「智也が浜咲だったら」   作:高尾のり子

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第14話

 

 

 いのりは自室のベッドでカナタに股間を舐められて暗澹とした気持ちを深くしていた。二人とも全裸で、カナタはベッドの下におりて、いのりの脚を開かせて、その間に顔をうめて舌を使っている。いのりはクリトリスを舐められ、吸われて、巧みな愛撫を受けていたけれど、少しも気持ちいいとは感じられない。ぺちゃぺちゃぬるぬるとした不快感だけが股間を這い回っている。

「いのっち…ハァ…ハァ…」

「………」

 こんなコトして何が楽しいの、女同士で気持ち悪い、いのりは可能な限り何も感じないように意識を閉ざしていたが、いつまでもカナタが終わってくれないので演技をする。

「ぁっ…ああっ…」

 イくフリしないと終わってくれないし、いのりは背筋をそらせ、息を乱して喘ぐフリをした。

「…ィ…くっ…」

「ふふ♪ いのっち、可愛い」

「……ハァ、……ハァ、………」

 もう満足してくれたでしょ、さっさと帰ってよ、いのりは起きあがろうとしたが、カナタは解放してくれない。今度は交代して欲しそうに股間を擦りよせてくる。いのりは一秒でも早く終わってほしいので、カナタと場所を交代してベッドから降りると、ベッドで脚を開いて待っているカナタの股間に顔を近づける。息を止めて、匂いも感触も何も感じないように舌を使う。できれば、舌よりも指で済ませたいのでピアノで培った器用さを発揮してカナタを絶頂に至らせる。

「あッ! あんっ! んっ、…いのっち…、…待って、まだ…」

 ゆっくりと楽しみたいカナタは愛撫から逃げて、いのりを見つめる。

「次は舐め合いっこしようよ。シックスナインで」

「……どっちが上?」

「どっちがいい?」

「………」

 どっちでもいい、むしろ、家に帰ってオナニーでもしててよ、いのりは返事をせずに立ち上がって部屋を出ようとする。

「どこ行くの? いのっち」

「……トイレ」

 いのりは冷め切った声で答え、ドアを開けようとしたが、カナタが背後から捕まえてきた。

「どっち?」

「……? どっちって何が?」

「トイレ、大きい方? 小さい方?」

「……。小さい方。すぐ戻ってくるから。ちゃんと洗うから」

「汚くないよ。いのっちのなら平気♪」

「………」

「いのっち、ベッドに戻って」

「……おしっこしたいんですけど」

「いいから戻って。リナ」

「……………………」

 いのりは言われた通りにする。リナという言葉を発されると、反論の気力もなく要求に従ってベッドへ戻り、また、脚を開いた。

「潮吹きってさ。おしっこしたいとき起こりやすいらしいよ♪」

「………で?」

「だから、舐めてあげる」

「……………」

 いのりの股間にカナタが舌を這わせてくる。クリトリスの下にある尿道を舌先で押されると、いのりは放尿したい衝動におそわれて困った。さらにカナタは膣の奥まで指を入れて、内壁を巧く擦りあげてきた。いのりの膀胱が裏から圧迫されて悲鳴をあげる。

「ぅっ…くっ……もれちゃうから、やめて」

「ふふ♪ 感じてる?」

 カナタがクリトリスごと強く尿道を吸ってくる。

「あうっ…もれるから!」

 いのりが抗議してもやめてくれない。

「カナちゃん! やめて! それ以上、吸われたら出ちゃうよ! もれちゃう! ホントにもれちゃうから!」

「いいよ、しちゃっても。いのっちのなら平気」

 そう言って強く吸われると、いのりはガマンが限界に近づいてきた。

「ううっ…、…バカ………ホントに……かけちゃうよ…」

「いいよ、いいよ♪」

「…………」

 そう、いいなら、いいや、しちゃえ、いのりは自分の身体をもてあそぶ脅迫者の顔面へ小便をかけることで、せめてもの憂さ晴らしと復讐にしてやろうと決め、ガマンするのをやめた。

 じゅわっ…

 いのりの小水が噴き出した。

「ぅっ! もう限界っ、もれちゃう! イヤァぁ♪」

 いのりはガマンできずに失禁したという演技をしながら、カナタの顔にかけるつもりで放尿したけれど、想像した放物線は描かれず、カナタは股間に吸いついたままだった。

「んくっ…んくっ…」

「っ?!」

 ヤダっ、飲んでる、ホントに飲んでるのっ?! いのりは小水を飲まれて驚愕した。カナタの喉が勢いよく鳴っている。

「んくっ、んくっ、んんくっ」

「……………………」

 ホントに飲んでる、私のおしっこ、飲んでる、いのりは信じられない光景を目の当たりにしながら、排泄を終えた。

「ぷはぁっ! ハァ……ハァ…」

「……」

 汚っ、いのりは両手にいっぱいの軽蔑と嫌悪を顔に出さないよう努力したが、とても不可能だったのでシーツに顔を伏せた。

「ふふン♪ 言ったでしょ、いのっちのなら平気って」

「…………」

「知ってる? 人間の身体の60%以上は水分で出来てるんだよ」

「……………」

「だから、さっきまで、いのっちの身体だったH2O分子が今はアタシの身体をつくる分子に置き換わるの♪」

「……………………」

「これなら、女の子と女の子でもホントの意味で一つになれるよ? ステキだと想わない?」

「…………」

 想わない、変態、お腹壊して、死んじゃえ、いのりがシーツへ顔を伏せたままでいるのをカナタは恥ずかしがっているのだと勘違いして、次なる要求をする。

「アタシもしたくなっちゃった♪」

「………」

「ね、いのっち……」

 カナタは少し頬を赤くして、ねだる。

「アタシの、おしっこ……飲んで」

「っ……」

 いのりはシーツへ顔を伏せたまま激しく首を横に振った。長い髪がもぞもぞと動いて首を振っているというよりは毛玉が動揺しているように見える。

「いいじゃん♪ Gじゃん♪ Fじゃん♪」

 ほたる的ギャグを言いながらカナタは後輩に跨った。騎乗位になって、いのりを逃がさないようにする。

「ね、いのっち」

「……」

 私は便器じゃない、あなたは便器でも、私は便器じゃない、いのりは拒絶しようとしたが、やはり強要される。

「リナ♪」

「っ……………………」

 いのりは身体を弛緩させ、動かなくなった。だらりとされるがままに身体をもてあそばせる。いのりが抵抗をやめたので上を向かせ、カナタは騎乗位のまま前へ進むと、いのりの口元へ股間を向けた。

