「ねぇマコちゃん、あのござるはいつまで付いて来る気かしら。」
「さぁ…」
私たちはレーベの村を追われるようにアリアハンの東にある『いざないの洞窟』の南にある祠まで逃げ…おっと間違えました。旅を進めたのですが、家を焼け出されたメルビンが私たちの後を付いてきてしまったのです。
「ねぇマコちゃんあのお爺さん、仲間になりたそうにこっちをみているんですけど。」
「目を合わせないで放っておけ、爺さんなんかパーティにはいらん。」
勇者は振り向きもせずに答えました。
「なんじゃとー!!お主等はこの憐れな老人の家を灰にしておきながら優しさの一つもかけられんのでござるか!」
「うるせー!モンスターに見つかるだろうが!!」
「そもそもそこがダメなのでござる。なんじゃあのカサカサと歩きモンスターの背後から襲う戦い方は。まったく勇者らしくないでござる。」
「仕方ねーだろオレたち弱いんだから!まだ二人ともレベル5なんだから。」
胸を張って言える事ではないと思います。
「じゃからワシのような元勇者がパーティに入ってやろうと言ってるのでござる」
「戦ってもいないのにHPがオレンジ色なジジイなんていらねーよ!」
「なんじゃとー!」
どうしようもない事でギャーギャー騒ぐ二人の姿はとても滑稽ですね。しかしそんなに騒ぎ立てるものだから祠の周囲は…
「ねぇちょっとマコちゃんヤバいんですけど。祠がモンスターに囲まれているんですけど。」
私に周囲の状況を聞いて祠の外を見た勇者は青ざめた。
「ほら見ろ!どうすんだよこれ、祠がモンスターに囲まれているじゃねーか!これじゃ不意討ちもできねーよ!」
「大丈夫でござるよ。通常祠には精霊ルビス様のご加護があるからモンスターは入ってこれないでござる。」
「本当なのかルゥ?」
心配そうに私の方を向く勇者に私は笑顔で頷いた。
祠は精霊である私の加護を受けた聖水で清められているから通常モンスターに襲われることはありません。ですがマコトが言うように不意討ちが出来ない以上はどうあってもあのモンスターの大群を相手しなければならないのも事実です。
「待ってればそのうち諦めたりしないかなぁ?」
「どうかしら。その前に私たちが飢えちゃうんじゃないですか?」
「二人とも情け無いでござる。あれしきのモンスター如きワシ1人で充分でござる。」
「よし行ってこい」
そう言って私たちはメルビンの背中を押しますが、メルビンは踏ん張ります。
「なんだよ、爺さん1人で充分なんだろ?ここは任せるから早く行けって!」
「いやいやいや、そうは言ってもパーティなのでござるからここは共に…」
「いやいやいや、メルビンさんを囮にしてその隙に私たちは逃げますから後ほど街で会いましょう…」
「ルビア殿までなんて冷たい…それにマコト殿は勇者でござろうが!仲間を見捨てたなんて知ったら精霊ルビス様もお嘆きになられるでござるぞ?」
「いやいや仲間じゃねーし、それにルビス様もきっと賛同してくれるぜ。」
共にメルビンさんの背中を押しながら私は頷きました。
そんなやり取りが10分くらい続いたとき、ふと勇者が問いかけてきました。
「なぁルゥ、祠の中ってホイミとか使えんのか?」
「なに?ケガでもしたの?はいホイミ。」
指先から放たれた清らかな光がマコトを包み傷を癒す。
「いやそうじゃなくて、祠の中で普通に呪文が使えるのかなって。」
「使えるわよ?あくまでもモンスターが近付きたくない清らかな聖水で護られているだけで呪文をかき消すような効力はないわ。わりとあたりまえじゃない、バカなの?」
勇者は一瞬だけイラっとした顔をしましたが、何を思いついたのか祠の入り口に立つと両手を外に出し
『メラ』
ポソッと言った。
勇者の手から放たれた小さな火球は祠を囲っていたモンスターの一体に命中し、力なく崩れ去った。それを見た勇者は黒い笑いを浮かべ
「ふははは、メラ!メラァ!」
マコトはとても楽しそうにモンスターが近づけないところからメラで攻撃しています。さすがですね。
「ほらルゥ見て見ろよ、モンスターがまるでゴミのようじゃないかふははは…」
…
「ちょっとメルビン、あんたのその武器(たけやり)を貸しなさい。」
私はメルビンから武器を奪い取ると祠の中からモンスターをプスッと突いた。
「ふふふ…」
「ぬははは…」
2人は顔を合わせ無言で頷くと、次から次へと祠の周りのモンスターをメラで焼いたりプスッと刺しました。あまりに簡単に戦える状況がなんだか楽しくなってきたやさき、周囲にいたモンスターたちは散り散りに逃げて行きました。
「全く、なんて情け無い戦い方でござるか。」
メルビンがなんか言ってますが何事も安全第一です。無視してやりました。
そして安全を確保した私たちは、ついに『いざないの洞窟』の最深部まで辿り着きました。そこには通路を塞ぐような巨大な石の壁が有り、先に進めないようにされていました。
私たちは瞬時にこれがアリアハンの王様が施した封印だとさとりました。その壁の厚さから如何に王様がモンスターを恐れているか知れました。…チキンですね。
「さて、これをどうすっかだな。メルビン、あんたコレをどうにかする『まほうのたま』を持っているんだったよな。」
勇者が言うと
「確かにワシは持っているでござるが、コレを使いたければワシを正式にパーティに入れると約束して欲しいでござる。」
とメルビンが答えた。
勇者は腕を組んで悩んでいるようですが
・ 仲間にする
・ 何とか譲ってもらうよう努力する
→ 殺して奪う
辺りでしょうか。
案の定マコトはどうのつるぎを抜いています。
「な、何をする気でござるかマコト殿!」
「うるせー!さっさとそのまほうのたまとやらをよこせ!!」
ギャーギャーと騒ぎ揉み合う2人から黒い球体が私の足元に転がってきました。
私は拾いあげて眺めると、何やらボタンのようなものがあります。なるほど、まほうのたまがどの様なものかは知りませんがこのボタンを押して使うようです。
私はそのボタンにそっと指を添えた…
「ね、ねぇマコちゃん、まほうのたまがピッ!とか言ってんですけど。なんか数字がどんどん下がっているんですけど!」
「あ!ルビア殿、退避する前にボタンを押したらダメでござる!!」
「ルゥおまえ何やってんだよ!!」
「怒らないでよわざとじゃないんだから!って言うか球体が熱くなってきたんですけど!なんか光はじめてるんですけどぉ!!」
ドオオオオオン!!
凄まじい光を伴ったごう音がいざないの洞窟の中で鳴り響いた。
光も通さぬ生と死の狭間『境界』
「ああ勇者マコトよ、死んでしまうとは何事ですか…」
お決まりの私のセリフに
「おまえだー!!!」
「きゃー!ごめんなさい、ごめんなさーい!」
真っ暗闇に勇者の叫びと私の嘆きがこだました。
そして生き返った私たちは再びアリアハン(ふりだし)へと戻されるのでした。
つづくかも
いつも読んで?いただきありがとうございます。
キリがいいと言えばキリがいいのですが、コメントを下さった方までいらっしゃるので、細々頑張ろうと思います。
一応予定では前作には書かなかった細かなところまで買いて行く予定ですが、何せ未だ本人はやったことないゲームでウィキペ頼みです。今後とも生暖かい目で応援お願いします。