魔法少女リリカルなのはViVid ooo ~欲望を司る魔王女~ 作:ハナバーナ
カウント9
「ふんふんふ~ん♪」
鼻歌を歌いながら、鏡を見てリボンを結ぶ少女エーリ。制服も着替え鞄も用意できた。結び終えた髪に満足したエーリは、よしっと小さくガッツポーズをとって、鞄を手に取る。
「じゃあ行ってくるね、アンク!」
『へ~いへい。』
つまらなそうに返事をする、エーリが少し前に契約したデバイスであるアンク。自分の部屋を出て、階段を下りた後、一つの扉の前で立ち止まり、ドアを開けて敬礼する。
「おじさん、サトナカさん、今日も行ってきます!」
「行ってらっしゃい、エーリ。」
「お気をつけて。」
エーリは一礼し、家を出る。コウガミはそんなエーリを見て、ふふふと不敵な笑みを見せる。
「喜ばしいですか?」
「そうだね、ミス・サトナカ。古代ベルカの関係者と関わるというだけで、こうも大きく
彼女の道が変わっていくとは、私も驚いたよ。」
「確かにそうですね。以前は魔法や格闘にほとんどを費やしていましたから、同じ年代の
方々と積極的に関係を持つのは、大きな変化とみられます。」
「これから面白くなるよミス・サトナカ? 歴史的人物の血統であるという一見すれば
些細な事実。しかしその事実がもたらすのは、決して小さなことばかりとは限らない。
二人の王との出逢いを皮切りに、彼女はそれを知っていくだろうさ。」
コウガミはそう言って座っている椅子ごと後ろを向き、窓越しに澄んだ空を見上げる。
「それじゃあ行ってくるね、ゴトウさん。」
「ええ、お気をつけて。」
運転手のゴトウに一礼し、学校の校舎へ向かうエーリ。初等部と中等部共通の路には、校舎の違う小中学生が挨拶を交わしながら歩いていた。
「ヴィヴィオ、おっはよー!」
「あ、エーリ。おはよう。」
途中、友人であるヴィヴィオにも出くわし、校舎に向かうために一緒に歩くエーリ。そして、一人の中等部の制服を着た少女を見た二人は、その少女に駆け寄る。
「アインハルトさ~ん!」
「ごきげんよう、アインハルトさん。」
「‥‥はい、ごきげんよう。ヴィヴィオさん、エーリさん。」
アインハルトは特に驚くわけでもなく、静かに二人に返事をする。この三人は少し前に互いの事情を知った、古代ベルカの三人の王の血統なのである。それもあってか、三人の交友関係は少しずつではあるが深くなってきていた。
「では、中等部はこちらなので。」
「はい、ありがとうございます。」
「遅刻しないように、気を付けてくださいね。」
アインハルトは二人に背中を向けたまま、小さく手を振る。エーリとヴィヴィオもアインハルトに手を振り、初等部の校舎へと向かう。
「あっ、ヴィヴィオにエーリ。」
「おはよう二人とも!」
教室に入り真っ先に二人に挨拶するのは、同じく友人であるコロナとリオである。四人は挨拶を交わし、パチンとハイタッチする。
・・・・・・・・・・
「っていうか、今日も試験だよ~! 大変だよ~!」
「そうなんだよね~‥‥。」
涙目で教科書に目を通すリオと、ノートにうつぶせになるヴィヴィオ。そしてそんな二人を苦笑しながら見るコロナとエーリ。現在初等部中等部共に、一学期前期試験の真っ最中である。いいペースを保ててはいるものの、応用学科のレベルの高さには流石にうなだれてしまうのだ。最もコロナは学年一位で優秀だし、エーリも根っこからの勉強好きなので苦にはならないのだが。
「でも試験を終えれば土日合わせて四日間の試験休み。」
「うん、楽しい旅行が待ってるよ~。」
「宿泊先も遊び場も、準備万端だって。」
そうして笑いあっているヴィヴィオ、コロナ、リオの三人娘。そんな三人を、エーリは羨ましそうに見ていた。
「へえ~、旅行かぁ。いいなあ三人は。」
「あっ、よかったらエーリも来る?」
「いいの!?」
ヴィヴィオからの誘いにエーリは目を輝かせながら問いかけ、ヴィヴィオもうなづく。
「ママ達に話したら、喜んでОKしてくれたし、これを機にいろんな人にエーリの事を
紹介したいから。」
「行く行く、絶対行く!! おじさんにも許可貰ってくる!!」
エーリのあまりの喜びように、三人は苦笑する。
「それじゃあ楽しい試験休みを笑顔で迎えるために、目指せ100点満点!」
「「「おーーっ!」」」
四人は本気で休みを満喫するために、拳を上に上げる。
同時刻 中等部
「合宿ですか?」
アインハルトにもヴィヴィオ達の旅行‥‥基合宿の誘いが、ノーヴェから来ていた。
『そうだ。あたしや姉貴もいるし練習相手には事欠かねー。しかも魔導師ランクAAから
オーバーSのトレーニングも見られる。』
「はぁ…‥。」
『それに歴史に詳しくてお前の祖国についてのレアな伝記本持ってるお嬢もいる。まあ
騙されたと思って四日間来てみろって。ちょうどエーリも誘ってるんだ。あいつなら
誘えば即答するとは思うんだけどな。』
「‥‥分かりました。」
『おう。後日メールを送るから、とりあえずは今日の試験、がんばれよ。』
ノーヴェがそう激励し、通信を切る。それを確認したアインハルトは、空を見上げる。
「(エーリさんも‥‥合宿に‥‥。)」
アインハルトは、エーリと顔を合わせ、手合わせをした公園での出来事を思い出す。一言でいって、あれを勝利と呼ぶことは、アインハルトにはできなかった。力尽きたと思いこみ、エーリが放った瞬発的な一撃をとらえきれなかった自分を叱りつけたかった。
「私は…‥まだまだ弱いですね。」
空を見上げながらそうつぶやくアインハルト。誰に言っているのかは、アインハルト本人にしか分からないだろう。そして、
「(エーリさんは、私の憎む魔王じゃない…‥なのに私は、あの子とデサイアの事を
重ねてしまっている。)」
それは、自分の心を擦り続ける後悔。自分に本気でぶつかってくれた相手に対する侮辱。今の彼女に、喜びは一切ない。
「(ノーヴェさんの言う合宿で‥‥この気持ちを変えられるのでしょうか?)」
そう思って自分の胸に手を置くアインハルトは、試験のために教室へ戻る。
???
広大な大自然の中に建つ一軒家の屋根に、紫の髪の少女が立っていた。
「ふふふ‥‥こっちは準備完了よ。さあ元六課の皆さんもヴィヴィオ達も、そしてさらに
『あいつ』の秘蔵っ子も、まとめてドーンとおいでませ!!」
少女は仁王立ちをしながら、高らかにそう宣言するのだった。