ウルトラマン&メカゴジラ~光の巨人と銀の巨龍~   作:ユウキ003

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大変遅くなってもうしわけありません。
これからも地道にやっていきます。次回は
もっと早くに投稿出来るようにします。


エピソード5 怪獣VS戦略

~~前回までのあらすじ~~

木星探査船、ジュピター3号が消息を絶って

3ヶ月。そんなとき地球外から謎の飛行物体が

落下してきた。落下物、怪獣は鹿島灘の

エネルギープラントを襲撃する。そんな中、

消息不明だった3号のパイロット達が家族

の元に現れると言う不可思議な現象が発生する。

そして、その中の一人、エザキ博士の残した

データから、怪獣の正体が元々ジュピター3号

である事などが判明し、パイロット3名が

内部に捕えられている事を知る。そして、

GUTSの面々はティガと共に

怪獣を倒すのだった。

 

 

それは、ある日の朝の事だった。

シアン「ふ、あぁ~~~」

僕は欠伸をしながら朝食を取るために食堂に

向かう。

そして、食堂で朝食を取って空いている場所を

探していると……。

アイナ「お~い、オオトリさ~ん!」

近くにいたヤシロ隊員が僕に手を振っている。

側にはユウヒ隊員の姿もあり、僕は二人の

お隣の席にお邪魔した。

   「オオトリさんも今から朝食ですか?」

シアン「はい。そう言うお二人も?」

ユウヒ「えぇ。朝食堂の外でばったりと

    出会ったので、一緒に」

 

と言う訳で、僕はヤシロ隊員、ユウヒ隊員と

一緒に朝食を取っていた。

ちなみに僕の朝食は焼き鮭定食。

あぁ~。暖かいご飯と味噌汁が寝起きの

体に沁みるな~。

……平和だな~。こんな時間が続けば

良いのにな~。

 

   『ビィィィッ!ビィィィッ!』

放送「GUTS隊員に連絡!繰り返す!

   GUTS隊員に連絡!全隊員は

   至急司令室に出頭せよ!」

……。フラグってあるんだなぁやっぱり。

シアン「も~~!朝ご飯くらい、ゆっくり

    食べさせてよ~!」

僕は思いっきり叫びながら、残っていた

ご飯と鮭と味噌汁をすぐさま平らげると、

ヤシロ隊員たちと一緒に司令室に向かった。

 

   「失礼します!」

そして私達が司令室に向かうと、そこには

隊長やダイゴ隊員たちが既に待っていた。

イルマ「おはよう3人とも。早速で悪いけど、

    これを見て」

そう言って隊長は大型スクリーンに目を向け、

僕達もそれに続く。

アナウンサー「え~、引き続きお伝えします。

       昨夜遅く、静岡県北川市の海岸

       に巨大な生物の死体が打ち

上げられたとの事です」

アナウンサーが喋っている傍らでは、その

巨大な生物、怪獣が海岸に打ち上げられている

のを、ヘリから撮影している映像が流れていた。

 

シアン「これって、怪獣ですよね」

アイナ「ですね」

イルマ「そうよ。そして、我々GUTSの

    この怪獣を調査せよとの命令が

    下ったわ。現場には、シンジョウ、

    ホリイ隊員の2名に向かって貰い、

    他は何かあった時の為に待機を」

ホ・シ「「了解っ!」」

二人は頷くと、ヘルメットを手に司令部を

出て行った。

 

その後、僕たちは司令室で待機と言う事に

なった。のだけど……。

シアン「……」

僕はパソコンの画面をずっと見つめていた。

その時。

アイナ「オオトリ隊員?どうかしたんですか?」

シアン「あっ。いえ、ちょっと」

不意にヤシロ隊員に声をかけられた僕は、

少しだけ驚いた後、パソコンの画面に

目を向け、ヤシロ隊員もそれに続いた。

 

アイナ「これって、テレビの?」

シアン「はい。元々テレビがいろいろ放送

    していたんで見てたんですけど、

    ちょっと……」

今はちょうど、町行く人々へのインタビューを

放送していた。

 

しかしその内容は、はっきり言って嬉しい

物ではなかった。

 

怪獣が世界各地に出現しているというのに、

不謹慎にも笑ってインタビューに答える男性。

容易く、GUTSにもっと頑張ってほしい、

早く倒してほしいと呟く女性。

 

