トカ博士! トカ博士じゃないか! ゲーは行方不明。
「もしそこなレディ」
「はいなんでしょうって私よりめっちゃでかいトカゲェッ喋ってるゥーッ!!」
「ややっ!?」
「お前だッー!」
綾瀬三姉妹の三女、女子小学生綾瀬恵那に訪れた危機ッ!
突如来訪したトカゲ型異星人のファーストコンタクトッ!
恵那はどうなってしまうのかッ!
特にどうにもならなかった。
「プラモ屋さん?」
「そのとーり。我輩、アッシマーを求めてここまで来たトカ。
聞けば号泣、語れば吐血、文章にすればゲロ間違い無しの感動巨編!」
「話に反応して動く体の部位が多すぎる!
最近はプラモデル売ってるお店ってそんなに多くないからなあ……あ、ここだね」
「ワーオ! これにはワンダーテインメイントカ博士も大興奮!」
さあ、小さめな店内に突入だ!
「トカたのもー!」
「はいなんでしょうお客様って俺よりめっちゃでかいトカゲェッ喋ってるゥーッ!!」
「これこれ、このHGUCアッシマーが欲しかったんだトカ」
「強いの? 主役のロボットなの?」
「フフ……お嬢さん、それはいつの日か君がアニメ本編を見る時までとっておくトカ」
チャリンチャリンと硬貨を置いて、トカ&エナは店内を去る。
「宇宙人も地球のプラモデルを欲しがるとかあるんだね」
「ふふっ、ここまでの造形だと流石に鳥肌もバリバリのバッリバリィ」
「鳥肌……あなたはトカゲの誇りをどこに置いてきたの」
「君にも見えるトカ見えないトカ評判のウルトラの星、かな……」
さっそくその辺の公園でプラモデルを作り上げるトカ&エナ。
だが恵那が手伝うまでもなく、トカ博士の巧みな宇宙的指使いが超高速でプラモデルを組み上げてゆくッ!
トカ博士は鳥肌も立つが、その手の指も人間と同じ構造の五本指! 地球のプラモデルとプラモデル作成道具に最適化された指の構造をしているのだッ! トカゲ要素は一体どこに?
「完成! アッシマーッ!」
「あ、なんだかかっこいいね」
巻き舌気味に叫ぶトカ博士。
「更にここに手を加え……アッシマー・ブルコギドンカスタム!」
「ダサくなったー!?」
何故余計な手を加えていくのか。
「大切なのはカッコイイことじゃなくブルコギドンであることなのだトカ」
「じゃあアッシマーを買わなくてもよかったんじゃ……」
「馴染む……世界観が馴染むトカ! ハッ、まさかこの世界が我輩の原作!?」
「原作って何!?」
だがゆめゆめ忘れることなかれ。
突如やって来る嵐の風雲児は、宇宙のトカ博士だけではない。
この街にはトカ博士の相手に相応しき者、地球の風雲児が存在するのだ。
「お エナだ」
「あ、よつばちゃん」
「みてみてミニダンボー! さいきょーのミニダンボーじゅうにせい!」
「うわっ、まっかっかな手のひらダンボー?」
いつでもどこでも楽しいハチャメチャを引き起こす少女、小岩井よつば推参。
その手の中には、真っ赤に染められたダンボール製ロボット風手作り玩具が握られていた。
だがその『最強』発言が、トカ博士の興味を引く。
「最強トカ、興味があります。かくいうこのブルコギドンカスタムも最強の一角!」
「へー、おまえもさいきょーなのか」
「このアッシマーはブルコギドンと同じくロボット心臓を搭載ッ!(設定)
膨大な電力を流し込み、アクチュエータとマニピュレータが唸りを上げるッ!(設定)
宇宙鉱石を圧力加工した指先は岩石をポテチのようにサクッと砕く攻撃(設定)を……」
「むてきバリアー!」
「……なんですと!?」
「ダンボーのむてきバリアーはふめつのバリアー、こうげきはきかないしふれたらしぬ」
「触れたら死ぬ!? そ、そのギミックの詳細はいかに」
「むてきはむてき さいしょからそうきまってるからむてきなのだ!」
「なんですとー!?」
ビビるトカ博士の前で、よつばはアッシマーの拳で木の枝を叩く。
折れない。プラスチックだからか。
よつばはダンボーの拳で枝を殴る。
折れた。
「このダンボーのてのなかには てっぱんがしこんである」
「思ったより強いこのダンボー!」
攻撃力でも惨敗したトカ博士に、もう最強を名乗る気はなかった。
「フッ……我輩の完敗だトカ。
今日は地球に何もせず去ろう!
だが小僧、その勝利はダンボーの性能のおかげだという事を忘れるでないぞッ!
ではさらばだトカ!
レディ・エナちゃん、今日のお礼はまた後日しに来るとかしないトカッ!」
「するのかしないのかどっちッ!?」
かくして、異性からの愉快な侵略者(地球に来た当時の理由はそうだった)は星の海へと帰っていった……
後日談ならぬ後日の話。
エナのもとに『先日のお礼』、よつばのもとに『最強への贈り物』と題された宅急便が届けられる。開けてみれば、ダンボールの中には謎のコントローラーがあった。
試しによつばが遊んでみると、何も起こらない。
飽きたよつばが放り投げて、恵那が「しょうがないなあ」とそれを拾う。
夜になって、宿題をしていた恵那が夜空を見上げ、ふとコントローラーを触ってみる。
空の星が、十個くらい動いていた。
くらっ、と来た恵那は二つのコントローラーを机の奥に押し込み、これを墓の下まで持って行くことを決めたのだった。
よつばは無敵