魔法少女リリカルなのはViVid ooo ~欲望を司る魔王女~   作:ハナバーナ

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カウント5

太陽の光が、眠っているエーリを包み込む。エーリはつむっている目をピクピクと小さく動かした後、ゆっくりと開ける。最初に見たのは天井だ。

 

「ここは…‥?」

 

エーリは上半身を起こし、辺りを確認する。最後にエーリがいたのは、アインハルトと戦った夜の公園だった。しかし今いるのは、自分の部屋とは違う別の部屋だ。加えて今のエーリは、私服ではなく少々ブカブカな寝着らしいシンプルなシャツとズボンだった。

 

『よおエーリ、起きたな。』

 

聞きなれた声の方を向いてみると、アンクが浮いてエーリに近づいてくるのが分かった。

 

「アンク‥‥ここってどこ?」

 

『あんときお前と覇王様は相打ちしてな。気絶してたところを昨日会った三人娘のコーチが

 見つけて連れてきたんだよ。』

 

「ノーヴェさんが? じゃあここって‥‥ノーヴェさんの家?」

 

「あっ、起きた?」

 

エーリが首をかしげていると部屋の扉が開き、ノーヴェによく似た青い髪の女性がエプロン姿で入ってくる。

 

「おはよう。エーリ・コウガミさん‥‥で、いいよね? 痛いところとかない?」

 

「は、はい。大丈夫です。」

 

本当はまだ少しだるさが残っているが、大したものでもないため言わないことにした。

 

「ならよかった。あ、荷物はそこに置いてあるから。」

 

女性が指差したエーリの横のデスクには、昨日の自分の服やリュックが置いてあった。

 

「起きれるかな? いろいろと話したいこともあるし。」

 

「はい、分かりました。」

 

エーリは起き上がると、アンクとともに女性に付いていく。階段を降り、リビングと思われる広い部屋に入る。

 

「よっ、エーリ。おはようさん。」

 

「スバル、とエーリさんだよね? おはよう。」

 

「‥‥‥‥。」

 

リビングのテーブルにはノーヴェと初めて見るオレンジのロングヘアの女性、そして体が縮んではいるが、昨日戦ったアインハルトと思われる少女が座っていた。

 

「あの人って‥‥アインハルトさん?」

 

『ああ、俺もあの姿になるのを見たぜ。大方魔法で偽ってたんだろうな。』

 

「空いてる席に座ってて。今朝ご飯持ってくるから。」

 

「はい。なんか、ごめんなさい。」

 

エーリが苦笑しながら謝り、空いている椅子に座る。瞬間ノーヴェが「んで」っと一拍置いてから、アインハルトとエーリに目を向ける。

 

「お前らあの公園で、随分と派手にやらかしたみてーだな?」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「‥‥否定はしません。」

 

ニヤつきながら問いかけてくるノーヴェに対して、二人は複雑な表情になる。そしてエーリがこの家に厄介になることになった主な原因であるアンクは、知らんぷりしているかのようにそっぽを向いていた。

 

「まあいろいろ事情があるみたいだからさ、朝ごはんでも食べながら話そうよ。」

 

スバルがそう言って、ベーコンエッグやら野菜スープやらが乗ったプレートを持ってくる。

 

「んじゃ、一応説明しとくと、ここはあたしの姉貴であるスバルの家。で、姉貴の親友で

 本局執務官のティアナ・ランスター。」

 

「よろしくね。」

 

オレンジヘアーの女性、ティアナは優しい表情で挨拶する。

 

「スバルはあたしと一緒にお前らを保護、ティアナはエーリの保護者に連絡入れてくれたんだ。

 お前ら感謝しろよ?」

 

「ありがとうございます!」

 

エーリが元気に、アインハルトが静かにスバルとティアナに一礼する。

 

「それで、格闘家連続襲撃犯がアインハルトさんなのは本当?」

 

「…‥‥はい。」

 

「理由を聞かせてもらっていいかな?」

 

ティアナの質問にアインハルトは渋るが、代わりにアンクが答える。

 

