オールストン・シーでの戦闘が終了したガンバライダー一行と魔法少女たちはホテルの一室で各々の時間を過ごしていた。
今回の計画の筆頭とも言えるリョウヘイは時空管理局の執務官"クロノ・ハラオウン"と連絡を取っていた。
「大概はわかったよ。」
「こちらもです。つまり惑星"エルトリア"から来た少女とそちらの社長"朱崎勇気"が事件の首魁と見てよろしいですね?」
クロノの言葉にリョウヘイは軽く頷く。
「相手は朱崎。つまりはGRZ社を統括する社長だ。並行世界を動けるシステムが向こうに回るのも時間の問題だろう。」
「少しばかり厄介ですね・・・。」
「にしても、エルトリアの科学者"フローリアン"の娘さんねえ。」
リョウヘイとクロノは数秒ほど自分たちの持っている資料とにらめっこした。
リョウヘイの目の前にはガンバライジング社の、クロノの目の前には管理局、並行世界の資料が並べてある。
そうしていると後ろで覗いていた闘真が顔を出した。
「でもこっちに来た情報だと惑星"エルトライア"って書いてなかった?」
余計なことを・・・。リョウヘイはそう思いながら闘真の顔を掴んだ。闘真は突然のことに驚いたのかその場で手を左右に振り回した。
「恐らく誤字雑字だ。悪いが気にしないでくれ。」
「は・・・はぁ。」
半ば呆れたように納得したクロノはそのまま話を続けた。
リョウヘイもまた闘真を投げるように手を離した。闘真は投げられた勢いでそのまま後ろへとふらついた。
「あと、この生命体・・・バグと仰っていましたが」
「あぁ、そいつらをほっとくとミュータントっていうもっと面倒なものになる。」
リョウヘイの説明にクロノはうーん。と少し悩むそぶりを見せた。
「我々の魔法で対抗できるものでしょうか?」
「どうだろうな・・・。」
リョウヘイもまた悩むそぶりを見せた。
「そいつの魔力にもよるが恐らく魔力を武器に纏わせる物理型の魔導師だと厳しい。うまく魔法陣を構築すれば破壊も出来そうではあるが」
「ずいぶんお詳しいんですね?」
クロノの言葉にふと我に返ったリョウヘイは小さく苦笑いした。
「実はミッドチルダに縁があってな。色々話してしまってすまない。」
「いえ、こちらに理解があるのであればそれに越したことはありません。」
クロノは穏やかな声でそう答えると更に資料を見た。
「あとこちらから少し頼みたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」
「丁度良かった。」
リョウヘイの言葉にクロノは疑問符を浮かべる。リョウヘイの少し不敵な笑みに彼は一歩足を引いた。
「俺もあんたらに頼みたいことがあったんだ。」
嫌な予感がするね。クロノは隣にいた通信士のエイミィと顔を合わせた。
こちらへと着任したリンディ・ハラオウンはバルコニーで一人空を見上げて佇んでいた。
「まさかこんなことになるなんてね・・・。」
そう呟きながら後ろを向くと友人のすずかと仲良く話すフェイトの姿があった。
「どうかされました?」
リンディが自分の横を見るとそこには同じく佇む男がいた。
男は手に持った飲み物を少し口につけた。
「これ抹茶ラテっていうらしいんです。何でも抹茶に砂糖とミルクを入れるんだとか。」
「あら、私がいつも飲んでいるものと一緒だわ。」
少し作ったような笑顔で笑うと男も笑みを返した。
「あぁ、自己紹介まだでしたね。ガンバライダー二番隊隊長"片桐タケシチロウ"と申します。以後お見知り置きを。」
「私は時空管理局アースラ艦長"リンディ・ハラオウン"です。よろしくね。」
お互いに軽く会釈するとタケシチロウはフェイトの方を見た。
「ハラオウン・・・ということは娘さんですか?」
「えぇ、義理なんだけどね。」
リンディもまたフェイトの方を見た。彼女は笑顔見せていた。
「最初はリンディさん。って呼んでたんだけど、最近はそうとも呼んでくれなくなってね。」
「義理・・・ってなると呼びにくいのかもしれませんね。」
うん。と小さくうなずいた。
「私も母親として彼女を見てきたつもりなんだけど・・・、なんだか寂しくてね。」
タケシチロウはふと空を見上げた。そして飲み終わった抹茶ラテのコップを近くのテーブルに置いた。
「それは他人じゃなくて家族って認めてくれた証拠じゃないですか?」
リンディはふとタケシチロウの方を向いた。彼は少し遠いところを見つめていた。
「ふとそうなった時"母さん"って呼びづらいもんなんだと思います。だから少し待ってあげるのも大事なんじゃないですか?」
タケシチロウの少し悲しそうな笑みはどこか遠い誰かを思っているようだった。
それを見たリンディは少し笑いが声に出てしまった。
「俺なんかめちゃめちゃ恥ずかしいこと言ってんな・・・。」
ううん。と照れるタケシチロウに対して首を横に振った。
「ありがとう。少し私を待ってみるわ。」
そう言い残しリンディは室内へと入っていった。
「・・・どっから見てた?」
「全部見てたわ。」
タケシチロウの後ろにいたのはファントム"メデューサ"だった。
メデゥーサとタケシチロウは複雑な関係のため省略するがこれまで共に戦ってきた"パートナー"のようなものだった。
「私に見せない一面も見せるのね。」
「っせぇよ。」
メデゥーサにそう言い捨ててタケシチロウはコップを持ってそのまま部屋へと入っていった。