   「クソ……!」

僕は、怒りを感じてパソコンの画面を

閉じた。

特に、あの女性の方だ。

もっと頑張れ、早く倒してほしいと、

他人事のようにそんな事を言うあの人に、

GUTSの人間として僕は怒りを覚えた。

 

   「何も知らないくせに、

勝手に……!」

アイナ「オオトリさん」

僕が怒り心頭になって拳を握りしめていた時、

ヤシロ隊員が僕の右手をやさしく

包み込んでくれた。

シアン「っ。す、すみません。

    怒りで我を忘れて……」

 

あんな事で取り乱してしまう自分が恥ずかし

くて、僕は俯いてしまう。

アイナ「今は準待機中ですし、少しだけお茶

でも飲みに行きましょう。リラックス

すれば、嫌な事なんて忘れちゃいますよ。ね?」

シアン「……。はい」

ユウヒ「あの。でしたら私もご一緒して良いですか?」

アイナ「あ。良いですよ。3人でお茶しましょう」

 

と言う事で、僕たち3人は食堂へ行き、

それぞれが紅茶や緑茶でお茶をしている。

ちなみに僕とユウヒ隊員は緑茶。ヤシロ隊員は紅茶だった。

 

シアン「…はぁ」

お茶を飲み、僕は気分を落ち着ける。

アイナ「どうですか?落ち着きました?」

シアン「はい。おかげ様で。……少し気持ち

    が落ち着いてきました」

アイナ「そうですか。……それにしても、

    私もオオトリさんの後ろから

    インタビューの動画を見てました

けど、何というか、人々の怪獣

に対する認識が甘く感じられますね」

シアン「……。はい」

 

人々の怪獣に対する認識は、どこか甘く

感じられた。皆、そこまでの恐怖を感じて

いるようには見えなかった。怪獣という

恐怖を知らない。

それは幸せな事かもしれない。けど同時に

それがとても危ういように、僕は思ってしまう。

 

ユウヒ「知らないと言う、幸福と。

    知らないと言う、危険性。

    それは幸福であると同時に、

    人々の無知を物語っています」

シアン「……。ままなりませんね。どちらも」

ユウヒ「はい。しかし、お二人には反感を

    持たれてしまうかもしれませんが、

    だからこそ、人々は幸せと言える

でしょう。圧倒的な力の化身である

怪獣の恐怖を知らないと言う事は、

それ自体が幸福だと私は考えて居ます」

アイナ「確かに、そうかもしれませんね」

シアン「……」

二人の言う事も分かる。けど、僕には

どうしても納得出来なかった。GUTSの

努力も知らずに好き勝手言う、あの人達が。

 

その時だった。

放送『GUTSのオオトリ隊員と

ヤシロ隊員に通達。至急司令室まで

来られたり。繰り返します……』

アナウンスが流れた。それは僕達を呼ぶ物だった。

シアン「招集?どうして?」

アイナ「とにかく、司令室へ」

シアン「あ、そうですね。急がないと」

 

立ち上がったオオトリ隊員に続いて

僕も立ち上がり、司令室に向かう彼女に

続いて、足早に食堂を後にした。

 

シ・ア「「失礼します」」

僕達が司令室に入ると、そこにはムナカタ

副長とイルマ隊長がいただけだった。

ムナカタ「来たな?早速で悪いが、二人は

すぐにSSで怪獣の死骸がある

北川市に向かってくれ」

シアン「僕達がですか?理由を聞いても?」

ムナカタ「実は、先ほどTPC上層部の決定

であの怪獣の焼却処分が決定した」

アイナ「随分急な決定ですね」

ムナカタ「地元住民からの苦情と、死骸に

よる海洋汚染を防ぐためだ。怪獣

の死骸はブースターを搭載した

ウィング2号で懸架。外洋まで

運び、そこで焼却処分を行う。

二人はSSに搭乗し、2号のレナ

を1号のダイゴと共にサポート

してくれ。それと、2号は

ブースター装着の関係から武装

を取り外している。万が一の時

は2号の護衛を頼む。二人は既

にハンガーに向かった。お前達

もすぐに出撃の用意を」

シ・ア「「了解っ」」

ムナカタ副長からの指示を受け、僕達は

ヘルメットを片手に格納庫に向かう。

 

