GBF〜戦士たちは鬼神と踊る〜   作:silverArk.

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遅くなってしまいすみません。今回は、前話で出てきたオリキャラを交えた話です。


幕間 在る日の戦士たち

 幕間 少年たちの休日

 

 

 ガンプラバトル全国高校選手権と戦車道全国大会の抽選会が催された日の事である。

 その日はたまたま全ての学園艦が一つの港へ停泊していた。そして抽選会には会長が出ているため、レンは暇であった。家族への連絡は既にしているし、百式鬼夜行の調整もほぼほぼ済んでいた。

 なんの気も無しにスマホを手にとったレン。何時ものグループを開き、そして一つの事を思いついた。それは――

 

 

 

 

 

 港に程近い喫茶店。そこへレンは急いで走る。なんやかんやとしている内に、少々遅くなってしまったのだ。

 私服を着たレンは飛び込む様にしてその喫茶店へと入店する。そして、既に集まっていた少年たちに近寄っていった。

 その少年たちはぱっと見には到底接点が無いような様子をしていた。まぁ、なんと言うか濃いのだ。少年という表現に疑問形が付きそうな眼鏡をかけた者。武道家のような少年に、イケメンオーラがある少年。そんな彼らだが、共通しているのは一つ。めいめいの足元に置かれたコンテナだ。

 店員すらも遠めに見ている彼ら。そんな少年たちにレンは声をかけた。

 

  「久しぶりだな。元気そうでなによりだ」

 

 談笑していた少年たちは声をかけられた事に一瞬驚く。しかし、レンの顔を見ると破顔した。

  「遅かったね~、久しぶり」

 

  「ソラの言うとおり遅かったな。しかし、レンも息災そうでなによりだ」

 

  「おう、久しぶり。待ってたぜ、レン」

 

 彼らはレンが唯一親友と呼べる人物たちである。少年に疑問形が付く者が、〃奇術師〃ヒイロ・ソラ。本物の武道家でもある、〃武王〃ドモン・ハルヤ。そしてイケメンオーラを持つ少年が〃狙撃者(ロックオン・ストラトス)〃カジマ・キンヤである。

 レンが思いついた事。それは数日前にグループで話があった、男子会をすることである。

 丁度良く、学園艦に乗っている彼らも居ると言うことで急遽実行したのである。そして、見事。全員欠けることなく集まった。と、言う訳であった。

 

  「それにしても驚いたよ。レン、高校選手権出るんでしょ?僕と当たるかもねー」

 

  「自分も出場する。故に驚いたが、楽しみである」

 

  「そりゃ、オレもだぜ?しかも、レンこないだ聖グロとバトったんだろ。どうだった?」

 

  「あー、バトルしたよ。けど、顔見知りでさ。気兼ねなく戦えたし、楽しかったよ」

 

 話が即時にガンプラバトルに移るのも彼ら故である。まぁ、そのために集まったと言っても過言では無いのだが。

 話している内に、ガンダム談義になり盛り上がる。と、レンがそこで気付いた。

 

  「・・・・・・そう言えば、お前らの相談って何だよ。今日はそれについてじゃなかったっけ」

 

  「あー。そうだったそうだった。忘れる所だったよ、レン」

 

 忘れるなよ、と言いたい所だが仕方ない。滅多に顔を合わせることの出来ないメンバーなのだ。

 そして、その張本人の一人。ソラはやや言い辛そうにする。息を吸ったり吐いたりを何度か繰り返すと、決心が付いたらしく口を開いた。

 

  「あ、あのさ。僕、今三人の女子にアプローチされてるんだ。それで、その・・・・・・どうしようってね」

 

  「え、マジで」

 

 レンが素でそんな声を漏らしたのも仕方の無い事だ。ソラは名実ともに奇人として通っている。その行動の真意が分からなければ彼という人柄を理解する事は難しいのだ。実際、中学の頃の評判はあまり宜しくなかった。

 そんな人物が三人の女子に言い寄られていると申す。その言葉に対してレンはと言うと。

 

  「そう言うことは俺に聞くなよ・・・・・・。キンヤにしろ。なぁ、ハルヤ」

 

  「・・・・・・同感である。自分は恋愛事には疎い。そして、レンは言わずもがなだ。ならば」

 

