小戸禊は勇者であったか?   作:加賀崎 美咲

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第五話 輪に加わった君

「というわけで、あんた達あんまりにも呑気だから情報交換と共有よ!」

 

  あくる日の放課後、勇者部の面々は部室に集合していた。黒板の前の夏凜は黒板に書かれたバーテックスの現れる周期の表を叩いた。夏凜を除く五人は椅子に座り、美森の用意したぼた餅を食していた。禊と風の皿にはそこに昨日禊が作ったのと同じようなタコスが加えられていた。

 

「何がというわけなの?」

「あんた達を見てて、あんまりにも緊張感がないから私がビシって言ってやろうってことよ」

 

 突如始まった夏凜主催による説明会とそのセリフに疑問符を頭につけた勇者部を代表して禊が問う。それに対して夏凜はイラついたように煮干しを食みながら答える。部室の一角には煮干し特有の匂いが漂っていた。

 

「なんで煮干し?」

「知らないの? 煮干しはね完全食よ。ビタミン、ミネラルが豊富で……」

「あーごめんごめん。続けて」

 

 これまた突如始まった煮干しのプレゼンテーションに風は新種の地雷を踏んだ事を察した。気持ちよく煮干しについて語っていた夏凜は本来の趣旨から離れている事を思い出し、咳払いする

 

「フン! 話を戻すわ。いい? 本来バーテックスの襲来は周期的なものなの。それがこの一ヶ月間で完全に乱れているのはあんた達にも分かるわね?今後も相当の混戦が予想されるわ」

「確かに。一ヶ月前も複数体が一気に現れましたし」

「私ならどんな事態でも対処できるけどあなた達は気をつけなさい。命を落とすわよ。それともう一つ。勇者は戦闘経験値を重ねる事でレベルが上がって強くなる。それを満開と呼ぶわ」

「そうなんだ!」

「アプリの説明にも書いてあるわ友奈ちゃん」

「そうなんだ!」

 

 気の抜ける友奈と美森のやりとりにこの勇者部の空気を改めて見せつけられる夏凜。

 

「三好さん、質問いいかな?」

「小戸? 何? 言ってみなさい」

「その満開っていうのは具体的にどうなるんだい?」

 

 レベルアップという単語だけでは具体的にどのようなものか想像つかず、禊は質問する。自分が戦う度に追加される武装が満開によってもたらされているのだろうかと予想する。

 

「満開がどんなのかは私も知らないわ。まだ満開した事ないから……」

「なんだ夏凜、あんたも私たちと同じレベル1なんじゃない」

「基礎戦闘力が桁違いに凄いのよ!一緒にしないでもらえる⁉︎」

 

 結局のところ、夏凜も具体的な満開とはどのようなものか知らないらしい。その後、皆の基礎運動能力を上げるために朝練を始めるかといった話が出たが朝が起きられないという点から流れる。

 

「まあそんな話は後でするとして……じゃあはい、ここからは次の議題。樹?」

「はい。まかせてお姉ちゃん」

 

 樹から一人一人にプリントが配られる。プリントには子供会で行われるレクリエーションの詳細が書かれていた。

 

「というわけで今週末は子供会でレクリエーションを行います」

「具体的にはどんな事?」

「はい、東郷先輩。今回は子供達と折り紙教室を開いたり、人形劇をする予定です!」

「なら夏凜には暴れたりない子供達のドッチボールのマトになってもらいましょうか!」

「なんでよ! 大体、なんで私まで参加することになってるのよ!」

「ん? だってほら」

 

 首を傾げ、風はカバンの中から一枚の用紙を取り出す。それは禊にも見覚えのあるものであった。入部届。必要事項には三好夏凜の簡単なプロフィールと入部の意思を表す文面が記されていた。

「昨日入部したでしょう?」

「それは形式上……」

「ここにいる以上部の方針には従ってもらうからねー」

「それも形式上のことでしょう! 大体私のスケジュールに勝手に割り込んこないで」

「夏凜ちゃん日曜日に何か予定があるの?」

「そっそれは……」

 

 言い淀む夏凜を見て禊はひらめく。

 

