お久しぶりです。見ていない内にかなり読まれてて驚きました。不定期ですが、これからもどうぞ宜しくお願いします。
因みに、主人公の容姿ですが。
身長 175㎝ 体重63㎏ 黒目黒髪で、シン・アスカのような髪型。目付きが鋭い。
見たいなイメージです。それでは本編どうぞ。
「あ、今週の日曜日に聖グロリアーナと練習試合するからよろしくね~」
「・・・・・・は?」
大洗の為に全国大会に参戦することを決めたレン。その日から彼は自身のガンプラを完成させるべく、日々カスタムに勤しんでいた。平日の授業は半分聞きつつ、スケッチブックに案を出し。帰ってからはそれを試すという日々。まだまだ時間はあるとは言え、慢心しないのがレンである。その結果、なんとかゴールが見えかけていたのだが・・・・・・。
「――無茶を言わないで下さい、まだ俺のガンプラは完成していません。それに連絡は早くしてください」
「あー、ゴメンね~。だってイオリくんの連絡先だれも知らないし」
それは事実であった。レンは自身の連絡先を用意に広げる事を良しとしない。故に、彼が情報を知る方法は専ら人づてに聞くとか、紙を貰う事であり――結果として、一歩遅れる事が多かったのだ。
「うーん。じゃあ止めとく?私としては、戦って貰いたいんだけど」
「・・・・・・いえ、やはり戦います。敵の実力を測るためにもいいですし」
「え、でも機体。無いって言ってたけど?」
「大分前に創ったのがあります。今回はそれを使いますよ」
一度は断ろうとしたレン。だが彼は前言を撤回し練習試合を受け入れた。これは普段のレンを知る人々からすれば、驚くべき事だった。レンは意見をコロコロ変えることを良しとしない。だが彼は今回ばかりは意見を変えた。
何故か。レンはしばしの思考である事に思いついたのである。いや思い至った。即ち、武装のテスト及び慣らし。そして改良した〃システム〃の試しである。
確かに百式鬼夜行は未完成である。しかし、百式鬼夜行専用の武装。ビームライフルやビームサーベル等の基礎的な武装の試作品は出来上がっていたのだ。試作品とは言え、何回かはテストをしている。その結果は概ね満足と言った所だが。
だが、試作品はあくまで試作品。今だプロトタイプの域を出ない。そのため、改良点を確かめ完成に向かわせるという目的を達成することが出来るのである。
とは言え、そんなモノは付け加えに過ぎない。本来の目的。つまり本命は〃システム〃の改良確認とそのフィードバックなどの確認である。第八回大会で使用した〃システム〃。その威力は絶大だった。ルワン・ダラーラやメイジンカワグチといった並み居る強敵に打ち勝ち、セイのビルドストライクコスモスのRGシステムすらも打ち破ったのはこの〃システム〃に因る所が大きい。だが、同時に強力な〃システム〃は、同時にとある欠点を抱えていた。故に、レンはこの〃システム〃を改良する事が急務なのであった。そして、それを確かめるために今回のを受ける事にしたのである。
「助かるよ~、もう向こうには伝えちゃってるしさ。で、間に合うの?」
「はい。武装の換装及び、関節や装甲のチェックが済み次第直ぐにでも戦えます」
「ほー、凄いね。じゃ、頼んだよ」
「分かりました。時間などは後で教えてください」
レンはそう言って踵を返した。朝一でこの会長室へと連れて行かれたため、急いで教室へと戻らねば欠席扱いされてしまうのだ。ただでさえ教師に対して印象がよろしくないレン。登校しているのにさぼったと見なされては大変なのだ。
会長室から出ながら腕時計に視線を向ける。SHRまでの時間はもう殆どない。それに焦ったレンは脇目も振らずに駆け出した。この際だ。廊下を走ってもいか仕方ないのだ。
そのため彼には見えなかったのである。ニタリ、と悪魔の笑みを浮かべる会長の姿に。
結局。SHRにギリギリ間に合ったレン。彼が教室に滑り込むと同時に担任も到着し、冷や汗が背中を伝った感覚はしばらく忘れられそうに無かった。
そして、授業中。教室の最後列に陣取っているレンがする事と言えば、もう一つしかない。即ち――練習試合用の機体調整案のスケッチである。
授業?そんなモノは既に死んでいる(レンの認識)。一時限は数学である。しかし、ガチガチの文型であるレンにはいらない教科であった。レンにとっては不必要な存在なのだ!である。
よって、彼はこの暇な時間(数学の授業中)を使用し機体のアイディアを出す事が第一目標なのであった。
既に授業は終盤に差し掛かっている。だと言うのに、レンの眼前にある
しかも、この機体には元々一つの特殊武装も積まれており、それがより調整を厳しくしていた。
