ああ勇者よ、死んでしまうとは何事ですか。   作:シズりん

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運命の出逢い

「なぁルゥ、オレ考えたんだけどさぁ…このままイシス国で二人で暮らさないか?」

「え?マコちゃん、それって…」

 

女王の間から宿屋の部屋に戻りしばらくすると勇者がポツリと呟いた。

 

「…」

マコトは言ったきり無言。

いつもの彼と違い真剣な眼差しでテーブルの上を眺めている。

辺りは夜、シンとした空気が流れる。

 

「ま、まぁ私としては本体を取り戻さないといつまで顕現していられるか分からないけれど…マコちゃんがどうしてもって言うなら私も吝かでは…って、何見てんのよ。」

 

いつまでも視線が一点から移らない勇者。

私は私たちの現在を思い返す。

 

女王の間で馬女(ミーティア)との謁見を終えた私たちは、せめてもの勇者一行への支援をとイシス国でも高級な宿屋の部屋をふた部屋用意してくれた。部屋の中にもかかわらず水や緑が多く、かなりの上レベルの部屋なことが私にも分かる。

私たちとトルネコさんは其々に分かれ部屋に入りしばらくすると、ルームサービスと言って見たこともない程の豪華なディナーが運ばれてきました。

もちろん全てが女王によるものと言うのだから馬女もなかなか奮発してくれたようです。

つまり目の前の勇者(へたれ)は、私にではなくこの至れり尽くせりの状況に甘え切りたい一心で『このままイシス国で暮らさないか』の発言に至ったと言う訳だ。

ええ、判っていましたよ。マコトがヘッポコなことは。別に期待なんてしていない。してはいないけれどイラッとさせられた仕返しだけはいつかしてやろう。私は心に決めた。

 

 

 

ピラミッド探索を明日に控えた深夜、一人の珍客が部屋の扉を叩いた。眠たいまなこを擦りながら扉を開けるとそこには純白のドレスを身に纏った一人の女の子がそこに立って居たのだ。

長く艶やかな黒い髪。吸い込まれそうな瞳は夜の色をしている。まぁ一般的に言って美少女です。

私はそのまま扉を閉めた。

 

「おいマコト!!どこでまた女をひっかけた!!」

「おわ!何んの事だルビア!と、とりあえずモーニングスターはしまえ!」

勇者は私を救うと言う何よりも名誉な役目があるにもかかわらず、適当に女の子たちと仲良くなろうとするだなんて誰が許しても大精霊である私が赦さない。今日と言う今日は説教をしてやる。そう思いマコトに近づくと、部屋に勝手に入ってきた女の子が慌ててそれを止めに入る。

 

「ミーティアですルビア様、イシス国の女王ミーティアです。」

「あぁん?ミーティア?女王の名前を騙るなんて重罪ね。私がひっ捕らえて高額の報酬を本物のイシスの女王から貰ってやるわ。」

「違います違います、本当にミーティアです。ほら」

 

そう言って懐から馬のお面を取り出し着けてみせた。

 

「おわっ!ルゥ今の見たか?突然ミーティアが目の前に現れぞ?」

「ええ見たわ。ミーティアは大魔法使いなのかしら。室内にルーラで現れたわ。」

「……」

まずいです。少しやり過ぎました。

私たちの細やかな冗談にほんの少しだけ泣きそうになる女王。すると隣の勇者は180度態度を変え、目の前の泣き真似している性格真っ黒な女の肩を持つ。そもそも私に嘘は通用しない。ある程度なら人の考えていることも分かります。そんな私がイラッとしたのは、泣き真似して勇者の同情を買おうとしている女の子(馬女)にたいしてではなく、本気で目の前の女の子(馬女)の気を引くためにこの私を悪者扱いする目の前のヘッポコだ。

 

「で?女王さま程のお方がこんな夜更けに私たちに何の用なのよ。」

突き放すように言ってやりました。

ハッキリ言ってしまえば八つ当たり。大人気ないのは充分承知の上です。しかし彼女はそんな私のイラつきにはまるで気付くそぶりもなく椅子に座ると、テーブルに身を乗り出すように勇者の手を握り

 

「マコトさま、貴方こそはミーティアの運命のお方ですね?」

「はい、そうです。」

ガツン!!