 そう言ってレンとハルヤはキンヤの方へ視線を向ける。このキンヤという人物は顔も性格もイケメンという、主人公然とした少年なのである。それは確かで、高等部のユウキ・タツヤと中学部のカジマ・キンヤと人気を殆ど二分していたのである。

 実はレンにもハルヤにも密かに人気があったのだが、そんな事を彼等は知らなかった。

 水を向けられたキンヤ。彼は三人からの視線に顔を背けると、ポツリと呟いた。

 

  「あのー、オレの相談も同じなんだけど」

 

  「「「ハイ?」」」

 

  「だーかーら!オレも三人の女子からアプローチ、つーか告白されてんの!」

 

  「「「はああぁぁぁっ!?」」」

 

 ハモった三人の声。その大声は店先まで響き――店長に怒られた。

 

 

 

 

 

 切っ掛けは些細な事だったらしい。あくまでソラとキンヤの言葉にならうならば、だが。

 ソラは一つ上の学園を纏める少女とその仲間たちに協力をしている内に。キンヤはチンピラに絡まれている外人少女を助けたら転校してきて、なんやかんやの内に――と言うわけである。

 一通り話を聞いたレンはこめかみに指を当てると、溜息を吐いた。

 

  「どうしてそうなるんだよ・・・・・・。つーか、女なんてロクなもんじゃないぞ?なぁ、ハルヤ!」

 

 レンはそう言ってハルヤへと視線を向けた。ハルヤはまさに武人と評するに相応しい人物である。

 故に彼には浮ついた話は一切無く、鍛錬を積むことを第一という少年だったからである。

 レンが期待を込めて向けた視線。不思議な事にハルヤはふっ、とレンの視線から逃げ口を開いた。

 

  「その、自分もそう思っていたが・・・・・・。既に、恋人がいる・・・・・・のだ」

 

  「ウッソだろオイ」

 

 しかして、返って来たのは意外な回答。と、言うかありえない回答である。レンの口からもつい、妙な言葉が飛び出した。

 それは残りの二人も同じだったらしく、目をまん丸にしていた。

 ハルヤがのたまった内容はこうだ。最初は、自分と同じようにストイックに修練をする少女だと思っていた。しかし、どちらが言い出したでもなく、お互いの修練を見せ合ったりしている内に惹かれて――ハルヤから告白を。といった流れであった。

 彼らしいと言えば彼らしい。レンはそう思って頷いた。ハルヤという少年ならば妥当と言える。

 レン以外の三人は全員、学園艦へと乗っている。学園こそばらばらだが、学園艦という性質上彼らの話に昇ってきた女性たちは全員、戦車道に関係する人たちであった。別にレンは悔しいという訳ではないし、変な感じでもない。

 親友達がモテているのはいい事だ。だからと言って、レンも彼女が欲しいとかそう言う訳ではない。ただ、何と言うか一抹の寂しさを感じたのだ。親友達が別の場所へと行ったような、そんな感覚を。

 レン自身は純然たる異性愛者だ。しかし、彼は今だ自分の中に燻るモノを解決出来てはいない。それが解決するまで、レンが女性と付き合うことなど出来るはずも無かった。

 ・・・・・・余談だが、ソラとキンヤの相談には「諦める」で決着がついた。

 

 

 

 

 

 昼食後、腹ごなし兼今日の目的であるガンプラショップへと足を運んだ一行。

 彼らが集まった以上、ガンプラバトルをしないと言う事は絶対に無い。それぞれが持ってきたコンテナを提げ、何やら騒がしいショップに入る。そして。

 

  「男風情が私達に意見するなんて!身の程を知りなさい!バトルに負けたならば社会的に終らせてやる!私達にたてついた事を後悔させてあげるわよ!!」

 

  「・・・・・・上等だ。テメェらこそ、後悔させてやらァ!」

 

 睨みあう、レンたち男子四人と何処かの学園の女子生徒十数人という構図が出来上がった。

 何故こうなったか。それは数分前の事であった。

 

 

 

 

 ガンプラショップへと入店したレンたち。今日のバトルコンセプトは、その場で作った素組ガンプラで戦うである。

 ショップに入店するやいなや、一目散に目的のガンプラを購入。瞬く間に、スミ入れから始まる簡易塗装を三十分程で終えた。そしてレンたちはバトルシステムへと向かおうとし、少年たちの声を聞いた。それが普通の声ならば何でもない。しかし、その声は悲鳴のような響きを孕んでいたのである。

