○○と一緒なら 作:ノムノム
ユグドラシル最終日に来てくれると言った仲間たちが全員
モモンガは今まで触れもしなかったギルド武器を手にとった。
「行こうか。我がギルドの証よ」
「キリッ!」
「え?」
モモンガの呟きに、後ろから効果音と言わんばかりの言葉が飛んできた。
声の方向を向くと、そこには白黒の翼を生やした堕天使がいた。
堕天使は昔流行ったアニメキャラのポーズをしてウィンクのアイコンを打つ。
「おひさー。モモンガすわん」
「る、るし★ふぁーさん!?」
「ねぇ、驚いた?ねぇ驚いた?」
驚くモモンガにるし★ふぁーは頭を左右に揺らして何度も尋ねる。
「お、驚きましたよ!メールも返信がないですし!」
「驚かそうと思って!」
「それについては大成功でしたよ」
「本当?やったね!」
笑顔のアイコンを連打するるし★ふぁー。
モモンガはギルメンの誰かがサプライズで来ても嬉しくは思うが驚きはしない。
だが、るし★ふぁーは違う。
平然と約束をすっぽかすし、平然と悪戯をするし、平然と自分で決めたことを飽きたと言って放り出すし・・・いい加減なのだ。
だから、るし★ふぁーには期待していなかったモモンガだがすぐに考えを改める。
自分が思っていたよりも義理堅い人物だったのだと。
「るし★ふぁーさんも、ナザリックを大切に想っていて「モモンガすわん!最後だしギルド武器壊そうぜ!」
訂正、ただ悪戯しに来ただけだこいつ。
「だ、駄目ですよ!というか、出来ないですから!るし★ふぁーさんが此処にいるってことはちゃんとギルメンとして此処にいるってことなんですからね!」
「あ、そっか」
るし★ふぁーは納得して唸りながら考え始めた。
駄目だ、これ以上考えさせたらろくなことを言い出しかねない。
「るし★ふぁーさん、最後までいらっしゃいますか?私は強制ログアウトまでいるつもりで、最後は玉座の間に座って終わろうと思っています。良かったら一緒に行きませんか?」
「え?あー、うーん・・・最後だし、そうしよっかなー」
「そうですか!じゃあ、せっかくですしるし★ふぁーさんの装備を取りに行きましょう!宝物殿に置いてあるんです!」
「宝物殿に?え、売ってなかったの?」
「もちろんです!いつ帰ってきても大丈夫なように全員分ありますよ!」
考えさせる暇を与えずに矢継ぎ早に言葉を投げかけ、畳み掛けたモモンガはすぐにアイテムボックスから指輪を取り出すと差し出した。
「じゃあ、行き先は宝物殿です。さ、行きましょう!」
「あ、うん」
るし★ふぁーもたじたじなようで言われた通りに転移する。
それを見届け、モモンガも追って転移する。
黄金や財宝が山のようにあるその場所に堕天使がいるのを見てモモンガは安堵の息を吐く。
「ひゃっはー!」
「るし★ふぁーさぁん!?」
突然、るし★ふぁーが近くにあった金貨の山にドロップキックをかまして崩す。
もちろん、崩した本人を巻き込んで。
モモンガも巻き込まれかけたが、飛行の魔法を使って逃れるとすぐさまるし★ふぁーにも飛行の魔法をかける。
「おーっダメージなーし」
「るし★ふぁーさん、あまりここで暴れないでくださいよ・・・」
「おっモモンガすわん怒ってる?怒っちゃやーよっ」
「何年前のですかそれ」
ふざけた口調のるし★ふぁーにモモンガは呆れながら、目的の場所に向かう。
黒い物質に覆われた扉で、合言葉を言わないと罠が発動すると言うものだ。
「えーっと、合言葉は・・・」
「かくて汝、全世界の栄光を我が物とし、暗きものは全て何時より離れ去るだろう!」
淀みなく、スラスラと言ったるし★ふぁー。
モモンガはあんぐりとしながらも、開かれた扉に驚く。
「お、覚えてたんですか?」
「もちのろん!」
グッドサインのアイコンを出するし★ふぁーに、モモンガはやっぱりナザリックを想ってきてくれたんじゃあと思いかける。
「タブラさんがさー」
「え?」
「真なる無をアルベドに装備させるために霊廟に行ったらしいんだよ」
「はぁ・・・」
突然の話題に戸惑いながらモモンガが相槌を打つと、るし★ふぁーは笑顔のアイコンを出した。
あくどい笑顔のアイコンを。
「そこでギルメンのアヴァターラを見たんだってさ」
「あ」
「突撃!」
「待って!待ってください!うわー!うわぁああああ!」
凄腕のゴーレムクラフターである悪戯好きでからかい好きでいい加減なるし★ふぁーが、素人のモモンガが作ったアヴァターラを見たらどんな反応をするかなど簡単に予想できる。
全力疾走で鬼ごっこをする二人は、そのままの勢いで宝物殿の奥の霊廟へと突撃する。
「パンドラ!指輪!」
「うぉおおおお!」
二人は罠回避のために指輪を預け、ついにモモンガが作ったアヴァターラの場所へとたどり着く。
