IS学園のカウンセラールームにて   作:アリルシン

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織斑 千冬の悩み

世界旅行を終えて帰って来た翌日が入学式。

ハードスケジュールだが問題はない。

入学式には出ないし、僕のことやこのカウンセラールームのことは特に通達されていないのだ。

故に男がこの学園にもう一人いることはごく一部の人間しか知らず、ひっそりと静かな日々を過ごせるのであった。

 

「……刀奈さんは名を返上したんですね」

 

「えぇ、破門覚悟だったのにあっさりと受け入れられちゃった」

 

刀奈に戻った生徒会長さんの表情は前回と比べて明るく見えていた。

気のせいではないはずだ。

 

「それで?簪さんとは仲直りしたんですか?」

 

「まだよ。でもいつかはする」

 

「早めにできることを祈ります」

 

話が終わり、刀奈さんはカウンセラールームから出て行った。

しばらく間を開けてる、次なる来客がやって来る。

 

「失礼するぞ」

 

「失礼ですお引き取りください」

 

「……酷くないか?」

 

「冗談ですよ」

 

黒いスーツを着たツリ目の美女教師。

彼女の名前は織斑 千冬……またの名をちーちゃんだ。

 

「お疲れのようですね」

 

「あぁ、疲れた。ということで付き合え」

 

手にはお酒の入ったビニール袋。

ここは神聖な学び舎だよね?

と以前問いかけたことがある。

その際、彼女はバレなきゃ犯罪じゃないなどと言った。

いいのかそれで?

なんて思いつつお酒のつまみを用意し、酒盛りが始まるのであった。

 

「弟さんが何かしでかしましたか?」

 

「な、何故わかるの?」

 

「貴女の話って殆ど彼の話ですから」

 

「気が付かなかった」

 

ブラコンは自覚なしのようだ。

 

「で、何したんです?」

 

「イギリス代表候補生と決闘騒ぎになった」

 

それを聞いた瞬間、僕はクスクスと笑う。

 

「元気があって実にいいですね」

 

「笑い事ではない。それもあいつは相手の実力も把握できていないんだぞ?」

 

若さと勢いとビギナーズラックって言ったところから。

それで勝てるよう相手ではない。

 

「しかもあいつは参考書を読まずに捨てたんだ」

 

「あらら、それ授業中ちんぷんかんぷんだったでしょ?」

 

「あぁ。全くわからずと言う顔だった」

 

ある意味で不良だな。

 

「しかも私のことを千冬姉と呼ぶ」

 

「いいじゃないですか」

 

「よくない。私は教師だぞ?」

 

飲むペースが早いな。

つまりそれだけ悩んでいるということか、

 

「一夏くんにここで教師をしていることは伝えてあったんですか?」

 

「いや……」

 

「ならしょうがないですよ。それに他の生徒で千冬様となお姉様呼ばわりされているんでしょ?だったら実の弟さんが千冬姉って言うくらい多めに見ましょうよ」

 

「うむ……だがな」

 

悩むちーちゃん。

呼び方に関してはここまでにする。

彼女の方針を強制的に変えるのはよくないからだ。

 

「ところでイギリス代表候補生の子とどうして決闘なんかになったのかな?」

 

「それは……」

 

僕はちーちゃんから経緯を聞いた。

イギリス代表候補生の子……名前をセシリア・オルコットというらしい。

その子の暴走が原因だった。

一夏くんも言い返したのは不味い。

だが何よりダメなのは……

 

「ちーちゃんが止めなかったのが一番悪いと思う」

 

「う、うむ……」

 

言い返さずに黙ってお酒を飲む。

だが明らかにアレは空だった。

図星ということだろう。

 

「それで?一夏くんにISの事を教えないの?」

 

「エコ贔屓はしない。あいつか言ってくれば別だがな」

 

絶対に言わんだろうな。

姉に迷惑掛けたくないとか考えているはずだから。

 

 

「……そもそも私はこうなる事を恐れてわざとISに関わらせまいと遠ざけてたのにアイツは……」

 

「いやいや、元凶は他にいるでしょ?」

 

僕はちーちゃん呼ばわりした最初の人物をイメージした。

 

「まあ、身内だから厳しくするのはそれこそエコ贔屓だからあまりおすすめしないよ」

 

「じゃあどうすればいいんだ?」

 

「それぐらい自分で考えなさい」

 

僕はコップに入ったビールを飲み干した。

すると、ちーちゃんがいきなり咳払いをする。

 

「は、話は変わるんだがな……今度の休みは暇か?」

 

 

「ごめん。副業で今月は無理」

 

「そうか……大変だな」

 

「まあこれも世のため人のためだよ……最も僕は自分を正義の味方とか思ってないけど」

 

「私はお前をヒーローだと思っているがな。一滴も血を流さずに悪を滅ぼすところが特にそう思わせる」

 

なんかちーちゃんに褒められると照れるな。

 

「さて、今日のところはこれで終わるか」

 

「そうだな……また来るよ」

 

「いつでもどうぞ。あ、一夏くんにも何かあったら来るように伝えておいてよ。話し相手くらいなら出来るからさ」

 

「そうさせてもらう」

 

ちーちゃんは寮へと帰って行った。

後片付けをしているとふっと昔の事を思い出す。

それはまだISが兵器となる前の、ちーちゃんと天災と僕の青春時代の日々だった。

 

 

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