-惑星エルトリア-
かつて緑の星として栄えた地球とは離れた遠い星。この広大な大地に緑が広がっていたのは-かつて-の話である。
現在は砂漠化や土壌汚染といった環境問題に苛まれて、人が住む星としては既に「死」に等しかった。
そこに住んでいた生物は変異してそれぞれの進化を遂げた。勿論生物としては正解の道だ。しかしそれは彼らの望まぬ進化であったこともまた事実である。
当然そんな死の星を離れて新たな居住区に住む人々も少なくはなかった。そちらの方が安全で健康面でも最適なのだから無理もないだろう。
政府さえも移民を推奨している。この星を捨てて新たな故郷に居住することを多くの人々が望んだ。
しかしその最適解を選ぶ人ばかりではなく、この星を再生させようという人も存在していた。
-グランツ・フローリアン-彼はエルトリアでも有数の科学者であり、彼の科学力はエルトリアでも随一だった。彼の作り出した植物は花を咲かせて少しずつ死の星に緑を増やしていく。
彼の才能はエルトリア中に知れ渡っていて、彼の開発した-フォーミュラスーツ-はエルトリアのような過酷な環境下でも生きられるのは勿論のこと、無機物に干渉・解析する-ヴァリアント・システム-を応用した武器の開発も行なっていた。
試作機として作られたフォーミュラスーツは彼の二人の娘-アミティエ-と-キリエ-に渡されることとなった。
そんなアミティエが五歳の頃の話だ。
アミティエが五歳の頃、キリエが高熱を出したのだ。まだ幼いキリエにとっては高熱も大病と言えただろう。
「母さん!!」
母のエレノアに焦るアミタの声が聞こえふと外を見た。薬を急ぎ持ってくるようには伝えたものの、外は激しい砂嵐に見舞われて砂塵と風でほとんど前が見えない状態だった。これでは町外れにあるこの場所まで来るには相当の時間がかかるだろう。
生憎グランツは研究で外出しており連絡を取ろうにも取れない状態だった。
心配してキリエを看病するアミティエの姿が痛々しく自分に刺さる。こんな時に自分は何も出来ず見ているだけなのか。母親としてせめて薬を街まで取りに行ければ・・・。そう思っていた時だった。
「母さん、薬はないのですか?」
アミティエの言葉に唾を飲む。そしてゆっくり話し出した。
「街の薬屋さんには頼んではいるの。でも、この嵐じゃいつ来るか・・・。」
アミタはそれを、聞くと手元にあったマントを取ってドアを開けようとした。
「アミタ!」
エレノアはアミティエを呼び止める。きっとキリエのために薬を取りに行くと言い出すのだろう。エレノアにはそれがわかっていた。しかし幼い娘をこんな嵐の中外出させるなど親として認めるわけにはいかない。止めようともう一言かけようとしたその時だった。
「大丈夫ですよ母さん。私、強いですから。」
「アミタ!!」
エレノアが止めようとした時にはもう遅かった。アミティエはフォーミュラスーツを身に纏って嵐の中へと加速した。
エレノアはそっとドアを閉じてキリエの手を握りしめた。自分の罪深さが心に重く押し寄せてくる。託して良かったのだろうか、本当にこれで良かったのかと。
街まで進んで加速していくアミティエは砂嵐を掻き分けながら右・左と回避する。
アミティエは加速しながらふと後ろを見る。エレノアの制止を振り切って来たことの後ろめたさ、申し訳なさが彼女にはあった。
「それでも・・・。」
アミティエは再度前を向いた。母の為、妹のキリエを助けるためにも自分が動かねばならない。姉である自分しか動けないのならそうするべきだったのだ。そう考えている時だった。
「っ!?」
アミティエは旋回して弾け飛ぶ砂を振り払った。
-サンドワーム-この地に住む変種で元々は虫だったのだが、エルトリアの過酷な環境で生きるために進化・変質した種族だ。
サンドワームは人や虫を喰らい生活しているため人々からも忌み嫌われている存在だった。
アミティエはすぐさまヴァリアント・ザッパーを構えた。その手は震えていてそれに連鎖するように腕、足まで震えてくる。
本当は彼らに罪なんてない。彼らがここで死ぬ意味なんて無いはずなんだ。それでも
そう頭の中を掻き回されていた時だった。
"Ganba rider Lord Rerize"
「Lordシステム・リライズ!!」
"Rerize open"
機械音声とともにサンドワームは風圧と衝撃波で怯んだ。また地に戻ると数秒後に上へと浮上した。
サンドワームが雄叫びを上げると、アミティエの前にいた戦士は怯まずに剣を向けた。
「・・・え?」
アミティエに背を向けた戦士は赤と錆びたようなワインレッドの鎧を纏い、片手には剣を、もう片方には銃を持っていた。
戦士はこちらを向かず襲いかかるサンドワームの攻撃を防いでいく。サンドワームの放った砂を一つ一つ丁寧に弾き飛ばす。
「あ・・・あの」
「君、急いでるんでしょ?」
背を向けた戦士はアミティエへと問いかける。アミティエは小さく頷きゆっくり立ち上がる。
