長い話の中でわかったのは二つ。この世界が危ないってことは幼稚園からの親友である●●と友達の身が危ない事。両手を強く握って何かに堪えるように姉上は体を震わせながら話していた事。
それだけでもう俺が勇者になる理由にしては十分だと思った。
勇者御記298.●●.●●
海の行方
ポタポタと地面に血が流れ落ちる。 意識も朦朧としているし、気持ち悪い。 歩くだけでも全身に負担がかかっている。 それでも今ここで足を止める訳にはいかない。
「おい、銀!しっかりしろ銀!」
肩に手を回して運びながら俺は敵の攻撃を喰らった銀に向かって呼びかけるが返事は返ってこなかった。 どうやら完全に意識を失ってしまっているようだ。 とにかくまずは銀を安全な場所に運ぼうと必死に鉛のような足を動かしていると、ちょうど辺りから生えている樹木で出来た陰を見つけた。ここなら大丈夫だと思い、銀を静かに寝かせた。
「できるなら須美とそのすけの所まで連れて行きたかったんだが、時間がねえからここで我慢しててくれ……必ず迎えに来るから、いい子で待ってろよ」
そういって俺はその場から離れながらふと後ろを振り返って銀を含めた同じ勇者である三人を頭に浮かべた。 生真面目で堅物の委員長タイプな寂しがり屋、天然でいつもボケボケしているとは裏腹に運も良くてなんでもできる万能系お嬢様、いつもトラブルに巻き込まれながらも誰かを助けるお人好しで夢がお嫁さんという多分今まで出会った中で誰よりも乙女な少女。 思い返せば、勇者に選ばれてから4人で過ごす事が多かった。
もちろん三人だけじゃない。 勇者に選ばれた俺たちの面倒を見てくれた教師兼叔母である姉、クラスの友人達、そして、讃州に住んでいる初めてできた最高の親友。
絶対に死なせたくない人たちを、終わらせたくない大切な居場所を守る為に。だからなんとしても、
「こっから先は通す訳には行かねえんだよ…バーテックスども」
決意を表した言葉とともに樹海を駆け抜ける。そのまま勢いで高く跳躍して奥に進行している大型のバーテックス三体を飛び越えて、奴らの正面に立つ。 たった一人だけでこんなのに挑むと考えると体が震えてくる。 恐怖が湧いてくる。 でも、それらに負けずに自身の得物であるパイルバンカーを呼び出し、持ち手を強く握りしめて自分自身を落ち着かせる。
そのままバンカーの先を地面に軽く突き立てて、ガリガリと線引きをする。
「よくもまぁこんなに前へ進んでくれたなぁお前ら。 だがここまでだ。この線から先には一ミリも通さねーよ」
バンカーの先をバーテックスに突きつけながら宣言した。
状況は今までの中で最悪だ。 こちらは自分一人な上に、全身は傷だらけで所々から流れている出血量がかなり多い。そして相手は大型三体。どう考えても勝ち目がないのは目に見えていた。けど死ぬつもりはない…いや、絶対に死ぬ訳にはいかない。 例え守れたとしても、俺自身が死んでしまえば意味がない。 これは守る為の戦いであると同時に、生きる為の戦いだから。
そう、自分は勇者である前に、
「通りたきゃ全力で俺を…
この世界に生を受けた、1人の人間だから。
俺の戦線布告に答えるかのようにバーテックスが光り、迎撃態勢に入った。
「うおおおおおおおおおお‼︎」
それに怯まず、俺は叫びながら地面を強く蹴り上げてバーテックスへと突撃した。
これは四人の勇者達のおはなし。
滅びゆく世界を存続させるために、神に選ばれた幼き命たちの軌跡。
神に見初められてしまうのは無垢なる少女とごく普通の少年。
そして多くの場合、戦いの果てに待つものは、理不尽で残酷な結末だった…。
感想、アドバイスも宜しくお願いします。
ちなみに、主人公が使ってる武器であるパイルバンカーは、仮面ライダービルドに出てきた若本ブレ…ゲフンゲフン、ツインブレイカーをモデルにしてますー。もっぱら敵を打ち貫くのが基本ですが、他にも色んな機能をつけているんで楽しみにしてくださーい‼︎