「いのっち、舐めてぇ。さっきアタシがしたみたいに♪」

「…………」

 いのりは目を閉じて自分が何を舐めているのか考えないようにして、カナタのクリトリスを舐めて吸い、悦ばせる。

「あんっ♪ んっ…ぁぁ……気持ちいい……」

「…………」

 まさか、しないよね、おしっこ、したり、しないよね、お願いだから、しないでね、いのりは儚い願いを胸に抱いて、舌技だけでカナタに満足してもらうために教わりたくなかったのに教わった舌使いで攻める。この変形騎乗位のまま放尿されると最悪なので体勢を入れ替えるため、舐められてよがるカナタの乳首も指で愛撫してやりつつ、寝かせる。

「ハァ…あんっ♪ …いのっち……巧くなったね。……んっ…」

「…………」

 さっさとイってよ、変態、いのりは憎悪を込めて舌を使った。

「ああっ……やんっ、もれちゃいそう♪ イったら、もれちゃう」

「………。ねぇ、カナちゃん、トイレ、行ってきてよ」

 いのりは儚い願いを諦めずに口にしてみたけれど、カナタは解放してくれない。いのりは髪をつかまれ、逃げられなくされた。

「ゆっくり出すから、ね」

「………」

「けっこう大変だったんだよ。いのっち勢いよく出すから、全部飲みきるの」

「……」

「ゆっくりするから、ね?」

「…………ごめん、カナちゃん、……やっぱり気持ち悪いよ。今日もアナル、舐めてあげるから、これは許して。飲むのは無理」

「う~…………リナちゃん、飲んで♪」

「……………………」

「ね、リナちゃん」

「………………………飲むから、……早くして」

 いのりは舌での愛撫をやめ、ただ待つだけになった。

「ゆっくりするからね」

 じゅっ…じゅわ…

「ぅっ……」

 いのりは口の中に拡がる液体を何か感じる前に飲み込む。

「んくっ……ん……くっ…」

 カナタは言ったとおり飲みやすいように勢いを加減してくれているけれど、いのりは舌が感じる不快な味や鼻腔を満たす尿臭に耐えきれず、カナタの股間から顔を離した。

「げほっ! げほっ!」

「やんっ! 途中で……やだ、止まらない!」

 カナタは放尿をやめられず、慌てて両手で押さえるが、指の間から小水が溢れた。

「あああぁ……もう、リナちゃんが途中でやめるから、おもらししちゃったよ。恥ずかしいなぁ」

 カナタは興奮して赤面しているが、いのりは青ざめて咳き込んでいる。

「ごほっ……ごほっ…」

「気管に入った? 大丈夫?」

「……大丈夫……。……じゃないかも…。ごめん、……洗面所に…」

 いのりは立ち上がろうとして、猛烈な吐き気をもよおした。

「ぅっ……、うぅ……ぅぇッ…………」

 とても洗面所まで保ちそうにない。いのりは手近にあったゴミ箱へ顔をうめた。

「うええっ!」

 胃から逆流してくる嘔吐物をゴミ箱へ吐いている。

「げほっ! けほっ! うえぇっ! うええぇっ!」

「…………」

「ううっ……うぇっ…」

 いのりは胃が空になっても嘔吐衝動が治まらず、息ができなくて苦しみ、ときおりゴミ箱から顔をあげると呪い殺すような目でカナタを見る。

「……帰って」

「でも……いのっち……」

「帰って!!」

「………うん」

 カナタが帰ると、いのりはシャワーを浴びて全身を洗い流し、大量の水を飲んでからトイレに吐いた。

「ぅぅ………汚い……」

 まだ、身体から汚辱感が消えない。血が出るほど歯を磨いても、うがい液で喉を洗っても、身体から汚いという意識が消えてくれない。

「……これなら…」

 いのりはシャンプーの瓶を開けると、それを飲み込んだ。

「うぐっ?!」

 シャンプー液は喉を通ると、香料の甘い香りとは裏腹に界面活性剤の働きで、毒物でも飲み込んだかのような猛烈な異物感を呼び起こし、いのりは床を転げ回って苦しみながらシャンプーの泡を吐き、失神しそうになりながら水を飲んで吐くことを繰り返して窮地を脱した。

「ハァ…ハァ…ヒィ…ハァ…」

 ぐったりと倒れ、まだ残っている嘔吐感に震えながら、床や部屋を掃除して、もう一度、シャワーを浴びて衣服を着る。

「………もう……ダメ………とても……、私じゃ……手に負えない。……ほたるさん……助けて…」

 いのりは家の電話機を取ると、ほたるへ国際電話をかけた。少し待たされて、ほたるが受話してくれた。

「もし…もし…陵…いのり…です」

「あ♪ いのりちゃん! お久しぶり♪ 元気してる?」

「……」

 ほたるさんは元気ですか、と訊くのが愚問なほど、ほたるの声は弾んでいて、まるで先刻まで恋人とバカンスに出かけていて、今さっき帰ってきたばかりのような陽気な声色だった。

「ほたるさんは…元気そうですね」

「いのりちゃん……いのりちゃんは元気なさそう……どうかしたの?」

「ちょっと……いろいろ…」

「いろいろって?」

「……。ほたるさん、留学して、語学もピアノも大変だと思うから……迷惑だと…」

「いのりちゃんの声、死にそうな声してるよ? ほたるなら大丈夫だから、相談してみて」

「……」

「そのつもりで、かけてくれたんだよね?」

「…はい……、……実は、……カナちゃんのことなんです」

「カナタちゃんの?」

「はい」

「カナタちゃんが、どうかしたの?」

「……その……、いろいろ…大変なんです」

「だから、いろいろって?」

「………。……」

 いのりは同性愛的な肉体関係を一方的に求められて脅迫されていることを、どう話そうか考えるが、なかなか思いつけない。

「えっと………その……、つまり、……加賀先輩と、別れて……それが、悩みみたいで……私に、いろいろ言ってくるんですけど…………私も、イッシューのこととか、いろいろあるし、……いつも、いつもカナちゃんの相談にのってあげられるわけでもなくて……、だから、ほたるさんにフォローしてほしいんです」

「カナタちゃんが……正午くんのことで………」

 ほたるの声色も沈む、しかも、いのりの期待を大きく裏切ってきた。

「ごめん、いのりちゃん。……ほたるは、その件では力になれないよ」

「そんな……」

 ほたるさんしか、頼れないのに、こんなこと他の誰にも言えないのに、いのりは藁にも縋る気持ちで縋った藁が藻くずだった気分で困惑の海に溺れる。さらに、ほたるの一言で困惑の海は嵐になった。