「うわっ!不格好!」
「うわぁああああ!」
「これが俺!?嘘っ」
「うわぁああああ!」
「あ、茶釜さんはよく出来てる。特にこの首の曲がり具合が」
「うわぁああああ!」
「た・っ・ち・さ・ん・の・か・ん・せ・い・ど・の・ち・が・い!どんだけ好きなんだよ!」
「うわぁああああ!」
気づけば、霊廟の最奥である世界級アイテムが置かれている場所にいた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「此処まで来たついでに世界級全部持っていこうか!」
「私が回収しておくので、るし★ふぁーさんは装備を取りに行ってください」
「りょうかい!」
世界級アイテムを回収するモモンガを尻目に、るし★ふぁーは装備を回収してアイテムボックスから花火を取り出す。
「モモンガすわん!」
「はい?なんです・・・え?」
「ドーン!」
るし★ふぁーの掛け声と同時に花火が発射される。
ただのお遊びアイテムなのでダメージはないが、本来は外で空に向かって打つものをプレイヤーに向かって打ったるし★ふぁー。
それを受けて、モモンガは・・・。
「るし★ふぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!」
ついにキレた。
「あ、やべっ」
初めて聞いた優しいギルド長の怒鳴り声に若干焦ったるし★ふぁーは全速力で霊廟を駆け抜ける。
「PvPだぁあああああああああ!」
「やめてモモンガすわん!俺、死んじゃう!」
「承知の上だぁああああ!」
宝物殿の番人から指輪を取り返し、るし★ふぁーは転移する。
モモンガも遅れて数瞬後に転移する。
「うぇっ!なんで!?」
「お前がしそうな事は百も承知だ!」
るし★ふぁーが転移した先と同じ場所に転移したモモンガはギルド武器を突きつける。
「喰らえ!
「ちょっ!ここで打ってもノーダメだからぁああ!」
「気は晴れる!」
三つの斬撃が放たれ、るし★ふぁーはそのままの勢いで部屋の中に入る。
「さぁ、覚悟しろるし★ふぁー」
「ち、ちょっとお茶目が過ぎただけでしょ!」
「最後だからな。今までの鬱憤も晴らそう」
「嘘!マジで!?ちくしょう!」
そこは玉座の間。
荘厳な雰囲気こそが似合うその場所で、堕天使は奥へ逃げ、魔王はそれをゆったりとした動きで追いかける。
「よこせ!」
「ん?真なる無か」
「その通り!」
玉座の横にいた美女の手から黒い短杖を奪い取り、るし★ふぁーは胸を張る。
「これで世界級アイテムを防げる!」
「世界級アイテムは、だ。魔法三重最強化・
「のわぁ!」
巨大な豪雷が三つ、るし★ふぁーに殺到する。
だが、ノーダメージ。
「モ、モモンガすわん。そろそろ。そろそろ時間だから・・・抑えて、抑えて。ね?」
「・・・・はぁ、分かりました」
るし★ふぁーの言葉にモモンガは渋々、仕方なく、呆れながらも頷いた。
玉座に座り、モモンガは玉座の間を眺める。
「・・・・るし★ふぁーさん」
「な、なに?」
まだビクビクとしているるし★ふぁーにモモンガは頭を下げた。
「今日、来てくれてありがとうございました」
「え?」
「一人で寂しく終わるんだって思ってましたから・・・すごく嬉しかったです」
「え、えーと・・・俺、ただ悪戯しに来ただけだから感謝される謂れはないっていうかさ」
感謝の言葉を言われ慣れていないのか、しどろもどろになるるし★ふぁーの珍しい姿にモモンガは笑う。
「それでも嬉しかったんです」
「そ、そっか。まぁ、たまには感謝されるのもいいかな。うん」
それっきり黙るるし★ふぁーから目を離し、モモンガは深い息を吐いた。
「あぁ、楽しかった・・・」
絞り出すように呟いたその言葉には、モモンガのユグドラシルに対する全てが詰まっていた。
楽しかった思い出や辛かった思い出。
仲間との思い出や喜び合った思い出。
その全てが。
そこから沈黙の時間が流れ、残り十秒になったところで、るし★ふぁーが口を開いた。
「あ、そうだ。モモンガすわん」
「はい。なんですか?るし★ふぁーさん」
「俺、恐怖公にゴーレムを作ってやったんだよ」
「はぁ・・・それで?」
「その材料、超希少金属にスターシルバーコーティングなんだわ」
「・・・・はぁ!?」
「土壇場で、ごめーんね★」
「る」
モモンガの怒鳴り声が上がる前に、世界は終わる。
「るし★ふぁぁああああああああああ!」
「あはははははは・・・は?」
「ちょろまかしてやがったのかこのやろぉおおお・・・お?」
「モ、モモンガすわん?此処、どこ?」
「さ、さぁ・・・」
そして
「と、とりあえずログアウトかGMコールをっ」
「出来ないっぽいわ」
「え、えぇ!?」
この世界の運命やいかに。