キリエははやてへと突撃し、その件を振るった。
はやてへとその剣先が当たろうとした瞬間、キリエの剣はアミティエによって防がれていた。
アミティエはキリエの纏っていた青い光と同じように光を纏っていたが、その光はキリエとは違い赤い光を発光していた。
キリエは防がれた剣でそのままアミティエを退けようと押し込むが彼女は全く後退せず、そのまま無言でキリエを押し返した。
キリエは再び斬りかかるがアミティエはそれを回避し、彼女の頭上へと回った。
しかしキリエに防がれて再び鍔迫り合いとなった。
「父さんと母さんが与えてくれたフォーミュラと強い体は人を助けるためのものです!!人を傷つけるためにあるんじゃない!!」
「それでも為すべきことがあるの!!」
キリエがよろめいた瞬間、アミティエはキリエの剣先を弾き、そのまま突き飛ばした。
突き飛ばされたキリエはそのまま鉄塔へと叩きつけられた。
「出力制御が滅茶苦茶です!!皆さんに怪我でもさせたら・・・!!」
押し返されたキリエはそう言ったアミティエへと銃を向ける。
「その本さえあればいいの!!」
夜天の書は膨大な力を持つ魔道書、確かにその力があれば彼女のいうとおり救うことも難しくはないだろう。
「だから・・・」
それでも他人に迷惑をかけることなど許されない。
「邪魔しないで!!」
アミティエへと放った銃弾ははやてたちの前で土煙をあげる。キリエがトドメを刺したと銃をしまおうとした瞬間だった。
「!!?」
「帰りましょう・・・。」
アミティエはキリエの腕を拘束し、そのまま押さえつけた。キリエは拘束したアミティエの腕を外そうともがくが彼女の力は強く、今のキリエで外すことは不可能だった。
それを側から見ていたアクートは軽くため息をついた。
ーアクセラレイター
彼女たちの生まれた星エルトリアで作られたシステムであり、パワーを急上昇させることで爆発的なパワーを得ることが可能である。
本来は戦闘と言うよりは人命救助などに使われるのだが・・・。
「まさか戦闘で使用するとはな・・・。」
赤い眼のガンバライダーは呆れるようにそう言った。そして彼が横目で見た先には斬武とザルニスの二人のガンバライダーが立っていた。
「どういうことですか・・・?」
「アクートが二人て・・・?」
困惑する二人をよそに赤い眼のアクートは自分の手足を慣れない靴を見るように眺めた。
「そっか・・・アクートの体で復活したからこうなってんのか。」
斬武は無双セイバーを、ザルニスはデンガッシャーを召喚して一気に間合いへと踏み込んだ。
二人の戦闘技術は高く、その一撃をアクートへと直撃させた。そのままアクートは吹き飛んで、ビルのガラスを割って叩きつけられた。
「なんや大したことないやん。」
凍りついたセイオウは動こうとするも彼らの氷の力は強く、セイオウたちでは破ることは困難だった。
「クッソ・・・!!」
このままではアクートごと自分たちがやられると思った時だった。
「はええよお前ら・・・。」
「ガンバライダーナハトとデュアル、只今到着した。」
最悪の事態だ・・・。これだけ悪戦苦闘しているこの事態に更に加勢など朱崎の計画にない失態もいいところである。
「・・・いつまで寝ているつもりだ?」
そう緑色の複眼を付けたアクートが聞く。それに呼応するように赤いアクートは立ち上がった。
「急に呼び出しといてウルセェなお前は・・・。」
「何をナメた口・・・!!?」
斬武の会話は途切れた。デュアルたちが彼女たちのいた方を見ると、殴り飛ばされた二人が倒れていた。
「あんなの反則だろうが!!」
ナハトは必死に目を凝らして辺りを見渡すが先ほどまでいたアクートの姿はない。デュアルに背を任せるも、恐らく自分の方が反応速度は早いだろう。ナハトにはそれくらいの自信があった。
「そこか!!」
点でなぞられた線を切り取るようにガンガンハンドの鎌を投げつけた。しかし彼の元に戻ってきたときには血の一つもついていなかった
「遅い。」
ナハトは声を出す間も無くアクートに殴り飛ばされた。そしてアクートの視線はブラットへと向いた。
「本気なのか・・・?」
「・・・俺が本気じゃないと思うか?」
そう言い斬りかかると、ブラットはそれを右に左に回避する。彼女の動きは鈍く、何かに怖気付くようだった。
アクートはそれに当てようとするように右に左に剣を振るう。その剣には一つの迷いさえ見せない。
「本気で斬らないなら俺がお前を」
「待て!!」
アクートが剣を振るおうとした瞬間、彼は横からのキックで吹き飛ばされた。その攻撃は重く、アクートでさえダメージを受けていた。
「お前は・・・?」
「今から死人になるやつに名乗る名はねぇな。」
蹴りを入れたのはガンバライダージーだった。ジーとアクートは数秒にらみ合ったのち、互いの剣先を走らせ火花を生んだ。
一方で復活したアクートの秘密を探っていたリョウヘイはその戦闘を見て驚愕する。
「アクートが二人だと!?」
確かにアクートの個体が分裂した事例はこれまでに無かったわけではない。しかし恐らくその事例と今回は違う。
これまでは同じ種類の個体が増えていたのだが、今回の事例はアクートと性格と複眼の色が違うときた。恐らく復活のカギを握っているのも彼だろう。
「ユーノ、そちらの情報は?」
「まだ手掛かりになりそうな情報はないですね。」