『こいつベルカとか何とかの戦いがまだ終わってないとか言い出してよ。自分の強さを

 知るために王様関連のエーリに手合わせしてきたんだよ。聖王だの炎王だの知らねえ

 事まで聞いてきやがってからに。』

 

「アンク!!」

 

言い方が悪いと判断したのか、エーリがアンクに対して声を荒げる。それを聞いたノーヴェが、先ほどより真面目な表情で、アインハルトに目を向ける。

 

「本当なのか?」

 

「‥‥間違ってはいません。」

 

「あたしはその王に関係してるやつとは知り合いでな。だけど、みんな普通の人間として

 暮らしてる。ベルカって国も戦争も、もう滅んでる。」

 

「‥‥‥‥。」

 

「お前の望みは、王達を倒すことなのか?」

 

「少し違います。古代ベルカのどの王よりも、覇王のこの身が強くあること。それを

 証明できればいいんです。」

 

「じゃあ、聖王家や冥王家を滅ぼしたいわけじゃないんだね?」

 

「はい。」

 

「ならよかった。」

 

アインハルトの答えに、スバルは安心したかのように笑みを浮かべる。その表情が不思議なのか、アインハルトもエーリも、呆然となる。

 

「スバルはね、その二人となかよしだから。」

 

「そうなの。あ、ご飯冷めちゃうからよかったら食べて。」

 

「はい。」

 

「ありがとうございます!」

 

アインハルトもエーリも手を合わせ、スバルの朝食をいただく。食べている最中、ティアナがこんなことを言いだしてきた。

 

「アインハルトさん、後で近くの署に行きましょ。被害届は出てないみたいだし、

 もう路上で喧嘩しないって約束してくれればすぐに帰してくれるはずだから。」

 

「あ、ティアナさん。あたしも同行していいですか?」

 

「エーリも? どうして?」

 

「実は、襲撃犯の噂を聞いて興味持っちゃって、それで半分会いたいって気持ちで公園を

 歩いてたんです。だから結果的にはおびき寄せちゃった形なんです。ですから、それに

 関して、謝らなきゃって思って。」

 

「アンクもいいよね?」とエーリがアンクにいい、アンクも『勝手にしろ』で済ませる。それに対してノーヴェが、呆れるように溜息を吐く。

 

「ったくお前は‥‥じゃあ、今回は喧嘩両成敗ってことにしてもらおう。あたしも行くよ。

 二人はそれでいいよな?」

 

ノーヴェに言われ、エーリとアインハルトはうなづく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湾岸第六警防所

 

事情聴取後、エーリは腕を伸ばしながら、アンクとともに待合室のベンチに座っていた。

 

「よう。お疲れさん。」

 

そこへ二本の缶ジュースを持ったノーヴェが、笑いながらエーリの隣に座る。そして一本をエーリに差し出し、エーリがそれをお礼を言って受け取る。

 

「気を付けろよな。子供が興味本位で首突っ込むような事案じゃねえんだ。」

 

「ごめんなさい‥‥そういえば、アインハルトさんは?」

 

「まだ取り調べ中。お前の前にも何回かやってるからな。ま、あいつもすぐ終わるって。」

 

「よかった。」

 

エーリが安堵の息を吐く。自分の方がよっぽど被害者だというのに、不思議な奴だとノーヴェは感じる。

 

「もうすぐ解放だろうけど、学校はどうする? 今日は休むか?」

 

「いえ、大丈夫なので行きます。制服とバッグを持ってきてくれるよう、家にも連絡を

 入れておいたんで。」

 

「用意周到なこって。」

 

ノーヴェは苦笑しながら、缶ジュースを口にする。

 

「そういえば、お前ベルカの王様の関係者なんだろ?」

 

「はい。ベルカは知りませんでしたけど、魔王の遺伝子を受け継いでいるとか何とか、うちの

 おじさんが言ってました。」

 

「…‥魔王だって?」

 

「はい。」

 

エーリも缶ジュースを飲みながら答える。ノーヴェは飲み口を放した後、何か思い詰めているような表情になり、再びエーリの方を向く。

 