サンドワームへともう一方向から弾丸が放たれる。そこには同じく赤とワインレッドの鎧を纏った戦士が銃を向けていた。
鎧こそ見えるがその顔は砂煙で見えない。爆煙と砂塵が混ざる中、戦士はゆっくり銃を下ろす。
「だったら立ち止まんな。守りたいもの一つくらい、テメエの足で救ってやれ。」
アミティエが頷いてそのまま走り出して去っていく。
あの赤い戦士は誰だったのか。彼らは何故自分を助けてくれたのか。そう考えているとき、アミティエの目は覚めた。
目が覚めた時には彼女は真っ白な天井と見ていた。
周囲を見渡すと、そこには白衣を着たスタッフが何人かいて、自分を映し出すモニターがいくつか設置されていた。
「起きましたか?」
スタッフの言葉にゆっくりと頷く。アミティエはまた天井を見た。
懐かしい夢だ。過去の自分、そしてあの時救ってくれた謎のヒーロー。自分が思い出せないくらい幼い頃の話で自分さえいつの話かあまり覚えていなかったくらいだ。
そしてあれからエルトリアが再興しかけたこと、父が病気になったこともあれから随分先の話だ。
-時空管理局 技術開発部-
管理局の武器の整備などを担当する彼らは今日ばかりは大忙しだった。
砕かれた電磁武器、そしてカレドヴルフ・テクニクス社より持ち出された新兵器の設計に大忙しだ。
そんな中、マリエル・アテンザはアミティエから手に入った情報をPCに取り込み一つ一つ丁寧に見ていた。
「すごい体。回復能力と運動能力が通常の人間の倍以上。これなら過酷な環境でも生きていけるわね。それに武器の技術もかなり発展してるし優秀・・・」
資料を読み終わったのか紙の束を横に退けた。
「時間があるならゆっくり研究したいくらいだわ。」
傾いたメガネを直すと、そのドアから入ってくる人を迎えるように笑顔で振り向いた。
「アルフありがとう。」
うん!とアルフは元気よく答えると、アルフと共に歩いてきた男性よりも後ろに下がった。
「あなたが"九重一成"さんですね。」
「えぇ、GRZ社開発部の九重です。以後お見知り置きを。」
二人は握手すると、九重を手で案内した。
「アクートの使うツインバースト、そしてエルトリアの技術に勝るにはこちらも手を打たねばなりませんね。」
アクートの分離能力"ツインバースト"と優秀なエルトリアの技術、それに勝るには個々ではなく合わさり"調和"された能力が必要なことは研究者である二人の意見の合致だ。
「そうですね。だからこの子達には頑張ってもらわないと。」
手元にあるデバイス達を見てマリエルは言った。特にフェイトのバルディッシュは調整が難しいので手伝うと言ってくれたアルフには感謝するべきだろう。
「あれ?レイジングハートは?」
マリエルが辺りを見渡すと、シャリオの手元でそっと乗っているレイジングハートがいた。
「私とレイジングハートはちょっと野暮用で・・・。」
"I'm sorry."
そう言って少し駆け足で二人は研究室を去って行った。
アミティエが起きたとの報告があり、ガンバライダーと魔導師達は一手に集められた。しかし
「あれ?葉月さんと片桐くんは?」
「葉月さんは出掛けると聞いています。よほど重要なことだったらしいのでこちらで許可しています。片桐さんは・・・。」
時空管理局のレティに結城は答えた。結城の声はガンバライダーの時と違い、弱々しく小さな声だった。こんな時にと思いながらもいないことも仕方ないので分かったとレティは返した。
「で、傷の容態はどうなんですか?」
レティはモニターを映す。そこには大量の食事が終わった皿が並べられていた。
「充分な栄養補給を終えたら回復したそうよ。」
「それはまぁ・・・。」
レティの淡々な言葉にシグナムは驚きで唖然とする。秋津はレティへと問いかける。
「ここに呼んだということは重要なことなんだな?」
「えぇ、彼女が目を覚ましたことと少々の面談の報告、そして彼女が尋問の相手を指定しているの。」
「そんなのアリなのか?」
秋津の呆れた聞き方にレティは淡々と頷く。
「で、誰なんだいレティさん?」
虎が尋ねるとレティはフェイトの方を向いた。フェイトは自分を指差す。
「え?私ですか?」
レティは首を縦に振る。そして話を続けた。
「どうする?ここはあなたに一任する。」
フェイトは首を縦に振った。
「誰かがやらなきゃいけないなら私にやらせてください!」
そう話しているとドアが開き、ゆっくり入ってくる影があった。
「あんたが遅刻なんてらしくねえぜ?副隊長さん。」
入ってきたのはタケシチロウだった。すまないと一礼したのち、ゆっくり椅子へと座った。
「・・・何があったんですか?」
シャマルが問いかけるがなんでもない。と軽くあしらった。
「心配してくれてる相手にその態度はいただけませんね?」
「そうやぞ!お前が偉いんか知らんけどな」
コウジとキナミをなのはたちがまあまあと宥めた。
しかしその姿はなのは達も放っておけるほど優しい表情ではなかった。