「ほたるは正午くんと付き合ってるから」

「……へ?」

 いのりは言われたことが理解できずにマヌケな声を出した。ほたるも意外だと思われることは理解しているので、もう一度、告げる。

「ほたるは正午くんと付き合い始めたの。……このこと、カナタちゃんには知らせてないから」

「なッ…、で、でも! ほたるさんは伊波先輩とっ!」

「ケンちゃんとは別れたの。もともとウイーンに留学すること言ってなかったし。でも、正午くんはウイーンに行っても付き合ってくれるって言ってくれて…」

「加賀先輩の新しい彼女って、ほたるさんなの?!」

「うん、そうだよ」

「でも! ほたるさんはカナちゃんと加賀先輩が付き合ってたこと知ってましたよねッ?!」

 いのりの声が批判的になった。ほたるは覚悟していたので批判を正面から受ける。

「うん、知ってたよ。知らなかったなんて、とても言えないくらいに。よーーく知ってたよ」

「だったら!」

「でも、正午くんはカナタちゃんと別れたって…」

「そんなのっ! いつものケンカじゃないですかッ!」

「うん、それも知ってた。いつものケンカで別れたって言ってるだけで、ほたるが横恋慕しなきゃ今ごろ仲直りしてたよね。カナタちゃんは正午くんのこと大好きだから、きっと正午くんの誕生日までには仲直りしてたはず」

「……そこまでわかってて、……横取りしたんですか? 外国へ行っちゃうくせに…」

「うん、ほたるは、そーゆー女だったから」

 ほたるは自虐的に事実の一側面を誇張して伝える。

「ほたるはカナタちゃんから正午くんを盗んだの。ケンちゃんと別れて淋しかったから、そーゆー尻の軽い女なの。外国に来ても、さっきまで正午くんは、ほたるといたんだよ? ほたるの誕生日にウイーンへ来てくれて。……エッチなこと、いっぱいしたよ。ケンちゃんと、しなかったこと、いっぱいして、また会おうねって空港で約束のキスまでしてたの。とても、カナタちゃんと連絡なんて取れないよ」

「………」

 そんな言い方しないでください、伊波先輩と別れたことに何か事情があったんじゃないですか、と普段なら先輩の自虐的な物言いに気づいて推し量ることもできたはずが、いのりにも余裕がなかった。

「……ひどすぎます……カナちゃんが可哀想……」

「…………ごめんね、って謝ることもできないから……」

「ほたるさん」

「…はい…」

「ほたるさんは気づいてましたか? カナちゃんが友達以上に、ほたるさんのこと想っていたこと。女友達としてじゃなくて……もっと、別の……男の子が女の子を好きになるみたいな気持ちで、カナちゃんが、ほたるさんを好きになっていること、気づいてましたか?」

「……うん……、……」

「…………よく、………よく……よく、それで加賀先輩を盗るなんてこと……できる………、信じられない………。……カナちゃん、…なんて……可哀想……」

 いのりの受話器を持つ手に涙がつたった。

「いのりちゃん………カナタちゃんに……このこと、言う?」

「………言えるわけ、ないじゃないですか」

「……ごめんね。そろそろ、講義がある時間だから、切るね」

 ほたるが電話を切り、いのりはカナタのために泣いた。

「…カナちゃん…っ…」

 本心から同情して涙が溢れてくる。なのに、カナタの顔を思い出すと腹の底から吐き気が蘇ってくる。

「ぅ…、…ぅえっ…」

 吐きそうになって口元を押さえ、いのりは洗面所で口を漱いだ。

「……ハァ…ハァ…、……気が……狂いそう…」

 一蹴への想い、リナのこと、カナタのこと、ほたると正午のこと、考えることがありすぎて何を考えていいか、わからない。どうすればいいのか、まったく答えが見つからない霧の中で一人きり、いのりは大声をあげて子供のように泣きたい衝動にかられ、どうせ両親も不在なので泣こうと思い、涙腺の抑制をやめようとしたとき、リビングで携帯電話が鳴っているのに気づいた。

「…イッシュー…」

 着信音で一蹴からのメールだとわかる。いのりはメールを開いた。男子らしい短文で要件だけが打たれている。

(話があるから、あの教会に来て)

「………………。イッシュー……。……話って………なに?」

 いのりは胸の中に拡がる不安に押し潰されそうになった。なにか、イヤな予感がする。ほたるの身に起こったことが、自分にも起こりそうな、根拠のない懸念が頭をグルグルと駆けめぐる。

「…………………………」

 いのりは「すぐに行くね」と送信しながらも、足が動いてくれない自分に気づいた。

「イッシューを待たせちゃダメだよ」

 自分を叱咤して身支度をすると古い教会へ向かう。運悪く雨が降り出してきた。10月の秋雨が残暑の熱を地上から奪っていく。

「……傘………もってくれば……よかった…」

 いのりは濡れながら教会の前に辿り着いたけれど、ドアを開ける気力がない。

「…………もし…」

 もし、別れ話だったら、どうしよう、イッシューが望むなら別れるしかないけど、私は……私は……、いのりはドアの前で立ちつくした。

「私………誰に……何をするか……わからない…」

 運命を呪い殺そうとするかのように、いのりはドアを見つめ、一歩も動かない。背後から声をかけられた。

「いのり」

「っ、イッシューっ?!」

 いのりが驚いて振り返ると、一蹴は謝った。

「ごめん、遅くなった。雨が降りそうだったから、傘を取りに戻ったから」

「イッシュー………イッシューっ!」

 顔を見たとたんに感情が高ぶって、いのりは一蹴へ抱きついた。

「ぃ、いのりっ?!」

「イッシューっ」

 一蹴の顔を見て、別れ話や悪い話ではなくて、たんにヒマだから呼び出した程度の雰囲気だと確信できたので、いのりは安心と同時に涙を流した。

「イッシューぅぅ……会いたかったよぉ…」

「……。学校でも、会ったじゃないか」

「ぅぅ……今は会いたい気分だったの……。ごめん、急に泣いて……迷惑だよね。ごめん、イッシューの話って?」

「……。いのり……オレの話より、最近、いのり、元気が無いっていうか……何か悩みでもあるんじゃないか?」

「イッシュー……ううん、もう、平気。イッシューの顔を見たら、どこかへ行っちゃったよ」

 いのりは涙を指でぬぐいながら微笑んだ。

「イッシューの話って何かな?」

「ああ。……じゃあ、オレさ。バイト始めることにしたんだ」

「アルバイトを? どんな?」

「ならずやってカフェでウェイターをしようかと。っていうか、誘われてさ。前から伊波先輩みたいに一人暮らしをしてみたいって思ってたから、渡りに船だったし」

「一人暮らし……」

「オレさ、今の両親と血が繋がってないこと、いのりは知ってた?」

「…うん…」

 高校で再会してから話してもらったわけじゃないけど、イッシューが孤児なのは子供の頃から知ってるよ、いのりは頷いて雨に濡れた髪をハンカチで拭く。話しながら二人は教会へ入った。