「三好さん、もしはじめてで不安というなら大丈夫だよ。ここいる人はいい人たちばかりで君もきっと気にいるよ。ようこそ勇者部へ!」

 

 差し出されるタコス。トウモロコシ粉は数回では処理し切れないのだ。

 

「いらないわよ……」

「禊―。あんたもいいこと言うわね!」

「終わったら夏凜ちゃんの歓迎会もしようね!」

 

 今まで勇者になるために人生の時間をほとんどを当て、ろくに他人と触れ合うことのなかった夏凜にとってこの勇者部の優しさはむず痒く、だが嬉しい気持ちが胸の中で混ざりあっていた。そんな気持ちが恥ずかしく思わず声が上擦る。

 

「しっ仕方がないわね! 日曜日ならたまたま予定が空いてるから行ってあげるわよ!」

「なら決まりだね! 楽しみだね夏凜ちゃん!」

 

 夏凜の参加が決まり、喜ぶ一同。大げさにも見える喜びように夏凜は驚くが口元は笑っていた。

 

 翌日、禊達は近所の児童館に集合していた。時刻は集合時間の10時を少し過ぎていた。夏凜以外の全員が集合し、彼女一人を待っている状態であった。

 

「夏凜のヤツおっそいわねー」

「何か事故にあってないか心配です」

「とりあえず電話を掛けてみる?」

「私電話かけてみるよ!」

 

 一人遅い夏凜に皆心配していた。友奈は自身の携帯を取り出し、アドレスに登録した夏凜の番号を呼び出した。数コールのあとコールのメロディがブツリと音を鳴らして途切れる。

 

「あれ? 切れちゃった?」

「どうしたのかしら?」

 

 突如切れたコールにどう判断するべきか全員が首をかしげる。児童館の中ではもう集まった園児達の大きな声が外にまで響いていた。

 

「お姉ちゃん、子供たち我慢の限界みたいだよ」

「……うーむ。どうしたもんかしら」

「風部長、僕が探してくるよ。多分どこにいるかは分かるから……」

 

 夏凜を探したいが子供達を待たせておくこともできず、風が頭を唸らせていると禊が夏凜の捜索に立候補する。子供達のこともあり夏凜の捜索には人数を割けない。そんな中、自身で立候補した禊を止める理由はなかった。

 

「じゃあ夏凜のこと任せたわよ禊!」

「任せて!」

 

 勇者部の全員に見送られ、禊は走り出す。恐らくだが昨日の嫌そうではなかった様子から夏凜は集合場所を間違えたのではないかと予想した禊は学校へ向かった。しばらく走り、学校へたどり着き、階段を駆け上がり、部室の扉を開く。しかし中には誰もいない。

 

「あれ? まだいると思ったんだけどな」

 

 まだ部室の中で待っていると思った禊であったが当てが外れた。予想が外れ、禊はどうすべきか分からず頭を抱える。次の行動に悩んでいると部室の中に風が流れる。樹海の中で勇者に変身した時に感じたあの涼やかな優しい風。その風と共に少女の声が禊の頭に響く。

 

『お前の探し人は砂浜の方だな』

「だっ誰!」

 

 突如頭の中に直接響くように聞こえた声に禊は困惑する。以前のように霞みがかったような不明瞭さは無く、はっきりと禊に聞こえていた。

 

『あー、アタシの名前か?アタシは……』

 

 謎の少女の声は自身の名前を話そうとした時、突如繋がりが切れる。

 

『余計なことをするな。直接的な干渉を許した覚えはないぞ?』

 

 さらに聞こえてきたのは先日夢の中であった禊そっくりの人物の声。その声は少女の声をたしなめるようなものであった。更なる声の出現に禊はさらに混乱する。

 

『邪魔をした。しかし随分と繋がりがしっかりとしてきたな』

 

 意味深な言葉を残して、それ以降声は聞こえてこなかった。感じていた涼やかな風もなくなった。あれはなんだったのだろうか。そんな疑問が禊の胸の中を埋めていくが答えなどは出るはずもない。

 