 レンたちがそっと様子を伺い、ふざけた光景を目にした。それは、小学校高学年か中学生くらいの少年たちのガンプラを弄ぶ女子たちの姿であった。下品に笑う少女たちの足元にはガンプラだったものが散乱していた。

 それを見たレンたち、全員の心の内は既に決していた。

 

  「・・・・・・アンタら、何してやがる」

 

 最初に声を発したのはキンヤ。静かな口調ではあるが、そこにははっきりとした怒気が込められていた。

 それに答えたのは、中心にいた少女。彼女に限った事ではないが、少女たちがレンたちを見る眼差しは見下している事を顕にしていた。

 

  「何って、遊んであげているのよ。見て分からないの?」

 

  「・・・・・・それが、遊戯とでも抜かすのか」

 

 次に口を開いたのはハルヤ。彼もまた怒気を放つ。

 それを感じ取れもしないのか、少女はまたニヤニヤと笑いながら言う。

 

  「こいつ等が悪いのよ。折角、私達がバトルしてあげたのに私たちの機体に傷を付けるなんてッ!だからこうしてッ。お仕置きしているのよ!」

 

 レンたちの目の前で壊されるガンプラ。それの製作者だったのであろう少年の瞳から涙が流れた。

 このような行為は一時期蔓延していた。そのため、レンたちには見覚えがあった。女性こそ偉いという醜い思考。現在は無論のこと廃止され、刑法によって処罰の対象となっている。これは女尊男卑の風潮が広まる前からは男性という種族が緩やかに、思想が広がってからは急激に減少していたことも加味してのことである。だのに、少女たちはそれを続けていたのだろう。

 次に口を開いたのは、ソラである。

 

  「君たち、こんな事をしても本当にいいと思ってるの?」

 

  「いいに決ってるじゃない。私達は女なのよ?それがなんで悪いのよ」

 

 その一言はレンにとって禁句であった。女性というモノを嫌悪しているレン。その原因となった思考をまざまざと、再び見せられた彼の心情はどの様であっただろう。

 それの答えはレンの口から発せられた。

 

  「――――い」

 

  「え、なによ。ハッキリといいなさいよ」

 

  「醜い醜い醜い醜い!醜悪ここに極まったな!女性というだけで差別し、蔑む。俗物の権化だな」

 

  「男の分際でそんな言葉を言ってもいいと――」

 

  「今すぐ彼らに謝罪しろ。テメェらの汚い思考に巻き込んですみません。ってな!」

 

 レンが放った一言。それが決定打だった。女尊男卑に染まった彼女達には許しがたいものだったらしい。

 そこからは売り言葉に買い言葉。バトルへと話が流れたのはそこがショップだからだろう。圧倒的人数差だが、レンたちには関係のない事だった。

 バトル前、被害者の少年たちに謝られたレンたち。萎縮する彼らにレンはこう諭した。

 

  「自分が弱いからって、逃げ続けては駄目なんだ。時には立ち向かう勇気ってものが必要になる。それでも、って言い続けた主人公だっていただろう?・・・・・それに逃げ続けても良いことなんて何も無い。自分が壊れてしまうだけだからな」

 

 

 

 

 

 かくしてバトルは始まった訳であるのだが、一つ。レンたちについて話すとしよう。

 本来、二つ名と言う物はプロに付けられるものである。レンは当然として、何故プロではない他の三人も二つ名を持っているのか。それについてである。

 ガンプラバトルをする上で必須のもの。それはガンプラを動かすプラフスキー粒子である。そして、ガンプラバトルが普及して少し。とある噂が囁かれ始めた。それは、プラフスキー粒子による人類の革新である。曰く、バトルを良くしている者の勘が良くなった。曰く、気配を覚れる様になった。曰く、相手の感情が察せる様になった。等等。

 その噂は実しやかに囁かれ続けた。が、その実証は誰も出来ず革新を起した人間も存在しなかった。―――知っている人間が極一部とはいえ彼らが出現するまでは、だが。

 その尋常ならざる操作から、プロではないのにも拘わらず二つ名を持っている三人。そしてレンもだが、彼等は特殊な能力を保持していた。

 直接的原因がプラフスキー粒子なのかどうか。それがハッキリしないレン以外の三人は、他でもないニルス・ニールセンが太鼓判を押している。〃新たな人類(ニュータイプ)〃として。だが、勘違いしてはならない。彼らが手にした能力はあくまでバトル中でしかフルに使えないと言うことを。

