IS学園のカウンセラールームにて   作:アリルシン

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お気に入り及び感想を頂いた方、そして読者の皆さんありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。

ちなみに短編から連載に変更しました。


更識 簪さんの悩み

土曜日。

第二整備室に一人の少女が作業している。

彼女の名前は更識 簪。

生徒会長である更識 刀奈の妹である。

 

「……これじゃダメだ」

 

簪の専用機は未完成だった。

その理由は織斑 一夏に人員を持っていかれたからである。

彼女は一夏を恨んだ。

しかしそれを表沙汰にはせず、一人で黙々と作業している。

 

「……今日は帰ってアニメでも見よう」

 

失敗の連続だった。

だが彼女は決して諦めない。

姉を超えたい。

それが彼女を突き動かしていた。

 

「にゃ〜」

 

寮へ変える途中、白い猫が現れる。

そして自身の足に擦り寄ってきた。

 

「かわいい」

 

頭を撫でようとした簪だったが猫は逃げていく。

しかし、数メートル離れたところで立ち止まって彼女の方を向いた。

まるでついて来てと言っているかのように。

 

「……」

 

彼女はついて行く事にした。

しばらく歩くと一軒のプレハブ小屋にたどり着く。

 

「こんなところあったんだ」

 

簪はそう口にした。

すると、プレハブ小屋に一人の男が出てきた。

 

 

 

誰かの気配を感じ、僕は外に出る。

そこにはメガネを掛けた青い髪の少女がいた。

 

「こんにちわ」

 

「こ……こんにちわ」

 

怖がってるみたいだ。

まあ見しらに男がいれば怯えるのも無理はない。

 

「僕はこのカウンセラールームの人です。一応立場は教師ですね」

 

「……更識 簪……です」

 

うん、知っている。

お姉さんにそっくりだもん。

それに……

 

「あ、あの……どこかでお会いしたことありますか?」

 

「さぁ?覚えはないよ」

 

嘘である。

実は何度も会っていた。

だが当日は変装していたし、覚えが無くても不思議ではない。

 

「折角ですから立ち寄ってください。美味しいクッキーと紅茶を出しますよ?」

 

「あ、いえ……私は……」

 

断るとした瞬間、簪さんのお腹の音が鳴り響く。

彼女は顔を真っ赤にしていた。

 

「無理にとは言いませんよ……どうしますか?」

 

「い、頂きます」

 

素直でよろしい。

と言う訳で簪さんを招くことに成功しました。

 

「……あれ?誰かいたんですか?」

 

紅茶の入ったカップが二つテーブルに置かれていることに対して疑問に思ったのだろう。

彼女の質問にコクリっと頷いて答えた。

 

「えぇ……どうやら帰ってしまったようです」

 

実はまだいるんですが、面白いんでこのまま何も言わない事にしましょう。

 

「さて、改めまして。ここはカウンセラールームです。お悩み相談室とも言いますし、一部分の方の憩いの間としても使われています」

 

「は、はぁ……」

 

いきなりだったかな?

まあ相談ある?と聞くよりかはマシだ。

 

「ちなみにさっきの猫は悩みある者を導き招き猫なんですよ」

 

「え?」

 

嘘じゃない。

これは本当である。

あの猫はたばちゃんと言うのだが、あの子はいつも悩みを抱えている人を連れてくる。

刀奈さんとこの学園で出会ったのもこの子が連れてきたからだ。

 

「何か悩みがあるのなら聞きますよ。勿論、無理にとは言いませんが」

 

簪さんが何に悩んでいるのかは理解できる。

しかしここはあくまでも彼女とは初対面で何も知らないフリをした。

 

「……私は……」

 

ぽつりぽつりと話してくれた。

彼女の専用機であるISは開発している企業が一夏くんの専用機の為に未完成のままだと言う。

そして自身はその機体を完成させようと必死に努力しているがうまく行かないらしい。

 

「誰かに手伝って貰うとかダメなんですか?」

 

「……ダメ……これは私がやらないといけないことだから」

 

そう決めている理由はだいたい理解できた。

 

「僕はISについてはよく知りません。けどISは企業や国家が膨大な資金と時間を費やして開発しているはずです。一人でできるようなものなんでしょうか?」

 

「お姉ちゃん……一人で開発しました」

 

「お姉さんがいるんですね?」

 

「はい……ここの生徒会長でロシアの代表です」

 

うん、知っている。

 

「そうですか……それは本当に一人で成し遂げたことなのでしょうか?」

 

僕は紅茶を一口飲み、そして再び口を開けた。

 

「お姉さんからそれは直接聞かれたのですか?」

 

「い、いえ」

 

「では話を聞いてみた方がいいと思いますよ」

 

さて、ここからが本題だろう。

簪さんの表情から察したように僕はこう質問した。

 

「お姉さんと喧嘩でもしましたか?」

 

「え?」

 

「顔に書いてありましたから」

 

驚いた簪さんだったが僕の言葉に怪しまず納得したようだ。

そして、しばらく沈黙後に話してくれた。

 

「お姉ちゃんにこう言われました……貴女は何もしないでいいっと」

 

「なるほど」

 

何もしないでいい。

流石に妹を可愛いから、守りたいからで言ってもそれが伝わるはずも無い。

ただ彼女を傷つけ苦しむだけの言葉だ。

 

(言葉は刃物……師匠がよく言っていたっけ)

 

かつて色々と仕込んでくれた師匠の言葉を思い出しつつ、簪さんにこう言った。

 

「その言葉の真意って考えたことがありますか?」

 

「真意……ですか?」

 

「えぇ。僕には単に貴女を傷つける言葉とは思えないんですよ……まるで何かから必死に守ろうとしている気がします」

 

「……だからわざと……」

 

どうやら真意に気づいたようだ。

そして、そろそろ隠れている人には現れて欲しんだけど……こちらから誘わないと無理そうですかね。

 

「さて、真意に気がついた簪さんに一つ質問します。お姉さんと仲直りがしたいですか?」

 

「……したいです。でも、お姉ちゃんは私を避けてるから」

 

「大丈夫ですよ……だってそこにますから」

 

「え?」

 

振り返った先にはタンスがある。

刀奈さんはあの中に隠れていた。

 

「折角ですのでここで仲直りしてくださいね。でないと今後出禁にしますから」

 

そう言って僕は外に出た。

邪魔者は退散した方が話しやすいだろうと考えたからである。

 

 

 

出て行った後、刀奈はタンスから出る。

そして、妹である簪の方へ顔を向けた。

何を言えばいいか分からず、そして簪もどう言えばいいか分からないでいた。

唐突すぎるのである。

 

「……は、ハロー?げ、元気デスカ?」

 

と片言になる刀奈。

簪はそれを見て思わず笑ってしまった。

 

「うぅ……いきなりすぎるわよ」

 

元凶を恨み。

しかし、きっと彼ならこう答えるだろう。

「元凶は貴女自信です」

と。

 

「えっと……ごめんなさい。私の言葉がずっと貴女を苦しめて」

 

「……ううん。私こそごめんなさい。お姉ちゃんの気持ちを考えずにずっと……ごめんなさい。ごめんなさい」

 

ポツリポツリと簪の目に涙が出る。

そんな彼女を刀奈は優しく抱きしめた。

 

 

 

氷は溶けて水となる。

二人の遅すぎる春が到来した。

過ぎた時間は戻らない。

しかし、この先の時間は過去よりもきっといいものになるだろう。

 

「任務完了」

 

ドア越しにいた男はそう呟いて何処かへと消え去ったのであった。




ちょっと無理矢理過ぎたかな?
次回もお楽しみに。

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