何も此処までと思う人間もいるだろう。しかし、レンには練習試合だからと言っても油断も隙も無い。あるのは唯全力をつくして戦うという覚悟だけ。
故に、レンはこの機体を万全にする必要があった。第七回大会の事件にて使用し、ラル大尉と珍安和尚、両雄に並び立つと呼ばれたイオリ・レンの傑作機。銘をMSN―ゼr・・・・・・。
「では、ここの問題を・・・・・・イオリ!答えろ」
レンの思考が機体のイメージを捉えかけたその時。彼にご指名が掛かった。彼を使命したのは数学の担当教諭。三十過ぎのおっさんだ。滅多に登校しないレンに面識はほぼ無いが、この教諭はわざと難しい問題を当て答えられない者を馬鹿にするという悪癖があった。そのためこの教諭は相当に嫌われており、クラス中の心中は「ああ、またか・・・・・・」であった。
当てられたのは確率計算の問題。解くまでが非常に面倒であり、難問であった。
レンはクラス中の人間が可哀相にと思われている中で答えを口にした。
「・・・・・・八分の三です」
「・・・・・・・・・・・・正解だ」
苦々しそうに正解と呟く教諭の姿にクラス中が安堵に包まれた。レンが大嫌いな数学を答えられた理由。それは一重に教えてもらっていたからである。
と、言ってもそれはこの学校の人間ではない。相手は同じヤジマ商事に所属する仲間であり、社長の娘の婚約者(強制)。である、ニルス・ニールセンの助けによる物である。
確かに、レンは理系科目が苦手である。しかし、だからと言って無視はできない。意外とガンプラバトルに数学は必要なのである。だからこそ彼はニルスに頭を下げて、教えを乞うたワケであった。
その結果、既に大学レベルに達しているのだがそれはまた別の話である。
そうしてレンは苦い顔をするおっさんを尻目に、なんとなく掴んだイメージを実体化させるべく、手にした鉛筆をせわしなく動かしたのであった。
そして、ソレは結局休み時間も続いた。その際のレンの姿と言うか表情は鬼気迫るものと同時に、近寄りがたいオーラを滲ませていた。つまりは周囲にプレッシャーを放っていたのであった。
そうして放課後。レンの手にしたスケッチブックには完全な形の機体が描かれていた。
結局、ほぼ全ての授業を無視し続けたレンであるがその甲斐もあってスケッチは完成していた。あとは、それを形にするだけである。
レンがそれを思い立ち、帰ろうと鞄に荷物を詰め立ち上がる。そこに声がかけられた。
「あー、イオリくんちょっと来て?」
声をかけた人物は何故かレンを呼びに来た、ニヤリと笑う会長の姿であった。
それから、数分後。レンはと言うと。
「いいか!相手の聖グロリアーナ女学院は、強固な装甲及び連携を長所とした浸透強襲戦術をとる」
訳も分からず、生徒会室で片眼鏡のご高説を聞かされていた。
無論、レンの他にも何人か人は居る。メンバーとしては、生徒会役員と各車両の代表だ。先程自己紹介をされたのだが、正直どうでも良かったりする。
「ともかく、相手の戦車は堅い!主力であるマチルダⅡには百メートル以内でしか射撃が通用しないと思え!」
百メートルだと。まるで見てきたかのような口ぶりだが、調べたのだろう。だが、百メートルだ。一見、長いようであるがそんな事は無い。戦車は砲撃する。つまり一瞬なのだ。そして先程の片眼鏡の話を例えると、プトレマイオスⅡに至近距離でザンジバルの砲撃を当てるようなものだ。つまり、此方は射撃威力は並み程度で相手はその上。しかも、此方はほぼ紙装甲に近いのに対し、相手はGNフィールドを張っている。つまり、詰む。
「そこでだ。一両を囮とし、こちらのキルゾーンへと誘導。高低差を利用し、残りがこれを撃滅する!」
その説明に集まったメンバーが頷く。まぁ、確かによく考えられているとは思う。・・・・・・あくまで素人としては、だが。この作戦を我らが参謀、ジオン水泳部ヒイロ・ソラが聞いたらどう思うだろうか。恐らく、一頻り聞いた後爆笑するのだろう。なんて馬鹿な作戦だ、と。そして、穴だらけだと。
「少し、いいか?」
「なっ。ゴホン・・・・・・なんだ、イオリ私の作戦にけちをつける気か?」
「けちを付けるもありませんよ。穴だらけじゃあないですかその作戦」
「何だと貴様ぁ!?」
「まあまぁ、河嶋落ち着いてよ。で、イオリくんその穴って?」
「簡単な話ですよ。先ず、相手が作戦に乗らなければ?それに、作戦を看破されてしまえば?相手が必ず固まって動くのか?キルゾーンで撃滅できなければ?それを考えましたか?」