「そうだ! 今は三好さんのことが先だ!」

 

 自身に起きている異常に今できることはない。今はできることをするべきだと結論づけ禊は先ほどの声が導いたように昨日夏凜と会った砂浜へと駆け出した。禊の通学路から離れたそこは走って20分ほどの所にあった。昼の太陽の下、砂浜にたどり着いた禊は日本の木刀を振るう夏凜を発見した。

 

「見つけた!」

 

 思わず大きな声が出る。禊の出した大きな声に夏凜は驚き振り返る。

 

「小戸! どうしてあんたがここにいるのよ!」

「君を探していたんだよ。 走ってここまでき来て、君を見つけた」

 

 乱れた息を整うようとするが思った以上に全力で走ったようで思うよう息が整わず膝に手をついて禊は喘ぐ。息も絶え絶えな様子の禊を夏凜は心配する。

 

「あんた大丈夫?」

「学校からここまで走ってきたからね」

「なんでそんな事……」

「君を探してって言ってるでしょ?」

 

 まっすぐとこちらを見てくる禊に夏凜は目をそらす。自分は友奈の電話をして切ってしまい、掛け返すこともせず逃げてしまった。砂浜で木刀を振るっていたのも自分は大赦から派遣された勇者なのだからそんなことする必要がないと自分に言い聞かせる為だった。勇者でない自分にはきっと価値なんてないから。

 

「勇者部にいることは不快?」

 

 顔を下げてうつむいてしまった夏凜を見て禊は彼女の事情を想像する事にした。勇者部にいることが不快なのだろうか。もしそうなら禊は悲しいと思った。

 

「……別に嫌じゃない。でも私は大赦の勇者で、バーテックスを殲滅するのが使命で……」

 

 なんとなく禊は分かってきた。昨日の夕食の件にしても今の彼女の煮え切らない態度にも禊には否定的な感情を感じなかった。ただどうして良いか分からない気持ちからくる混乱、それが禊の感じた印象であった。

 

「勇者部と大赦。どっちにもいて、それでいいと僕は思うよ」

「勇者じゃない私なんて必要ない……」

「そんな事誰も言わないさ、勇者部の誰かが君を要らないなんて言うと思う?」

 

 禊に言われて夏凜は思い出す。初めて会う自分にもお節介で馴れ馴れしくて騒がしい勇者部の面々。会ってまだ一週間も経っていないが誰もそのような事を言わないことは夏凜にも分かる事であった。

 

「わっ私がいてもいいの?」

「僕は君にいて欲しいって思うよ? みんなだってそう、僕らは君を必要としてるよ」

 

 自分の存在を認めさせる為、一人勇者になるための訓練に明け暮れていた夏凜にとって勇者になったことは必要とされたからではなく勝ち取ったものであった。しかし勇者部はただ無条件に彼女を必要だと言い、受け入れていた。そんな勝手な肯定に夏凜はむず痒いものであり、今は禊の言葉に乗ってあげると心の中で建前を立てることにした。

 

「しょっしょうがないわね! そんなに私が必要だっていうなら少しくらい力を貸してあげるわ!」

 

 精一杯の強がりから出た言葉と一緒に口の端は上がっていた。そんな夏凜の様子に禊もつられて顔が笑う。

 

「お願いするよ。完成型勇者さん。さあ、みんなが待ってる!」

 

 振り返り、禊は夏凜を連れて児童館へ向かおうとする。そこで児童館からは随分と離れてしまっていることに気づく。確認すると夏凜は自転車できていたようで先に着くのは間違いなく夏凜の方である。

 

「三好さん。僕歩きで来ちゃったから先に向かってて。後から追いつくから」

「あんたね……、迎えにきた本人が一番遅くなってどうするのよ。……私のせいであんたまで遅れたら申し訳ないから後ろ乗りなさいよ」

「二人乗り? でも危なくない?」

「完成型勇者の運動能力を舐めないことね」

 

 木刀を素早く仕舞い、乗り付けてあった自転車に夏凜が乗る。首だけ後ろへ振り返り顎で自転車の後ろの荷物を置くスペースを示す。禊は恐る恐るという様子で荷物置きに腰を下ろす。二人分の体重で自転車のタイヤが沈み、ゴムの反動で戻る。

