君の笑顔を見たくて   作:羽沢珈琲店

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なんか執筆作業がはかどった……


ガルジャム

 数日後、俺は次のライブが決まったことを報告するためみんなをスタジオに呼び出したのだが、

 

「ひまりが来ない……」

 

「何かあったのかな……?」

 

 珍しく遅刻しているひまりを心配するみんな。先に話を進めておこうかと思った矢先、

 

「ごめ~ん! 遅れて!」

 

「ひーちゃん遅いじゃん~」

 

「ひまりが遅刻なんて珍しいな」

 

「ちょっと部活が長引いちゃって……」

 

「とりあえずひまりも来たことだし、ささっと説明するぞ」

 

「あ、待って修! さっきスタッフの方からこんなチラシもらったんだけど……」

 

「ん? おいおい、まじかよスタッフさん俺の心でも読んだのか?」

 

 苦笑いしながらそのチラシを見てみると、俺が探してきたライブ内容と同じ、というか同じライブだった。

 

「『ガールズバンドジャムvol.12出演者募集』……? これって?」

 

「ガルジャムって言ったら、ガールズバンド界隈では結構メジャーなイベントだよな」

 

「もしかして~、あたし達がこのイベントに出るとかって話?」

 

「そのまさかだ。Afterglowはこのライブに出場する」

 

 あれから俺はいろんなライブ広告を探し、あいつらが出れそうなライブを手あたり次第チェックしていった。そして、その中で俺はこのガルジャムに目を付けた。しかしまさかスタッフさんも勧めていたとは。

 

「確かに、ガルジャム出身の人気バンドは多い。アタシも客として何回か行ったけど、なかなかアツいイベントだったよ。けど、これはプロの人も出るライブ。アタシ達が今までやってきた学生イベント中心の、規模が小さいやつだ。ガルジャムはそれとは規模も、熱量も全然違う……。いくら修が探してきたライブだったり、スタッフの人が推薦してくれたとしても、実際そこでライブするのはアタシ達だ」

 

「「「「……」」」」

 

(巴が言いたいこともわかる。俺らは幼馴染で組んだバンド。どこかの頂点を目指すバンドとは違う。ここで無理に出て今後のやる気などに影響する可能性だってある。だが)

 

 そんな時、意外な人物が声をあげた。

 

「……出ようよっ!!」

 

「つぐ!?」

 

「で、出ようっ! うん、出たほうがいいよっ! 前の練習で、みんなライブに出たいって言ってたしチャ、チャレンジだと思って、出てみようよっ!」

 

「「「「「……」」」」」

 

「そ、それに折角修君が持ってきてくれたライブだし……」

 

 つぐー!! 君はなんて優しい子なんだ! ホントどこまで俺の虜にさせるんだ! 

 

「修、顔がきもい」

 

 おーっと蘭、ちょっと表出ろや。

 

「あ、あれっ!? 私、変なこと言っちゃったかな……!?」

 

「ぷっ……はははははっ。変なこと言ってないよ。つぐ、よく言った」

 

「つぐ、かっこいい~」

 

「ええっ、ちょっと、やめようよぉ……」

 

「つぐの言うとおり。チャレンジしてみるのもいいかもな。蘭、モカ、どう思う?」

 

「いいんじゃない。久々に修がまともなライブ持ってきてくれたし」

 

「おい、それどういう意味だ」

 

「蘭が出るなら、あたしも出る~」

 

「蘭ちゃん、モカちゃん……」

 

 え、みんなスルーなの? 否定しないの? 

 

「……はぁ。とりあえず出るってことでいいな」

 

「「「「「うん!」」」」」

 

「なら帰ったらエントリーしとく。さて、そうと決まればこれからガルジャムまでスパルタ形式で指摘していくからな」

 

「望むところだ!」

 

「う、うんっ! 頑張るね!」

 

「え~厳しいのは嫌だな~」

 

「ほらモカやるよ。少し確認したいところあるし」

 

「ん~~! なんかやる気出てきた。みんな頑張ろうね!! せーのっ、えい、えい、おー!!!」

 

「「「「「……」」」」」

 

「ってみんな言ってよ~1もぉ~!」

 

 すまんひまり。こればっかりはやりたくはない。

 

「……さすがに、えいえいおーはないでしょ」

 

「ええっ!」

 

「確かにちょっと恥ずかしい、かな……」

 

「巴まで! ひどいよぉ~!!」

 

 笑いが起こりつつも各々やる気に満ち溢れていた。

 

(正直、まだみんなの演奏はガルジャムで演奏するレベルにはあまり達していない。だが、つぐの言うとおりチャレンジしてみるのもいいのではないかと思って、このライブにしたんだが……。結果オーライだったみたいだな)