 その能力を彼らは誇示する事はしない。しかし、侮って使用しないことは無い。そう、今回のような事例も。

 

  《な、なに・・・・・・?》

 

 震えた声が、ソラの耳朶を打つ。彼の操る機体、ゼーズールが女子生徒の操る機体ガンダムMK―Ⅱのどてっぱらをヒートクローで突き破ったからである。

 フィールドは宇宙。機体もソラが何時も使っているモノではなく、素組である。しかし――レンたちには劣るが――操作技術はそのハンデをあっさりと取り払った。

 友軍機が落とされた事に対して逆上したのか、パラス・アテネがゼーズールへとビームを撃ちながら接近をかける。

 本来、宇宙用に開発されていないゼーズールはそれを辛うじて回避した。無理に回避した為、体勢を大きく崩すゼーズール。それを好機と見たパラス・アテネはビームサーベルを発振。止めを刺さんとビームサーベルを唸らせて振りかざした。

 

  「あっまいんだよね~。出直してきたら?」

 

 ビームサーベルが触れる刹那、パラス・アテネの頭部が吹っ飛んだ。その余波で今度はパラス・アテネが体勢を崩す。その隙を逃すはずも無く、何時の間にか体勢が戻っていたゼーズールのヒートクローがパラス・アテネを貫いた。

 ソラが体勢を崩したのはブラフである。四人の内、屈指の回避力を持つソラが体勢を崩すなんて事は滅多に無い。つまり、これは罠であった。態と体勢が崩れた様に見せて接近を誘い、隠し持っていたビームマシンガンで頭部を吹き飛ばす。そしてヒートクローで止め。流れる様に行なわれた一連の動作。それには無論カラクリがある。そのカラクリはソラの脳に出来た未来予測演算システムとも読むべきものだ。そして、それはこうも呼ばれる〃ゼロシステム〃と。

 ソラの持つ特殊能力。それは、脳に完成したゼロシステムだ。無論、ゼロシステムと言うものはガンプラバトルにもある。しかし、それは一定時間、機体の能力向上するという、あくまでバトル中の機体に与える力だ。しかし、ソラのそれは本当の(・・・)ゼロシステムと呼ぶべきものだ。五感から得たあらゆる情報を瞬時に処理、的確な未来を示すゼロシステムを宿したソラにとってこんなことは朝飯前である。だが、本当に凄いのはソラの精神である。オン・オフが出来るとは言え、莫大な情報を絶えず処理・実行し与えられる未来予測から作戦を実行する。一歩間違えれば発狂しかねないゼロを持って精神を保つ。これのなんと恐ろしいものか。いや、とうに狂っているのかも知れない。でなければ、ソラはスーパーコンピューターと同格に扱われる筈は無いのだから。

 

  「さーて、僕を導いてよ?ゼロ」

 

 喜悦の混じった声が響く。その狂気に当てられたのか、ゼーズールと対峙する期待が身じろぎする様に震えた。

 

 

 

 

 

  「――他愛無し」

 

 ハルヤが低く呟く。ハルヤがその言葉を呟いたと同時、彼の操る機体。Zガンダムのウェイブライダー突撃によって女子生徒の操る機体が真っ二つに。そして、爆散したのである。

 敵機を屠ったハルヤは素早く機体を可変。MS状態にし、次の標的へと向かわせた。

 彼の操縦テクニックもまた一級品。しかし、彼の操る機体には妙な所があった。Zガンダムと言えば、射撃に格闘。さらには機動性も高い万能型として有名である。しかし、彼の操るZには本来ある筈のビームライフルが無い。それどころか、ビームサーベルすらも使用していない。ならばどうやって敵機を撃滅するのか。その答えは簡単である。

 Zへと攻撃を仕掛ける二機のザクウォーリア。腰溜めに構えたビームキャノンから光線がZへと迸る。当然ならばZが装備しているシールドか回避を選択する筈だ。しかし、ハルヤはそれをしない。あろう事かシールドを放り投げると機体の腰を落とし、素手での構えを取った。

