「ねぇマコちゃん本当に覆面パンツ(カンダタ)と戦うの?魔法使いいないのよ?」
「仕方ねーだろ。ノアニールの村の人たち魔法忘れちゃってたんだし。」
私たちは集まって談笑する盗賊団に見つからない位置まで忍び寄ると声を潜め話し、少し前の事を考えた。
私たちはエルフの女王ポワンちゃんから貰った『めざめのこな』でノアニールの村の人々を眠りから目覚めさせてあげました。村人の会話の内容から彼らは10年近く眠っていたようでした。
彼らは彼らの中で前日まで村に滞在していたらしいオルテガさんの話しをしていました。
マコトはそれを感慨深そうにそれを聞いていたのがとても印象的でした。
アリーナちゃんとクリフトさんは主に当時からかぞえ数年前に駆け落ちした村人とアンちゃんの話しにご執心なようで、村を出るときには
「やっぱりちゃんとロマリア王(おとうさま)を説得しよう」
と、クリフトさんと決めたようです。
やはり駆け落ちの終着地に幸せはないと2人も色々考えさせられたようです。
まぁ…誰も三人が死んだとは言ってませんけど。
何はともあれノアニールにはたくさんの高レベルの魔法使いがいると聞いて来た事を告げたのですが、それはロマリアの都市伝説で普通の魔法使いしかいませんでした。しかも長年寝ていて寝ぼけているのかなんと『メラ』でさえ使える人がいませんでした。
仕方なく私たちは再びポワンちゃんの元にベラちゃんを借りに行ったのですが、危ない真似はさせたくないと断られました。相変わらずイケズな女です。
そこで私はせめてエルフの村で買い物をする許可をポワンちゃんから得て、装備を揃える事にしました。
「え?ポワンちゃんの勘違いで散々な目にあっていた人間を救ったこの私からお金を取るなんて言わないわよね?」
「ル、ルビス様いくらなんでもそれは…」
「いやーねぇ分かってるわよ、冗談よ冗談。でも安くはしてくれるんでしょ?」
「グッ…分かりましたよ。」
ちゃんと格安になる事をポワンちゃんの口から約束をさせました。
「これなんか私の為にあるような装備じゃない。」
私はよろず屋の棚から『天使のローブ』を取った。値段は3000G。
「はい300Gね。」
「ちょ、ちょっとルビス様?」
「なぁに?人間に10年もの間迷惑をかけたポワンちゃん。」
「…なんでもありません。」
「そ?あら『モーニングスター』も『ねむりのつえ』もあるじゃない。あ!この『黄金のティアラ』も可愛いー。そうそう、『いのりのゆびわ』は大量に持っていた方が便利よねー。はい全部で1000Gね。あ、お釣りはいらないわ。それで好きなものを食べちょうだい。」
「…。」
ポワンちゃんはピクピクと怒りを滲み出していましたが、私たちのおかげで娘や孫の事、そして勘違いでノアニールに呪いをかけた事実を突き付けると、彼女は笑顔(いかり)いっぱいで自らのお財布で私たちの支払いをしてくれました。
「おいルゥ本当に大丈夫なのか?女王さま明らかに目が笑ってないけど。」
「良いの良いの、偉大なる大精霊である私を救う為なのよ?本来ならエルフの力を持って私を救う義務があるくらいなのだから、このくらいの支援は当然よ。それよりハイ、ちゃんとマコちゃんの分も買っておいたわ。」
そう言って私は勇者に『やさしくなれるほん』を投げ渡した。
「オレにはこれだけかよ。それよりカンダタはどうすっか。『どくばり』を使える魔法使いはいないし…。」
「マコちゃんはそれ読んで私にもっと優しくしなさい…って言うかカンダタ?誰よそれ。」
「普通に忘れてんじゃねーよ!おまえが散々覆面パンツってバカにしてるヤツだよ!」
「あぁそうだったわね。どうしましょうか…」
「普通に戦えばいいじゃないですか。マコトにルビス様の現在のレベルは18でしょう?この辺りでそのレベルなら普通に勝てると思いますよ?」
私とマコトの会話にポワンちゃんが交じる。
私たちはそれでもいいとして、ノアニールの村で未だ愛の逃避行の話しに夢中になってるあの2人が問題なんですけどね。
