ああ勇者よ、死んでしまうとは何事ですか。   作:シズりん

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アッサラーム

ロマリア国を離れること2日、私たちはなんとかアッサラームと言う街にやって来ました。

道中、大きな猿(あばれざる)やら猫の顔した蝙蝠(キャットフライ)やらに散々追い回された私たちは既にヘトヘトです。

 

特にマコトはメス猿の発情に追いかけ回され

「ルビアー!!ルビアさまぁ助けてー!!」

とか涙目になりながら私に助けを乞い逃げる様は、それはそれはもう最高でした。

しっかりと冒険の書に記しておきましょう。

 

 

アッサラームの街はいろんな商店が狭い路地を挟んで所狭しと並んでいました。

多くの人々が店の商品を手に取り品定めをしたり店主との値下げ交渉など、中々に活気のある街のようです。

 

私たちは疲れを癒やす為に宿屋を探して歩いていると1人の女性に話しかけられた。

 

「そこのお兄さん、宿屋をお探しならウチはどうですか?今なら…ぱふぱふがサービスになります。」

「ぱ、ぱふぱふっすか?ど、どうしようルゥ、今日はこの宿屋にしようかなぁ。」

「…。」

そう言って私の方を見る勇者は、今にも鼻血が出そうなほど興奮している。…なんだろう、胸の奥がモヤっとします。

「そんな冷たい瞳をするなよ。」

「…他を探しましょう。」

「そんなこと言っちゃダメよ、お嬢ちゃん。男の子には色々あるのよ。」

呼び込みの女性はワザワザ屈むように胸元を強調させながら妖艶な微笑みを私に向ける。

「お嬢ちゃん?今私を小娘扱いしましたか?」

「あら、違うと言うのかしら?見たところ貴方達はまだそう言う関係じゃないでしょう?それにそちらの男の子は満更でもない様子よ?」

振り向けばマコトが興味津々な様子。

「お、おいルゥ、ギギギとか言う音を立てて振り向くなよ怖えよ!」

などとのたまう始末。

「マコちゃんは勇者だから貴女みたいな牛女にようはありません。そうよねマコ…」

 

そこにはこの世の終わりのような顔をした勇者がいました。

「何ですかその顔は。ちょっとこっちに来なさい。」

 

説教をしてやる。

 

「何ヘコんでんのよ。」

「よく聞けよルゥ。年頃の男子は色々あるんだよ。女っ気のない旅路、たまには息抜きの一つくらい…ってあれ?ルビアさん?瞳が怖いんだけど?」

「女っ気がないだと?目の前にとびきりの美女がいるでしょうが!」

「アホか!お前相手に欲情するわきゃねーだろうが。」

「何ですって!!」

「な、何を怒ってんだよ?」

マコトは小声で精霊相手に欲情なんてできるわけないだろと伝えてくるが、私の怒りは治りません。

「よく言うわよ、宿屋で寝ているとき寝返りをうつフリして私の胸を触ろうとしてるじゃ「ちょっと待て!!す、少し黙ろうかルビア。わかった、わかったからもうやめて。オレのHPはもうオレンジ色だよ。」」

 

辺りにいた女性たちの白い視線に居たたまれなくなったのか、マコトは私の口を涙目になって塞ぐ。これにはさすがの牛女も痛い人を見る目になっていた。

 

 

 

 

「あー酷い目にあった。」

「自業自得よ。精霊である私を救う為の旅なのに牛女に下心をもつからよ。」

「…魔王バラモス討伐が目的じゃなかったっけ?」

「そんな何とかのオマケみたいなモノは余裕でしょ?早く助けて!私を助けてよ!」

「バラモスがオマケって…。まぁそれは置いといて、ロマリアを出るときにクリフトから聞いたんだけど、ずっと南にイシス国ってのがあるらしいぜ。」

「イシス国?」

「ああ、何でも砂漠を越えた先にある国だからアッサラームで砂漠越えの装備を揃えろってアイツが言ってたんだよ。」

「へー、マコちゃんやるじゃない。なんか本当に勇者みたいよ?」

「勇者なんだよ。」

若干拗ねた顔の勇者はともかくとして、私たちの次の目的地が明確になっているのは頼もしい。

私たちはイシス国に向かう為の必需品を揃える為に夜の街に繰り出した。

 

アッサラームは沢山の店が立ち並んでいた。昼間は武器屋が目立っていたのだけど、今は防具屋の方が目立つ。

そして何故か並ぶ商品の値段がマチマチなのが不思議だ。

私たちはどこで買い物をしようかと歩いていると1人の恰幅の良い商人に声をかけられた。

 

「お二人は見たところ旅のお方ですね?イシス国に向かうんですか?」

「あんたは?何故オレたちがイシスに向かうと?」

勇者が警戒しながら商人に応えると、彼は少し慌てたように改めて自己紹介を始めた。

「あ、すみません。私は『トルネコ』と申します。見ての通り商人です。先ほどお二人が大量の水やら食料を買い込んでいたのを見かけたのでそうかなって。」

そう言って大きなお腹を揺らして笑う。

その屈託のない笑いに勇者も警戒を解いた。

「オレは勇者マコト、でこっちが僧侶のルビアです。」

私たちも簡単に自己紹介をしてトルネコさんと話す。

 

彼は旅をしながら自らの店を出す場所を探しているそうです。そして流れ着くように商店が集まるこのアッサラームに来たそうだ。

彼が言うにはアッサラームで買い物をするなら『値引き交渉』が必須なんだそうです。知らずにそのままの言い値で買うととんでもないボッタクリにあうのだとか。

 

「何故オレたちにそれを教えてくれたんだ?」

「私の見立てではお二人が旅慣れた方に見えまして…。私もイシスに行きたいのですが一人では厳しくて…。そこでお二人の買い物に協力するかわりに私もイシスにご一緒させて頂けないかと。」

そう言ってまた笑う。

トルネコさんはよく笑う人だ。

 

「ルゥ、お前はどう思う?」

勇者は私に顔を近づけ小声で話しかけてくる。

「そうね…とりあえずトルネコさんは嘘は言ってないようよ?」

「そんな事分かるのか?さすがは一応元精霊だな。」

「〝元〝じゃないって言ってるでしょうが!」

私は思い切りマコトのつま先を踏み付けてやると、涙目になって飛び上がった。いい気味です。

 

「で、どう値切り交渉すんだ?」

「普通なら他の店は幾らだったとか、纏めて買えば…とか交渉には色々あるのですが…そちらのルビアさんがいれば交渉は楽になると思いますよ?」

そう言って私の方をニヤついた目で見る。

そう、まるで商人の品定めをするかのような目で。

 

どうしよう…

なんか嫌な予感しかしない。ってかトルネコが今は只のエロオヤジにしか見えないんですけど。

 

そんな私の不安をまるで知る由も無い勇者は、アッサラームでの働き具合によってはイシスまで連れて行くと約束をし、勝手にこのエロ商人をパーティに入れるのでした。

 

 

 

つづく




第3章はイシス編になります。
よろしくおねがいします♡
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