「ぶえっきしょい!!う〜さぶっ」
「何よマコちゃん風邪?バカでも風邪ってひくのね。」
「おまえ最近言いたい放題だな。」
私が世界のために顕現すること18日目、私たちはガザーブの村にやってきました。ロマリアでの情報では盗賊団は北に逃げたと言うからですが、どうして逃亡者と言うのは北に行くのでしょうか。どうせ逃げるなら南国の温かい方へ行ってもらいたいものです。
「それにしてもなんでこんなに寒いのよ!虫(キラービー)は多いし、何かゾンビみたいな犬(アニマルゾンビ)は腐った臭いがするわで最低よ!!」
「まぁこの辺りになると標高高い山間部だからなぁ、アリアハンとかに比べるとやっぱ寒いよなぁ。」
私の愚痴に応える勇者。こんな時に落ち着いている男性はやっぱり頼もしいものですね。鼻水さえ垂らしてなければちょっと見直すところでしたよ。
「さて先ずはどうすっかだな。」
「やっぱり先ずは宿屋じゃない?何処にいるかもわからない覆面パンツ(カンダタ)が1日で片付くとも思えないし。」
「何を悠長なことを言っているのだ2人とも!ロマリア近衛騎士たる私がいるのだから早期解決が当然ではないか!先ずは村で情報収集がさき…って聞いているのか2人とも!!」
「主人、宿を借りたいんだけど。」
「お客さんかい?よくこんな村まで来てくれましたね。泊まりかい?休憩かい?」
「こ、こら貴様聞いているのか?アリーナ姫さまをこんな所に泊まらせるわけには…」
「泊まりでお願いします。部屋は一部屋で人数は大人2人です。」
「お、おい貴様、私たちの部屋は?」
「ねぇクリフト、この2人完全に私たちを無視しているわよ?」
「私を無視するなーー!!!」
「「チッ…」」
私たちは2人して舌打ちしてしまいました。
このうるさい人はクリフトさん。そして女の子は、どうしたらあのロマリア王から出来るのか、可愛らしいお姫さまのアリーナさんです。
2人だと約束を反故にして逃げそうだと思ったらしいロマリア王が付けた助っ人らしいのですが…
適当に約束して逃げる気満々だった私たちの先を読むとは…ロマリア王もなかなかやりますね。
そんなわけで面倒な依頼を受けてしまったマコトは不機嫌です。
でも、クリフトさんとアリーナさんの各部屋と私たちの部屋の3部屋を取ったのですが、ちゃっかり私たちの部屋のぶんもロマリア国で領収書きったこと…私は見逃していませんよ。
部屋をとると私たちは作戦会議とばかりに私たちのお部屋に集まった。
「改めて自己紹介します。私はクリフトと申します。職業は僧侶ですが槍が得意なので前衛もいけます。」
「ふ〜ん。」
本当に興味なさそうな返事をする勇者は全く聞く気ありませんね。
「私はアリーナです。一応ロマリアの姫ですが武道家でもあります。無理言ってついて来てしまってごめんね。」
「大丈夫っすよ!それにしてもお姫さまが武道家だなんて…危ないので戦闘の際は俺の後ろで…ッて痛!!」
「何突然やる気出してるのよ!」
お尻を蹴り飛ばしてやりました。
全くこの男ときたら…
もう一緒に行かざるを得ない状況にあるようなので仕方がありません、私たちも相手に習って挨拶を交わすことにしましょう。
「私はルビアです。私も僧侶です。」
「まったく役に立たないけどな。」
ボソリと呟く勇者を睨み付けた。
そんな私を無視してマコトは一歩前に出るとドヤ顔で
「そして俺が勇者「じゅうしゃ」マコトです。」
仕返しをしてやりました。
「…おいルゥ、今お前勇者に違う文字をあてなかったか?」
「気のせいじゃない?」
「嘘つけー!なにが従者だ。おまえなんか元なんとかのくせにまったく役に立たないお荷物じゃねーか。」
「元じゃないわよ!現在進行形よ。INGよ!!謝って、早く謝って!」
