お正月企画三題噺シリーズ・ネクスト   作:ルシエド

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 お題は『遊戯王』『ノロウイルス』『二人は幸せなキスをして終了』。

 ある日、遊戯は城之内からノロウイルスを拡散させる闇のゲームの噂を耳にするが、その裏には……


第十二回:童実野町デュエル頂上決戦! 爆誕、ライディングデュエル!

 最近、童実野町でノロウイルスの感染が広まっていた。

 注意するよう街の中で連絡が回るレベルであればまだよかった。

 保健や衛生の役所仕事が目立つようになってからは街の空気も変わった。

 警察が動くレベルになった段階では、もはや誰もが事件の匂いを感じ取っていた。

 

「聞いたか遊戯、地下遊戯場の闇のゲームの話」

 

「闇のゲーム? どういうことなの、城之内くん」

 

 学校帰りの城之内克也と武藤遊戯は、最近街中で広まっている噂について語り合っていた。

 遊戯の首元で、千年パズルの鎖がカチャリと音を鳴らしている。

 

「なんでもよ、そこでデュエルで勝つととんでもねえ金が手に入るって話だ。

 だけど金に目が眩んで参加しちまったら運の尽きよ。

 そこでのデュエルに負けたやつは、心が完全に壊れちまうって噂だ」

 

「! それは確かに、闇のゲームとしか」

 

「しかもな、ノロウイルスの爆発的感染……

 どうにもここで負けた奴らが感染源だって噂なんだ」

 

「敗者の心を壊し、病原体を感染させる……それは確かに、千年アイテムみたいだね」

 

「なあ遊戯、いっちょ俺達でやってみないか?

 こいつらがデュエルを悪用してる闇のゲームの使い手、だっていうんならよ」

 

「ああ。バトルシティを勝ち抜いた俺達が止めてやるべきだろう」

 

「うおっ!? い、いきなり人格変えんなよビックリすんな」

 

 病と心を操る邪法、それが真実ならば間違いなく尋常でないモノが絡んでいる。

 しからばそれは、武藤遊戯が戦うべき闇の住人であるということだ。

 遊戯と城之内は準備を整え、翌日土曜日に噂の地下遊技場へと歩を進めていた。

 

「城之内くん、デュエルディスクだけは手放すんじゃないぞ」

 

「分かってる。こいつだけが頼りだからな」

 

 暗い階段を降りて行く遊戯と城之内。

 

「暗いな……こんなんで一般客入って来れんのか? なあ、遊戯」

 

 城之内は問いかけるが返事がない。

 

「おい、遊……うっ」

 

 異変を感じた時にはもう遅く、無臭のガスを吸ってしまった城之内もまた、遊戯と同じように体が眠り始めていた。

 

(しまった……ガス……)

 

 パタリ、と倒れた遊戯と城之内がガスマスクの男達に運ばれていく。

 

 

 

 

 

 次に二人が目を覚ました時、遊戯と城之内は鎖に繋がれていた。

 

「くっ、なんだこれは?」

「力任せにやっても取れなさそうだな」

 

「その拘束はお気に召してくれたかね」

 

「「 ! 」」

 

 声がした方に声を向ければ、そこにはいかにもといった『番長』風の男が豪奢な椅子に座っていた。

 だが、男一人ではない。

 いかな理由か、本田と御伽までもが捕まってしまっていた。

 

「本田くん! 御伽くん!」

 

「悪い、シクッた!」

「気を付けろ! こいつら只者じゃない!」

 

 別々に行動していた四人をほぼ同時に確保したということは、この男かその一味が最初から遊戯とその仲間を狙っていたということだ。

 ますます油断ができなくなってきた。

 

「我が名は闇のデュエル番長」

 

「や……闇のデュエル番長!」

 

 ただならぬ威圧感。

 只者ではないと、闇遊戯の直感が囁いている。

 

「受けるがいい……俺達の闇のゲーム、顔面騎乗(ライディング)デュエルを!」

 

顔面騎乗(ライディング)デュエル」

 

「ルールは簡単だ! 馬一人、騎乗者一人で一組! 合計四人で戦うルール!

 LPを失う度に鎖が引かれ、馬が移動していくという仕組みだ!