クロノは時空管理局内に存在する様々な書類が積もった"無限書庫"へと通信を回し、司書である"ユーノ・スクライア"と会話していた。
「ということなんだが頼めるか?」
「あぁ、探すには探してみるけど・・・。」
ユーノはクロノに物言いたそうな目で見つめた。
「言いたいことがあるならこの際言ってくれ。」
「あぁ、悪いね。」
ユーノは少し深い呼吸で整えるとクロノへと言葉を飛ばした。
「過去に消滅した、ましてや存在したのかどうか分からない遺産が無限書庫で見つかるとは思わない。あとGRZ社と管理局の関係性ってあまりに私的すぎないか?」
ユーノの言うとおりである。後者はともかく、前者においては存在したかどうか不明ないわば"お伽話"に等しい可能性の書物を探せなど無理も同然である。
「探すだけでいいんだ。あったらあったで報告が欲しい。」
うーん。と頭を抱えるユーノとクロノの間にエイミィから通信が割り込んで入った。
「クロノくん、はやてちゃんたちがもうこっちに合流できそうだって!」
「わかった。すぐ向かう。」
クロノからの通信が切れるとユーノは無限書庫の広い天井を見上げた。
偉い人は本当に口だけでこっちの度量を知らないんだから・・・。そう思いながらユーノはまた無限書庫を飛び回り、上からのお仕事をこなすのだった。
一方外でじっと遠くを見つめていたのは葉月だった。
唯一戦えると思っていた能力"ガンバライダー"を師である朱崎に破壊されたショックは彼女も計り知れなかった。
「僕はやっぱり・・・」
「あの」
葉月が弱々しそうに後ろを向くと、そこには椅子に座って同じく遠くを見つめていた高町なのはがいた。
「あぁ、独り言なんだ。」
「・・・」
「気に・・・しないでくれ。」
弱々しく目を背けた葉月の元へとなのはは駆け寄ってそのまま手を握りしめた。
「人は誰だって悩みます。でも大事なのはそれを一人で背負いこむんじゃなくて、誰かと一緒に解決することだと思うんです。」
「・・・そうなのかもしれないな。」
不思議だった。自分は小学生に諭されている筈なのに、不思議と彼女の言葉を受け入れることができた。
少女の目は強く輝いて見えて、その奥底には未来の暗闇さえ変えていけそうな光が見えた気がした。
「おっ、こんなところで密会か?」
そこに現れたのはガンバドライバーを片手に持ったリョウヘイだった。
「・・・揶揄いにきたんですか?」
「んなわけあるか。」
リョウヘイは葉月の噛みつくような冗談を叩き落とすように否定した。そして彼女へと無言でガンバドライバーを投げた。
「えっ」
「リョウヘイさん・・・これは?」
愕然とするなのはと葉月に近寄り、ガンバドライバーを指差した。
「これはとあるガンバライダーが使ってたらしくてな。リストに載ってないわデータだけ残ってるわでどうしようもなかったんだよ。」
「それってまさか・・・」
小さな声でリョウヘイに問うと、リョウヘイは小さく頷く。
「"Lordシステム"。因子はアクートと酷似してるみたいだが詳細は不明。お前が前に名前を出してたガンバライダーと同じ名前だ。」
葉月は強くガンバドライバーを握りしめた。彼が消滅した時のことを少しばかり思い出した。
「でもこれは本来氷菓が」
「だから借りてきたんだろ?」
現在Lordシステムの挿入されたガンバドライバーを使用していたのは彼女の幼馴染でもある"噫蘭 氷菓"だった。でもどうして自分が?彼女の思考回路では到底理解できるものではなかった。
そんな不安げな彼女を見たリョウヘイは葉月の肩を強く叩いた。
「次のミッションでセイオウはお前に任せるから必ず倒してこい。」
葉月が頷いたのを確認するとリョウヘイはそのまま去っていった。
「葉月さん。私たちもお手伝いします!」
「ありがとうなのはちゃん。」
二人が少し落ち着いたのも束の間、クロノからの通信が入った。
「異世界からの転移を確認した。恐らくエルトリアからの者だろう。」
「詳細は?」
リンディの指示が出るとすぐさまモニターへと現地の映像が映された。
「恐らく一人、目的は不明です!」
「恐らく首魁の少女"キリエ・フローリアン"とは別の人物・・・リョウヘイさんどうしますか?」
クロノが指示を仰ぐとリョウヘイは闘真を一度見て一度深呼吸した。
「こちらからガンバライダーファングを送ります。目的はあくまで目的の聴取、相手がその気なら戦闘も許可する。」
「オーケー。んじゃあひと暴れしてきますかなっと!」
闘真はそのまま元気よくエレベーターへと走って行ってそのまま任務へと向かった。
「なぁ、あいつ一人でいいのか?」
そう虎が聞くとリョウヘイは頷く。
「あいつも任務くらいは遂行してくれるって信じてる。」
「でもあいつ事情聴取する気ゼロだったけど」
虎のその一言で場は一瞬にして凍てついた。そーっと、辺りを見渡すと目に入ったのはコーヒーを飲む流と奏夜だった。
「EXE、テイカー。あいつの保護を頼めるか?」
はぁ。と二人は揃ってため息をついた。
「まぁバカをやらかすよりマシか。」
「被害が及んでも良くないしな。」
二人はぐちぐち言いながらそのままエレベーターに乗って下へと降りていった。
珍しく崩れるようなリョウヘイの采配ミスはこの後の配置のグダグダさへと繋がった。