すぐさま格納庫でSSに乗り込み、システム

を立ち上げていく。

シアン「スラスター正常。システムオール 

    グリーン。発進準備完了」

アイナ「了解。ガッツウィングSS、発進!」

ダイブハンガーから出撃したSSは、先に

出撃していた1号と2号に追いつき、北川市

へと向かう。

 

そんな中で……。

アイナ「怪獣の死骸、か」

シアン「ん?ヤシロ隊員、どうかしました?」

ポツリと、前に座っていたヤシロ隊員の

呟きが気になって声を掛けた。

アイナ「あぁ、うん。……少し、胸騒ぎが

するんです。何事も無ければ良い

んですけど」

と呟くヤシロ隊員。しかし、改めて考えると僕

も少し嫌な予感がしてきた。

シアン「確かに。何事も無ければ良いですね」

彼女の言葉に同意するように、僕も小さく

呟いた。

 

その後、現場へと到着した僕達。ガンカメラ

で周囲を見回せば、規制線のすぐ外に多くの

報道関係者が集まっていた。

現場の即席司令部には、ダイブハンガーから

ムナカタ副長が来ており、ムナカタ副長の

開始の合図によって、怪獣の死骸の、運搬

作業が開始された。

 

2号から下ろされた重機運搬用の装備、

アルチハンドが4本のアンカーを射出。

それが怪獣の体に突き刺さると、ゆっくり

と2号と怪獣が上昇し始めた。

だが……。

 

   『ズバッ!!』

怪獣の皮膚が破け、茶色に物体が周囲に

まき散らされてしまった。

かと思うと、アンカーが怪獣の体から抜け、

2号は勢い余って上昇。怪獣の死骸は少し

持ち上がっただけで再び地面に叩き付け

られてしまった。

 

アイナ「し、失敗?」

シアン「どうやら、怪獣の体が予想以上に

    柔らかかったようですね」

この方法じゃダメだか。

と、僕がそう考えたその時。

 

   『ビーッ!ビーッ!』

レーダーが突然アラートを鳴らした。

慌ててレーダーを確認すると……。

   「ッ!?全員に緊急連絡!」

僕はすぐさま無線をオープンにして、

基地や周囲に皆に回線を開いた。

   「目標、活動を開始しました!」

僕が叫んだ次の瞬間。

 

   『グゥオォォォォォッ!!』

怪獣が立ち上がり、咆哮を上げる。

レナ「死んでたんじゃなかったの!?」

すると無線機から、レナ隊員の戸惑いと怒り

の混じった声が聞こえる。

シアン「現在も生体反応は検知できません!

    どうなってるんだ……!あれじゃ、

    まるでリビングデッドじゃないか!」

アイナ「……ゾンビ怪獣、ですか」

僕の叫びに、ポツリと呟くヤシロ隊員。

 

一方の奴は、僕達を無視して海岸線沿い

に北へ向かっていく。

シアン「目標、北へ向かって移動を開始」

僕は通信機を使って皆に情報を伝える。

 

ムナカタ「このまま進むと……」

副長の声を聞いた僕は、すぐに周辺地図の

データをモニターに呼び出し、進行方向を

確認してみるけど……。ッ!

ホリイ「液化天然ガスのタンクです」

地図に上には、第3コンビナートの文字が!

このままじゃ不味い!

 

ムナカタ「シンジョウ、ダイゴ。

フォーメーションアタックを

掛ける。1・1・2だ。

     HEATをスタンバイ。奴の進路

を変えろ。アイナ達は二機を

バックアップしつつ

     目標の監視を行え」

シンジョウ「シンジョウ了解」

ダイゴ「ダイゴ了解」

シアン「こちらSS、了解」

 

僕達のSSは、怪獣の頭上を旋回しながらその

様子を観察。シンジョウ隊員とダイゴ隊員の

1号が正面から怪獣に向かっていく。

時間差で放たれた、合計4発の対戦車榴弾、

HEAT。それが真っ直ぐ怪獣の腹部に向かって

行く。

 

