Sword Art Online《とある朝田シノの仮想現実》   作:新名国後守

4 / 4
SAO 4

第4話

『仮想現実という名の異世界監獄(アインクラッド)

 

 

 

茅場晶彦はプレイヤー達にソードアート・オンラインが舞台。浮遊城アインクラッドこそが現実世界であると知らしめるためだけに《手鏡》というアイテムをプレイヤーにプレゼントした。

 

自分はリアルのままでアバターを作成したからその手鏡は意味をなさなかったが。

顔や体格など細かい設定に時間をかけたプレイヤーもいただろうに。その努力を一瞬にして水の泡にしたことに怒れるだけの余裕がある人はいなかった。

 

その《手鏡》というアイテムは各プレイヤーが独自に設定した自己仮想体(アバター)を強制的に解除させ、現実世界の自分自身の姿をこの仮想現実(アインクラッド)内に再現させていた。

 

美男美女のプレイヤーがひしめいていた中央広場では隣にいた人の外見が変わりゆく姿に唖然とする者たちで溢れかえっていた。

元々は男女比でいうと半々に近いくらいの割合だったのが、《手鏡》を使ったことによって男性プレイヤーが圧倒的多数を占めることになる。

小太りのおっさんがピンク色が入ったミニスカート装備だったり、ガリガリの痩せ型でいかにもなオタクという風貌で女性用初期装備だったりという目も当てられない現実に目を覆いたくなる。

ネカマプレイヤーの多いこと多いこと。

 

しかし、この状況を見てようやく。

 

ここに集まっているプレイヤーたちは、茅場晶彦の言った戯言が洒落にならない冗談なんてものなどではなく、事実なのだと思い知らされることになり、そしてこの世界こそが今の自分たちにとっての現実なのだと刷り込まされた。

 

それは上空に現れたひとつの巨大なホロウアバターを介して発したゲームマスターの言葉。

 

『これは、ゲームであっても遊びではない』

 

彼、茅場晶彦は確かにそう言った。

 

いつの日か、雑誌の取材でもそう言っていたことがあったが、当時それを文字通りの意味で捉えていた者は茅場晶彦本人を除いて誰もいなかっただろう。

 

曰く、自分はこの異世界(アインクラッド)をただひとり自由にできるGM(ゲームマスター)であり、1万人のユーザー。つまりこの場にいるプレイヤーをこの世界に閉じ込めた犯人である。

 

曰く、この世界でHPがゼロになったプレイヤーは、現実世界の本人が頭に装着しているナーヴギアによる超高出力の電磁波を照射され、電子レンジでチンしたように、脳を蒸し焼きにされて現実世界でも死ぬことになる。

 

曰く、ゲームはゲームでも文字通り命を賭けるデスゲームと化したこの世界から脱出する方法はただ一つ、アインクラッド最上階《紅玉の間》にたどり着き、そこで最終グランドボスを撃破することのみ。

つまり、現在全プレイヤーがいるはじまりの街から全100層に及ぶフィールド・迷宮区を踏破し、各層の最奥を守るフロアボスを撃破しなければならないということだった。

 

そしてそれを死ぬことなく。一度たりとも死ぬことなく。HPをゼロにすることなく達成しなければ現実世界へは帰ることができない。そういうことだった。

 

『これは、ゲームであっても遊びではない』

 

この茅場晶彦の一方的な宣言に激怒したプレイヤーがどれだけいたか、考えるまでもない。

 

「ふざけるな」

「ここから出せ」

「こんなことが許されると思っているのか」

 

自分たちの声がゲームマスターである彼に届くと思って叫んでいる者はいないだろう。

彼らも皆、きっと頭のどこかで、心のどこかではわかっているし、理解しているはずだ。

 

でも。

 

そうだとしても叫ばずにはいられない・・・そういうことだろう。

 

もちろん茅場晶彦が操る不気味なローブ姿のホロウアバターは意に介することなく一方的にデスゲームを宣言して満足げに消え去っていったが。

 

ゲームマスター茅場晶彦による拘束が解かれ、はじまりの街から脱出できるようになるとプレイヤーの動きは大きく2つに分かれた。

1つは仲間を探してパーティーを組もうとする者。

1つはまだ現実を受け止めきれずに呆然としている者。

その中にはパニックを起こす者もいたしそれが伝染するようにしてヒステリックを集団単位で起こしているような者たちも少なからずいた。

 