 

「さあ行くわよ! 小戸、しっかり捕まりなさい」

 

 夏凜の運転する自転車は勢いよく出発し、児童館への道を走り出す。急に走り出した自転車の揺れに禊は驚き、思わず夏凜に抱きつくような姿勢でバランスを維持する。二人の間には沈黙が流れ、聞こえるのはタイヤがアスファルトを擦る音だけであった。

 

「小戸……その、ありがとう」

 

 風にか消えるかという音量で小さく夏凜は呟いた。

 

「禊。みんなそう呼ぶから三好さんもそう呼んでよ」

 

 禊は自身の名前の響きが好きであった。そう呼んで欲しいとも思うし、何より自分から彼女に歩み寄りたいと思った。そんな思いが禊の返事には含まれていた。

 

「あたしも夏凜でいいわ」

 

 そのやりとりを最後に再び沈黙が流れ、自転車は目的地に向かって走る。しばらく走り続け、時折禊が道を支持しながら二人は児童館へ到着した。自転車を駐輪場に止め二人は中へ向かって走る。中に入ると走ってきた二人に気づき、友奈が声を上げた。

 

「あっ! 二人ともやっときたよ!」

「よし! 禊が夏凜を連れきたわね! 二人とも荷物置いたら樹のと手伝って!」

 

 風の指示に従い、二人は荷物を置くと子ども達と折り紙を折っていた樹のいるテーブルへ合流した。三人は鶴や花といった折り紙の降り方を子供達へ教えて行く。

 

「夏凜さん折り紙とっても上手です!」

「当然でしょ! 完成型勇者に死角は無いわ!」

「樹ちゃんも上手だよ」

 

 途中風の予想通り夏凜と禊は元気の有り余った男の子達のドッチボールの的になるなどのハプニングを経つつ和気藹々とした雰囲気の中レクリエーションは進んでいった。予定通り全てのレクリエーションが進み解散の流れとなり、外はすっかり夕暮れとなっていた。子供達を見送り、片付けを終わらせて勇者部も帰る流れになった。

 児童館を出て勇者部一同は一緒に歩き、禊と夏凜のマンションにまで歩き、夏凜の部屋の前にまで来ていた。薄々おかしいと思っていたがついに耐えきれなくなった夏凜が叫んだ。

 

「って、なんであんた達まで一緒に来てるのよ!」

「そりゃあ、あんた家に用事があるわけよ。というわけでお邪魔するわよー」

「ちょっちょっと待ちなさいよ!」

 

 言うと風は夏凜の部屋に上がり皆がそれについて行く。皆は夏凜の部屋に上がり、リビングの周りに陣取る。

 

「あんた達、うちになにしにきたのよ!」

「それはもちろんこれだよ」

 

 禊は自分の部屋から持ってきた大きな箱を取り出しみんなに見えるように取り出した。箱を取り出すと中からはタコスが箱の中にぎっしりと詰まっていた。

 

「あっ間違えた。こっち」

 

 慌ててタコスの入った箱を横に置き、持ってきたもう一つの箱を取り出した。今度こそはと開けられた箱の中には如何にもな誕生日ケーキが収められていた。

 

「ケーキ? なんで?」

「夏凜ちゃん今日誕生時だよね? お誕生日おめでとう!」

「なんでってあんた、入部届にもちゃんと書いてあるじゃない」

 

 友奈に祝われ、何故みんなが自分の誕生日を知っているのか夏凜は疑問に思った。キョトンとした夏凜に対して風の差し出した入部届には必要事項の欄に夏凜の誕生日が書かれていた。

 

「もしかしてあんた自分の誕生日も忘れてたの?」

 

 夏凜の呆けた顔が面白かったのか風はクックックと笑いながら夏凜に問う。質問された夏凜はうつむき、ぼそりとつぶやき出す。

 