そして、命中。

だが……。

シンジョウ「やったか!?」

シアン「いえっ!HEAT全弾命中するも起爆

    せず!弾頭はそのまま怪獣の体内に、

    取り込まれました」

ガンカメラで見ていた僕は、状況を報告する。

一応、奴の目標を変える事には成功した。

   「進路の変更には成功。しかし

    目標は以前健在です」

ムナカタ『分かった。……進路が変わった

だけでも良しとする。各機はその

まま目標の監視を続行。何か

あったら知らせてくれ』

シアン「了解」

通信機越しに聞こえるムナカタ副長の声に

頷き、僕は視線をガンカメラのモニターに

移した。

   「……相変わらず、生体反応は無し。

    あれは、生物なのか?」

アイナ「考えてもしかたありませんよ」

ポツリと呟いた僕の言葉に答えてくれる

ヤシロ隊員。

   「人間の常識が通じないのが怪獣

    ですから」

シアン「……そう、ですね」

   『僕達は、怪獣の事を何も知らない。

    いや、僕達『でさえ』と言うべき

    か。だったら尚更、市民は怪獣に

    ついて何も知らない。それを前に

    した時の恐怖なんかも……』

ふと、今朝見たテレビの様子が僕の脳裏を

よぎるのだった。

僕はあの時抱いた怒りを振り払うように

頭を振ると監視任務に戻った。

 

ムナカタ『シアン、これから座標206・190

     にある養殖場に目標を誘導する。

     目標がその養殖場に到達するまで

     あとどれくらい掛かりそうだ?』

シアン「待って下さい。この距離と今の

アイツの移動速度からして……。

早くてもでも2時間は掛かります!」

ムナカタ『よし。SSの燃料はどうだ?』

シアン「まだまだ残っています。現在の残量

    は74%。帰投の為の燃料を考えても

    あと2時間程度は飛べます」

ムナカタ『よし。お前達はそのまま目標の監視

     を続行。もう少ししたら基地から

     ユウヒのMKⅡを発進させ監視任務

     を交代させる。それまで目標から

     目を離すなよ』

シアン「了解です。ガッツウィングSS、

監視任務を継続します」

僕は通信機を切ると、ガンカメラで怪獣

の監視を開始する。

 

それにしても、何故養殖場?ムナカタ

副長は何を考えているんだろう?

そう考えながら僕達は監視任務を続行した。

怪獣は、僕達の事を気に留めた様子もなく

ただただ進んでいく。

とは言え、相手は怪獣だ。どんな攻撃

手段を持ってるか分からない。警戒は

怠らないようにしないと……。

 

ガンカメラで奴の通過した箇所をスキャン

するが、酷いの一言に尽きた。

汚染物質が周囲にまき散らされている。

もし、こんな奴が都市部に侵入して

暴れでもしたら……。

仮に倒す事が出来たとしても、汚染物質

の除去だけでどれだけの時間が掛かる事か。

何とか、奴の都市部侵入だけは避けないと。

 

と、そんな事を考えてながらも飛行を

続けていると、目標地点である養殖場が

見えてきた。

   「ん?」

けど、よく見ると、その養殖場へダイゴ

隊員のガッツウィング1号が何か、

光る物を散布している。

あれは……。

   「レーダー攪乱用のチャフ?

    何だってあんな物を?」

アイナ「あれはレーダーを妨害する物

    ですよね?あれで一体、何を

    する気なんでしょうか」

どうやらアイナ隊員も目的が分からない様子

で首をかしげている。

 

そうこうしている内に奴が養殖場へと足を

踏み入れた。すると直後、シンジョウ

隊員の1号が、高周波ジェネレーターを

奴に照射し始めた。そしてそこまで来て

僕は副隊長の作戦を理解した。

 

シアン「そうか!電子レンジだ!アルミの

    ジャマーが高周波を反射して、

    奴の体を乾かす!HEATを

    受け止める柔らかい体が無くなれば、

    後はもう一度HEATを打ち込んで

    吹き飛ばす事が出来る!」

アイナ「成程!」

副隊長の咄嗟に作戦に、僕は感心していた。

これだけの短時間でこんな作戦を

思いつくなんて、ムナカタ副長は凄い、と

内心賞賛していた。

 

そして奴は、副長の読み通り熱に弱いのか、

ついにその場で膝を突いた。

よしっ!このままっ!

と、僕が内心思っていた時。

 

ムナカタ「シンジョウ!アイナ!離れろ!

