ああ勇者よ、死んでしまうとは何事ですか。   作:シズりん

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ヘタレ勇者の大冒険Take2です。

前回の話しとは多少ことなります。


プロローグ

…ス様。

 

お目覚めください、ルビス様。

 

 

永い…永遠にも感じる凍てつく時のなかで、私に呼びかける者がいた。まだ覚醒し切らないままに瞳を開けるとそこには小さな小さな風の精霊がフヨフヨと羽ばたいている。

 

「ルビス様の選定された勇者が間も無く16になろうとしています。勇者の目覚めの時がきます。」

「そうですか。もうそんなになるのですね…人間の成長は早いものです。」

 

勇者は力を受け継ぐものが16になると勇者としての成長が始まる。

人類最強の力を最初から与えないのには訳がある。強大すぎる力は時として毒にもなり得る。正しい力の使い方を知る前の幼子に与えてしまうと力におぼれ勇者と言う名の魔王を作りかねない。例え本人がそうはならなくとも悪意を持った者が幼子のうちに洗脳するなんて事があるかも知れない。

だから私はある程度分別のつく年齢から勇者としての成長が始まり、旅の中で多くを学び経験しながら人類最強の勇者へと至るようにしたのだ。

その勇者が今まさに覚醒を果たそうとしている。

 

 

時を超えて異界からやってきた先の勇者が大魔王に敗れ三百年。彼は歴代の勇者の中でも特に優れた資質を持っていた。しかし大魔王が現れた時には既に全盛期をとうに過ぎていた彼は善戦も虚しく終には敗れてしまった。

 

大魔王はまず勇者の遺物である王者の剣を粉砕しようと手にしました。魔王は凄まじい力を発揮した王者の剣に対し存外脅威に感じていたのかもしれません。

しかし叩いても投げてもかじっても粉砕できないことにヤケを起こし意地になっている彼に敗れた腹癒せもかねて

『ぷーくすくす!』

って笑ってやったら大魔王は涙目になって怒り出し、私を石像に封じやがりました。随分と大人気ない方ですね。

結局彼は3年もの月日をかけてなんとか王者の剣を破壊しました。

ドヤ顔を向ける彼に

『ヘッ』

と冷たい目で鼻で笑ってやると

さらに彼は逆上し、なんと人々から光を奪い次第に聖地アレフガルドは絶望が支配する暗黒の世界へと至った。

小さい男ですね。

 

しかしそんな大魔王にも誤算はありました。

勇者を追うように時を超えてやってきた少女セニカとの間に生まれた光。まだ脆弱でたどたどしい微かな光。

でも私には分かる。この光はいずれ世界中の人々の希望になると。

私は光がより強く輝く日を待ち続けました。

 

そうしてついに待ち望んだ日がやって来たのだ。

 

長い年月封じられていた今の私には大した力はない。でもせめて彼の子孫…輝く希望の光の旅立ちくらいは立ち会いましよう。

きっとどこか遠くで彼も見守っていることでしょう。

 

私は勇者の母親に入り込むと、彼女が読んでいた古の冒険の書を閉じ、そっと本棚にしまう。もう彼女の先祖…ローシュの冒険ではなく、今日この日この瞬間から新しい希望の冒険の書が始まるのだから。

 

 

「起きなさい、起きなさい私の可愛いぼうや(勇者)。今日はお前が初めてお城に行く日でしょう。」

「……」

 

ゆさゆさと揺すって起こすが返事がない、ただのしかばねのようだ。

 

「ちょっと、早く起きなさいってば!あなたは今日王様に旅立ちの挨拶をしてお父さん(オルテガ)の敵討ちの旅にでるんでしょ!?」

 

今度は布団を剥ぎ取るように強めに起こすと、勇者は布団を取られまいとしがみつきながら

「あと5分…」

とかのたまいやがりました。

 

ヤバイです、この子ダメな子だ。

 

私は瞬時に悟りました。しかしそんなダメな子でも勇者は勇者。私はあの手この手で勇者を起こそうとしました。

 

「ほら、旅立ちのときくらいシャキッとしないと精霊ルビス様のご加護が「ブッ!!」…」

 

こ、こいつ寝ながらオナラしやがりました。しかも私の話しをしている時に。

さすがの私もイラっとして近くに置いてあった棍棒で軽く顔面を叩いてやりました。

 

ガガガガガガーン!!

 

なんとそれは痛恨の一撃となり勇者は死んでしまったのです。

 

 

 

 

 

くらい闇の中に立ち尽くす彼に私は話しかける。

 

「ああ勇者よ、死んでしまうとは何事ですか。」

「いやぁ、ただ部屋で寝てただけなんすけどねー。」

 

顔面をさすりながら語りかけた私に返答する勇者。間違っても私が殺してしまったなんて言えません。

 

「仕方ありませんね。今回だけは生き返らせてあげますから今度からは命を大切にして旅をするのですよ?」

 

おかしいなと納得のいかない様子の勇者をさっさと生き返らせて、再び母親に入り込む。そして旅支度を済ませた勇者が家の扉を開けると眩いアリアハンの太陽の光が、まるで勇者の旅立ちのスポットライトを当てるかのように射し込んだ。

 

「よし!じゃあ俺行くよ母さん。」

「必ず生きて帰るのよマコト。」

 

こうして勇者マコトは、私のほんの少しの希望と期待、そして大きな不安を抱えてアリアハンの城へと旅立つのだった。

 

 

 

 

 

 

続くかは不明

 

 

 




クスッと笑っていただけたら幸いです。

なお作者は未だドラクエIIIをやったことないのでドラクエあるあるネタやウィキペディア次第で進みます。
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