「今の両親は優しいけど、妹の縁と…ちょっと…」

「ちょっと?」

「あいつ、ちょうど思春期でさ。運悪くオレのこと好きっていうか、そーゆー感じで、いろいろあるんだ」

「……いろいろ、って…?」

 一瞬、いのりの脳裏にカナタとの、いろいろな行為が駆けめぐった。いのりは込み上げそうになる吐き気を一蹴の匂いを嗅ぐことで押さえる。不思議なほど、一蹴を感じると吐き気も不快感も消えてくれた。

「まあ……いっしょに寝ようとしたり、風呂に……とか」

「してるの? 縁ちゃん、たしか、中学……三年…」

 中学三年生といえば、意識も身体も女性になっているはずで、二人で入浴するのは大きな問題を感じる。早ければ初体験が中学一年や二年ということもあるのに血が繋がっていない妹とベッドやバスタブをともにされるのは、今現在の彼女として抵抗を覚える。いのりの感情に気づいた一蹴は慌てて否定する。

「ちゃんと注意してるって!」

「…よかった…」

「だからさ、つまり、そーゆーことなんだ。一人暮らしするのは、縁と距離を置いた方がいいかなってさ」

「………」

 うれしい、縁ちゃんには悪いけど、とってもうれしいよ、イッシュー、一人暮らし大賛成、いのりは大きな喜びに包まれた。

「縁も今年は受験だし、まあ、あいつなら浜咲学園も余裕だろうけど、お義母さんは心配して去年まで家庭教師つけてたくらいだから。オレがいない方が落ちついて勉強するだろうし」

「縁ちゃん、浜咲学園が第一志望なの?」

「ああ、で、第二が澄空で、最悪の場合は藤林だろうけど、それは無いだろ。あいつ、ああ見えて天才だから」

「縁ちゃん、頭もいいもんね。可愛いし、私も出会うと抱きしめたくなちゃ…っ…」

 いのりは同性を抱きしめるという表現の途中で吐き気を感じて口元を押さえた。

「いのり?」

「…う……ううん、何でもない……平気…」

 カナちゃんじゃなくて、縁ちゃんのこと考えただけなのに気持ち悪くなるなんて、いのりは深呼吸して気分を落ちつかせる。そんな様子を一蹴が心配した。

「ホントに大丈夫か?」

「うん、もう平気」

「………。この頃、いのり、ちょっと変じゃないか?」

「っ…、…変って?」

 いのりはカナタとの肉体関係を知られたくないので緊張した。逆の立場で、もしも一蹴が中谷や天野と肉体関係があったとしたら、それは想像したくないことだった。ほんの一時期、ほたるが翔太と健が怪しいと言っていたことがあるけれど、それは激しく仲が良かっただけで、今は二人とも女性を愛するタイプだと確信できている。一蹴も、そのはずだった。

「わ、私は変じゃないよ! いたってノーマル!」

「…ノーマル?」

「えっと、……うんと、……ノープロブレム! アイ・ラブ・イッシュー!」

「ぃ…いのり……」

 一蹴が顔を赤くして目をそらした。いのりも勢いで愛を告げたことに気づいて赤面する。

「ち、違うの! ………ううん! 違わない! …そ……そーゆー……こと…」

 せっかく言ってしまったので否定するのが、もったいなくて、いのりは積極的な態度を取った。

「イッシューが好きだから。……最初から、ずっと、好きだったから」

 最初から、本当の最初のリナちゃんがいた頃から、ずっと好きだったんだよ、イッシュー、大好き、愛してる、いのりは恋人を見つめた。

「……いのり……」

「大好き、イッシュー」

「……ぉ…オレも…、…、…」

 一蹴は続きを恥ずかしくて発音できなかったけれど、いのりの心には響いてきた。いのりは目を閉じ、唇をささげる。

「………」

「……」

 いのりは少し唇をあけて、軽いキスでも深いキスでも対応できるように待ちかまえる。一蹴は軽いキスをした。

「ぁ…」

 すぐに離れていく唇を、いのりは名残惜しそうに見つめる。

「………」

 もっと長くしてほしかった、もっと、ずっと、ずっと、いのりは二度目のキスが欲しくなり身を寄せたけれど、一蹴は気づかない。

「よかった。元気そうで」

「……心配してくれたの?」

「当たり前だろ。ちょっと痩せてないか?」

「エヘヘ♪ 2キロほど痩せました」

 女の子として体重が減ったのは嬉しかったけれど、健康的に痩せたわけではないので大きく誇れることではなかった。

「あんまり肉を減らすなよ。いのりの半分は髪の毛でできてるんだからさ♪」

「う~……質量的には10%くらいだよ。半分は言い過ぎ」

「外見的には半分は髪の毛だぞ♪」

 一蹴が優しく髪を撫でてくれる。

「イッシューの半分は優しさでできてるね。ありがとう。イッシュー。でも、心配しないで、ちょっと……ピアノが思ったように弾けなかったから、落ち込んでただけなの」

 いのりは小さなウソをついて一蹴に心配を解消してもらい、カナタのことは秘匿する。一蹴は疑わなかった。

「スランプか、あんまり気にするなよ」

「うん。………」

 いのりは二度目のキスを求めて目を閉じる。

「………」

「…………、ここ、…教会だからさ…」

 一蹴は神聖な場所で何度もキスをすることに戸惑いを覚えるのと同時に気恥ずかしさから身を引いた。

「イッシュー……」

「あんまりイチャイチャすると、神さまに怒られるぞ♪」

 茶化して雰囲気を軽くしようとした一蹴に、いのりが近づく。

「怒られない」

「え?」

「神さまには怒られないよ。だって、男と女は愛し合うために存在してるんだもん」

 いのりは強い語気を込めて男と女を強調し、キスを求める。いのりが唇を近づけると、さすがに一蹴も逃げずに応える。

「「……」」

 いのりは深くて長いキスをする。

「「……………………」」

 ああ、イッシュー、イッシュー、やっぱり、イッシューだよ、イッシュー、いのりは同性とのキスを強いられてきた唇を本来捧げるべき相手に捧げられ、心の底から喜びに打ち震え、両腕を一蹴の頭へ回して抱きしめる。息苦しいほどのキスをしながら、唇と舌だけでなく指先も男の耳や首筋に這わせて可能な限り一蹴を感じる。

