魔法少女リリカルなのはViVid ooo ~欲望を司る魔王女~ 作:ハナバーナ
「欲望が、人類を進化へと導いたのだ‥‥素晴らしい‼」
これは地球とは別の世界から来た男が、訪れた地球で出会った一人の男から聞いた言葉である。男はまだ若かった。二十代半ばだろうか? 魔法のある世界で、様々な世界を管理・維持する組織に所属している…否、していたという方が正しいだろうか? 魔法を使わない普通の局員だった彼は、仕事の都合で地球に調査に来ていた。次元世界にとんでもない被害を及ぼす者が現れる可能性があるという理由だからだ。男は協力者を名乗る五十代半ばの男性に話を聞いた。
『仮面ライダー』
地球を守る戦士の総称であると、会長は言った。何人かいる仮面ライダーの中でも、会長がひときわ目を光らせているライダーがいた。
『オーズ』
欲望のメダルを使い、欲望を否定せず、常に人々の欲望と向き合い続けてきた古代の戦士。友との再会を今もなお望んでいる男。会長はそんなオーズを称賛し、魔法世界の男にもそんな戦士の話や資料、欲望の大切さを説いていった。
「何かを生み出したいという欲望が多くの物を生み出し、今の世界を作り上げたのだ。
欲望は、世界を作る!」
欲望で世界を再生させることを望む会長は、そんなことを言いだした。そして魔法世界の男も、そんな会長や数多ある資料に魅了されていった。数年後、男は管理局をやめ、独立して事業を開始したのだ。己が欲望に従って…。
数年後
「ほう、彼女が?」
事業に成功し、本格的に自分の欲望を解放しようと決断した男は、ある人物にあっていた。長い金髪をした、蠱惑的な女性である。彼女は背中に灰色の髪をした一人の幼い少女を抱えており、片手に納まっているデバイスからは、藤色の髪の男性が映像に写っていた。
『ああ、評議会の連中に守備用にと頼まれ、クローニングした【魔王の器】さ。』
「魔王の遺伝子情報を使っていることまでは説明していませんが。当然でしょう? 自分達に
牙をむきかねない要素を持っている事など、教えては造り出した意味がないでしょう。」
『君もだんだん私に似てきたね、ドゥーエ。』
「褒め言葉ですよ、ドクター。」
男が見たドゥーエとドクターの会話は、まるで親子を彷彿とさせるものだった。それだけならまだいいのだが、二十代に見えるドゥーエに対して、ドクターは三十代に見えるというギャップを感じさせた。
「しかし、物好きもいたものですね。『犯罪組織が生み出した魔王の遺伝子を継ぐ少女』という
危険な少女を欲しがるとは。」
「何を言うんだね? 魔王とはすばらしいものではないか! 己の心のままに、欲望をさらけ出す。
人類が過剰に付けている枷を解き放ったかのような存在だ。人は魔王をすぐに批判するが、
私はその逆、見習うべきだと思っているよ!」
『ははは、その点でいえば君とは話が合いそうだね。今度お茶でもしないかい?』
「検討させていただくよ。ドクター・スカァァァァリエッティ!! しかし、私も驚いた。
こうもすんなりと彼女を保護させてくれるとは。」
『評議会にはすぐに終わりを迎えてもらうからね。聖王の守護者としての役割も考えたが、
君のような欲に忠実な人間に伸ばしてもらったほうがいいと考えたよ。』
「その選択に、多大なる敬意を評するよドクター。さあ、始めようじゃないか!
少女が織りなす、欲望の物語を!」
男は腕を上げて声高らかにそう宣言する。この出来事は、後にJS事件と称される大事件が収束される、ほんの数日前の事である。
四年後 第一管理世界ミッドチルダ St.(サンクト)ヒルデ魔法学院
キーンコーンカーンコーンッ
「よっし、始業式終わりーっ!」
うーんと背伸びした灰色ツーサイドアップの紫色の瞳を持った少女が、学生鞄を片手に初等部校舎の出入り口からダッと走り出す。途中中等部の生徒二人に出くわし、
「先輩方、ごきげんよう!」
と、走りながら敬礼して過ぎていく。敬礼された二人のうちの片方が、ポカーンと口を開けながら走っていく少女を見ている。
「‥‥なんというか、元気がすごいですね。はしたないですが。」
「あれで学年二位なんだから、驚きだよね。」
「‥‥‥はい!?」
もう片方が告げたことに対して、呆然とするだけだった少女は驚いた。
「知らないの? エーリ・コウガミ、デバイス製造で有名な鴻上コーポレーションの令嬢で、
文武両道で全部に近いジャンルの魔法を覚えようとするほどの好奇心、おまけに格闘技も
習ってるって話だよ? 確か今年で四年生だったと思う。」
「あ、あれで学年二位‥‥しかもお嬢様‥‥。」
「見た目に惑わされるなってのは、正にこのことだよねー。」
衝撃的なプロフィールをお持ちの小学生に、愕然とする中学生二人なのであった。
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鴻上コーポレーション
「ハッピバースデートゥーユ~、ハッピバースデートゥーユ~‥‥」
巨大なビルの最上階の広い会長室で、会長であるデューク・K・コウガミが、誕生日の歌を歌いながらケーキを作っていた。四十代半ばに見える顔の濃いおっさんがだ。
「ハッピバースデーィディア…‥エーリィィィィィィ…‥ハッピバースデートゥーユゥ…。」
全体にクリームが塗られ、イチゴと10本のろうそくを添えられているケーキの中央に、ハートのチョコレートが乗せられ、ケーキが完成する。
「会長、お嬢様がお見えになられました。」
「ありがとう、ミス・サトナカ。彼女をこちらに。」
コウガミが言うと同時に、秘書であるサトナカが会長室の扉を開ける。
「ただいま、デュークおじさん!」
「お帰りエーリ、我らのお姫様。ハッピーバースデーェェェェェイ!!」
エーリの誕生日を祝う声が、会長室に声高らかに響き渡った。
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テーブルにつき、出された豪勢な料理やケーキを堪能するエーリとコウガミ。
「君ももう10歳か…‥時がたつのが早いよ。」
「あたしもそう思うよ。魔法の勉強してるうちに、もうそんな経ってたんだなあって。でも、
まだまだだよ! 応用魔導学でもっとレベルの高い魔法を勉強して、格闘技ももっと鍛えて、
今まで出場できなかったDSAAにも出場して‥‥ああもう、やりたいことが多すぎるよお!!」
「素晴らしい!! やりたいと思ったことを遠慮なくやる、至高の欲望だよ! そんな君に
スペシャルな誕生日プレゼントがある。ミス・サトナカ!」
「はい、会長。どうぞ、お嬢様。」
そう言ってサトナカは、エーリにラッピングが施されている箱を渡す。
「君も競技に出られる年齢だ。魔法の知識も十分ついてきたし、私から最新デバイスの
プレゼントだ!」
「わあ、ありがとうおじさん! あたしもデバイスデビューだぁ!」
エーリは恍惚とした表情で、ラッピングをほどいて箱を開ける。中に入っていたのは、つやのある芸術的な装飾をした赤い手だった。
「…‥手?」
エーリがそうつぶやくと、その手はフヨフヨと浮かびながらエーリの周りを一回転する。エーリの目の前で止まったその手は、手のひらの中央に黄色い一つ目があるのが分かった。
『‥‥ふん、こんなちんまいガキが俺のロードってかぁ?』
赤い手はエーリの前でチンピラのような口調でしゃべって見せた。