     早く上昇するんだっ!」

シアン「えっ!?」

アイナ「緊急離脱っ!」

 

突然の命令に驚く僕と、咄嗟にスロットル

とレバーを捻ってSSをその場から

離すヤシロ隊員。

 

直後。

『ボトボトッ!』

シアン「っ!?あれはさっきのHEAT!?」

奴の胴体から、先ほど二機の1号が

打ち込んだ合計4本のHEAT弾頭が

姿を見せた。直後、弾頭は養殖場に落ちた。

 

そして……。

 

   『『『『ドドォォォォォォンッ!!!』』』』

 

爆音が周囲に響き渡り、爆炎が奴を覆い

隠した。

……出来る事なら、この爆発でくたばって

欲しい、と僕は願った。

 

しかし、その願いも空しく、奴は爆炎の

中から姿を見せ、右腕に付いていた残り火

を右手で払うと、再び侵攻を開始した。

 

シアン「くっ、目標、侵攻を再開しました」

ムナカタ「あぁ。……SSは一旦基地に戻れ。

     燃料がそろそろ尽きる頃だろう」

アイナ「……了解。ガッツウィングSS。

    一時帰投します」

悔しさを滲ませる僕とヤシロ隊員。

そして僕達を乗せていたSSは確かにもう

燃料が残り少ない。

 

僕達は、後ろ髪を引かれる思いでその場から

後退し、ハンガーへと戻っていった。

そしてハンガーに向かう途中、通信が

聞こえてきた。

 

ムナカタ『ヤズミ、怪獣の細胞の引火温度は!?』

引火温度?副長、どうしてそんな事を?

まさか怪獣を燃やすつもりなのかな?

ヤズミ『え~っと。……1000度あれば

    燃えるはずです』

ムナカタ『≪はず≫ではダメだ!』

どうやら副長は細かいデータが欲しいらしい。

だったら……。

シアン「なら、SSがスキャンした奴の

    データを送ります。あと、

    ユナちゃん聞こえる?出来たら 

    ヤズミ隊員を手伝ってあげて!」

ユナ『了解!ヤズミを手伝うよ!』

ヤズミ『お願いユナちゃん!これから

    すぐにデータを元に追証を

    行いますが、恐らく間違い無いと

    思われます!』

イルマ『副隊長!怪獣が市街地に入るまで

    あと一時間!それまでには絶対

    けりを付けないと!』

 

あと、1時間か。その時間は、長いようで

短い。人にとっては1時間を長いと

感じるかもしれないが、作戦を展開すると

なると、1時間という時間は短い。

 

と、その時。

シアン「あっ」

レーダーに反応があった。前方から

接近する機体があった。それは

ダイブハンガーから発進した

ユウヒ隊員のMKⅡだ。

僕は咄嗟にMkⅡに通信を繋いだ。

 

   「ユウヒ隊員」

ユウヒ『オオトリ隊員。何か?』

シアン「いえ。大した事ではないのですが、

    奴の体について未知の部分が多い

    のが現状ですから、どんな攻撃を

    してくるか分かりません。奴の

    行動には十分注意して下さい」

ユウヒ『ご忠告、ありがとうございます。

    では、失礼します』

シアン「はい。……お気を付けて」

そして僕が通信を切るとSSとMkⅡが

交差した。

 

僕はガンカメラで遠ざかっていくMkⅡの

後ろ姿を見つめていた。

 

その後、基地に帰投した僕達はSSの燃料

補給が行われている間、カシムラ博士の

所へと向かった。

 

今、ムナカタ副隊長の指示の元、液化

天然ガスを使った作戦が進行中だけど、

投入出来る戦力は多い方が良いと思って

の行動だ。

 

シアン「カシムラ博士!3式機龍の出動は

    出来ないんですか!?確か、もう

    すでにオーバーホールは終了して

    ましたよね!?」

カシムラ「確かに機龍の整備は終わっているわ。

     でも機龍の出動にはTPC上層部の

     許可がいるの。上はかなり渋って

     るわね。前の海岸での戦いで、色々

     オーバーホールしたけど、結構費用

     が掛かっちゃってね。それで

     及び腰になってるのよ」

シアン「そんなっ!?今人々が危険に晒され

てるのに、そんなお金の事なんて!」

カシムラ「まぁそう思うのも無理はないけど、

     それが組織って物なのよ。昔、

     人々の税金で軍隊動かして、

     世論で政権が叩かれた、なんて

     よくある事だったわ。同じ

     ように、GUTSも無闇やたらに

     怪獣と戦うだけじゃダメって事

     なんでしょ?」

そう言ってため息をつくカシムラ博士に、

僕は何も言えなくなってしまった。

 