「……イッシュー…」

「いのり……」

 一蹴はキスを終えると離れようとしたが、いのりは離れない。息継ぎをして、またキスをする。いのりは下腹部が熱くなるのを自覚した。

「「……………」」

 私、濡れてる、キスだけで、こんなに感じてるなんて、やっぱりイッシューのこと、大好きなんだよ、ね、イッシュー、イッシューが欲しいよ、いいよね、ね、いのりは恋人のカッターシャツのボタンを外していく。外しながら首筋から胸元へもキスをして、抱きついたまま脚をからめるけれど、少し不安定になる。

「イッシュー、そこに座って」

「……」

 一蹴は言われるまま、教会のベンチへ座った。いのりは信仰を誓う清教徒のように恋人の前に膝をつくと、途中になっていたカッターシャツを脱がせる続きを再開する。

「い……いのり、……これ以上は……」

「イッシューと、したいの」

「……したいって…?」

 何かわかっていて、つい訊いてしまう童貞男子高校生に、いのりは明確に答えた。

「セックス、したいの。……イヤ? 私は、イッシューとしたいの。お願い」

「………」

 ここまで言われて逃げたらオレ、ヘタレじゃん、キング・オブ・ヘタレ、東西南北天上天下最大ヘタレ、マスター・オブ・ヘタリスト、ヘタリア共和国・一等ヘタレ官、もう据え膳とか、武士とか、ぜんぜん、そんな段階じゃなくて、きっと鷺沢家は有名な芹澤家みたいな澄空時代からの武門の名家じゃないだろうし、そもそもオレって鷺沢家の血筋でもなくて、産まれた家の家名さえ知らないふつつか者ですが、ここまで女の子に言われたら、オレ、オレは、一蹴が激しく動揺している間に、いのりはカッターシャツを脱がせ終わり、ズボンとトランクスを同時にさげると、ヘタレな持ち主と違い、準備ができている勃起した男根にキスをする。

「ぅっ…」

「…イッシュー…」

 イッシューのおちんちん、気持ちよくしてあげるね、いのりは教わりたくないのにカナタから教わったクリトリスへの愛撫の実技と、早絵たちクラスメートの女子がふざけて見せてきた雑誌のペニスへの愛撫知識を応用して一蹴の男根を口に含みながら、両手で擦った。

「うっ、…ちょっ、…いのり…」

「痛いかな?」

「ぃ、痛くないけど…、…オレ、部活の後で、汗かいたし、せめてシャワーとか…」

「イッシューの匂い、ぜんぜん気にならないよ」

 いのりは匂いを確かめるように鼻先で息をしながら一蹴の内腿を舐める。カナタからする香水のような甘い香りではなくて、サッカー部員らしい汗の匂いがして、いのりは微笑んだ。

「うん、いい匂い。イッシューの匂い、大好き」

「…ぅぅ…」

「痛かったら、言ってね。初めてで、よくわからないから」

 いのりは慣れた手つきで男根の包皮を剥くと、先端を口にくわえて吸いながら、両手の指先で巧く摩擦する。

「はふっ…ちゅぱっ…」

 おちんちんが大きなクリトリスなら、こことか、このへん、こうされると感じるかな、うん、感じてるね、じゃあ、吸いながら、ここを細かく舐めて、いっしょに手で、こうして、こう、うん、感じてくれてる、いのりは一蹴の反応を見上げながら、口と舌をカナタに仕込まれたテクニックで使いつつ、両手の指も10本とも、それぞれに緩急をつけた愛撫をするという超絶技巧的な指運びで一蹴を刺激する。ほたるとカナタに鍛えられた技による攻勢で、またたくまに一蹴は耐えられなくなった。

「うっ、ううっ! ぉ、…オレっ…ぃッ…」

 びゅっ!

「キャっ?」

 いのりは口の中へ射精され、その勢いに驚いて口を離した。

 びゅっ! びゅっ…びゅ~……どろっ…

 いのりの顔や手、それから一蹴の下腹部にも精液が付着して、独特の匂いが拡がった。

「…ハァ…ハァ…」

「イっちゃった?」

「っ……」

 オレって早漏すぎ、一蹴は問われて少年らしいプライドが傷ついて、涙が溢れそうになり手で汗と誤魔化してぬぐった。いのりは恋人を快感に導くことができて心から嬉しそうに微笑み、口の中にある精液を飲み込む。

「こくっ…」

 美味しい、味とか匂いだけじゃなくて、なんだか、胸があったかくなるよ、いのりは手や一蹴の下腹部に残っている精液も舐めとって飲み込む。それから、一蹴の男根が萎えていることに気づいた。

「あれ……小さくなってる。……私、うまくできてない? イってくれたと思ったけど……気をつかって演技してくれなくてもいいよ……」

「……違うって……、一回、出ると、しばらくは勃たないんだ。…やっぱり、いのり、初めて?」

 いのりの処女性に大きな疑問符を抱いていた一蹴は男性の反応の基本的なことを知らなかったことで少し安堵する。

「演技で射精はできないから」

「へぇぇ……男の人って素直な身体してるんだね」

「…………」

 誉められたとは思えず一蹴は顔を伏せた。いのりは小さく萎えた男根を再び勃起させたくて口に入れようとするが、一蹴は仕草で拒絶した。

「待ってよ、いのり。そんな連続、無理だって」

「休憩する?」

 いのりも知識として男性のオルガスムは女性のように連続できず、絶頂に達して射精すると次のチャージまで時間がかかることを知っていた。

「どのくらい休憩が必要なの?」

「…、体調にも……よるけど…」

 一蹴は健全な性少年として連続オナニーに挑戦したこともあれば、義父母と義妹が家を留守にしてくれた日曜日に24時間で何回まで射精できるか試行してみたこともある。記録は7回だった。8回目は痛くなって勃起もできなかった。

