クリスマス。冷蔵庫に閉じ込められていたパラケルススに訪れた、素敵で無敵な奇跡の一瞬
パラケルススは命の危機に瀕していた。
おそらく皆様お忘れだろうが、パラケルススはクリスマスイベント時にちょこっと冷蔵庫に放り込まれたまま、以後放置されていた。
「死ぬ」
クリスマスイベント開始から完走まで十日間。
12/25日付変更時直前、パラケルススはまだ冷蔵庫の中に居る。
「死んでしまう」
12/26、査察団到着。
他サーヴァントは皆退去したが彼はまだ冷蔵庫の中に居る。
12/31、カルデア陥落。
当然まだ中に居る。
1/3現在。
うだうだしてたら冷蔵庫の中より冷蔵庫の外の方が寒くなってしまったというのが最大のギャグだった。
「しんじゃう」
冷蔵庫の扉もカチコチに凍ってもう開かない。
このままではパラケルススの氷像が出来上がってしまう。
マスターの危機そっちのけで冷蔵庫に閉じ込められて敵に氷像として発見される頭パー(ラケルスス)とか言われてしまうかもしれない。
流石にちょっとヤバくなってきた。
オタ壁姫、オタ壁姫助けて! と思ったところで「あ、あの人刑部姫でした」「考えてみてば壁サークルになれるほどの実力はありませんでしたね」と思考し冷静になる。
寒さのせいで幻覚が見えてくる。
ありもしない記憶が捏造され始めていた。
―――パラケルスス、僕はね、ソシャゲの味方になりたかったんだ
―――なんだよ。なりたかったって、諦めたのかよ
―――うん。ソシャゲの味方は期間限定で、大人になると難しくなるんだ
―――具体的には暇な時間が多い学生期間が終わるとね
―――つまんないソシャゲから切り捨てていかないといけない
―――五を救うのに、一を切り捨てないといけないんだ
―――ふーん
―――じゃあさ、俺がなるよ。じいさんは大人だから無理だけどさ、俺なら大丈夫だろ?
―――俺なら大学卒業まではずっと、ソシャゲの味方でいてやれるさ
―――何も切り捨てたりしない、爺さんがなりたかったソシャゲの味方に
―――パラケルスス
―――大丈夫、爺さんの夢は
―――俺がちゃんと形にしてやるからさ
―――ああ
―――安心した
―――頑張れ、ヴァン・ホーエミヤハイム・パラケルスス
幻覚終了。
凍死寸前の世界が戻って来た。
「これはいけませんね……」
パラケルススは希望に賭けた。
何だかやたら眠いので、目を閉じ眠り体力を温存し、自分が凍死する前にマスターがカルデアを奪還してくれることに賭けたのだ。
世界を救ったマスターなら自分を救うくらい余裕余裕。
信じよう、信じて待とう!
来なかった。
パラケルススは全てを諦め心を閉じる。
その時、パラケルススの宝具が内包していた疑似的神代真エーテル(公式がロクに詳細を明かしてくれないせいで二次創作でどんなに玩具にしてもいい不思議物質)がパラケルススの霊基と奇跡的な共鳴を果たし、奇跡が起こった!