って言うか勝つか負けるかではなくて痛いのが嫌だから無傷での勝利を私たちは求めているんですけどね。
しかし目の前の頑固な女(ポワン)にこれ以上頼んでも魔法使いを貸してくれそうにない。まして本人が来るなんてこともなさそうだ。
結局私たちは魔法使いを諦めノアニールにいる2人と合流し、盗賊団の目撃情報をもとにシャンパーニの塔まで来たのです。
「それにしても何を話しているのかしら。さっきから随分と楽しそうに話してるわね。」
アリーナちゃんが言うように盗賊たちはどう見ても緊張感のない緩みきった表情で気を抜いてる。
「アリーナちゃん、男が集まってゲヘヘとか笑っているときってのは大概ロクな話しをしてないのよ。」
私が世間知らずのお姫様のアリーナちゃんに世の断りを教えてあげると
「「異議あり!」」
マコトとクリフトさんが異議を申し立ててきました。
しかし私は異議申し立てを却下します。私の冒険の書(けいけん)じょう大概そんなものです。
彼らの傍らには盗んだであろう財宝があり、その中には黄金に輝く王冠がある。
私たちの目的のブツだ。
「奴らは完全に油断している、今がチャンスだ。どう言うふうに切り込むか。やっぱり不意打ちは外せないよな。」
「ねぇマコちゃん、私…王冠は盗み返せば良いと思うの。」
「おおなるほど!さすがルゥ、やるじゃねーか。そうだよな、オレたちがロマリア王と約束したのは王冠を取り戻す事で、別に盗賊団の討伐なんて約束してねーもんな。」
「そうよ。目には目を、盗まれたものは盗み返すよ。」
「こらこら、貴様らそれでも勇者一行か?それではまた今後も多くのロマリアの国民が怯えて暮らす事になるではないか。」
私たちの希望が見えたとこに水を差すのはやはり空気を読めないクリフトさんです。先ずはこの男を片付けることが最初な気がします。
私とマコトがそっと武器に手をかけたとき、アリーナちゃんが何かに気付いたように話しかけてきた。
「ねぇルビアちゃん、クリフトを折檻するのはちょっと待って。それより盗賊団を見て、なんか違和感があるのよね。」
待つだけなんですね?折檻はしても良いと。
「違和感ですか?」
私は改めて彼らを観察する。
彼らの人数は4人、1人は覆面パンツ(カンダタ)。残る3人は子分でしょうか…
「って、何であの人たちフルアーマーなのかしら。」
「なんか問題があるのか?」
「分からない?さすがマコトさん、相変わらずオツムが足りないわねぇプークスクス!」
…殴られました。
ジンジンする頭を抑えながら
「あの人たちって仮にも盗賊なんでしょ?覆面パンツは目立つ格好だし、フルアーマーの子分だってあんなの装備していたらガチャガチャ音がするから忍び寄れないわよね。」
「あーたしかに。でもそうなるとますますもってロマリア王の頭の上にあるものをどうやって盗んだんだろうな。よほどのアホじゃなければ普通に気付くだろ。」
「ごめんね勇者さま。うちのお父様(ロマリア王)がアホで。」
「いやいや、アリーナちゃんのお父上だから何か深い理由があるのかもしれないし…な、なぁルゥ。」
そこで私にふりますかこのヘタレは。
って言うか私とアリーナちゃんに対する対応の違いがイマイチ気に入らない。
「そうね…。それか盗賊団と言うよりは強奪の方が近いのかもね。見た感じ山賊っぽいし。」
「となるとそれなりに強いかもしれない。やはり正面から闘うのはリスク高いかもな。」
「何を言う、盗賊など我が槍の錆にしてやる。」
「…クリフト、お前は少し落ち着いて行動しろよ。」
「ね、ねぇマコちゃん、私あのフルアーマーの姿を見ていたら何か怖くなってきたんですけど。もう覆面パンツなんて放っておいても良いんじゃないかしら。」
「…ルゥ、お前はもっとやる気だせ。」
そのあと私たちは作戦を練り、真正面から戦わずに彼らが酔い潰れたのを見計らって財宝を奪取。可能なようなら盗賊団の捕縛をすることにし、ジリジリと忍び寄るのでした。
続く
遅くなりました。卒業旅行やら新入社員研修やらバタバタで…
はい、言い訳です