 LP4000を失った時点で一からして騎乗者は馬の尻にキスをしなければならない!」

 

「うわっ」

 

 後の時代に『ライディングデュエル』の呼称で知られるレーシングデュエルレギュレーションの原型が、ここにはあった。

 

「名付けて『ハッピー・キス』だ」

 

「ヒップー・キスの間違いだろ……」

「ハッピー要素が無い、7点」

「やべえよこいつ、童実野町の闇が産んだエロの化身か?」

 

 全力でやって負けて、男の臭い尻を顔面に乗っけられるなどという仕打ちを受ければ精神が崩壊してもおかしくはないだろう。

 ノロは毎年トイレの手すりから感染するほど感力が高い。

 ノロに感染した男の尻にキスなんてしてしまえば、かなりの確率で感染してしまうはずだ。

 

 そう、今現在の童実野町のノロウイルス流行は、全てデュエリストのアナルに由来する問題だったのだ。

 

「つか、他にも色々とやりようがあっただろ。なんでこの形にした」

 

「この絵面の方が興奮するだろ」

 

「うわっ」

 

 闇(が深い男)のゲーム。

 

「さあ、デュエルしろ。友人同士、潰し合うのだ!」

 

 普通にやれば遊戯がまず確実に勝つ。

 だが遊戯が勝てば本田と御伽が犠牲になり、負けてしまえば遊戯と城之内が犠牲になる。

 勝っても負けても辛い結末、これはグールズのやり方を彷彿とさせた。

 遊戯がどんなに加減しても拙い素人のプレイングではダメージが出てしまい、本田と御伽のパイルダーオンは時間の問題であるように見える。

 

「やめるんだホモ田くん!」

 

「俺はホモじゃねえ!」

 

 ほぼノーダメージに近い遊戯と城之内ですら、少しでも気を抜けばライディングデュエルを始めさせられかねないほどにタイトな状況であった。

 

「尻之内くん!」

 

「安心しろ遊戯! まだ気張れるぜ!」

 

 労働奴隷の文字の意味を逆にして遊戯王。

 闇遊戯はそういう意味で労働奴隷の真逆に位置する存在である。

 闇のデュエル番長は闇遊戯の王っぽさをひと目で見抜き、それを屈服させるためにあらゆる手を尽くすつもりでいた。

 

「キースッ! キースッ! 下の口と上の口で幸せなキースッ!」

 

(くっ……も、もう駄目か!?)

 

 あわや終わりか、と思われたその瞬間。

 

「おおっと参上失礼するぜ!」

 

 地下施設に突っ込んで来る謎のバイク。

 バイクは遊戯達を捕まえていた機械の固定部分を無茶苦茶にぶっ壊しながら、部屋の中央でド派手に駐車する。

 

「お前は……牛尾!」

 

「勘違いするな。別にテメエラを助けに来たわけじゃねえ。

 ここにクズがいるって通報を受けて来ただけだ」

 

 牛尾が照れくさそうに鼻の下を拭っている隙に、主犯の闇のデュエル番長はすたこらさっさと逃げ出した。

 

「待てコラ!」

 

「待てと言われて待つアホがいるかどアホ!」

 

 闇のデュエル番長は野生のマリクを捕まえ、その鼻を自らの尻穴に合わせるようにして顔面騎乗・ピットイン。流れるようにして首にクラッチを入れエンジンを始動、マリクを締め上げる形で童実野町高速道路を爆走し始めた。

 ピエゾ効果をご存知だろうか?

 とりあえず物質を締め上げれば電気が出るよ、という効果のことだ。

 現代において金属を使っていない高速道路なんてあるわけもなく、ピエゾ効果によって発生した電気を使いリニアレールのように闇のデュエル番長はかっ飛んでいく。

 

「あれは……マリク! マリカーだ!」

 

「牛尾、追ってくれ!」

 

「追う気か!? だが遊戯、お前を乗せて追っても振り落とされる可能性が……」

 

「振り落とされる前に、車上のデュエルで決着をつけてやるさ!」

 

「! なるほどな、勝つまでは振り落とされるなよ!」

 

 これこそが、時代の始まり。

 新時代デュエルの黎明期。

 バイクの上のデュエリストを見て人々はそこに『未来』を見て、マリクに跨るデュエリストを見て人々はそこに『プラシド』の原型を見た。

 戦いは遊戯の勝利に終わるが、デュエルの光景は人々の心に末永く残る。

 

 後の時代に語られる、ライディングデュエルが初めて歴史に現れた瞬間のことだった。

 

 

 




 スケボーはよくて人間に乗っちゃダメな理由が分かりませんね……
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