中間地点は守護獣ルシエド。
哀れな悲劇の少女アヴリル・ヴァン・フルールを救える誰か、救いたいと思える誰かを探し、彼女の元へ繋がる道を作っていたワンコちゃんだ。
彼が作った世界の架け橋は、想いさえあれば通ることは難しくない。
そんな"アヴリル・ヴァン・フルールへ繋がる道"を、"私の名前にもヴァン入ってますから"程度の強引な理屈でヴァン・ホーエンハイム・パラケルススが突破する。
ルシエドも唖然とする強引な直球突破であった。
アヴリル・ヴァン・フルールは、ある世界では悲劇の代名詞である。
彼女は12000年をかけて世界を救う準備を積み上げ、12000年後に記憶を失った頃愛する男と出会い、恋をして、惚れた男のために世界を救う戦いに身を投じ、自分の精神だけを12000年前の自分に送信してまたそれを繰り返す。
何度も、何度も。
彼女が12000年のループを繰り返さなければ、世界は救えないというのがまた苦しい。
何かが必要だった。
彼女のループを壊す何か。
彼女がループしなくても良くなる何かが。
そしてこの日、それは守護獣ルシエドの仲立ちによってやって来た。
彼女の異名は氷の女王。
氷漬けのパラケルススが今、縁召喚を成立させる。
伝説の錬金術師が冷蔵庫の中で凍死しかけていたという奇跡が、悲劇の少女を救う奇跡を組み上げたのだ。
「ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス。召喚により、参上致しました」
「え、あ」
「貴女が私のマスターですか?」
悲劇は、転壊される。
……と、いうのが、アヴリルを連れて戻って来たパラケルススがマスターに語って聞かせた話であった。
「そこから私はアブリルの代わりにループを始めたのです。
12000年の研究機関がとても嬉し……辛かったのです。
12000年の時間経過が神秘を高め……苦しかったのです。労って下さい」
「パラケルカスとか言ってる人が居た理由がよく分かるわ、マスターとして」
パラケルススはアヴリルを助ける善意の人間の振りをして、12000年のループを私用で何度も繰り返し、研究と進化を繰り返したスーパーパラケルススとなって帰って来たのだ!
今の彼は十万年の研究を経た魔術師のレベルに到達している!
「あの、マスターさんと言いましたか?
私が助かったこと、救われたことは事実なのです。
宝具・ハイパーパラケルススビームがなければ、私も今頃どうなっていたことか」
「宝具の名前が何ループ目で変わったのかちょっと気になってきた……」
「私は、お礼を言うために、彼の貢献を説明するために、ここに来ました。
だからどうか、彼を責めないであげて。彼のしたことを褒めてあげて欲しいのです」
「うん、まあ、分かってるよ。
パラケルススさんは根が悪党くさいだけでいい人だから」
「それ悪人なのか善人なのか判断に困りますね」
悪党だけど根はいい人、というのは普段人に迷惑をかけるが窮地には人を助けてくれる。
いい人だけど根は悪党、というのは普段いい人ズラするが窮地で背中にアゾットしてくる。
まあ、そんなもんなのだ。
「それじゃアヴリルさん、困ったら何か連絡してくれていいから。
俺も素材集めでアヴリルさんの方の世界行くかもしれないし」
「困った時は、遠慮なく頼らせていただきます。
そちらが困った時も、遠慮なく頼ってくださいね。
美味しいスコーンを用意して、おともだちとして待っていますから。」
アヴリルを送り返して、アルティメットパラケルススだけが残った。
「それにしてもマスター、もうカルデアを取り戻していたとは驚きました。
折角ハイパームテキパラケルススとなって帰って来たのに、まさか活躍の場がないとは。
今の私は完全無敵、歩く要塞。
結界24層、ベルトに魔力炉3基、アクセサリー代わりの悪霊、魍魎数十体。
無数のトラップ、ポケットの一部は異界化させている空間もある服なのですよ、これは」
「ん? 何言ってんの?」
「……ま、マスター。もしや、もしやですが。今日は何月何日で……?」
「12/25だ。さ、査問が来る前に座に帰ろうか、パラケルスス君」
「Oh……」
最強無敵のパラケルスス、強制退去。
世界の状態や時間軸の状態で『召喚されたサーヴァントの経験が座に反映されるか』は結構左右されるものだが、運悪くハイパームテキパラケルススは座に反映されず露と消える。
十万年のパラケルスス種火周回にも等しい強化期間の努力が、無に帰した瞬間であった。
パラケルスス君がローソンの冷蔵庫に体ごと入った写真をツイッターに上げて炎上した後「沙条愛歌への忠誠は変わりません」とか呟いて愛歌様のアカウント炎上させてる画像ください