「はぁ……はぁ……着いた〜……!」
「な、何とか間に合ったね…!」
「もう〜、蘭と巴と修君が喧嘩なんかするから〜」
「「「こいつのせいだ」」」
「まだ喧嘩してるし……」
あの後、徐々にヒートアップしていった俺たちの喧嘩をつぐやひまりが止めてくれて、何とか時間内ギリギリに学校に着いた。
「と、とにかく!他のみんな教室の方に向かってるみたいだから私たちも行こ!」
「そうだね〜。さて、今年はみんな同じのクラスになるかなー」
「……っ!」
モカの一言で蘭の表情が一変する。その表情は辛く険しい様子だった。
「モ、モカ!」
「あ、ごめん」
詳しい話は省くが俺たち幼馴染は小学校の頃、ずっと一緒のクラスだった。6年間片時も離れることはあまりなかったと言ってもいい。しかし、中学に上がり1年から2年に上がる際、クラス替えがあったのだがそこで初めて、俺たちはバラバラになったのだ。
「大丈夫だって。例えクラスが離れようと学校が変わるわけじゃない。大体俺らには別の集まりで一緒になるし」
「そ、そうだよ蘭ちゃん!修君の言う通り今年はみんな一緒だよ…!」
うん、励ますつぐも可愛い。
「修君ー、顔が気持ち悪いよ〜」
「え、マジで?」
「マジもマジ、大マジー」
どうやら結構なニヤケ顔になっていたようだ。これからは気をつけなければ。
「行けるか蘭?」
「……うん。大丈夫」
蘭も少し元気を取り戻し、クラスが書かれている紙を張り出している掲示板まで近づく。そして結果は……、
「みんな、どうだった……?」
「俺はA」
「私もAだ」
「わ、私もAだったよ!」
「私もA〜」
「私もAだったよ!蘭は?」
「…………」
ひまりの質問に黙り込む蘭。やはり今年も違うクラスだったのかと落胆する皆だったが、いつものクールビューティーな表情はどこへやら。少し涙目になりながら嬉しそうな笑顔で答えた。
「私もAだった…!やっとみんなと一緒のクラスになれた……!」
「ホント!?やったー!!」
「おめでとう蘭ちゃん!」
うさぎのようにピョンピョンと跳ね上がるひまりと蘭の涙にもらい泣きしてしまうつぐ。
「だからって泣くことないだろ」
「うるさい…!泣いてなんかない……!」
「修君〜、ここは空気を読むところだよ〜?だからいつまで経っても勇気が出ないんだよー」
「それとこれとは話が別だろ!」
というかモカ!つぐがいる前でそんな話を振るな!もし気づいたらどうしてくるんだ。いや、気づいては欲しいんだがタイミングというものがあるし。
話の第1関係者であるつぐをチラッと横目に見ながらモカに怒りの声を上げるが、つぐは全く気づく気配はなかった。悲しきことかな…。
「じゃあ行くか!初日から遅刻は勘弁したいからな」
「おおー」
「うん!」
何はともあれ、また全員一緒のクラスになれたことに喜びを感じつつも1年A組の教室がある2階へと上がっていった。
その後は、毎年恒例行事と言ってもいいであろう担任からの説明の嵐、始業式での長ったらしい校長の話、小さな手提げ鞄では絶対に持ち帰れない大量の資料などなど。何事も恙無く始業式を終わらせることが出来た。何も無かったわけではないが途中、校長の話を聞かず寝そうになったところにつぐが耳元で名前を囁くもんだから椅子をガタガタさせてあたりをざわつかせてしまったぐらいだ。うん、あれは反則級だ。好きな女の子から急に耳元で囁かれるとどうなると思う?パラメータの限界値を超えて死ぬ。
時刻は1時半を少し回ろうとしており、各々帰宅するだの、部活を見に行くだの教室の外に出ていく。
「俺らはこの後どうする?」
「うーん、部活の見学は明日以降でもいいかなって思ってるし……」
「そういや、皆は部活とかどこ入るか決めたのか?」
「私は特に……」
「私も〜」
「私はやっぱりテニス部かな?」
「そう言えばひまりは中学テニス部だったな。あれは色んな意味で有名だったな……」
「ん?どういうこと?」
「いや、こっちの話だ」
言えるわけがない。こんな卑猥な話などした途端、泣きながら帰って行くか、ボコられるかのどちらかだ。
ここだけの話、ひまりは今でもそうだがそこらの女子よりスタイルがいい。いや、スタイルというかある一部分が一回りでかい。その一部分が思春期真っ只中の男子中学生にとっては刺激が強すぎた。そして大いに盛り上がって他の女子達に侮蔑な目で見られてたのは今でも鮮明に覚えている。だからこそ俺は数百人から追いかけ回されたり、殺されかけたんだが……。
「つぐは?もう決めてるのか?」
巴の質問に俺はピクッと素早く反応し一言一句聞き間違えないように聞き耳をたてる。
「私は中等部の時と一緒で生徒会に入るかな。元々、中学から推薦されてたから」
「推薦なんかあったの?」
「ほら、羽丘学園って試験を受けずに中等部から高等部に上がれるでしょ?その時に先生から高等部の生徒会も続けてやってくれないかって言われてて…」
「そうなんだー。知らなかったなー」
勿論、俺は知っていたがな。
「ともちんはどうすんのー?部活とか入る?」
「蘭やモカと一緒で特に決めてないかな。多分、商店街の手伝いとか和太鼓の練習とかで忙しくなりそうだから入らないと思うけどな」
巴はよく近所の商店街でおじいちゃんおばあちゃんの面倒というか困っている人を見かけたら助けている。普通の男より男勝りなところもあってか、一種の男性陣から姉御と呼ばれたりもしているらしい。後は商店街で開催されるお祭りなどがあれば和太鼓を叩きにも行く。何故、男に生まれてこなかったのか不思議なくらいだ。
そんなこんなで校門前までやってきてしまった。
「この後どうする?」
「どうしよっかー……」
「モカちゃんはパンを所望する〜」
「それはお前がただ食いたいだけだろ」
「えへへー、バレてしまったか」
「ったく。因みに俺は今からスタジオに入りに行く」
実は、俺は趣味の一環としてある楽器を弾いている。それは彼女たち幼馴染の5人も同じであって……、
「……私も行きたい」
「蘭が行くなら私も〜」
「じゃあみんなでスタジオ練習といくか!」
「うん!」
「賛成ー!」
新学期スタートの一日はまだ終わらないらしい。
一応記しておくと、ここでは羽丘女子学園は共学となっており、幼馴染全員A組にしました。B組だったかもしくは高校でも蘭だけ違うクラスだったのではないかと曖昧な記憶ですが、いっそのこと全員一緒にしました。やはり仲良しは一緒にいるのが一番。
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