結局、僕はハンガーのSSへと戻った。

そこへ戻ると、ヤシロ隊員が待っていた。

アイナ「どうでした?機龍の方は?」

シアン「ダメ、でした。上の許可が無いと

    発進させられないって」

アイナ「そうですか」

僕達は2人揃って肩を落とす。

 

けど、いつまでもこうしてるわけには

いかない。

見たところ補給は終わっている様子だ。

シアン「とにかく、今は前線に戻りましょう。

    もうすぐ奴が市街地に到達する頃

    です」

アイナ「そうね」

 

と言う事で僕達はハンガーを出発し、すぐに

前線へと戻った。

その道中で改めて作戦を聞くと、副隊長は

液化天然ガスのタンクをガッツウィング2号

のアルチハンドで持ち上げ、それを使って

奴を焼き払うつもりらしい。

 

既にダイゴ隊員とレナ隊員が乗る2号機が

天然ガスをつり上げに、ガス会社から

提供されたタンクを取りに向かっている。

 

一方の僕達は奴の監視を言い渡され、奴の

所へと向かった。

時間帯はすでに夕暮れ時。僕達が奴に

追いついた時。すでに奴の向かう先には

街が見え始めていた。

 

このままだと、あと20分もしないで怪獣が

市街地に到達してしまう。

ムナカタ『シンジョウ、ユウヒ。奴の足を止めろ』

シンジョウ『了解。ナパームを使います』

ユウヒ『了解。続きます』

 

するとそれは副長も分かっていたのか、指示

を受けたシンジョウ隊員の1号とユウヒ

隊員の1号MkⅡが太陽を背に怪獣に

接近。奴は日の光が眩しいのか腕を上げて

影を作るが、遅い。

 

『『ドドォォォォォォォンッ!』』

発射されたナパームが奴の足下で炸裂し

奴を転倒させた。

しかしそれも精々数十秒の時間稼ぎが

関の山だった。

奴は何事も無かったかのように立ち上がった。

 

その時。

ヤズミ『リーダー、ヤズミです』

基地のヤズミ隊員から通信が届いた。

   『怪獣の組織は、液化天然ガスの

    燃焼温度で十分に焼き払えます』

ムナカタ『よしっ。レナ、慎重に怪獣の

     真上へ』

レナ『了解』

ムナカタ『シアン、アイナは奴の動きを

     監視。何かあればレナ達に

     伝えろ』

シアン「こちらシアン了解。目標の監視

    を継続します」

僕はガンカメラを動かし、奴の様子を

確認する。

 

奴はゆっくりと高度を下げる2号に

吊り下げられているタンクを見上げる

だけで、特に動こうとはしていない。

……このままなら行けるか?

 

そう、僕が思った次の瞬間。

『ヌウッ!』

何と、奴の首が伸びた!?

   「目標の首がっ!2号退避してっ!」

咄嗟に通信機に向かって叫ぶが、遅かった。

 

奴が2号のアルチハンドのワイヤーに

食いついたのだ。そのまま奴は首を戻す

が、歯に絡まったワイヤーは外れず、

怪獣はタンクを抱えている。

 

でもこのままじゃ2号が不味い。

そう思っていた時。

「ッ!ウルトラマンティガ!」

ガンカメラが、どこからともなく現れた

ウルトラマンティガの姿を捉えた。

ティガはその手から青白い斬撃波を

放ってワイヤーを切断。

 

レナ隊員の2号は後退していく。

これでよしっ。

そう思った時だった。

アイナ「あっ!?怪獣がっ!?」

シアン「えっ!?」

驚くヤシロ隊員の声に僕自身も驚きながら

ガンカメラを怪獣に向ける。

 

すると、あろう事か奴はその腹の中に

タンクを埋めてしまった。

アイナ「なっ!?タンクまでっ!?」

シアン「そんなっ!?どうなってるんだ

    アイツの体っ!?」

驚く僕たちだが、怪獣はそんな事お構いなし

にウルトラマンティガへ突進していく。

 

ティガは最初、一気に光線を放とうとポーズ

を取った、が……。

 

ムナカタ『クソッ、爆破させちゃ不味いんだ』

その時通信機から聞こえた副隊長の声。

すると何故かティガは光線の構えを解き、

徒手空拳の構えに戻った。

 

もしかして、シンジョウ副隊長の声が

聞こえていたのか?