この作戦はやる価値も無い、とは言わないがそれに近い。先ず、このように一つの策しか講じないのは問題だ。もしこちらの作戦が敗れたらどうするのか、もし作戦を見抜かれたら、もし逆に利用されたら、もし・・・・・・。つまりは、先のヴィジョンが無いのだ。こんなのが部隊長ならレンは即座に戦線から生き延びるための策を独自に講じる。
あのジオンの赤い彗星が言っていただろう。「戦いとは二手三手先を読んでするものだ」と。旧時代の戦争では無いのだ。確りと策は持っておくべきである。その点、ソラはそれがあった。囮作戦をするにしても、囮を囮のようにして態と作戦を看破させる。そして、相手がそれを利用しようとした瞬間に囮が――大概レンか、ドモン・ハルヤがこなした――敵を追い詰め、場をヒイロ・ソラが荒らし、最後は、混乱の内にカジマ・キンヤが超長距離から仕留める。などといった様に。
「そんなもの、やってみればどうとでもなる!」
だが、片眼鏡は納得しない。どうやら、レンに対抗意識を持っているようだった。ならば、とレンは経験者から意見を出させることにした。
「西住、正直どう思う」
「え?ちょ、私?」
「西住、イオリの石頭に言ってやれ!」
片眼鏡の言い様にイラッとくる。本当にこういう人種はキライだ。いつだったか自分に科した枷を解き放ってでも、フルボッコしたいくらいだった。※注意ガンプラバトルの話です。
西住は片眼鏡の眼光にビクッとしつつも、返答を返した。
「えっと、私もイオリくんの意見に賛成で・・・・・・。裏をかかれて逆包囲、なんて事もあるのでは・・・・・・」
「確かにねー、それはあるかも」
西住の言葉に会長も、あの小動物みたいな生徒会役員も頷いている。
まぁ、そうだろうとは思ったが。西住も馬鹿ではない。デメリットもしっかりと考えているのだ。相手の実力を低く見ないことは重要なファクターである。それに、恐らく会長はこれを狙っていたのだろう。戦車道が素人であるレンをここに呼ぶのは場違いが過ぎる。しかし、こと実戦となると戦車道は素人でもレンのガンプラバトルによって培われた感覚を利用したかった、と言うことだろう。それにレン自身もある程度の協力はすると言っている手前、拒否はしにくかった。
だが、片眼鏡は反論された事が気に喰わなかったらしい。
「ええい、黙れ黙れ!私の作戦に口を挟むな!そんな事をいうのならば貴様らが作戦を立てろ!」
「だとさ、西住頼めるか?」
「え、イオリくんそれは」
「確かに作戦は、と言うか隊長は西住ちゃんがいいかもねぇ」
会長の言葉は正しい。この場において、隊長を勤められるのは彼女しかいない。過去も同じような役職をしているのだし、それに二手三手先を読める人物は必須だ。
「―――頼む」
レンはそう言って頭を下げた。この時の彼は表情を真剣なものにし、切実に頭を下げていた。この時、彼が参考にしたのはZガンダムにおいて、シャアがハマーンにゼダンの門を叩いてくれるように頼んだシーンだ。
これに対して、西住はわちゃわちゃとしつつも頭を上げる様にレンへと言った。そして。
「・・・・・・うん、私でよければ」
「すまない」
「と、いうことで隊長は西住ちゃんに決定だね」
会長の言葉に他のメンバーも賛同するように拍手を送った。レンも無論拍手を送る。片眼鏡は不服そうな表情だが。
和やかなムード。そこに、爆弾が落ちるとは誰が思っただろう。
「頑張ってよー勝ったら、干し芋三日分。負けたら・・・・・・大納涼祭りで盛り上げのためにあんこう踊りをしてもらおうかな~。あ、戦車道の人は全員参加でね」
瞬間、空気が凍結した。まぁ、こんな和やかムードで終るとは思わなかったとレンは思う。
だが、レンには疑問が一つ。あんこう踊りって何さ。
試合当日。レンは戦車道の試合を巨大モニターにて観戦していた。
普通ならば制限時間の無い試合なのだが、午後にガンプラバトルの試合を予定しているために午前中いっぱいで終る予定であった。何故かと言うと、それは戦車道の隊長がガンプラバトルの代表選手である場合が多いからであった。そして、ご多分に漏れず聖グロリアーナも隊長が選手なのであった。
試合も既にたけなわ。結果がそろそろ見えてきていた。一見すると大洗が圧倒されているように見える。しかし、それを大幅にカバーする形で西住たちのチームが奮戦していた。
そして、相手のフラッグ車とこちらのフラッグ車が撃ち合い、あと少しのところで大洗のフラッグ車が撃破され試合は終った。確かに結果は負けだが、大洗はかなりの戦跡を出したと言える。準優勝した事がある学園をあと少しの所まで追い詰めたのだから。しかし同時に、問題点も多々あった。まず、西住ありきになりかかっていた事。それに一年チームの逃亡などだ。
レンがその結果に嘆息し、午後からのバトルに備えるべく踵を返す。そして、とある人物が彼に声をかけた。
