魔法少女リリカルなのはViVid ooo ~欲望を司る魔王女~   作:ハナバーナ

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カウント4

空が暗くなり、街灯の明かりがつき始めたころ、エーリはアンクを連れて、公園のランニングコースを歩いていた。アンクがエーリに、噂に出てきた襲撃犯との接触を提案したためである。

 

「でもさアンク、なんでいきなりタイマン張ろうなんて言い出したの?」

 

『噂されてるやつはなんでも「覇王」とか名乗ってるみてぇだからな。あんときコウガミも

 言ってたろ? お前の他にも王族の関係者がいるとか何とか。捕まえてとっちめれば、

 魔王の事に関してもっとわかるだろうと思ってな。』

 

「本とかで調べればいいのに? まあ、あたしは魔王の事とか気にしてないから

 読んでないけど。」

 

『加えて、腕の立つ奴を倒すほどの実力だ。戦えばいいデータが取れる。』

 

「明らかにそっち本命だよね!?」

 

明らかにデバイス側にメリットが行っていることに気が付いたエーリは、アンクにビシッとツッコミを入れる。アンクは気にせず、辺りを見回す。

 

『お前だって気にならないわけじゃないだろう、そいつの事? 欲望まみれのお前としちゃ、

 戦いたいって気持ちもあるんじゃねぇのか?』

 

「そりゃあ、ないわけじゃないよ? でもさ、襲われてるのって大体筋肉ムキムキの

 マッスルマンとか不良とかそういった強そうってイメージの人でしょ? 見た目が

 ちんまい小学生のあたしなんかが狙われるのかなぁ? 別に大会とか出てる訳じゃ

 ないんだし‥‥‥。」

 

そう言って、大人モードになれない自分の体を確かめるエーリ。競技に出るために修練をしてきたのは事実ではあるが、それでも低い背に幼い顔立ち、魅力的とは言い難い体つきは強者という雰囲気を出せなかった。自分も早く大人になりたいと、こういった瞬間はエーリは偶に思うのである。

 

「------鴻上コーポレーション御令嬢、エーリ・コウガミさんとお見受けします。」

 

「?」

 

後方から声が聞こえ、エーリは振り向く。振り向いた先にあった街灯の頭に、バイザーを付け、バリアジャケットを纏った女性が立っていたのだ。女性は高く飛び、華麗に着地する。

 

「あなたにいくつか伺いたいことと…‥確かめたいことが。」

 

「あの…‥あなたは?」

 

『質問するなら顔見せすんのが礼儀ってもんじゃねえのか?』

 

デバイスなのによくそんな強気に出られるな‥‥とエーリは思ったが、女性は了承したのか、すぐにバイザーを外して素顔を見せる。薄い緑のつやのある髪をなびかせ、その瞳は赤と緑のヴィヴィオとは違う青と紫の虹彩異色をしていた。

 

「(ふぁっ…‥綺麗な人。)」

 

「カイザーアーツ正統、ハイディ・E(アインハルト)・S(ストラトス)・イングヴァルト。

 『覇王』を名乗らせていただいております。」

 

『はっ、見ろよエーリ! 本当に噂の覇王様のお出ましだぜ!』

 

「え‥‥ええ!? 貴方が噂されてた通り魔さん!?」

 

「否定はしません。伺いたいのは『王』達についてです。聖王オリヴィエのクローンと、

 冥府の炎王イクスヴェリア…‥これらについて知っている事は?」

 

アインハルトに言われても、エーリには何のことかさっぱりである。無駄だとは思うが、アンクの方を向いてみる。答えは案の定だ。

 

『俺が知るかよ。まあ、これで過去の王様に関係あるってことは分かった。』

 

「…‥ごめんなさい。あたし、その人たちの事、全然知らないんです。」

 

「理解できました、その件は他を当たるとします。ではもう一つ、確かめたいことは‥‥。」

 

瞬間アインハルトは、拳に力を入れ、スッと胸元に当てる。

 

「【魔王デサイア】のクローンであるあなたの拳と私の拳、どちらが強いかをです。」

 

瞬間、エーリは理解する。彼女は、自分との戦いを求めているのだという事を。

 

『ふん、願ってもないことだ! やるぞエーリ!』

 

「うん! セットアップ!」

 

エーリはアンクを掲げて変身。アンバランスな配色のバリアジャケットを身にまとい、グッと足に力を籠める。

 

「あたしからもいいですか? なんで強い人に喧嘩を吹っ掛けるようなことしてるんです?」

 

「強さを知りたいんです。」

 

アインハルトはそれだけ言うと、目にもとまらぬ速さでエーリに接近し、拳を突き出す。

 

「突撃(チャージ)!?」

 

エーリは驚きながらも、力を籠めていた足で高くジャンプ。回転して足に力を籠め、かかと落としの体勢で、アインハルトに向けて落ちる。アインハルトもそれを回避、後方に移動したかと思えば、再び接近して拳を突き出す。エーリはそれを擦れ擦れで躱し、カウンターとばかりにアインハルトに拳を突き出すも、アインハルトはそれを顔を横にずらすことで躱し、膝蹴りをエーリの腹に叩き込む。