「……バカ、ボケ、おたんこなす」

「何よ! そんなに言うことないじゃ無い……」

「誕生日なんてみんなに祝ってもらったことないから、何て言えばいいのか分からないのよ!」

 

 言葉には恥ずかしさを懸命に隠そうとする色が満たされていた。そんな言葉を聞いて一人一人、この誕生日会を開いて良かったと思った。

 

「素直に嬉しいって言えばいいと思うよ」

 

 笑顔でタコスを差し出しながら禊は夏凜に提案した。素直じゃない夏凜は差し出されたタコスをひったくるように口に入れ顔を逸らした。

 

「これからいっぱい楽しくなるんだよ! 改めてお誕生日おめでとう! 夏凜ちゃん!」

 

 誰かの誕生日を祝う。それはきっと誰にとって嬉しいことだろう。ここにいる事、ここに生まれたことをみんなで祝福する。そんな当たり前の幸せが今は心地よかった。そんな心地良さの中、夏凜の誕生日会は着々と進んでいった。

 

「ようし! 今日はみんな飲むわよ!」

「ちょっと風! あんた何コーラで酔ってるのよ。場酔いってレベルじゃないわよ」

 

 楽しい雰囲気に当てられたのか風は羽目を外したように騒ぎ出した。いつも通りのような気がしたが指摘するのは野暮だろうと禊は何も言わないことにした。隣にいた美森はうずうずとした様子で置いてあった容器を取り出した。

 

「夏凜ちゃん、私の作ったぼた餅食べてちょうだい」

「いや、ここは僕の作ったこのタコスを」

「あんた達どれだけ私に食べて欲しいのよ!」

「いえ、食べてもらうわ。有無は言わせない」

「後生だ夏凜ちゃん。そろそろトウモロコシ粉を消費しないと僕の朝食がいつまでもタコスから変わらないんだ」

「大袋で買ったあんたの自業自得でしょ!」

 

 さめざめと泣きながら禊は自業自得の産物を消費して行く。恨むべきは何となくイネスで1キロのトウモロコシ粉袋を買っていった自分であった。

 

「あっ!」

「次は何!」

 

 友奈の見つけた壁のカレンダー。真っ白なカレンダーの中、今日の日付にだけ大きな赤い丸が目印として書かれていた。

 

「夏凜ちゃんも今日を楽しみにしてきたんだね!」

「なっななな……」

「あっ! この折り紙、練習してたんですか?」

 

 次から次へと目ざとい勇者部達は部屋の中の夏凜の隠していたものが見つかっていく。テレビの下の空間には少し隠すように折り紙の教本と練習したのであろう折り鶴が複数鎮座していた。

 

「みっ見るなー!」

 

 慌てて隠す夏凜をよそに友奈はみんなで遊ぶ予定をカレンダーに書き込んでいく。それに夏凜はまた騒ぎ、二人のやりとりにまた皆笑う。みんなで楽しそうにする勇者部を見て禊もつられて笑う。

 

 楽しい時間も過ぎ、時間も遅くなったので解散となった。禊と夏凜以外のみんなは帰り、禊はパーティーで出たゴミの処分を手伝っていた。二人でそれぞれ出たゴミ袋を一つづつ持ってゴミ捨て場に捨てた。それぞれの部屋に戻る途中、夏凜が口を開いた。

 

「今日はありがとう。多分あんたが呼んでくれなかったらきっと後悔してた」

「君にしては随分と素直な言葉だね」

 

 少し含み笑いを混ぜてからかう声で禊は答えた。

 

「悪かったわね、素直じゃなくて」

「ごめんごめん。なんだか面白くって」

「もう! いい? これは貸し一つだから! あんたがピンチな時にこの完成型勇者が助けてあげるんだから!」

「そっか。なら、いざって時は助けてね完成型勇者様」

「任せておきなさい。完全勝利よ!」

 

 こうして楽しい1日は終わった。きっと勇者部は夏凜にとってそこにいたい場所になる。予感ではなく確信が禊にはあった。新しい仲間を加えて勇者部はもっと楽しい場所になるだろう。いつかその場所に彼女も来てくれたら。もうそれ以上に望むものは禊にはなかった。

 

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