私たちこのままじゃダメよ
私はこの金の亡者…おっと間違えました。勇者がギャンブルにはまってしまっては世界を救う事ができない。私は清く美しいそして良識ある精霊、勇者を正しい道に導いてあげるために顕現したんじゃない。
私がマコトを元の旅に戻さないで誰ができると言うのかしら。
「おいルゥ、心の声がダダ漏れだぞ?それに散々贅沢三昧しているおまえが何を言ってやがる。」
「そんなほほはなひは。わたひたひはまほうを…」
「カニを飲み込んでから話せ!リスみたいに口に詰めて食べやがって!」
「そんな事はないわ。私たちは魔王を…」
「ああそれはもういいよ!」
魔王討伐をソレで片付けますか。
私たちはロマリアのカジノ内でカニとお酒を楽しみながら今日も闘技場でお金稼ぎをしています。2人はすでにロマリアで揃えられる装備は全て揃えました。宿屋もスイートに泊まっています。これなら当分の旅費は問題ないでしょう。しかしヘタレなマコトは贅沢な生活から厳しい旅に出るのを嫌がってか中々ロマリアを離れようとしません。
「でもよ、遠い異国の地で大成功したんだからもう旅とかよくね?」
「ダメよ!それじゃ私が本体に戻れないじゃない!せめて私を戻して!私を助けて!!」
「…世界とかは良いんだ。」
「そ、そそそんな事はないわよ?もちろんそれもお願いよ。」
「今おまえ〝も〝って言ったか?取ってつけたようにそれもって。」
「言ってない。」
「言っただろーが!」
全くこの勇者はどうでもいいとこだけはしっかりと聞いてやがります。
「良いマコちゃん、私はただでさえこの世界に顕現するのに大量のMPを使っているわけ。だと言うのにマコちゃんがポンポン死んじゃうから私も大変なの!」
「俺が死んでるの…主におまえのせいだけどな。」
「…。」
「って言うか、おまえにもMPなんてあるの?宿屋で寝れば回復すんじゃねーの?」
「私が人間と同じやり方で回復するわけないじゃない。バカなの?」
「おまえッ…」
仕返しとばかりに言ってやると、少しだけイラッとした顔をしていました。
ふふふ、中々味のある良い表情です。
そんなわけでロマリアに着いて6日目にして初めて私たちはロマリアのお城へ挨拶に行くことになりました。
「何?アリアハンから来た勇者じゃと?」
何でしょうか。玉座に座るロマリア王に私たちは違和感を覚えます。
そんな私たちが王室に伺うと王様は私たちに歩み寄って歓迎してくれ…ませんでした。
「すまんのぉ、ワシは勇者を…特にアリアハンから来た勇者を信じきれんのじゃ。」
「勇者を信じられない?」
マコトは王様に勇者を信じられないと言った事がどうしても納得いかないらしくロマリア王に何とか食い下がっています。
私もその理由には興味あります。
他の勇者を名乗る人物と精霊である私が勇者と定めたマコトを同じに見られてはたまりませんから。
そんな私たちに根負けしたかのようにロマリア王は一枚の姿絵を見せた。
そこには1人の屈強な戦士がいました。
となりのマコトが少し涙ぐんでいるので戦士が直ぐにお父様の『オルテガ』だと分かりました。
「数年前、この男がアリアハンからやってきたのじゃ。最初は鎧を着て海を渡ろうとするアホだと思ったんじゃが…ん?なんかマコトと言ったか?そなたに似ておるな。」
「気のせいです。」
即答したマコトは涙ぐむどころか大層冷たい目をしていました。
「まぁ良い。その男はダメになった鎧を捨て姿絵のように半裸のような格好をしていたのじゃが、ロマリアの城下町の民には大層好かれておってな、ワシも彼を勇者として迎え入れたのじゃ。」
「それがなんで勇者不信に?」
マコトの疑問も当然だと思います。今の話を聞く限り私もソレが分かりません。
そんな私たちの疑問の顔を一通り見たロマリア王は、深く息を吐き重苦しい雰囲気の中話を続けた。
「ワシはあるものを凶悪な盗賊団から取り返してほしいとオルテガ殿にお願いしたのじゃ。」
「ふーん。で?」