「久しぶりだな、レン君」
「ラルさんじゃないですか。お久しぶりです」
そこに居たのは、青い巨星の異名をもつガンプラファイター。ラル大尉であった。初めて会った時から全く変らない格好と容姿をしているが、年をとっているのか?と思う人物であり。レンにガンプラバトルのいろはを教えてくれた恩師でもある。
「今日の練習試合に出ると聞いてね。拝見させてもらいに来たよ」
「光栄ですよ。元々負けるつもりはありませんでしたが、これはますます負けられなくなりました」
「ハハハハッ!これは重畳。では楽しみにしているよ」
「ええ。楽しみにしていてください」
久しぶりの再会を喜び会うと、レンは準備をしに控え室へと戻る。自信に満ち溢れたレンの背中にラルは問いを投げかけた。
「所でレン君。・・・・・・君はまだ囚われているのか?」
それは、イオリ・レンという少年が今になる前の事。誰にも心を許さず、世界を人を全てを憎んでいた頃のレンが囚われていたモノへの問い。ラルという漢ですら引き下がりかけた程のものである。
レンはその問いに首だけ振り向かせると、普段の彼からは想像も出来ないような獰猛な笑みを浮かべると答えを返した。
「さぁ?どうでしょうね」
そして首を元あった位置に戻すと、レンは一歩踏み出して口を開いた。
「イオリではない。レンという少年がソレを忘れてしまったら、彼に何が残るのでしょうね」
それだけを言うとレンは今度こそ、振り返ることなく歩き始めた。
「・・・・・・イオリ君、君は」
無意識にラルが呟いた言葉。それに反応する人間はこの場には居なかった。
午後。十分に休息をとったレンは試合会場へと足を踏み入れた。公民館に設置されているバトルシステム。その大きさは地区大会に利用される程の大きさであった。
レンは、バトルシステムの下へ行く前に軽く身だしなみを確認する。練習試合と言うことで大洗の制服なのだが、本来ガンプラバトルをする際の服装とは異なっているため、気を払ったのだ。
ギャラリーには既に大勢の人間がすし詰めになっていた。その中には無論の事、西住たち戦車道チームも居た。
だが、レンはそんな事知った事ではない。既に意識はバトルに集中している。
レンがバトルシステムの前にガンプラを収めたネオ・ジオン印のコンテナを持って立ったのと同時に、相手の選手がやって来た。時間的には間に合っているのだが、もう少し早く来れないのかと非難まがしい目をレンは向け――硬直した。
どう見ても見覚えのある相手であったからである。たしか、名前は。
「あら、お久しぶりですねレンさん」
「あ、ああ。どうも・・・・・・」
不味い全く思い出せない、とレンが苦悩しているのを知っているのか知らないのか。まぁ、後者だが――やって来た女子生徒は続ける。
「どうでしょう?バトルの後、私たちとお茶会でも」
「い、いや。遠慮しておきます・・・・・・ダンジリさん」
一瞬の沈黙が会場に降りた。レンからすれば必至に思い出した名前である。目の前の女子に会わされた目もあるのだが、女子の名前を覚えるのが非常に苦手なレンにとって善戦したと言える。因みにレンがぎりぎり記憶に止めていたのは、ストレスも貰ったがそれ以上にガンダム談義が出来た事に由来する。
レンが必至に名前を思い出した相手――ダンジリさんは一瞬固まると直ぐに再起動した。
「フフッ。面白いジョークですねレンさん。私の名前はダージリンですよ?」
「そ、そうですよね。すみません」
間違ってた。レンがそのことに冷や汗をかいたが、どうやら許してもらえたらしいと気を抜く。
「所で、レンさん賭けをしませんか?」
「賭け、ですか?」
「ええ。勝ったほうが負けたほうに何でも言う事を聞かせると言うのはどうでしょう」
そう言って微笑むダージリン。その目は全く笑っていなかった。訂正。全く許してもらえなかった。
レンはその眼光に少しビビリつつ、了承するよりなかった。
《PLEASE,SET YOUR GPBASE》
バトルシステムの電子音が指示する下、レンとダージリンはGPベースを所定の位置にセットする。
カシャ、と小気味のいい音を立てて収まるGPベース。ベースは所定の位置に収まると、製作者とファイター、機体名を表示した。このGPベースにはガンプラの製作データが収められており、どのスロットに武装が納められているのかやEXアクションの設定を保存しているものであり。言わば、ガンプラの心臓部分と呼べる代物だ。
レンがセットしたGPベースには無論、製作者もファイターもレンの名が記されている。
《BEGINNING PRAVUSKI PARTICLE DISPERSAR》
