セイオウとデウスはキリエと別行動でガンバライダー 、そして今回の目的を果たすために動いていた。この二人の場合、別行動というよりは移動した果てに彼女とはぐれてしまった。ということが事実であるわけだが。
広い高速道路には車が一台も通っておらず、二人のガンバライダーが飛ぶには少々広すぎるほどだった。
セイオウとデウスの間には人が二人から三人ほど入れるほどの隙間が空いており、彼らはその距離を維持しながら進んでいく。
二人はここ三十分ほど無言で飛翔しており、耳には通り抜ける風の音だけが響く。デウスはあまり話す性格の人間ではないので、セイオウもまたそれに合わせている感はある。
そんな時に口を開いたのはセイオウだった。
「ねえ、妙だと思わない?」
「妙?」
デウスはそう投げかけたセイオウへと耳を傾けた。
言われてみれば管理局の人間やその他の人員が見当たらない。だが、おそらくこの男が言いたいのはその妙な雰囲気ではないことはデウスもすぐに察することが出来た。
セイオウは顎に掌を被せるように話を続ける。
「イリスはアクートと行動し、キリエちゃんは俺たちと行動する予定だった。よく考えれば不思議な話だ。」
「確かにそれはそうかもしれないな。」
力のないイリスがセイオウやデウス以上に出自もわからなければ現在すら分からないアクートと共に行動するなどリスキーな話だ。尤も、彼女が彼の出自を知るほどの知恵なのであればまた別の話だが。
だが、ここでデウスにも疑問が生まれた。
「俺たちの行動が筒抜けだとでも言いたいのか?」
この話がもしイリスに筒抜けでこの二人がしようとしていることも筒抜けであるなら、彼らがここまで戦ってきた意味はなくなってしまう。
そんな状況の中セイオウはさぁ?と首を横に振った。
セイオウもこうは言ったものの推測の域の話であり、彼女を間違いなく疑えるほどの証拠もアクートに関するヒントを得たわけでもない。犯人だと分かるのであれば彼もこの場ではっきり言ってやりたいだろう。
「これに関しては何とも言えないし次の戦いで確かめる必要があるんだけどね。」
「アンタはまだ"アクートを信じている"。という推測で間違いはないか?」
セイオウは軽く頷いた。葉月が言ったアクートの存在。そしてこれまでの経緯を考えればこの策も容易に動いてくれるだろう。
「あぁ、もちろん信じているし彼には期待している。だがその為にも」
必要なのだ。アクートと同じく謎を秘めたガンバドライバー、そしてそこ秘められた覇を成す"Lord"の力。
その為なら彼は自ら育ててきた弟子とも戦う覚悟など出来ている。
二人は速度を上げて敵地へと一気に乗り込んでいった。
とあるホテルの一室。そこに二人はいた。
葉月はリンディの淹れたお茶をゆっくり味を確かめるように飲んでいた。
一方リンディはお茶に大量の角砂糖を入れて飲んでいた。
「角砂糖入れられるんですか?」
「えぇ。こっちではラテっていうらしいの。」
ラテではあるのだがおそらくこのお茶はほとんど砂糖の味しかしないのではないか?少々の疑問符を浮かべて葉月はお茶を嗜んだ。
葉月がもう一口お茶を飲もうとしたそのとき、そこへ一人の少女がホテルへと入ってきた。少女は急いでいたのかどこかで転けたのかメガネが顔から少々ずれていた。
「大丈夫ですか?」
「えっ?あぁごめんなさい。」
少女は少しの照れを隠しながら葉月へと一礼した。
それを見たリンディはフフッ。と笑みをこぼした。
少女の綺麗な緑色の髪は今飲んでいる抹茶のように透き通っていた。
「マリエル・アテンザです。あなたのベルトをしっかり調整しておいたので使えますよ!」
マリエルは満面の笑みで葉月にガンバドライバーを渡した。アハハ。と彼女の笑顔に圧倒されるように葉月は笑みを作った。そして彼女からガンバドライバーを受け取り手に取った。
ガンバドライバーを見た瞬間、彼女は自らに様々な重いものが降り注いだ気がした。
これは本来自分のものではなく与えられた"力"なのだ。葉月にはこの重みを自身でも感じ取ることが出来た。
彼女も知りたい。あの世界消滅の瞬間に何があったのか。そして記憶を周囲が失っているにも拘らず自分だけが何故記憶を得ているのか。
その為にはこの力を使ってセイオウ、そしてアクートを自らの手で討ち取る必要がある。その覚悟など
「葉月さん。」
「はい?」
葉月のすっとぼけたような声にリンディは笑みを浮かべて彼女の肩を叩いた。
「あんまり気負っちゃダメよ?確かにあなたにも背負うものがあってそれを果たさなきゃいけないという使命感も分かるけど、絶対に気負って一人で抱え込んだら負けちゃうから。」
「リンディさん・・・。」
葉月はさっき降りていた重い使命やアクートやセイオウに対する肩の荷が少し軽くなった気がした。彼女もリンディの言う通りだと頷いた。
マリエルも葉月の手を繋いで握りしめた。彼女の小さな手にも重さを感じて、強く握った手から温かいパワーを貰えそうなほどだった。
「大丈夫です!私が調整したんですからパワーは十分ですよ!」
「ありがとう・・・マリエルさん。」
マリエルは頷いて手を離した。そして葉月は手にガンバドライバーを握ってそのままドアへと歩いて行く。
「気をつけてね。」