そんな疑問も余所に、ティガはパンチや

キック、巴投げなどで怪獣を何度も何度

も倒すが、その度に起き上がってくる怪獣。

そして、ティガがキックを決めた瞬間。

 

『ズボッ!』

何とティガの足が怪獣の体にめり込んで

しまった!

足を抜こうと藻掻くティガだが、怪獣は

口から黄色いガスを放ってティガを翻弄。

何とか足が抜けたティガだが、反動で後ろ

に倒れてしまった。

 

そこに体ごとのし掛かる怪獣。

あのままじゃ不味いっ!

シアン「ヤシロ隊員!」

アイナ「分かってる!SS、ティガを援護

    します!」

ユウヒ「私もっ!」

 

怪獣の背中にSSのバルカン砲とMkⅡの

レーザーが突き刺さるが、怪獣は

ものともしない。

 

何とか離れた所を起き上がるティガ。

だが今度は、怪獣はティガの頭を

掴んで自分の腹に押しつけ始めた!

まさかティガまで取り込む気か!

 

アイナ「させないっ!」

ユウヒ「これならばっ!」

そこに、今度は怪獣の両肩を狙って

バルカン砲とビームが突き刺さる。

すると、怪獣の拘束が僅かに緩んだ。

 

シアン「今だっ!ティガっ!」

僕は咄嗟に叫んだ。スピーカーを

通して僕の声が響いた直後。

ウルトラマンティガの両手が光に包まれ……。

 

   『タァッ!!』

怪獣が大きく吹き飛んだ。

ティガの力で一気に数百メートルは

押し飛ばされる怪獣。

 

だが、ティガの胸の光が明滅を始めた。

もうすぐティガの限界だ。

僕がそう思っていると、ティガは先ほど

中断した光線のポーズを取る。

 

どうやら今度は撃つ気らしい。

ムナカタ「全機!もっと離れろ!それと

     消火弾用意っ!」

アイナ「了解っ!」

ユウヒ「はいっ!」

 

万が一に備えて僕達が消火弾を用意する

中、ティガの放った光線が怪獣の腹部に

命中する。

 

が……。

シアン「き、効いてないのか?」

怪獣は再びティガに向かって歩き出した。

だがティガは静かに見守るだけで構える

事もしていない。

まさかダメだったのか?僕がそう思った

時だった。

 

ふと、怪獣の足取りが次第に遅くなり、

完全に停止した。かと思った次の瞬間、

その体が内側から爆ぜ、怪獣は消滅した。

シアン「……目標、完全に消滅を確認」

僕は通信機から本部に連絡を入れた。

 

と、同時にウルトラマンティガもどこかへ

飛び去っていく。

イルマ『皆、ご苦労様。怪獣の街への侵入

    と言う最悪の事態は避けられたわ。

    各機は帰投してちょうだい』

シアン「SS了解」

 

本部のイルマ隊長からの帰還指示が出た

為、僕達のSSや1号、2号、MkⅡは

夕暮れの空の下、ダイブハンガーへと

戻っていった。

 

翌日。ニュースの時間帯ともなれば話題は

昨日の怪獣騒ぎについて。テレビでは

専門家を名乗る男がGUTSの対応に

問題ありだとか偉そうな事を言っていた。

 

見ていても気分が悪くなりそうだった

ので、それを変えるためにネットの

新聞記事を見ていたのだけど……。

 

シアン「あっ」

 

ある一文が僕の目を引いた。それは……。

 

『怪獣災害が頻発するこの苦境の中で、

 我々が一つ幸運と言えるのは優れた

 戦略家を擁するGUTSが、我々を

 守っていると言う事である。一市民

 として、感謝を捧げたいと思う』

 

   「……こんな風に思ってくれる人達も

    いたのか」

一文に目を向けながら、僕はポツリと呟く。

 

確かに、人によっては無責任な事を言うかも

しれない。でも、それが全てじゃない。

見るとそのページのコメント欄に、その

一文に賛成するようなコメントを書いて

くれている人もいる。

 

そう思うと、不思議と心が温まるのを

感じた。そして……。

 

   「よしっ、今日も頑張るか」

その一文でやる気が出た僕は、今日も

頑張ろうと意気込むのだった。

 

     第5話 END

 




相変わらずの筆の遅さで大変申し訳ありません。

次回はもっと早く投稿したいと思います。
楽しんで頂ければ幸いです。

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