電子音がプラフスキー粒子の散布を開始した事を告げる。散布が開始されると、バトルシステムの隅から隅まで青白い粒子が満たした。
そして、閃光が走る。
《FIELD5 CITY》
閃光が晴れ、目を開いたレンの眼前にあったのは街。プラフスキー粒子によって再現されたバトルフィールドだ。
街並みは何処かレトロチックで、ヨーロッパの雰囲気を漂わせている。
同時に、レンの周囲をプラフスキー粒子が覆った。そして、あたかもコクピット内に居るような場所へと変じさせる。
《PLEASE, SET YOUR GANPURA》
電子音が次の行動を指示する。レンはそれに従い、コンテナから一体のガンプラを取り出した。その機体こそレンがこの数日で改装したものである。そのシルエットは通常のそれよりもマッシブであり――異様な所を一つ上げるとならば、バックパックに設置された円形ようなユニットがある位で、洗練されていた。
レンはそのをした機体を所定の位置へ置く。すると、青い粒子が機体を這い――ヴヴンと音を立てて、緑色のモノアイが点滅した。これで、機体はプラフスキー粒子により自由に動く。
《BATTLE START》
どうやら相手もガンプラをセットしたらしい。電子音が試合の開始を告げた。
レンは目の前にある操縦用のコンソールを両手に握り締め、動かした。
「イオリ・レン、シナンジュ
戦艦からMSが射出される様に、急加速を伴ってシナンジュ蝕鬼が飛び立った。
シナンジュ蝕鬼を出撃させたレンは素早く降下。建物の隙間へと身を隠した。空は雲ひとつない青空。そんなフィールドにスカーレッドカラーは目立ちすぎる。その判断からであった。
モノアイをキョロキョロと動かし、歩きながら索敵を行なう。相手がどんな機体を使用しているのかは知らないが、先手を取って不利になる事はない。
シナンジュ蝕鬼にビームライフルとシールドを油断無く構えさせて移動する。
丁度、建物の切れ目と言うか、交差点に差し掛かった。レンはゆっくりとシナンジュ蝕鬼を動かしそこを通過させるべく動かし―――機体のスラスターを思いっきり上へと噴かせた。背中のウィングスラスターや全身に設置されたスラスターが全力で稼動し、瞬く間に地表から空へと舞い上がる。
瞬間、シナンジュ蝕鬼の直下を巨大なビーム光が焼いた。明かにシナンジュ蝕鬼を狙って放たれた巨大ビームは、目標を失い、代わりに道路と建物を瓦礫へと変える。
レンは素早くモノアイをビームが放たれた方向へと向け――そして声を上げた。
「――デストロイだとッ!」
「な、何?あの機体」
レンの機体――シナンジュ蝕鬼を焼こうとした機体を見た西住は思わずそんな言葉を口にしていた。
それもその筈、シナンジュ蝕鬼を撃破せんとビームを放った機体は異形そのものであったからである。
亀の甲羅を被せたような上部ホバーユニットに猛禽類のような足。甲羅の真ん中には巨大なビーム砲が設置されており、甲羅の端には腕のように二つの短い突起があった。
彼女らがここにやって来たのはレンを応援するためである。午前の試合が終わり、反省会もそこそこに彼女らはレンの試合が気になったため、全員で軽い気持ちで見に来たのである。結果、見たのは異形のMA。驚愕するのも当然といえた。
「型式番号GFAX――X1デストロイガンダム。ガンダムSEEDDESTINYに登場するMSですよお嬢さん方」
困惑する西住たち。その背後から男性の声が響いた。振り返れば、一人の貫禄のある男がいた。
その男はにやりと笑うと説明を続けた。
「圧倒的火力と実弾・ビーム射撃に耐性をもつ強力な機体だよ。そして、操縦が難しい機体を操るあのファイターも素晴らしい」
男――ラルが指差した先。そこでは先程の異形が変形をする所であった。
甲羅を背中に背負い、変形した二本足で地を踏みしめる。甲羅の下からは二本の角を携えたガンダムフェイスが姿を見せた。驚くべきはその体格。通常のMS、その二倍ほどもあった。
再び驚愕に染まる一同。ラルはそれを見つつ口を開いた。
「だが、彼も負けてはいない。現役プロにして最強の一角を預かる現役高校生ファイターイオリ・レン。使用しているガンプラは第七回事件で敵の約半数を屠った傑作機、シナンジュ蝕鬼。その戦闘スタイルからついた二つ名は〃
「・・・・・・・〃鬼神〃」
反芻し、噛み砕くように呟く西住。実際、レンの操縦は見事なもので大量のビーム火器をものともせず回避しきっていた。その姿に見蕩れている者が居るくらいだ。
だが、それとは別に彼女らに共通してある思いがあった。それは。
(このおじさん・・・・・・誰?)
