魔法少女リリカルなのはViVid ooo ~欲望を司る魔王女~   作:ハナバーナ

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訂正 学年一位を、二位に変更しました。コロナが学年一位らしいので。


カウント2

「よかったんですか?」

 

会長室でサトナカは、ケーキを絶賛作成中のコウガミに問いかける。

 

「なにがだね?」

 

「お嬢様の出生のことを話したことですよ。私は事前に会長から聞いていましたが、10歳

 成り立ての子供にはあまりにも重い事実ではないんですか?」

 

「そうは言うがねミス・サトナカ。引き取った当時の右も左もわからない彼女に話しても、

 心を閉ざし続けるだけ。学校に行き始めた段階でも、恐らくその可能性があっただろう。

 だからと言って一人の選手として戦っている時期にこの話をしては、彼女の心が揺らぎ、

 試合にも影響が出ていただろうさ。だからこそ、まだ多くの選択肢が残っている現段階に

 事実を伝えたのだよ。」

 

「口を閉ざし続ける手もあったのでは?」

 

「エーリがそれを許さない。彼女は好奇心旺盛だ。いずれ絶対に私から吐かせただろうさ。」

 

「‥‥そんなお嬢様の好奇心は、主に会長が原因かと思われますが?」

 

ため息交じりに言うサトナカ。コウガミはケーキを作る手を止め、サトナカの方を向く。

 

「ミス・サトナカ、大人とは子供の手本だよ。何もない子供に大人が物事を教え、子供が

 それに興味を持ち、自らを成長させていく。それが何であろうとね。私は私の理念を、

 彼女に教えただけだよ。欲望を持つことで、前に進むことができるとね。」

 

「物は言いようという言葉を知っていますか?」

 

「素直な意見を言ったまでさ。それに欲があるからこそ人は自分の世界を作れるんだ。

 私の尊敬する師は言った。欲望は、世界を救うとね。」

 

コウガミはそう言ってサトナカにウインクし、再びケーキ作りに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ、はあっ!」

 

エーリがいる場所は、鴻上コーポレーション内にあるスポーツジム。健康を気にしている者や、スポーツの親善試合のビジネスチーム等が利用している。エーリも鍛えるために定期的に通っており、今は蹴りや殴りの技をサンドバッグに叩き込んでいる。

 

『…‥おいエーリ。』

 

「なに!」

 

エーリの様子を見ていたアンクが、エーリに話しかけてくる。エーリは技を出しているまま、アンクに応答する。

 

『お前、大丈夫なのか?』

 

「なにが!」

 

『話をしてる時くらいやめられねえのかテメェは!!』

 

アンクが怒鳴ってきたため、エーリはトレーニングをやめ、首にかけているタオルで汗を拭く。

 

「ふう…それで、大丈夫って?」

 

『コウガミから聞いたろ? お前は狂気の天才と謳われた犯罪者、ジェイル・スカリエッティが

 造り出した魔王のクローンなんだぞ? その事実を聞いて、大丈夫なのかって聞いてんだ。』

 

「なんで?」

 

『なんでってお前‥‥。』

 

アンクには理解不能だった。親はとんでもない犯罪者ですなんて事実を子供が聞けば、普通じゃいられなくなるのが当たり前だ。だというのに、エーリからはそんな気配が見受けられない。

 

「だってあたし、テレビや新聞で見るだけで、実際の父さんがどんな人なのか知らないし、

 父さんが犯罪者だからって落ち込まなきゃいけないなんてルールないんでしょ?」

 

正論ではあるのだが、普通はそんな考えには至らないだろうとアンクは思った。

 

「それに、そんなこと考えてる暇があったら、特訓なり勉強なりしたいよ。あたしは今、

 やりたいことが山ほどあるんだからね。」

 

そう言ってエーリは二パッと笑う。

 

『…‥あのなあ。』

 

「それにさアンク、あなたの相棒がこんな女の子じゃいや? 辛いことの一つや二つ

 どうにかしろとか無茶ぶりしそうな性格の癖に、以外と優しいんだね♪」

 

そう言ってクスクスと笑いながらアンクをからかうエーリ。アンクはそんなエーリにイラッとした。機械であるはずのアンクがだ。

 

『言ってくれるな! だったら今後、お前が挫折しても慰めてやんねーぞ!』

 

「いーもーん! あたし、落ち込んでもすぐ立ち直る方だしぃ!」

 

これも笑いながら受け止めるエーリ。第三者から見れば、子供同士のけんかである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一日を終え、自室に戻るエーリとアンク。エーリはベッドに座り、今回自分が変身した際の映像を確認している。

 

「…‥やっぱりだ。」

 

映像を見て、エーリは顎に手を当てる。変身している自分の姿は、かなり風変りである。胸部と腕の部分は黄色、腰から足先までが緑、そして何より、灰色の髪と紫の瞳だった自分の顔は、赤い髪と緑の瞳という状態になっていた。普通では絶対に見られない現象である。

 

「ユニゾンっていうのかな? 融合すると髪とか目の色変わるらしいし。」

 

『そりゃユニゾンデバイスの話だろ? 俺はインテリジェンスだが?』

 

「う~ん、近いうちおじさんに聞いとこ。」

 

エーリはそう言って映像を閉じ、ベッドに寝転がる。そんなエーリに、アンクは質問する。

 

『そういやエーリ、お前体格は変えないのか? 魔法で大人になればいろいろ都合がいいと

 いうらしいが?』

 

「なんでかわからないけどあたし、魔法使っても大人になれないんだよね。体質なのかな?

 まれにそういう子もいるらしいし。」

 

『そうか。』

 

別に珍しいわけでもないためか、アンクはそれ以上追及しなかった、それからしばらくして、エーリはアンクにこんなことを言ってくる。

 

「‥‥アンクって名前さ、オーズのパートナーの名前なんだって?」

 

『コウガミから聞いたのか?』

 

「うん、ワケあってお別れしちゃってるみたいだけど、オーズの人は絶対にまた会うって

 決めてるらしいんだ。」

 

『なぜそんな話をする?』

 

「別れた人の名前を愛称にしちゃったから、嫌われないかなって。」

 

『馬鹿だろお前。』

 

「馬鹿って言われた! 会って間もないデバイスに馬鹿って言われた!」

 

この際、エーリの事は無視しようと思うアンクだった。すぐに立ち直るだろうと思ったからだ。案の定、エーリはすぐ立ち直った。

 

『安心しろ、お前がぶっ壊れない限り、俺様がお前を使ってやる。デバイスはマスターを

 心配する奴が多いらしいが、俺はお前に遠慮なんざさせないからな。』

 

「勿論! あたし、たとえ壊れてもすぐ直っちゃう女の子だからね! アンクこそ、

 あたしの全力でオーバーヒートなんてしないでね!」

 

『俺は最新のデバイスだ。簡単にオーバーヒートしてたまるか。お前は多くの奴と戦いたい。

 俺はデータを集めてバージョンアップがしたい。これ以上の好条件はないだろうぜ。』

 

そう言って鼻を鳴らすアンク。二人の契約は、今なされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし一人と一機は知らない。この先、とんでもない曲者たちに出会うことなど。


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