「…………」

「………」

 いのりが愛撫をやめると、急に教会の静けさが二人を包む。

「…………」

「……………」

 いのりは熱くなった身体をもてあまして躊躇いの吐息をもらした。

「…はーっ…」

 してほしいな、私の身体にも触ったり舐めたりしてほしいって言ったら、淫乱な女の子だって思われちゃうかな、いのりは悩み、そして一度しかない人生なので積極的に生きることにした。

「あのね……」

 いのりは頬が熱くなって心臓が高鳴るのを自覚しながら求める。

「…して……ほしいな。……私の…か…身体にも……触ったり…」

 舐めたり。

「くすぐったり…」

 恥ずかしいカッコで思いっきり、あえいでイきたいよ、イッシュー、いのりが潤んだ瞳で見つめると、さすがに一蹴も男だった。

「いのり……」

 おずおずと一蹴は両手を恋人へ向けてみる。とりあえず胸に触ろうという手が初めての行為に戸惑い、空中で停止してしまうと、いのりの胸から近づいてきてくれる。

「………」

 一蹴は見た目より大きな胸の感触を両手いっぱいに感じて、強く揉んだ。

「あッ…痛っ…」

「ご、ごめん!」

「ううん、いいよ」

 カナタが触れてくるときの優しくて巧妙なタッチではなくて、不慣れで痛いくらいの手つきなのに悦びを身体が感じている。

「もっと、触って。痛くしてもいいから」

「あ…ああ」

 一蹴も戸惑いながらも本能的な悦びを覚える。いのりの胸の感触も、恥ずかしそうに目をふせて頬を赤くしている表情も、すべてが愛おしくて抱きしめたくなる。押し倒して裸にして、そろそろ勃起してくれそうな男根を突き刺したい衝動にかられつつも、それを自制する。

「……」

 ちゃんと前戯してあげないとダメだよな、エロ漫画と違って本物の女の子は準備がいるもんな、すでに女の子からの前戯で射精しちゃったんだから、なんとか後半戦で挽回しないと、このままじゃダメダメだ、ダメダメ、ダメセックスだったって失望されるかもしれない、下手するとカナタとかに報告されて笑い者になるかも、早漏一蹴とか、一瞬一蹴とか、澄空のアダ名大魔神に烙印を押されるかもしれない、一蹴は強力な三年生たちを恐れつつ、恋人に快感を与えたくて素直に突破口を訊くことにした。

「どこを触ってほしい? 舐める方がいい?」

「ぇ………っと…」

 イッシュー、そんなことを女の子の口から言わせるの、あえて自分の性感帯を自白させて、白状する恥ずかしさと、そこを攻められる快感への期待を高めるなんて、そんなハイレベルなプレイ、どこで覚えたの、いのりは純朴な少年の意図を曲解して興奮を高め、これからのセックスで邪魔になる髪の毛を束ねてポニーテールにしながら、質問に答える。

「……私が……一番……感じるのは……腋……」

 ここだけはカナちゃんに舐められても少し感じるくらい敏感だから、イッシューに舐められたら感じすぎて恥ずかしいくらいになると思うよ、いのりはポニーテールへ結い上げる動作で両腕をあげたまま、一蹴に腋を見せる。

「…えへへ…」

 いのりの腋は透き通るほど白くて美しく毛穴の一つもない。あまりスタイルに自信がなくて露出の少ない彼女も、腋だけは真冬の二月でさえノースリーブとアームウォーマーの組み合わせで露出させるくらい自信がもてるボディパーツだった。長い髪と腋は自慢できるくらいキレイで、もともと腋毛が一本も生えない体質なうえに三日ほど入浴しなくてもイヤな匂いもしない。おかげで女子みんなに羨ましがられて、中学では巴から、神に愛されし腋をもつ女で髪と腋がチャームポイントだから、略して神腋、または、腋神様、もしくは汗をかいても匂わないから逆ワキガなど命名され、女子の中だけだったけれど、けっこう広まってしまい沖田慶子のグループあたりからも呼ばれて本気でイヤになったので、その名で呼んだ人は先輩だろうと他校生だろうと、授業中でも朝礼が始まっても、必ず10分間、呪い殺すような目で睨み続けると決めたおかげで一週間後には誰も言わなくなった。巴だけが懲りずに、邪眼もつ女で長い髪が黒豹にもみえるから、ジャガーと呼びはじめたが、それも128分間、呪い殺すような目で睨み続けると、最初は、文句があるなら言いなさいよ、などと強がっていた巴も最後には泣いて謝ってくれたので忘れることにしている。

「いのり、くすぐったくないか?」

「うん、それが……感じるの」

 いのりは腋を舐められて、よがり息を乱した。

「あんっ♪ …ぁ、ハァ…んっ…」

 いのりの声が可愛いので一蹴は無心に舐め続ける。いのりはくすぐったさを通り越して快感に至り、うっとりと教会の天井を見上げる。

「ああん……生きてることって……なんて気持ちがいいの…」

 いのりは身体から力が抜けて座っていられなくなり、後ろへ倒れる。一蹴が愛撫は後手に回ってもサッカー部員らしい運動神経で支えてくれ、いのりはベンチへ寝かされた。

「つ…次は、どうすれば、いい?」

「うん、こっちの腋も舐めてほしい」

 いのりが反対側の腋を見せて、ねだる。一蹴は要望に従って舌を這わせる。

「あっ…はぁ…」

 興奮が高まっているので最初からくすぐったさより性感を覚え、いのりはオルガスムの波が訪れるのを体感した。

「…あんっ…ぃ…くぅ…」

「………」

 ホントにイってるのかな、演技かな、オレが先に簡単に射精しちゃったから気をつかってるのかな、一蹴は恋人の表情を見つめる。いのりは頬や胸元、舐められていた腋を桜色に染め、目蓋を軽く痙攣させて、まどろんでいる。射精があるわけではないので絶頂がわかりにくいけれど、いのりは息を止め、ベンチに寝そべったまま、両膝をもちあげるとバーガーワックのロゴマークみたいな形に両脚を開いている。女の子なら普段は絶対にしないような扇情的な体勢で、一蹴は萎えていた分身が再び勃起するのを心強く思った。