「そうそう簡単には当たらんよ!」
レンの言葉どおり、シナンジュ蝕鬼はデストロイの両腕の指。全十本から発射されるビームを紙一重で回避していた。
しかし、指から発射されるビームはフレキシブルに動き、シナンジュ蝕鬼の行く手を遮ってくる。そのたびにレンは錐揉み回転を使用したり、速力を変化させたりして回避していた。
だが、レンは反撃しない。ただただ、放たれるビームを一定の距離を保ちつつ回避に徹するだけだ。
何故レンが回避に徹するのか。それはデストロイに備わった装備が関係していた。
型式番号シュナイドシュッツSX1021。その武装の保有する能力は陽電子リフレクタービームシールドである。その性能は極めて堅牢であり、戦艦の陽電子砲すらも耐える出力を有している。
シナンジュ蝕鬼が所持しているビームショットライフル改。サザビーのモノを改造した武装だが、その出力は陽電子リフレクターを破るのには遠く及ばない。と、言うか破る威力のある武装はシナンジュ蝕鬼には無かった。とは言え、それは射撃の事。陽電子リフレクターを破りデストロイにダメージを与える方法が一つだけ存在する。それはビーム格闘戦。固定発振させ続ける兵器に対しては無力であるため、本編ではシン・アスカたちによる解体ショーが行なわれた程だ。
故に、レンは待っているのだ。デストロイが隙を見せる瞬間を。仕留める好機を。
十条のビーム光を泳ぐ様に掻い潜り、レンはシナンジュ蝕鬼に一定の距離を保たせ続ける。此方から仕掛けるのは不利だと自覚しているからだ。
チョロチョロと動き、回避を続けるレンに業を煮やしたダージリンは背面に設置されたミサイルランチャーを機動させ面制圧へと乗り出した。
デストロイの背面に設置されたミサイルはビームには及ばないものの、MSなど容易く撃破しうるだけの威力を保有している。それはレンも承知している。そして、レンはそこに勝機を見出した。
先に到着したビームをAMBACにより回避し切ると、あろう事かミサイル群に機体を突っ込ませたのである。
その挙動に唖然とするダージリンと観客一同。しかし、レンは至って真面目であった。迷うことなく、ミサイル群の一番薄い箇所へと機体を向け、各部スラスターを全開にしたである。
当然、ミサイル群はシナンジュ蝕鬼を屠らんと牙を剥く。レンはそのミサイル群に対してシールドにマウントしていたハイパービームハルバードを起動させた。このハイパービームハルバードはユニコーンガンダムの装備であるハイパービームジャベリンを改造したものである。通常のジャベリンとは違い、アックス部分を両側に設置させている。さらに、サザビーのシールドを改造したモノにマウント時でも発振させることが出来た。
そして、ハルバードをミサイル群先頭に横一線。切り裂かれたミサイルは真っ二つとなり、機体の後方で炸裂する。さらに、レンはビームショットガンを無造作に放つ。散弾で放たれたビームは射程内のミサイルへと直撃し、爆発させた。その余波でもうもうたる爆煙が立ち込める。
その光景にダージリンが怯んだその瞬間であった。シナンジュ蝕鬼が吶喊を仕掛けて来たのである。既に、シナンジュ蝕鬼の握り締められた手にはビームショットガンは無く、代わりに腕部から発振されたビームトンファーがあった。吶喊する上でデットウェイト化する事を避けるために放棄していたのである。
圧倒的な速度で接近するシナンジュ蝕鬼。レンのカスタムにより、普通のシナンジュを遥かに凌駕する速度を得たシナンジュ蝕鬼を止める事は難しい。しかし、ダージリンも負けてはいなかった。
《往きなさい、ドラグーン!》
ロケットパンチの要領で飛ばされる二機のデストロイの手。これも使用法の一つだ。だが、侮ってはいけない。このドラグーンには陽電子リフレクターが配置されているのだ。
それがシナンジュ蝕鬼へ猛然と向かってくる。レンは射出されたドラグーンに眉を動かすと一気に機体の高度を下げた。当然追尾するドラグーン。それに対してレンは答えた。
「行けファンネル!」
スロットを動かし、決定したのは背部に設置された六基のファンネル。これもサザビーのものだ。
ガシャガシャと音を立てて射出される真紅のファンネル。レンが画策しているのはファンネルの突撃によるドラグーンの撃破だ。これはレイ・ザ・バレルがやった戦法と同じである。しかし、ファンネルにはビームを撃つ事しか出来ない。撃破するとしたら零距離しかない。
ダージリンはドラグーンを操作しながらレンの愚策を笑いかけ、表情を凍らせた。何故ならば。
《どうして、機体が!》
先程と変わらず。いや、もう殆ど距離が無いくらいにシナンジュ蝕鬼が接近していたからである。