このままだと全員がやられるのも時間の問題だろう。しかし情報が見つからない今この場を離れるわけにもいかない。
悩んでいるリョウヘイを見かねてかユーノが近づいていった。
「リョウヘイさんは行って。」
「え?」
リョウヘイはユーノの言葉によろめいた。それに続くようにユーノは言う。
「いま形勢を握るのはあなただ。迷っていたらきっと大切なものを失う。」
ユーノの言葉を聞いてリョウヘイは本を置いた。そしてゆっくりと無限書庫から降りていく。
「俺も出る。」
そう言ってリョウヘイは無限書庫を後にした。そしてリョウヘイが手に取っていた本を丁寧に手元に置いた。
「ここから僕が情報を・・・」
その先からユーノの言葉が止まった。
そこにはーWorld Core ーの文字が書かれた本があった。
リョウヘイがゲートへと向かう最中、一本の電話がかかってきた。それは彼のよく知る人物の一人でもあった。
「・・・もしもし。」
「あぁ、俺だ。」
ガンバライダーアイザ"彼方ヒサキ"だった。ヒサキはリョウヘイへと電話をかけたのも意味あってのことだった。
「あのドライバーを渡したのはお前か?」
「だとしたら?」
リョウヘイの口調は強く、少し挑発するようにも聞こえた。
そんなリョウヘイに腹立ちながらもヒサキは話を続ける。
「あのドライバーをセイオウが彼女に付けてくることを望んだ。お前もまた彼らの協力者なのではないのか?」
リョウヘイが唾を飲み込む。少し黙ったのちにリョウヘイは一言
「知らねえな。」
そう言ってヒサキの電話を切った。ヒサキは突然電話を切られたことに困惑する。
「何が起きている・・・?」
リョウヘイが裏切ったこと、そして朱崎が行おうとしてることの全貌、それが今のヒサキに見えることはなかった。
電話を切ったリョウヘイは真っ直ぐに前だけを見てゲートを目指す。
言い出せなかった。自分が彼らと共に"目的を果たす"側であることを。
取り押さえられたキリエはアミティエの腕を振り払おうとするがアミティエの力は強く、今のキリエで振り払うことはできなかった。
「お姉ちゃんはそうやっていつもいい子なんだよね。何も出来なくて冴えない私とは違った。」
キリエは涙を流してアミティエへと訴えた。
「キリエ・・・、私は」
「お姉ちゃんには分からない!私が今どんな覚悟でここにいるか!」
キリエの言葉にアミティエは返す言葉を失う。そしてアミティエの腰にはキリエのヴァリアント・ザッパーが押さえつけられた。
「嫌いよ・・・。」
こうするしかなかった。
「お姉ちゃんなんて大っ嫌い!!」
その刹那、アミティエの腹はキリエによって撃ち抜かれ、そのまま彼女は血と共に宙を舞った。
アミティエはその瞬間、銃をなのはたちに放ち、爆風を起こした。なのは、フェイト、はやてはそれから逃げるように一目散に走るが、キリエのシステム・オルタのスピードは凄まじく、一人、また一人と殴り飛ばされていく。
「っ!!」
フェイトが殴り飛ばされた瞬間、なのはの方を向いた。
「キリエさん・・・。」
なのはが立ち止まった瞬間、キリエは一瞬でなのはの懐に飛び込んで殴り飛ばした。
そしてキリエははやてを見つけると、すぐさま飛び込み、腹に重い一撃を加えた。
はやては声を出す間もなく倒れ、一瞬で眠りについた。
「はやて!!」
ジーが向かおうとするが、アクートの追撃から離れることが出来ない。
「お前の相手は俺だ!さっさと犠牲になっちまえよ!」
「うるせえ!!」
"スクラップフィニッシュ"
"ウェイクアップフィーバー"
アクートのエンペラームーンブレイクとジーのスクラップフィニッシュが激突し、周囲に大きな爆発を起こした。
その煙が晴れると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
「ジー!?」
ザルニスの声が虚しく響く。そこに倒れていたのはタケシチロウだった。アクートはそのまま倒れたタケシチロウから一歩、二歩と歩き去っていく。
「ま・・・て。」
必死にタケシチロウが手を伸ばすが、その手は届かずアクートはその手から離れていく。
「アイツが夜天の書を奪えば事は解決する。少し借りるぞ。」
そう言ってアクートはボロボロのセイオウたちと共に空へと羽ばたいた。
一方でキリエはその夜天の書へと手を伸ばし、奪おうとした。
「ダメです!これは絶対ダメです!」
リインフォースⅡが必死に止めるが、キリエはその手を退けようとはしない。
「どいて。」
「ダメです・・・!!」
キリエの手をわずかな魔力で凍らせるが、そんなものは今のキリエにとっては少し氷を乗せられた程度にしか感じなかった。
キリエは無言で銃を向けて放った。その発砲音はリインフォースとキリエを繋いだ氷だけを撃ち抜き、そのまま衝撃で飛んでいくリインは倒れた。
その光景を高町なのはは見続けるしかできなかった。彼女を止めず、ただその場所で立ち止まって見続けるしか出来なかったのだ。
キリエがバイクで去ろうとした瞬間、なのはは少しずつキリエへと近づいていく。
「待って・・・。」
一二歩近づいたところでキリエはなのはに向けて銃を放った。そして少しなのはの方を見ると、そのままバイクのエンジンをかけて走り去っていった。
なのはは見ていた。キリエのその額に"涙"が流れていたことを。