 そして放たれたビームに対してZの腕を振るい、掌底によってビームを弾い(パリィし)たのである。

 その動きには微塵の迷いは無く、何千回と繰り返されてきた歴戦の雰囲気を漂わせていた。つまり、答えは素手。ハルヤは素手での格闘戦に特化したファイターなのである。ゼロ距離での格闘戦では四人の内一番になるほどだ。そして、扱う格闘は自己流。リアルで修めたあらゆる武術を取り入れてきた所為か、その攻撃はお座敷のそれではなく実戦向けである。その反動なのか、射撃は全くの駄目で当てる事が滅多に無いくらいである。

 そんなハルヤが手にした異能。バトル中でも、リアルではもう少しで恒常的に使える様になると嘯いていたハルヤ。そんな彼は、彼にこそ最もあった異能を手にした。

 

  「スー・・・・・・ハァー。ツッッ!!」

 

 鋭い深呼吸を数度繰り返すハルヤ。その間もビームを弾き続ける手は止まらない。そして、十分だと判断したハルヤが目を見開いた時にそれは起こった。何の誇張も比喩でも無く、ハルヤの姿が薄っすらと金色に輝いたのである。その姿はプラフスキー粒子によって構成された操作ボックスに包まれて周囲の人間には見えていないのだが。

 その金色はZにも影響を及ぼした。ビームを弾いたZが突然金色に輝き始めたのである。そして、彼我の距離を一瞬にて零にするとその胸部に手刀を突き刺したのである。

 ハルヤが手にした異能。それは明鏡止水である。Gガンにおいてモビルファイターが達する境地であり、武道家の究極とも呼べる事象の一つだ。彼はそれを手にしたのである。だが、この異能を十分に使いこなす為にハルヤは途轍もない心身の修練を必要とした。それも当然だ。明鏡止水に達したはいいが、全く制御できなかったのだから。

 だが、ハルヤは使いこなした。彼の弛まぬ修練によって。

 

  「次ッッ!」

 

 鋭い一喝が響く。女子生徒たちはZの背後に金色のハルヤを幻視し、恐怖した。

 

 

 

 

 

 一つ、また一つと火球が出来ては消えてゆく。その光景をキンヤは亡羊としながらスコープ越しに見物していた。

 火球を生み出した犯人は勿論キンヤである。彼の操る機体リボーンズガンダムによる長距離狙撃によるものだった。

 キンヤは二つ名であるが示す通り射撃能力がスバ抜けている。だが、ハルヤとは反対にサーベル等による格闘が全くの苦手であった。

 そんなキンヤだが彼は二つ名の他にも、リアル・ロックオンストラトスや三代目と呼ばれている。何故か。それは、彼の戦闘スタイルがまさにそのものであったからである。狙い撃ちも乱れ撃ちもどちらも最高レベルでこなすキンヤに相応しい称号と言って差し支えないだろう。

 キンヤは狙撃によって混乱の只中にあるのであろう敵機へと目標を定めた。表示されたスコープのレティクルを寸分の違い無く合わせると引き金を引き絞った。

 無慈悲にGNバスターライフルから放たれた粒子ビームは真っ直ぐに敵機へと進み、素早くその存在を火球へと変えてしまった。都合これで五度目となる狙撃だが、その銃弾はただの一発も外れる事は無かった。

 射撃に特化したキンヤ。彼に目覚めた異能も正にピッタリのものであった。この場でキンヤの瞳を見た者は肝を潰しただろう。何しろ、キンヤの瞳が金色に輝いているのだから。

 キンヤが目覚めた異能。それはイノベイターへの革新である。脳量子波によって他者と意識を共有し、脅威とも呼べる反射神経をバトル時のみとはいえ発揮するキンヤに狙撃はうってつけであった。脳量子波に反応した箇所を索敵し、狙撃。接近をかけられても脅威的な反射神経をフルに活用し、それを撃墜してきたのである。ただ、惜しむらくは彼にビット等を扱う能力が無かった事だろう。

 次の目標を探すキンヤ。その背に忍び寄る機影があった。ノーベルガンダムと呼ばれるその機体は手にウィップを持ち、忍び寄る。リボーンズガンダムはそれに気付いているようには見えず、無防備な背を晒し続ける。