「彼はワシの願いを頭を下げて丁寧に断ったのじゃ。彼には魔王バラモスを倒し世界を救うと言う急務があるからと。ワシは心を打たれた。王とはいえワシの個人的な悩みより世界中の人々を優先する…彼は真の勇者じゃったんじゃ。」
「オルテガさんは本当に世界を救おうとしていたんですね?素敵な勇者だと私も思います。」
「そうじゃろう?ルビアちゃんもそう思うじゃろ?」
ちゃっかり私をちゃん付けで呼ぶこのジジイは何かいやらしい目つきで私を見ています。気持ち悪いですが彼は一応王様ですからここは我慢です。それよりも隣のマコトが全然私を庇わない事に問題がある気がします。私は王様に見えない角度で彼のお尻を抓ってやると、マコトは飛び上がるように驚きました。いい気味です。
「ん?どうしたのじゃ?」
「な、なんでもないっす。それより断られたから勇者不信に?」
「そんな訳でないじゃろ。先程ワシの大切な物を盗んだ盗賊団がいると言ったじゃろ?」
「言ってたっすね。」
「最近部下から盗賊団の首領の情報がワシの所に上がってきたのじゃ。名は『カンダタ』、奴はその筋ではかなり有名な男らしく悪虐の限りを尽くしているようじゃ。窃盗を始め誘拐に殺略…まさに悪の代名詞じゃ。そしてこれがそのカンダタの姿絵じゃ!!」
ロマリア王はテーブルに怒りをぶつけるかのようにバンッ!!と姿絵を叩きつけました。そこには…
ビキニのパン一に、頭がスッポリかぶりマントの付いたマスク。
…ッ、笑いを堪えるのに必死なんですが例えるなら『覆面パンツ』と言ったところでしょうか。
そして何よりも私の我慢と言う防御力を打ち破ったのはその姿が先に出されたマコトの父オルテガにソックリだった事です。
「ふーふー…」
「おいルゥ、涙貯めて笑いを堪えるくらいなら笑えよ。」
「プー!!何この格好!ありえないんですけど!ビキニパンツ一丁に覆面マント、どこに売ってるのよこんな装備!この姿で勇者を名乗るとかちょーありえないんですけど!ぷーくすくすくす!!」
ガツン!!
「痛ッ!笑えって言ったのマコちゃんじゃない!なんでぶつのよ!」
「うるせー!」
笑えと言うから笑ったのに頭をぶつなんて酷すぎよ。本当に一度天罰を落としてやろうかしら。
「2人ともケンカはやめるんじゃ。話を戻すがこんな奇特な格好している変質者が何人もいるわけが無い。要するにコヤツは最初からワシの大切な物を狙って勇者と称し近付いてきたのじゃ。」
なるほど、ロマリア王はカンダタなる盗賊の首領とマコトの父であるオルテガさんを同一人物と見たようです。
まぁたしかに姿形、服のセンスまでソックリな2人。
それにしても言うに事欠いて変質者とは…ダメです私は再び声を出して笑ってしまいました。
「…同一人物かは俺は他人なんで分かりませんが、ロマリア王の大切な物を俺が取り返してきてやりますよ。」
あくまでも他人を強調しますか。
私はお腹を抱えて笑ってしまうとまたぶたれました。
「おおそうかそうか!そなたが取り返してくれるか。それなら取り返したあかつきにはそなたを真の勇者と認めよう。」
「…いまいち納得はできないんだけど…そのカンダタは何を盗んだんですか?」
「…じゃ。」
「は?よく聞こえなかったんすけど。」
「王冠じゃ!ワシの王冠を取り返してほしいのじゃ!」
そこで私たちは最初に覚えた違和感の正体に気が付きました。そうです、ロマリア王の頭上には王である証の王冠がないのです。
「どうしたらいつも頭の上に乗ってる物を盗まれるんだよ。」
「本当よね、どんだけマヌケでも普通身につけてる物を盗られるなんてあり得ないわよね。」
私たちは白い目で王様を見てヒソヒソ話していると、ロマリア王は真っ赤な顔になって
「早く取り返しに行ってこんかー!!!」
私たちを追い出しました。
こうして私たちは盗賊団討伐と盗品の奪取をすることになりました。
つづく
カンダタさんとオルテガさん…ソックリすぎてちょーうけるんですけど!ぷーくすくすくす!!