Sword Art Online《とある朝田シノの仮想現実》   作:新名国後守

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SAO 2

第2話

『ベータテスト』

 

 

 

後から考えると運の無い、というよりも皆無な自分が史上類を見ないほど高倍率な人気ゲームのベータテスターに抽選で受かったことに疑問を持つべきだった。

いくらゲームが関係しているとはいえ、抽選結果は現実世界でのもの。

 

普通に考えたら受かる確率は皆無だった。皆無どころか絶無だった。

 

そして仮に受かった通知が来たとしても後に誤発送でした。運営側のミスでした。というオチくらいないとおかしかった。

 

そうであるにもかかわらず、そのことを頭の片隅どころか宇宙の果てにまで追いやっていた自分は舞い上がってしまっていたのだろう。

 

ナーヴギアというハードとベータ版のソードアート・オンラインのソフトが自宅に届いたときの自分の反応といったら傍から見るととても恥ずかしいものだっただろう。

 

部屋でナーヴギアを装着したままそれ以外は全裸。

見た目はただの変態だ。変態を極めた所業だ。

 

しかも全裸にナーヴギアという状態でどこかの先住民族的な踊り。

どこからともなく法螺貝を持ち出し吹き始め、ドタンバタンと足を踏み鳴らす。

ソファーやベッドのスプリングが馬鹿になるまで跳ね飛び回り、その当時は「喜びの舞じゃぁぁ!!」とか叫びながら踊り狂っていたが、まぁ、そんな黒歴史には蓋をして(本当にこの時ばかりは天涯孤独の身で良かったと思っている)。

 

1ヶ月という短いベータテスト期間は本当にあっという間に過ぎ去っていった。

 

自分のゲーム内限定の幸運は、VRという仮想現実でも予想通り適用された。

 

攻撃をすればクリティカルがほぼほぼ占める。

逆に敵のクリティカル率がいくら上昇していても100%ではない限り、クリティカル攻撃を受けることはない。

モンスタードロップ率の低いレアアイテムは然程苦もせずに手に入る。

採取系クエストでも欲しい素材は何故か探せば簡単に出てくる、等。

 

現実世界ではあり得ないほどの幸運(ラッキー)の数々。

 

むしろ現実世界での不幸(アンラッキー)が酷過ぎる。

もう現実世界での生活を辞めて、仮想世界で生活しようか。なんてちょっと真面目に考えてしまうほどだ。

それにゲームだったら、怪我もしなければ死の危険もないしね。

 

ゲームで稼ぐお金(コル)も、自分の能力値も。

それどころか視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚すべてが紛い物の偽物であったとしても。

ゲーム(そこ)で得た幸福感や達成感という自分の感情は紛れもない本物だった。

 

この自分の幸運は周りの人にもいい影響を及ぼすこともできる。

例えば、パーティーを組んだメンバーには自分ほどではないにしろクリティカル率の上昇やレアアイテムのドロップ率上昇という現象は見ることができる、はずだ。

少なくともいままでやってきた数々のMMOのタイトルではそうだった。

 

ま、ベータテスト期間はソロに専念しようと思っていたからパーティーを組んだことはおろか、レイドを組んだことも階層ボスの攻略くらいしかないが。

 

でも恐らく自分が攻略組にいたおかげでボス戦は制作サイドの想定より早く進んだことは間違いないだろう。

だってボス相手にレイドメンバーあんなにクリティカルを連発するとは思ってはいないだろうし。

 

きっと製品版ではボス戦に限ってクリティカル率が異常なまでに低く設定されているに違いない。

自分が制作サイドの人間だったら絶対にそうする。

 

あれじゃゲームクリアが簡単に成し遂げられてしまうからな。

 

だから1ヶ月という短い期間で攻略組が攻略できた階層は11層。

到達できた階層という意味では12層になる。

 

ソロプレイヤーが毎度毎度ボス戦でLA(ロサンゼルスじゃない。ラストアタックの略だ)ボーナスを取っていったら要らぬやっかみ(ヘイト)を受けるだろうと遠慮して主に取り巻きを相手にしていたのだが、5層と10層ではLAをきっちりとってしまいボーナスもかっちりもらってしまった。当然、他プレイヤーからの嫉妬(ヘイト)も一緒にな。