 そして、距離がノーベルガンダムの必勝とも呼べるレンジに入った。ノーベルガンダムはその手にしたウィップを振り上げ――その身をビームが穴だらけに変えた。

 既にリボーンズガンダムはリボーンズキャノンへと可変しており、ノーベルガンダムを撃ったという訳である。

 キンヤは既にノーベルガンダムの接近は見抜いていた。その上で放置していたのである。これも彼が良く取る手である。

 

  「筒抜けなんだよ、全く。さぁーて、次はどいつだァ!狙い撃ちと乱れ撃ち、好きな方を選ばせてやるよ!」

 

 キンヤの宣言。それを聞く者は居らず、彼の餌食と消えることは間違いようの無い事実であった。

 

 

 

 

 

 さてソラにハルヤ。キンヤと三人の異能について説明をしてきたがここで我らが主人公、レンに移ろう。

 前述の三人はその異能をプラフスキー粒子によって目覚めさせたのは確かだ。しかし、ことレンに限ってはそうではない。

彼の手にした異能は切っ掛けからして違うのだ。レンがその異能に目覚めた要因としてプラフスキー粒子があったのかも知れない。だが、レンその異能を深い絶望によって目覚めさせた。この世全てを恨むような、深い深い絶望。常人なら発狂しかねないそれを踏み台にして目覚めさせた能力。故にレンがそれを扱う時、彼は彼ではなくなった様に変貌する。まさに、鬼の如く。

 

  「・・・・・・」

 

 片に担ぐ様にして構えたユーディキウムビームライフルから迸ったビームが敵機を落とす。

 味方機が撃墜された方向にいるレンの機体、プロヴィデンスガンダムを発見したのか女子生徒の機体が殺到した。傍からしたらピンチだが、レンからすると狙いどうりである。先程の攻撃は誘引を兼ねてのこと。目的は自分の座標を示して誘き寄せる事だった。

 果たして、誘引された機体は十機以上。その中にはあのボス格の女子生徒も居たらしく、キーキーと喧しく声を響かせていた。その言葉は徹底的に男を卑しめ女が如何に偉大かを愚痴る、そんな言葉ばかり。

 そんな喧しい声と共に敵機は射撃を開始した。十機以上の射撃である。下手な鉄砲もなんとやら、それは数の暴力であり回避を許さない攻撃である。

 

  「―――フッ」

 

 レンはその言葉と攻撃に、口の端を吊り上げるような冷笑を浮かべると己のを解き放った。

 ―――パキィン。レンの脳内にナニカが弾け飛ぶような音が響く。その音が響いた刹那。ビームが飛来する。

 迫り来るビーム。レンはその只中に機体を突っ込ませた。そしてまるで舞踏を踊るかのような機動を見せ、驚いた事にビームをすり抜けた。重鈍な外見をもつプロヴィデンスに似つかわしくない挙動に、勝利を確信していた女子生徒は唖然とした。

 レンの脳内で弾けたもの。それは、ガンダムファン達には一般的にこう呼ばれるモノだ。即ち、S(Superior ),E(Evolutionary),E(Element),D(Destined-factor)と。種割れとも呼ばれるその現象は、ガンダムSEEDにおいて主人公と一部の人間が持つ力だ。ニュータイプ能力とは違い、純粋に力を高めるこの異能は、迷いの無い心を持っていなければ発動する事は出来ない。だが、レンにとってその枷とも呼べる制約は意味を成してはいない。絶望によって呼び起こされたそれは、既にレンの自由意志によって発動することが可能なのだ。

 クリアになった思考。レンはハイライトの消えた瞳で敵機を見据える。そして、プロヴィデンスの代名詞とも呼べる兵器を機動させた。ドラグーンを。

 腰と背の円盤に取り付けられた総勢十一のドラグーン。それらは機体から切り離されるやいなや、閃光の如く飛び散る。操作しているレンに見えるのは暗い愉悦。これから起こる事へ馳せる思いだ。

 ドラグーンが切り離された事で正気を取り戻した女子生徒たちは一斉にビームサーベルやそれに準ずる兵器を起動させた。セオリー通り、動かないはずの本体を仕留める積もりである。

 一気呵成に突撃する機体たち。その瞬間、彼女らはレンの罠に落ちた。ドラグーンを切り離しても本体を動かせるレンが態と動かなかった理由。それは彼女らが身を以って知った。