 

「さて、時間も勿体ないからまずは一度通しでやってくれ」

 

「「「「「はーい」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、スタジオの時間も残りわずかとなり最後は何曲か通してから終わろうとしたのだが、

 

「さて、あと二十分といったところか……ここから最後までボーカルなしで合わせてくれ」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「……どういう意味?」

 

 俺の言葉にみんな耳を疑う。なにより眉間にしわをよせたのは蘭だった。

 

「そのまんまの意味だよ」

 

「じゃなくて、なんで私に歌わせ「キーを何回も外してるやつに言われたくない」……っ!!」

 

 鋭い指摘に何も言えなくなる蘭。

 

「自分で気づいてるならまだいい。調子が悪いなら少しでも多く休めておけ。今のまま歌ってもらっても迷惑だ」

 

「……っ!」

 

「修也、そんな言い方……!」

 

「事実だから仕方ない。言い方が悪くても、一人でも調子が悪ければほかのみんなの演奏にも影響が出る。現に休憩後からみんなの演奏悪くなってるぞ」

 

「「「「あ……」」」」

 

 きつい言い方にもなるが、みんなが折角やる気になってるんだ。こっちもそれ相応として厳しく言わなければならない。

 

「……ごめん、私、先帰る」

 

「あ、蘭……!」

 

 悔しそうな表情を浮かべながら荷物をまとめてスタジオを出ていく蘭。ひまりやつぐが止めようとするも何も言わずに帰ってしまった。

 

「お、おい修也! いいのかよ。これじゃあ蘭が……!」

 

「うん、まぁ、流石に言い過ぎたか……」

 

 まさか、先に帰るなんてな……。でもこれは言わなければならなかったことだと思う。それに、自分のせいで演奏が悪くなってるのは本人が一番わかってるはず。

 

「でも~、修君の言うとおり練習に身が入らなかったのは事実なんだよね~」

 

「それは……! そうだけど……」

 

 モカも巴も口には出さないものの、内心思っていた。休憩後の蘭の様子がおかしく、体調不良なのかもしれないと心配の面が無意識に演奏に現れていたのだ。

 

「でも、なんで蘭ちゃん調子が悪かったんだろう……?」

 

 つぐの疑問に巴が心当たりあるかのように即答する。

 

「多分だけど、蘭の親父さんが原因だと思う」

 

「確か蘭ちゃんのお父さんは、華道の美竹流の当主さんなんだよね。蘭ちゃんはいずれはお華の道に進むんだって、前に近所の人から聞いたけど……」

 

 蘭の家は代々受け継がれてきた華道の家元。確か100年以上の歴史があるんだっけか。蘭には兄弟がおらず一人娘であることから、結果的に蘭が受け継がないと長い歴史に終止符を打つことになる。まぁ養子がいれば話は変わってくるんだけども。

 

「前に蘭の親父さんが、高校生くらいになったら蘭に華道の勉強を始めさせたいって言ってたんだ。けど、当の蘭本人は華道を継ぐ気はないってずっと言ってる……。もしかして、その件で親父さんから電話がかかってきてるんじゃないかって思ってさ」

 

「私今日ね、休憩中蘭と誰かが電話してるのを見たんだ。蘭、すごい剣幕で電話に向かって怒鳴ってて……『関係ないでしょ!』とか『ほっといてよ!』とか……。電話を切ったあと、何かをこらえるような顔してて……そのあとの練習も、ずっとつらそうな顔してた。モカは、気づいたよね?」

 

「ん~、そうだった? 蘭はいつもああいうカンジだからなー。こう、ムムッ! ってしてるっていうか」

 

(嘘つけ)

 

 一番蘭と付き合いが長いモカが気づかないわけがない。まぁここでは突っ込んでも話がややこしくなるだけだから何も言わないが

 

「心配、だね……」

 

「ま、明日以降もあんなカンジなら、タイミングを見て蘭に直接来てみるのも手か。簡単に答えそうにはないけどな」

 

「言い過ぎた分、俺も明日会ったら謝るわ」

 

 よくよく考えてみたら別に今言うことでもなかった。ムキになると少しカッとなってしまって強く言ってしまうのは俺の悪い癖だな……。

 

「とりあえず帰る準備するか。話してたらもう終わりの時間だ」

 

 時計の針が55分を指していたのを見て、急いで俺たちは片付けの準備をする。

 

(強く言ってしまった分、また蘭が学校に来ないことにならないといいが……。いや、大丈夫だろう)

 

 そんなこと思いつつ、片付けも終わらせ、俺たちはスタジオを出たのだった。

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