからく課金しておる! 分かるかティアナ!」

 

「分かんないわよこのバカぁー!」

 

「SRをロストロギアに置き換えろ!

 そんなんだから執務官試験なんてもんの勉強に苦労してるんだよ!」

 

「アンタだったら絶対に受かんないわよこのバカぁー! そして分かんないわよこのバカぁー!」

「うぐぅ喉に餅が詰まった! しまった、餅グラブルは人を殺す!」

 

「ちょっと大丈夫!? 待ってて、人を呼んでくるわ!」

 

「はやくっ……課金ボタンを押してから確定演出が出るより早く死ぬぅ……!」

 

 そうして喉に餅を詰まらせたバカを数分眺めてから、私は歩き出した。

 自動販売機の前で少し迷ってコーヒーを買い、ちびちび舐めるようにして飲み干し、缶を捨ててまた歩き出す。

 正月だというのに街には人がポツポツと見え、正月文化が普及した後コンビニが普及して変わった街の変化がよく分かる。

 ああ、いいものだ。

 平和がやっぱり一番なんだ。

 そう思える。そう感じられる。

 何度か危機が訪れたこの街も、やっぱり平和ボケしてるくらいがちょうどいいのだろうと思う。

 背後で止まる餅由来の苦しみの声を背中に、私は街に歩き出した。

 

 三十分ほど街を歩いたが、それでも飽きることはない。

 何に急かされることもなく、何に脅かされることもなく、のんびりと平和を眺めているというのは存外悪くない。

 正月の散歩、毎年の習慣にしてみてもいいかも。

 そうしたらスバルとバッタリ会ってしまって、久しぶりに一緒にご飯を食べることになった。

 

 昔は毎日のように一緒にご飯を食べていたのに、今では機会が無いと一緒にご飯を食べることすらしないのだから不思議なものだ。

 けれど、それも当然のこと。

 時間は流れる。

 時は止まらない。

 年末があり、正月があるように。

 去年があり、今年があるように。

 私にもこいつにも個別の人生があり、時間の中でそれは近寄ったり離れたりする。

 その中で"それでも近い人生で居たい"と思えるのが、親友というやつなのだろう。

 

 私はこっ恥ずかしいことに、いつまで経ってもこいつを親友だと思っているようだ。

 

 空に星が見える。

 流星群のような流れ星だ。

 ニュースが『空から細切れにされた餅が降って来た』とか言ってるが、なんというか驚くに値しない。

 ちょっと課金関連のとんでもない事件に私は巻き込まれすぎたらしい。

 管理局から緊急連絡が飛んで来ない限り、そうそう驚かない体になってしまった。

 

 ああ、でもなんだか、空が綺麗だ。

 流れる星で空が絢爛に彩られている。

 あの空の一つ一つが餅で、あいつが後々吐き出すであろう餅と同じ形をしてるんだろうか。

 ゲロの流星……

 

「あけましておめでとう、スバル、ティアナ」

 

「なのはさん! あけましておめでとうございます!」

「あけましておめでとうございます。

 なのはさん、あっちで旦那さんが餅を喉に詰まらせてますよ」

 

「いいよ、またどうせ詰まった餅がジュエルシードになって出て来るんだから」

 

 この奥さんの旦那への評価は、いつも通りだった。

 私からの評価もいつも通りだった。

 去年もそうだったので、多分今年もそうだろう。

 正月から思うのもどうかと思うが、来年もそうなると思う。

 

 

 




 土壇場で『餅をGoogle Playカードに変えるロストロギア』を確保したかっちゃんのおかげで、空から餅が降り注ぐことによる世界滅亡は回避された
 空より降り注ぐ幻想的な課金の雨
 年末ガチャ・年始ガチャで金を使い果たしていた皆は歓喜したという
 これで狙い目のキャラを引き当てた者も少なくなく、かっちゃんはたいそう崇められたそうな

 なお、本人はGoogle Playカードを喉に詰まらせて病院に運ばれた患者として病院史にその名を残した
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