「‥‥なあエーリ。」

 

「なんです?」

 

「お前ジェイル・スカリエッティが造り出したクローンなんじゃないのか?」

 

ノーヴェの衝撃的な問いかけに、エーリはゴホゴホと咳き込み、叫ぼうとするもここが警防所なのを思い出し、ふうっと落ち着いてから口を開く。

 

「な、なんで知ってるんですか? そうです、あたしが魔王の遺伝子情報を元に生まれて

 それをおじさんが引き取ったって。」

 

「やっぱりな。実を言うとさ、お前を生み出したドクターは一応はあたしらの親父みたいな

 もんなんだ。今は留置所にいるけど、面会に行ったときドクターが当時の管理局上層部の

 依頼で製作して、それを豪快な人物が引き取らせてほしいって言ってきたから渡したって

 言ってきてさ。半年ほど前の話だ。」

 

『…‥ぜってぇうちのバ会長だな。』

 

「おじさんだよね‥‥それで、皆さんは驚かなかったんですか?」

 

「驚いたに決まってるだろ。留置所に入って三年半目だぞ? 今になって言ってきてあたしも

 あたしの家族や知り合いも大慌てだったよ。しかもその引き取り先を忘れてしまったから

 探しようがね~し‥‥ったく、あの人は。」

 

ノーヴェはジェイルに呆れるように、額に手を当てる。そんなノーヴェを見て、エーリは苦笑する。そんな時、アンクの目が一瞬光る。

 

『おいエーリ、連絡だ。迎えが入り口で待ってるってよ。』

 

「分かった。じゃあノーヴェさん、色々ありがとうございました。」

 

「あ、待ってくれエーリ。」

 

エーリはノーヴェに礼を言い、出入り口に向かおうとするが、ノーヴェが待ったをかける。

 

「どうしました?」

 

「今日の放課後さ、時間あるか?」

 

「? 大事と言えるような用事はないですけど?」

 

「ならさ、あたしの知り合いに、お前の事を紹介させてくんねえか? ここでちゃんと

 やっとかないと、後々面倒くさいことになりそうなんだ。それに、王の末裔でも今は

 普通に生きてるなんて言っちまったが、お前やアインハルトもお互いを知っておいた

 方がいいと思う。すっきりできることはさせた方がいいし。…‥駄目か?」

 

ノーヴェは頬を掻きながら、申し訳なさそうな表情で問うてくる。最初はキョトンとした表情のエーリだったが、

 

「はい、いいですよ。あたしも知りたいですし。」

 

と、満面の笑みで返答し、出入り口へと向かう。途中、スバルやティアナにも挨拶しながら。

 

「‥‥‥問題は、ヴィヴィオになんて言うかだよなぁ‥‥。」

 

ヴィヴィオの事をよく知るノーヴェは、再び頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お迎えあっりがと~う、ゴトウさん♪」

 

迎えのリムジンの後部座席に飛び込むエーリ。運転席には、ゴトウと呼ばれた見た目二十代前半の黒髪の青年が困り顔で溜息を吐く。

 

「‥‥‥お嬢様、あなたは鴻上コーポレーションのご令嬢なのですよ? いくら会長の懐が異常に

 広いとはいえ、襲撃犯の喧嘩を買うなどと度が過ぎた行動は控えていただきたい。」

 

「はーい!」

 

本当に反省しているかどうかわからないエーリの返答の仕方に、ゴトウもたじたじである。

 

「そうだゴトウさん。今日の放課後、用事ができたから少し遅くなるっておじさんに

 言っといて。」

 

「それは昨日も言ったことのはずですよ。また危険なことをするつもりではないんですか?」

 

「しないしない。ちょっと友達と会うだけだからさ。」

 

「…‥‥制服と鞄はそちらにございますので。」

 

「ありがとうゴトウさん。着替えなくっちゃ。」

 

「着替えるのは学校についてからにしてください!!」

 

ゴトウのそんな叫びとともに、リムジンは警防所を後にする。

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