その最たる例が自殺者の発生だろう。

200人超のプレイヤーがフィールドで死に、又は外部からの強制シャットダウンによって脳を焼き切られて死んだことを説明されていても、自殺しようとした人は少なからずいた。

 

死ぬことが。通常の『死に戻り』になる。

 

『死に戻り』こそが現実に帰れる近道だと、妄信して猛進していく者がいた。

 

そういう者たちはポリゴン片となって仮想現実から。そして現実世界から永久にログアウト(死んで)ゆく。

 

自分は上記3つの動きとは別の動きをしていた。

約1万人が密集している中央広場から抜け出してわき目を振らずにまずは受注していたクエストを達成させるためにNPCのもとへ向かう。

 

他にもごく少数ながらも動き始めたプレイヤーはいた。

はじまりの街から脱出している彼らは、次の目的地《ホルンカの村》へと向かうのであろう。

 

恐らくは予想に反することなく、皆ベータテスターだろう。

 

ソードアート・オンラインも他のMMORPGと同じくシステムの供給する限られたリソースの奪い合いだ。モンスターの湧出(ポップ)に関してだけでも先行したプレイヤーが有利な仕様になっている。それに各エリアに出現するモンスターの湧出(ポップ)率はまちまちと言えども一定時間毎に何匹までと決められている。

このことはベータテストの際に分析をするのが好きな連中によって既に解析されている。

そして1万人のプレイヤーが一気にレベリングできるほどの湧出(ポップ)率を誇る狩場など存在しえない。明らかに狩場の許容適正人数をオーバーする。

もっと攻略が進みプレイヤーが各層に点在するようになればそのようなことはあまり起こらなくなると思うが、今はまだ始まったばかり。

プレイヤーが狩りをできるエリアははじまりの街周辺に集中せざるを得ないし、そのエリアに殺到することは目に見えている。

そして一度モンスターがそのエリアから狩りつくされてしまえば、再度湧出(ポップ)するまでモンスターを待たなければならない。先ほどの自分のようにな。

その後に湧出(ポップ)するモンスターを狩る権利の奪い合い確実に起こる。

そしてその奪い合いもレベルの高いプレイヤー。つまり、先にモンスターを倒していてレベル、ステータスが高いプレイヤーのほうが有利なことは言うまでもない。

 

つまりそのMMORPGの覆しようのない事実(システム)に気が付いた者。

 

そうしたリソース確保の争いに優位に立つべく初心者(ビギナー)を見捨ててスタートダッシュを選んだプレイヤー(ベータテスター)がいる、ということだ。

 

そいつらベータテスターは1万人もの命がかかっている現実(ゲーム)の中で自分達の都合だけを優先するずる賢く意地汚い奴らなのだと、ベータテスターを除く約9000人のプレイヤーからそう結論付けられるのも遠い先のことではないだろう。

 

話は戻して現在の自分のこと。

 

人ごみをかき分け、合間を縫って中央広場から脱出した自分は無事、クエストNPCを見つけてクエスト達成と同時に報酬を受け取っていた。

 

 

   クエスト名:【ボアマンの精巣を届けて!】

 

   内容:ボアマンの精巣×3を納品すること

 

   期限:無制限

 

 

このクエストを4回連続で達成したことにより、自分のレベルは8に。それも経験値(EXP)ゲージの後半まで伸びた。あと2,3回モンスターを倒すとLv.9になることだろう。

この世界のお金。通貨(コル)の所持金額だって合計5万コルを超えた。

 

これ以上のスタートダッシュはないだろう。

まだこのゲームの正式サービスが始まってから数時間。

どんなチート的な戦闘センスを持ったベータテスターがいたとしてもLv.3に届いている人すらもいるまい。

上位者だってLv.2止まりだろう。

 

そんなあり得ないまでの幸運(ラック)を武器にこのゲーム(もうひとつの現実)を生きるひとりの短剣使いのプレイヤー。

 

 

《Shinobu》

 

 

それがこの世界での自分の名前だ。

 

 

 




とりあえず、ここまで。

次回は途中まで執筆していて現在止まってます。
感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。