そう小さく呟いたリンディにピースサインを送り葉月はそのままその部屋を去って行った。
なのはとフェイト、そしてジー、ザルニス、斬武の三人のガンバライダーはそのまま飛翔を続ける。今のところ敵の気配はなく、彼女たちが飛翔していても物の怪の一つも出はしない。
「本当にここなのでしょうか?」
「ポイントは間違い無いと思うんですけど・・・。」
そうなのはとザルニスが話していた時だった。彼女たちに突如空から何発もの銃弾が雨のように降り注ぎ、忽ち砂煙へと包まれた。
「奇襲ってのも大変なのね。」
「そうですね。気づいていなければ危ういところでした。」
目が眩むような砂煙から何発もの太いレーザー砲が放たれ、少女の横を通り過ぎた。五つのそれぞれの光は空で綺麗に消えると、砂煙の晴れた先から無傷の五人がいた。
「サイコフレームのポンコツがこんなとこで役立つとは思わんかったわぁ。」
「次その言葉を言ってみなさい。あなたの命はありませんからね?」
「でも助かったのは事実だな。」
空中を舞うメロンディフェンダーは行け。というザルニスの合図とともに少女へと向かってくる。
少女はそれを銃で撃ち落として、そのまま地へと降りた。少女の服は先ほどのレーザーで焼けた服の汚れを払った。
「あーあ、これ気に入ってたのになぁ・・・。」
「キリエ・フローリアンさんですね。」
フェイトへ少し誇らしげにえぇ。と答えると彼女の銃は変形して彼女へとアーマーとして装着されていく。
彼女を包んだ光が消えると、キリエは自分の色である桃色の鎧を纏ってなのはたちへと銃を向けた。
「来るぞ!!」
ジーたちが回避すると、彼らのいた地面から鉄の鎖が突き抜けて生えてきてなのはを縛り付けた。
なのはは全身に魔力を纏って引きちぎろうとするが、その力は強くなのはの魔力ですらちぎることは難しかった。
もがくなのはをよそにフェイトと斬武は一気にキリエに斬りかかった。
キリエは対の剣で見事に二人の剣を受け流してそのまま後ろへ下がった。
なのはは片手でレイジングハートを持ち、キリエへと砲身を向けた。
「ディバイン・・・バスター!!!!」
少女が片手で放った一筋の光は剣で防いだキリエを退けて、彼女の剣に傷を入れた。
「なんちゅうパワーや・・・。」
「あんなの片手で撃てんのかよ。」
衝撃に開いた口が塞がらないジーと斬武へと二つの光が横を通り過ぎた。彼らの視線の先には赤と青のガンバライダーがいた。
「セイオウ・・・。」
「アンタか。デウスっちゅうのは。」
ジーと斬武は一気に斬りかかると、二人は回避してそのまま武器をジーたちに投げつけた。
「二人とも!!」
「お前の相手はこの俺だ!」
戦士は二人の元へと向かおうとしたザルニスへと飛びかかりそのまま倒れ込んだ。そして二人は同時に立ち上がり、ガンバソードを召喚した。
「アクート・・・。」
「そんな怖い顔するなよ?この状況を楽しもうじゃねえか。」
ジーはサングラスラッシャーを召喚すると、そのままセイオウへと斬りかかった。
セイオウはジーの攻撃をいなすと、その剣を蹴り飛ばしてジーを蹴り飛ばした。
"オメガドライブ"
"オメガドライブ ディープスペクター"
ジーはオメガドライブをセイオウはギガオメガドライブを放つと、二人の間には爆風が生まれ、そのまま二人とも倒れ込んだ。
「主役がまだ来てないんじゃパーティは始めらんないね!」
「主役?」
「あぁ、主役さ。この試練の要であり、最大の僕らの武器。」
困惑するジーとは別に斬武は一気にデウスと激しい空中戦を繰り広げていた。
「あんたらの目的を聞かせてもらうで!!」
「お前に答える義務なんてないな。」
「しらこいな・・・。そういうん一番嫌いやねん!!」
斬武が一気にデウスに斬りかかるが、デウスは蹴りで弾きとばし、そのまま側頭を腹へと叩きつけた。
「ぐっ・・・。」
「キナミさん!」
向かおうとしたザルニスの前にはデウスが銃を何発も撃ちつける。ザルニスはそれをマイティキックの炎で撃ち落とすと、そのままデウスへと蹴りを入れた。
「お前がどれほど強いかは知らんがなぁ?」
「っ!?」
デウスはその炎を受け止めてその足を持った。ザルニスはそのまま抜こうともがくが、デウスはそれを許さない。
「お前が強いのかは知らんが相手が悪かったな。お前じゃ俺には勝てない!」
カイザブレイガンを召喚すると、その片手を抑えた状態で銃を突きつけた。
逃げようともがくが、デウスの力は強くそう簡単には抜け出せるほどではなかった。
「じゃあな。」
「ザルニス!!」
デウスが引き金を引こうとしたその時だった。デウスに近づいた影はデウスの腹に拳をぶつけ、そしてザルニスの足が離れたことを確認すると、そのまま脳天に後ろ回し蹴りを見舞いした。
「ヴっ・・・。」
鈍い声を出してそのまま後ろへと引き下がると、ザルニスの前にはもう一人のガンバライダーが存在していた。
その目の緑色の複眼と深い青のアーマーに黒いボディ。
それはセイオウたちがよく知るガンバライダーだった。
「やっとか。」
「そのドライバーは!?」
アクートは驚いてその手を伸ばす。セイオウはほくそ笑んで青い戦士へと視線を向ける。彼らの目の前にいたのは以前セイオウに負けたブラットその人だった。
「ここからは」
そうだ。ここからは-反撃の時間-だ。