 

「かっは‥‥!」

 

体格差が影響したのか、エーリの小さな体は後方に大きく飛ばされる、足に力を入れて摩擦を起こすことで、飛ばされる距離はだいぶ縮まったが。

 

「列強の王達を全て斃し、ベルカの天地に覇を成す。それが私の成すべきことです。」

 

「ベル、カ‥‥?」

 

アインハルトが言っていることが分からないエーリは、息を荒くしながらも首をかしげる。そうしている間に、アインハルトは再び迫る。

 

『エーリ、ちょっと調整するぞ!』

 

「えっ!」

 

瞬間、アインハルトの拳が迫る。直前にアンクが何を言ったため、混乱しているエーリは、ままよとばかりに頭を下に向けて躱し、距離をとるために後方に走り出す…‥先ほどよりも明らかにすさまじいスピードで。

 

「なっ…‥!」

 

アインハルトは驚く。別段、エーリが足に力を込めていたわけでもない。だというのに、エーリは先ほど以上の速さで躱して見せたのだ。それだけではない。自分のジャケットの腰部分に、ピッと切り込みが入っているのもわかった。

 

「配色‥‥変わってる?」

 

しかし、エーリも驚いていた。自らのジャケットの色が、黄緑の腕と黄色の脚部に変わっていたからだ。細部も変わっており、腕には小さくはあるが刃が付いており、足は横幅が縮まっている感じがした。

 

『形を変えて使う筋肉の量を調整したんだ。ありがたく思え。』

 

「(あ、ありがとう。)」

 

多少の混乱はあるものの、エーリはアンクに礼を言い、アインハルトに接近。先ほどより軽くなった腕を、アインハルトに向けて何度も振るう。アインハルトもそれらを躱し、カウンターに蹴りを放つも、瞬時にエーリが突き出した足で防がれる。

 

「(アンク、元の色にもどして! 早く!)」

 

『…‥何を考えてるか知らねえが、わーったよ。』

 

アンクがそう言った直後にエーリはジャンプ。腕と足のジャケットの色が戻り、エーリはアインハルトに向けて蹴りを放ち、それはアインハルトの腹部にヒット。

 

「(ジャンプする時と同様、足に目一杯力を籠める!)」

 

エーリの力がこもった足の威力はアインハルトに伝わり、アインハルトは吹き飛ばされる。エーリも反動で飛ばされるが、空中でくるくると回転した後、綺麗に着地する。

 

『ほお、中々イカしたやり方すんじゃねえか。』

 

「(ありがとうアンク。)‥‥アインハルトさんがどんな思いで戦ってるのかわからないけど、

 あたしは過ぎちゃったことをうだうだ考えるよりも、これから先を楽しみたいって思う。」

 

膝をついたアインハルトにエーリは笑顔でそう伝えるが、アインハルトは立ち上がって告げる。

 

「‥‥‥終わってないんです。私にとっては、まだ何も。」

 

そう言って構えをとったアインハルトに対して、エーリも構えをとろうとするが、瞬間自分の足と体に、光の鎖が巻きつく。

 

「(バ‥‥バインド!?)」

 

「覇王、断・空・拳!」

 

アインハルトがエーリの腹部に放った強烈な一撃。体が小さいことに加え、防御も取れなかったエーリには、必殺の牙となりえた。バインドは解除されたものの、エーリの意識が朦朧とし、今にも視界が暗転しそうである。

 

「弱さは罪です。弱い拳では…誰の事も守れないから。」

 

勝利を確信したのか、アインハルトはその場から去ろうとする。しかしエーリは、朦朧とする意識の中ですら負けたくないという意志を見出し、自然と足に力が入る。そして最後の力を振り絞って足に力を籠め、低位置に飛び、そのまま腕を突き出す。

 

「!!?」

 

アインハルトがそれに気付き防御をとろうとするも…遅い。エーリの拳はアインハルトの腹部にクリーンヒット。吹き飛ばされたアインハルトの背中は街灯の柱に叩きつけられ、その街灯がゆがむ。エーリはそのまま力を使い果たし、バタンと倒れこむ。

 

「(意識がなくなる寸前でありながらあの一撃…‥凄まじかった…!)」

 

アインハルトはよろよろと立ち上がり、エーリを見据える。そしてその場を去ろうとした瞬間、アインハルトはすさまじい脱力感に見舞われる。

 

「(ダメ、こんなところで倒れたら‥‥。)」

 

頭ではそう考えても、体は言うことを聞かない。アインハルトはバタンと倒れ、そのまま意識を失う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はい、ナカジマです。ノーヴェ、どうかした?』

 

「悪いスバル、ちょっと頼まれてくれねえか?」

 

『どうしたの?』

 

「いや、公園にガキが二人気ぃ失って倒れてるのを見つけてな。」

 

『えぇっ!?』

 

「一人は知らねえが、もう一人は今日知り合ったばっかの、いいとこのお嬢様だよ。」

 

ノーヴェがそう言って向けた視線の先には、体の小さい灰色の髪の女子と薄い緑の髪の女子が倒れていた。

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