お互いもみくちゃになって言い争っていると、それをみていたアリーナちゃんが笑い出した。
「お二人もそう言う仲なんですね。」
勘違いにしても酷い言われようです。はっきり言って精霊への冒涜と言ってもいいぐらいです。
しかし私は気になるワードを聞き逃しません。
「お二人もって言うことは?」
「はい、私たちも…。ですが身分の差からお父様の許可が下りず…。これはもうお父様をしばき倒してどこか異国に逃げようかと思っていたところにお二人がやって来まして。お父様の大切なものを取り返せば結婚を許してくれるかなって。」
なるほど。今回の盗賊団討伐と王冠を奪取した功績をもって結婚の許可を、と言うのですね。
わかります。これ失敗のフラグというやつですね。
となりのマコトなんかもうやる気ありませんよ。
「そう言うわけで貴様らを支援するのだからありがたく思え。で?作戦はあるのか?」
「ねえよ。先ずは村の人からカンダタの情報集めだろ。」
「そんな悠長なこと!!」
「じゃああんたはカンダタがどこに潜伏しているか知ってるのかよ。奴らのレベルは?何も知らないで突っ込んで行ったって勝てないかもしれねーだろうが。」
マコトにしては正論ですね。クリフトさんもぐうの音も出ないと言った顔です。
「わ、私がいれば盗賊ごとき大したことはない。私の槍の錆にしてやる。」
「ほ〜う、じゃあ聞くけどクリフト、あんたのレベルは?」
「フンッ、よく聞け私のレベルは5だ!!」
胸を張って言うクリフトさん。
そしてそれを聞いたマコトと私は無言でベッドに入り布団を被って眠りにつくのでした。
その後もギャーギャーと耳元で騒がれた私たちは眠ることが出来ず、仕方ないので夜のガザーブの村の散策に出ました。
マコトは手当たりしだいの民家にズカズカと入って行って行き、ポカンとした表情の住人をよそにツボを割り本棚を漁り引き出しを片っ端から開けていく。まぁいつものことです。しかし初めてその光景に驚いたクリフトさんは猛抗議をしてきます。
「貴様らは勇者一行だろうが!なんで民家の…しかも住人の目の前で物色しているんだ!!」
「いいかクリフト、それはな…」
「それは?」
「そこにツボやタンスがあるからだ。」
「は?」
「ツボとかの中にはたまに『ちいさなメダル』とか各種のたねや、たまにゴールドが入っていたりするんだ。」
「それって泥棒じゃ…」
アリーナちゃんの指摘にマコトは指をあて
「いいか?俺たちは世界を救う為に旅をしているんだ。だから民家から少しくらい拝借したとしても問題ない。」
格好つけているつもりなようですが、アリーナちゃん完全にドン引きしていますよ。
そんな中でした。私は一つの宝箱を発見したのです。
「!!ヤバイわマコちゃん。」
「どうしたルゥ?」
すやすやと眠る道具屋さんの家で、それは燦然と輝くかのように私には見えた。間違いなくこれは宝だ。開けなくともわかる。そこには私たちにとってかけがえのない宝がここに眠っていると。
ルビアは『どくばり』を手に入れた。
「やったなルゥ、伝説の武器ゲットじゃねーか。」
「ええ、これで私たちの旅は安泰になること間違いなしね。」
私たちが密やかに喜びを分かち合っているとクリフトさんとアリーナちゃんが大声で騒ぎ、もちろんそんなに騒ぐものですから住人が起きてしまいました。
「ど、ドロボー!?」
「俺はロマリア国のクリフトでーす!!」
「私はアリーナでーす!」
「こ、こら貴様ら私たちの名前を叫んで逃げるな…って早っ!」
それは見事な逃げ足っぷりです。
武道家のアリーナちゃんも追いつけない。逃げ足で私たちに勝てると思っていたのでしょうかクリフトさんは。
私たちは名前を叫びながら真夜中のガザーブを逃げ回るのでした。
つづく
うふふふ。これで私たちの旅は楽になるわねマコちゃん♡