これは通常考えられない事だ。ガンプラバトルにおいてファンネルに代表される兵器は手動で操作しなければならない。そのため、今のダージリンのように本体が無防備になり動かせないのだ。出来るとしたら射撃くらいである。
しかし、レンはそれを両立させていた。機体も動かし、ファンネルも動かす。それが、レンの特異能力の本質である。まるで脳が二つあるかのようにガンプラを操り、敵を滅ぼす姿。故に鬼神。事実、レンは右手で機体を左手でファンネルを操作していた。だが、その目は薄っすらとハイライトが消えかけていた。
焦ったダージリンは牽制がてら胸部のスーパースキュラを打ち下ろす。極太のビームはしかし、着弾よりレンが機体を前に出したことによって当たらない。
さらに、レンのファンネルがミサイルの如く突っ込み、ドラグーン共々全滅する。レンはそれを確認すると何度かまばたきをした。すると、消えかけていたハイライトが戻り、同時にレンの頭のナニカに入っていた亀裂が修復された。
レンはそのままシナンジュ蝕鬼をデストロイの死角である、真下から切り裂くべく接近した。すでに距離は無い。デストロイを一刀両断すべく剣閃が走る。そして。
「何ッ!」
シナンジュ蝕鬼が地に伏せさせられた。全力でスラスターを噴かせていた事もあり、相当な威力で地面へと激突したのである。だが、レンはギリギリで防御が出来ていた。ナニカによって叩き伏せられる前に、シールドと腕に防御させたのである。
その代償に、シールドはオシャカ。腕部のビームトンファー機構は火花を噴いたのでパージしている。当然のごとくパージされた機構は爆破した。
地に臥せったシナンジュ蝕鬼を素早く叩き起こし、距離をとる。そしてレンは見たシナンジュ蝕鬼を叩き伏せた正体を。
「サブアームか!」
それは、デストロイのフロントスカートから伸びたサブアームであった。左右両方から伸びており、凶悪に光っている。恐らくはオリジナルのカスタムだろう。
ジ・Oよろしく伸びたソレの先端からはビームが迸っていた。そして、それにより状況は一気に傾いた。レンの不利に。
シナンジュ蝕鬼が頭部バルカン以外の標準武装を失ったのに対し、デストロイは違う。確かに両手は失った。だが、背中のミサイルランチャーや巨大ビーム砲四門に複合砲二十門。頭部四門のイーゲンシュテルンに口部ビーム砲。胸部の三連スーパースキュラにサブアーム。
もはや絶望的である。戦力の差は絶望的。故に、ダージリンから通信が入った。
《降伏をオススメしますわ。わたくしとしてもそれ以上その機体を傷つけたくはありませんし。騎士道精神としても恩人に対しても失礼ですもの》
当然の如き表情で放たれる言葉。その言葉はある種の侮辱であるのと同時に、優しさでもあった。俯いていたレンは、ゆっくりとその顔を上げ、表示されているダージリンの顔を見据えると言葉を放った。
「・・・・・・魅力的な申し出ですね。しかし、結構です」
《な、何故です!敗北が見えているのにどうして!武装もありませんのに》
「――俺を見くびらないで頂きたい。そして、誰が武装が無いと言いましたか」
《えっ。で、ですが降伏をしないのでしたら・・・・・・!》
驚愕に染まったダージリンの顔がレンのコンソールから消失する。同時に、デストロイが動き始めた。シナンジュ蝕鬼を撃破する積もりである。その証左に、デストロイの胸部に粒子が収束し始めていた。
その光景にレンは焦りもしない。スロットを操作し、EXへと動かす。そして二つある内の一つを選び、決定した。
「モード・
瞬間、シナンジュ蝕鬼のバックパックが蠢いた。円形のユニットをアームが伸ばしてゆく。そして、円を四つに切ったような形が完成した。さらに、その円を彩る様に金色の物質が一瞬で生成された。それを背にしたシナンジュ蝕鬼は禍々しさと同時に神々しさを帯びていた。
その正体はサイコシャード。ネオ・ジオングが搭載していた兵器の一つである。その能力は、擬似的なサイコ・フィールドを生成し、搭乗者の願いを叶えるというものだ。
レンはそのサイコシャードを改造し、シナンジュに合う様にしたのである。結果、特殊武装となったのである。
生成されたサイコ・フィールドは金色の波動を放つ。レンはシナンジュ蝕鬼のマニュピレーターをデストロイへと向ける。開いた方を上にしたそれを、握り潰す。するとどうだろう。デストロイの武装が次々に爆裂していくではないか。
これこそ、全てを蝕む者の能力―――相手の武装の無力化だ。これは応用次第では、相手の機体を自爆すらさせられる。