「………」

 脱がせても、いいかな、一蹴はスカートへ手をかけようとして股間が大きく濡れているのに気づいた。手のひら大ほどに濡れてシミができている。

「……。いのり、おしっこ……もらし…」

「ん~…? いいよ。イッシューのおしっこなら飲みたい」

「は?」

 一蹴はまどろんでいた恋人が何か大きな聞き間違いをしたことはスルーして問いかける。

「いのり、トイレ、ガマンしてた? ……もらしちゃってるみたいだけど…」

「え……。……これは……どっちかな…?」

 いのりも自分の股間を見て、わからなくなる。先刻、自宅で多量の水分を摂ったので尿意を覚え始めていたし、オルガスムの波に身を任せているうちにゆるめてしまったのかもしれない。けれど、小水にしては少ないかもしれない。いのりは自分の股間へ手で触れた。

「…エヘヘ…、……エッチな液みたい」

「…………」

 濡れすぎじゃないか、それ、一蹴は驚きつつも、いのりが裸になり始めたので視線が固定される。一枚、また一枚と、いのりは躊躇いなく衣服を脱いでいく。最後のショーツをさげると布地と肌が愛液で粘って、糸を引いた。

「イッシュー……」

「………いのり………」

 恋人の全裸を見て一蹴は全身が高揚し、本能のスイッチが入るのを感じた。もう前戯は続けられない。いのりをベンチへ押し倒すと身体を重ねた。

「いのりっ」

「うん、来て」

 いのりも脚を開いて正常位を受け入れる準備をとる。いのりの女性器も開いて、ピンク色の襞が性交をもとめてうずいている。一蹴は猛まま男根を挿入した。

「痛っ! ……ぅうぅ……」

「ごめ…」

「ぃ、…いいから、そのまま、奥まで来て」

 いのりは痛みを覚悟していたのに悲鳴をあげたことで一蹴に心配させたことを残念に思いつつも後退しようとする一蹴の腰へ両足を巻きつけて、より深い挿入を求めた。

「ああっ! あんっ!」

「いのり、無理しない方が……」

「んっ! 違うよ。いいの! 痛いのは入口だけで…あんっ! すごくいい!」

 いのりは身をよじって快感を覚えている。それで一蹴も男の本能が求めるままにピストン運動した。

「ううっ…いのり……」

「あんっ! もっと! んんっ!」

 いのりは一蹴がピストンの速度をゆるめたのを物足りずに、自分からも腰をふって快感を求めた。

「うぐっ、…いッ…いのり、ヤバいって…オレ…」

「ああっ! あんっ! んんっ!」

 一蹴は思っていたより早く二度目の射精衝動を覚えてしまったことに焦り、このままでは保健体育で習った妊娠という危険があることに思い至って退出しようとしたが、いのりは本能のまま男根を奥深くに受け入れて膣を収縮させた。

「ああっあっ!」

「うっ…くっ…ううっ!」

 いのりの激しい動きに耐えきれず一蹴が膣内に射精してしまった。

「ああっあんっ!」

 いのりは感極まった声をあげた。

「はあぁぁっ……イッシューぅ……、気持ちいい……おちんちん……最高ぉ…」

 女同士の気持ち悪いのと、ぜんぜん違うよ、これがホントのセックスなんですね、神さま、こんなに気持ちよく人間を創ってくださって、ありがとうございます、女は男に、男は女に、とってもシンプルな摂理ですよね、いのりは性の喜びを神に感謝している。

「………。いのり……ハァ…ハァ…」

 喜んでくれたみたいだけど、妊娠しないかな、まだ高校一年なのに、せめて三年のバレンタインくらいなら妊娠しても発覚するのは卒業後、けど、今だと二年生になる前にバレるかも、こんなことなら中谷に勧められたときコンドーム買っておけばよかった、一蹴は軽率な初体験後の男子高校生らしく悩み、考え込む。

「イッシュー……」

 いのりは離れて萎えてしまった男根へ顔をよせると吸いついた。

「ううっ?! いのりっ?」

「精液、舐めてあげる」

「ぃ、いいって」

「舐めさせて」

「………」

「はふっ♪ 美味しっ」

 いのりは丁寧に一蹴を舐める。それから、少し遠慮がちに一蹴を見上げた。

「いっふゅー」

「咥えたまま喋らないでくれよ。歯があたって痛いから」

「ごめん……。………」

 いのりは座り直して自分の股間へ両手をやった。恥ずかしいから前を隠したというよりは、まだ少し物足りない、何かしてほしい、と求める様な動作だった。

「……いのり?」

「…………えへっ……恥ずかしいお願い、してもいい?」

「今さら……、いいよ。何?」

「…え~……っと……私のぉ………おまんこも……舐めてほしい」

「……。ごめん、さっきもオレだけイっちゃった?」

「ううん、いっしょだったよ」

 いのりは恥ずかしがりながらもベンチの上で脚を開いて、さらに舐めやすいよう自分で陰唇もひろげた。

「イッシューに舐められたいの。ダメ?」

「……ダメじゃないけど……」

 一蹴は自分が射精した後の膣を舐めることに軽い抵抗を覚えたけれど、いのりが要望しているので応じることにした。いのりの股間へ顔をうめ、舌を使ってみる。

「………こう、かな?」

「うん。もうちょっと、グリグリ舐めて」

 いのりは初めて女性器を舐める一蹴の遠慮がちで飴を舐めるような動きを率直な指導で修正していく。

「そこの皮、ひろげて剥いてクリトリスを出して。あっん♪ そう♪」

「痛くない?」

「うん、平気。気持ちいい。んっ……クリトリスを舐めたり吸ったり、舌先でクルクルしたりして。ああんっ! うん! イッシュー巧いよっ……今度は大きく口をあけて全体を吸いあげて。…ああっ! あっあっ! いいっ! そのまま痛いくらい吸いながら唇でクリトリスを押し潰すみたいに挟んでハグハグして。あうっ! はぁう! いいっ! いいよっ! 唇で挟んでるクリトリスを舌の先だけで素早く舐めて、上下左右に。…はぁぁあっ! いくぅ……」

 いのりは潮を吹いて絶頂を迎えた。

「ハァ…ハァ…ハァ…イッシュー、最高っ…ハァ…ハァ…」

「……。よかった」

「…ハァ……ふーっ…」

 いのりは満足そうに微笑みながら息を整えつつ、萎えていた男根がクリトリスを舐められて乱れた痴態を見たことで再び勃起していることを喜んだ。

「イッシュー、今度は私が四つん這いになるから後ろに入れて」

「……そ、…そろそろ暗くなってきてるし……帰らない?」

「…………お願い」

 いのりが、もえ殺しそうな目で見つめると一蹴は断れなかった。勃起しているといっても三度目になるので硬さも大きさも60%程度になっているが、いのりは言ったとおりに四つん這いになると肛門をひろげる。