 突如として飛来したビーム群が機体たちを貫いたのである。その光景は檻。ビームの監獄だ。その中に囚われた機体は哀れ、なすすべも無く撃墜されて行く。駄目押しとばかりに、レンはドラグーンのビームによる監獄を維持しがらユーディキウムビームライフルを放った。

 結果、態と残したボス格の機体意外全ては撃墜されていった。その事実に逆上したのであろう。女子生徒はもはや支離滅裂な言葉とともに手の3連メガ粒子砲を乱射する。それをレンは嘲笑うように回避しながら接近した。

 

  「ハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!ざまぁねぇな!どうだい、今の気分は!格下の男にやられる気分は!」

 

  《――――!―――!》

 

 最早言葉にすらなっていない声を上げるボス格。その声にレンは冷笑を深くした。

 腕に備わった爪を振り回して抵抗をするボス格の機体。レンはその滑稽を面白そうに見物しながら機体を操作した。プロヴィデンスの左腕に装着された武装、複合兵装防盾システムから大型ビームサーベルを発振。一本づつ手足を切り飛ばしてゆく。その度に上げる声と行動がさらにレンの愉悦を誘った。

 そして完全な達磨とすると腹部をビールサーベルで串刺しにし、思いっきりブン投げた。そして、飛んでゆくローゼンズールをドラグーンで狙撃。その姿を花火に変えたのであった。

 

 

 

 

 

 バトル終了後。金きり声を上げながらレンたちへ暴行を加えようとした女子生徒達を到着した警官らが取り押さえた。

 どうやら店員が通報していたらしく、女子生徒らは店のものを壊したりと傍若無人な行動を繰り返していたらしかった。

 故に、パトカーへと連れられる彼女らをみる人々の目は厳しいものだった。あのボス格の少女の親が偉い人間だったらしく今までは遠慮をしていたらしかったのだった。

 

  「あー、面倒くさかった。結局、バトルし損ねたじゃんかまったく」

 

  「うむ。しかし、聴取も協力する必要があったのは確かだ。諦めよソラ」

 

  「ま、そうだわな。つーか、皆腕上がってね?オレちょっとビビったぜ」

 

  「それはキンヤもだろうに。まぁ、こういう日もあるさ」

 

 時間は最早夕暮れ。そろそろ艦に戻らなければ不味い時刻である。

 レンたちは連れ立って港へと歩いていた。彼らの表情は柔らかく、先刻の出来事を感じさせないものだった。

 港に到着すると、それぞれの艦への分かれ道に差し掛かった。皆方向はバラバラである。

 

  「ここでお別れだね・・・・・・。じゃね皆今日は楽しかったよ。僕としてはもうゴメンだけどね。じゃ!」

 

 最初に立ち去ったのはソラ。限りなく明るく、何時もの様に去って行った。

 

  「自分も皆と合えて良かった。次こそ拳を交えたい。ではな」

 

 次に立ち去ったのはハルヤ。無骨な顔に笑顔を浮かべて歩いてゆく。

 

  「じゃあオレも行くぜ。レン、戦えるのを楽しみにしてるぜ」

 

 最後はキンヤ。軽い口調だが、そこには隠し切れない戦意が込められていた。

 

  「・・・・・・ああ。全くだな」

 

 レンは独り呟き、足を踏み出す。三人への返答は聞える事無く、しかし心には伝わっていたのであった。

 

 

 

 

 同時刻、イオリ模型店。

 その奥の部屋。家主たるイオリ・タケシの部屋には二人の男がいた。一人目は言わずもがなタケシ。もう一人はラルである。

 彼らの表情は苦く、何かに耐えるようであった。

 

  「ではレンは今も変わらず・・・・・・」

 

  「・・・・・・ああ。そして、その憎悪は消えるどころか逆に燃え盛っている様に感じたな」

 

 むさ苦しく話し合う二人。彼らの苦悩は終わりを見せる事は無い。

 イオリ模型店のディスプレイ。セイとレンが作った見本が置かれているそこの一番上の棚。そこにはタケシとセイ。レンが取ったトロフィーが飾られている。そして、レンが取ったトロフィーの横には完全に修復された百式鬼(・・・)が夕日を浴びて輝いていた。




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