しかし、堅牢なデストロイは沈まない。捨て身に特攻を仕掛けてくる。武装が爆裂する中での特攻だ。下手をすればこちらも破壊される。それを感じ取ったレンは機体を動かした。同時に、EXの二つ目を起動させて。
「――――システム、限定起動」
滑るように動き始めるシナンジュ蝕鬼。その右腕が紅く、禍々しい光を帯びる。
繰り出される正拳突き。それをデストロイは質量を持って押しつぶさんとし――。
《BATTLE END》
観客が見たのは、拳が触れた場所に大穴を開け仰向けに倒れたデストロイと、残心をとるシナンジュ蝕鬼の姿であった。
―――――♪
あんこう音頭とやらの独特な音楽が聞える。レンは、その色々な意味で衝撃的な音楽に辟易とした。
聞いた話によると、ぴっちぴちなスーツを着て奇怪な踊りを踊るらしいのだ。男ならばともかく、女子勢にこれはキツイ。
折角彼女らは頑張ったのである。レンは気まぐれにある事をしようと思い立ったのである。その結果として。
「用意はいいですか。ダージリンさん、オレンジペコ」
「ええ、大丈夫よ。・・・・・・それにしても賭けで負けたとは言えこんな事を」
「私も大丈夫ですよ、レンさん。あと、ペコでいいですよ」
レンは一緒にいる聖グロの二人に確認を取り、大丈夫の声を聞くと頷いた。
ダージリンとペコがここに居る訳。それはガンプラバトル前にした賭けが原因だった。バトルに勝ったレンはある事を思いつき、その協力として彼女へと命令権を行使したのであった。ペコが居るのは、協力を自ら申しでてくれたからである。
大きな深呼吸を一つ。レンは試合前にするルーティーンをすると、足を踏み出した。
その場所は祭りのステージ。本来ならば、西住たちが音頭を踊る場所だった所だ。
ざわざわとどよめく会場。レンは何時も試合で着ているユニフォームであるオーブの軍服のようなモノを着、マイクを持っている。ダージリンとペコはパンツァージャケットとやらを着ており、ダージリンはベースを。ペコはステージの端に布を被せて隠したドラムの位置に付いた。
「本来ならばあんこう踊りなのですが、特別演目とさせて頂きます」
マイクによって増幅されたレンの声が響く。気配を感じたレンが横目でステージの端を見れば、西住たちがあの恥ずかしい格好で驚いていた。
「では、聞いて下さい。――Inherit the Force」
彼女らがイントロを響かせる中、レンは口を開いた。
「二人ともお疲れ様でした。それと助かりました」
ステージを終えたレンたちは舞台袖へと引っ込んでいた。レンがこういう事に慣れているのは仕事柄と中学の頃よく四人でしていたからである。
なかなか良かったらしく、観客席は賑わっていた。結局、最初の曲だけではなくもう何曲かやり疲労困憊の様相を呈していたのである。
「約束ですから。でも、楽しかったですよレンさん」
「私も楽しかったです。・・・・・・ダージリン様、そろそろ戻らないと時間が」
「そう。なら仕方ないわね。では、レンさんまた」
「連絡して下さいね。では」
「時間があればしますよ。では」
達成感を共有したレンたち。彼には珍しく、女性に対しての忌避感も無かったのである。そのため、彼の連絡先が二つ程増えていたりする。
時間の都合で帰っていく二人。レンはそれを見送ると、踵を返した。
「さてさて、イオリくん。説明してもらおうかな」
踵を返したレンの眼前に居たのは会長。笑顔ではあるが、そこに何か底知れないものを感じる。
思わず、レンが周囲を見渡してみれば、彼を包囲するように少女たちがいる。
その中に、西住の姿を発見したレンは何故か逃げる事を思いついた。理解不能な感情が湧いて来たからである。
「あ、逃げても良いけどこれだけ答えて。何でこんな事をしたの?」
レンは一瞬黙考すると答えた。
「・・・・・・頑張ったのに罰ゲームは酷いと思っただけですよ。・・・・・・多分」
それだけ言うとレンは素早くその場を離脱した。逃走スキルはハルヤの御陰で高いのてある。
レン自身でも無意識に言った最後の言葉。それを耳ざとく聞いた会長はにんまりと笑うと同じく聞いていただろう西住へと笑いかけたのであった。
機体解説
MSN―X999 シナンジュ蝕鬼
アイラ・ユルキアイネンのミス・サザビーはシナンジュよりだが、本機はサザビーよりに造られている。第七回事件で、ラル・珍庵と同格の戦績を誇った。ラル曰く、完成されたガンプラ
武装
ビームショットライフル ビームトンファー×2 大型シールド ハイパービームハルバード シールド裏ミサイル×3 ファンネル×6 サイコシャード発生装置×4
特殊
全てを蝕む者 ――システム