「イッシューに……私のバージン、二つとも、もらってほしい」

 前も後ろもカナちゃんに指を入れられたけど、ホントのロストバージンは男の子にしかできないはずだもん、いのりは陵辱された身体を一蹴に雪辱してほしくて求める。

「イッシュー、来て」

「二つともって……」

「ダメ?」

「………」

「私……汚いかな……。…汚い女かな……」

「そんなことないけど……。やってみたいといえば、やってみたいけど……やっていいのかなぁ、というか…」

 一蹴はアナルセックスに強い抵抗がない文化圏の少年らしく好奇心と戸惑いを天秤にかけ、いのりの要望でもあるので前者を優先した。

「いのり、痛くしないようにするから、痛かったら言ってよ」

「うん……」

 たぶん、大丈夫、カナちゃんに開発されてるから、いのりは苦痛を感じなくて済むように力を抜いて男根を肛門に受け入れる。するりと抵抗無く合体することができた。

「あんっ♪ イッシューに私のバージン全部あげちゃったよ」

「……、ああ、…ありがと…。…そんなに喜んでくれると……オレも嬉しいよ」

「おっぱいを両方つかんでほしい。後ろから」

「…こう?」

 一蹴は四つん這いになっている恋人と接合したまま、両手をわき腹から胸へまわして乳房をつかんだ。

「うんっ、しっかり痛いくらいつかんで支点にして、アナルを突いて。いっしょに私の耳に息を吹きかけたり、耳の穴に舌を入れて」

「わかった」

 もう一蹴は言われた通りにすることに決めた。いのりの乳房を強くつかんで耳へ息を吹きかける。

「あはんっ」

「……」

 ギャフンって言う人を見たことないけど、アハンっていう喘ぎ声はリアルに言う子いるんだ、一蹴は小さくて可愛らしい恋人の耳へキスをする。

「んんっ…」

 いのりの耳は大量の髪の毛によって日差しを遮られ、ほとんど日焼けしていない白さだったけれど、一蹴が攻めると桜色に染まった。

「イッシュー、乳首もクニクニ摘んで」

「こう?」

「はうんっ!」

「アナル、痛くない?」

「平気、突いて」

 いのりが腰を振って求めてきたので一蹴は前後にピストンしてみる。

「ああんっ! はううっ!」

 いのりの会陰から愛液が滴り落ちる。

「ハァ…ハァ…イッシュー、右手はおっぱいから離して、前から中指を膣に入れて、親指と人差し指はクリトリスを摘んで擦ってほしい」

「……そんな超絶技巧っぽいこと……、…こう?」

 一蹴は言われた通りの指運びを試してみる。いのりの股間へ手をやり、中指を膣へ挿入しつつ、親指と人差し指は勃起しているクリトリスを探る。

「あんっ! いいっ……中指、もう少し奥、Gスポットまで来て」

「…こ…こう?」

 ゆ、指が攣りそうだ、一蹴は中指を深く入れる。

「はああんっ」

 いのりが潮を吹き、一蹴の手に生温かくかかった。そんな女体の反応に一蹴は、やる気が増してピストンを続けつつ、おろそかになりかけていた左手での乳首への刺激も強化する。

「あうっあうっはうっ!」

 いのりの喘ぐ唇からヨダレが零れ、また潮を吹いてくれる。

「ハァっハァっ…」

「次のご注文は?」

 一蹴がカフェのウエイターのように問うと、いのりは追加オーダーする。四つん這いになっていた体勢から、いのりは左腕をあげて腰をひねって一蹴とキスができる距離まで顔を近づける。不安定になる姿勢を安定させるため、いのりは左手を一蹴の首へ回した。

「おっぱいと腋、吸ったり舐めたりして。乳首と腋の間を8の字を描くみたい何回も往復してほしい。右手と左手は、そのままで」

「かしこまりました」

 一蹴は右手で膣とクリトリスの愛撫を続けたまま、左手は乳房を揉みつつ、ピストン運動も継続しながら、舌で乳首と腋を舐める。アナルと膣、クリトリス、乳首と腋の五箇所同時攻撃で、いのりは天へ昇って天使に出会うほど舞い上がった。

「あはっんぅぅ! あっあっあっはん! はああっんぅ!」

 いのりが悶えながら教会に嬌声を響かせ、何度も潮を吹き、とうとう失禁してしまった。

 ぷしゃーーーーっ!

「はぁぁぁあっ…」

 いのりは全身から力が抜け、ぐったりと一蹴の腕の中でまどろむ。

「…はーぁ……はーぁ…」

「………」

「ご……ごめんね……私、先にイっちゃって…」

「いや、別にいいよ。もう三回目だから出にくいんだ」

「そー…ゆー……ものなの? おちん…ちん…」

「ああ」

「じゃあ、続けて」

「……へ?」

「イッシューがイくまで。私も頑張るから、中に出して」

 いのりがフラフラと再び四つん這いになった。

「オレは別に、もう十分だから、無理しなくていいよ」

「ううん、ほしいの。イッシューの精液、私の中に。お願い」

「……じゃあ…イくよ」

 一蹴は肛門内に射精すべくピストン運動を再開する。いのりも脱力しそうになる四肢を踏ん張って後背位を維持する。

「あんっ…あんっ…あんっ…」

 いのりが突かれる度に、弱々しい喘ぎ声を漏らし、一蹴は射精するのに時間を要さなかった。

「ううっ…イくっ…」

「うんっ、来て」

「くっ…ああっ! ふうっ! はぁっ!」

 一蹴の射精にも勢いがなく、少しばかりの薄い精液が射出され、いのりの中に注ぎ込まれた。

「ハァ……ふーっ……」

 一蹴はサッカーの試合でトーナメントの組み方が過密で一日に三試合も出場させられ、最後の試合が延長戦の挙げ句にPKへ突入した選手のように床へ倒れ、息を整える。

「ハーァ……はぁ……」

「……気持ちよかったぁ……イッシューとのエッチ……最高ぉ…」

 いのりが心の底から異性との性交を悦び、感想を漏らしている。

「おちんちん…最高…」

「……。そう……よかった…」

「うん、最高」

 神さまは、そーゆー風に人間を創られたんだもん、女同士で、おまんことおまんこを擦り合わせたりするなんて冒涜だよ、いのりは恋人の萎えた性器を撫でながら微笑んだ。

「明日もしようね。イッシュー」

「……」

「ね、イッシュー」

「……たはーっ…」

 そう言うことしか、できなかった。

 

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