 

そんな自分のスタイルは一撃離脱戦法をベースとしたヒット&アウェイ型。

能力値は筋力(STR)俊敏性(AGI)に4:6くらいの割合で振っている。

つまりそれ以外にステータスポイントは振ってはいない。

生命力(VIT)器用さ(DEX)は、被ダメージ量の減少や異常状態、命中率、クリティカル率に関わってくる項目なため自分のゲーム(ラック)を持ってすればほぼカバーできるというのが理由だ。

 

ずるいだろ?

 

ま、その分リアルでは割を食いまくってるんだから勘弁してほしい。

 

そんな自分のバトルスタイルを存分に発揮するには攻撃の手数が多く、回避に優れた短剣をメインウエポンに選択したのは当然のことだった(ちなみにサブウエポンは第2層で手に入れられるチャクラムだ。あれは投剣スキルを上げるのに役に立つし、ソロでやるなら投剣スキルは遠くから敵のタグをとって乱入されにくい安全なところまで誘き出し戦えるから必要だろう)。

 

攻撃の回数が稼げるということはクリティカルでダメージを与えられる回数が増えるということ。

攻撃を受け止めないできっちり回避するということは自分がダメージを与えられる可能性が低くなるということ。

 

ここまであっさりと一撃の重さを捨てて、攻撃回数を選べるプレイヤーは自分くらいのものだろう。

 

実際、攻略組の中に短剣プレイヤーは自分以外に存在しなかった。

 

やはり一番多かったのはダメージディーラーだろう。

一撃が重く、一回で敵に与えるダメージが大きいからだ。

仮想現実の中でくらい。皆、主役になりたいものだ。

 

そうなるとフィールドボス戦で。あるいは階層のボス戦で。花形はやはり攻撃力の高い武器を扱う者となる。

LAボーナスを貰える確率も上がるしな。

 

とはいえ、ゲーム序盤に手に入る武器の種類はそう多くはないから、ダメージディーラーの大半は斧やハンマー、将来性を見越して曲刀などを選択する人が多かった。

 

次点で片手剣だろうか。

利き手に剣。その反対に盾を装備するのが一般的で戦闘時は一番バランスがいいスタイルとされていた。

バランスが良いということは器用貧乏。ダメージディーラーにもなれず、壁役(タンク)にもなれないということではあるが一番動きやすいスタイルであったことには間違いないだろう。

それに盾の防御を捨てて、完全に剣一本で戦う人も一定数いたから、そういう人はダメージディーラー寄りのスキル構成、ステータス構成になっているのだろう。

 

ま、その分防御面は紙装甲で一撃死とかもしやすいだろうと思うが(それだとしても攻略組一紙装甲なのは自分なのは間違いない)。

 

そんなこんなでベータテストではそこそこ名の知れた短剣使いとなった自分は来る『ソードアート・オンライン』正式サービス開始の時を今か今かと待っている身なのである。

 

 

 

そういえばまだだったな。

自分の名前もそれを含めて自己紹介も。

ここまでずっとノンストップで話しておいて今更感は拭いきれないかもしれないが、一応しておこう。

 

自分の名前は朝田(アサダ)シノ。

あ、これはリアルの名前な。

別に昔の人じゃないし、戦中生まれじゃないからきちんと下の名前にも漢字があるのだが、ここではカタカナ表記にしておく。その理由(わけ)?頼むから聞かないでおいてくれ。世の中には知らないほうが幸せなこともあるんだよ。

 

好き嫌いは・・・まぁ、別に知らなくても困らないだろうから教えるつもりはない。

 

将来の夢・・・って言ってもなぁ。

 

趣味は色々だと言っておこうか。

でもま、ネットゲームに興じている時間が多いな。

 

ん?結局わかったことは本名だけって?

まぁまぁ。細かいことは気にするなって。アバターネームはまた次回にでも、な。

 

 




次回は明日投稿します。
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