モーニングスターの鉄球でマコトの後頭部を叩きました。

「何を即答してんのよマコト!それにミーティアも何をトチ狂った事言ってんのよ。」

「いえトチ狂ってなどいません。まだ私(わたくし)が幼い少女だった頃、『貴女はいずれ世界を救う者のお嫁さんになる』と女神様の御告げがあったんです。世界を救うと言えばやはり勇者様、ですから私はずっと長いことマコトさまがミーティアの前に現れる瞬間を待ち焦がれていました。」

「はぁ、御告ねぇ。」

マコトは今一神の存在を信用していないような感情の籠らない声で返事を返した。

今貴方の隣にいる私こそが大精霊にして美しい女神ルビスその人だと言うのに何を疑うことがあると言うのか。

「貴女の運命の人が勇者ぁ?誰よそんなふざけた御告げをした女神は。」

「それは…」

「「それは?」」

「それは、かの大精霊ルビス様です。」

「「は?」」

 

思わず私たちは声が重なる。

 

「そ、それは流石に勘違いじゃないかしら。」

「いいえルビアさま、ミーティアは確かにルビス様の御告げを聞きましたわ。毎晩毎晩寝る前に欠かさず祈りを捧げているときに。」

「それっていつぐらいの頃よ。」

「ミーティアがまだ5歳くらいの頃ですから…10年くらい前でしょうか。」

「はぁ?10年前?……あ。」

「おいルビア、おまえちょっとこっち来い。」

そう言って部屋の隅に私を連れて行く勇者は、

「お前心当たりあるな。どういう事か説明しろ。」

白い目でジーッと見つめる勇者が問い詰めてきた。

 

「そう言えばその…10年くらい前に魔王に囚われた私がウトウト眠りにつきそうな所に、毎晩毎晩話しかけてくる女の子がいて…」

「それで?」

「ほら、ねむる直前に話しかけられるのって嫌じゃないですか。」

「あぁそれで?」

「私も早く眠りに就きたいからその…」

「……」

「適当に…答えまし…た。」

ガツン!

勇者が私の頭を叩きました。

「このバカが!どうすんだよこれ。このままじゃオレ、本当にミーティアと結婚させられちまうじゃねーか!」

 

意外です。マコトはむしろ清楚な美少女系であるミーティアならまんザラでも無いと思っていました。

「オレにはやるべき事があるから、ここで旅を終わらせるわけにはいかねーんだよ。」

「…マコちゃん…私感動したわ。そこまで私を救う気持ちが強かっただなんて…。分かったは、ここは私に任せてちょうだい。」

「いや、別にお前の為ってわけでもないんだけどな。」

 

ボソッと呟くマコちゃん。ああ、これが人間の事を勉強していた時に覚えたツンデレってやつね。仕方ないわね。そこまで私の事を想ってくれているのなら今の言葉は聞かなかった事にしてあげましょう。

 

私たちは再びテーブルに着くと馬女(ミーティア)の説得にかかる。

なるべく女心を傷付けない様に計らいながら。

「あのねミーティア、私たちは大きな使命を持って旅をしているの。だから旅をやめるわけにはいかないわ。」

「それは承知してますわ。ですからミーティアも旅に同行させてください。」

「は?ダメよ。ミーティアは何の戦闘職にも就いていないじゃない。この辺りでレベル1からは死にに行くようなものよ。」

私は精霊の眼をもって彼女のレベルを見てから優しく説いた。

「ええ、ミーティアは確かに戦闘は出来ません。ですから馬車馬としてでも良いので連れて行って欲しいのです。」

「馬車馬って…私たち歩きの旅よ?」

それを聞くと馬女(ミーティア)は顔を曇らせた。

 

「何でそんなにまでして私たちと行きたいの?」

いくら御告げがあったと信じ込んでいるにしても少し変だ。ハッキリ言って隣にいる勇者(ヘタレ)は一目惚れなんかされるような男ではない。にも関わらずこうまで食い下がるのには何か理由があるのかも知れない。

私がそんな思いで静かに問うと、彼女は懐から1枚の姿絵をテーブルの上に出した。

そこには身の毛もよだつような笑顔の男性の姿絵があった。

「あの…これは?」

「コレはミーティアの婚約者のチャゴス様です。」

「「うわぁ…」」

 

私とマコちゃんは声をハモらせた。それ程に残念極まる男性です。しかも馬女に聞けば見た目だけではなく中身までもが破綻していると言うのだから救えません。

「おいルゥ。さすがにこれは…何とか運命を変えてやる事できないのかよ。」

小声で勇者が言う。

「そんな事できるわけないでしょう。だいたい何よ運命って。」

勇者は使えねーとボソッと言いやがりました。

しかし確かにミーティアは同じ女として少し気の毒だ。全てが終わったら何かしらを考えてあげてもいいかもしれない。

そんな私の慈悲深い気持ちとは裏腹にこの真っ黒な馬女は

 

「マコトさま、ルビアさまとお別れになってミーティアを選んでくださったらこの『ルビーのうでわ』を差し上げますわ。戦闘効果はございませんが売れば大金になりますわ。」

などと買収にのりだした。

「え?マジで?」

「ちょっと何お金につられてんのよ。」

隣の勇者の食い付きにチャンスを見たのか馬女は攻勢を続ける。

「何なら我がイシス国の秘宝中の秘宝『ほしふるうでわ』もお付けしますわ。これは装備した者の『すばやさ』を格段に上げてくれる神具です。どうですか?ミーティアをパーティに入れていただけますか?」

 

本気で悩む勇者の姿に腹が立つ。まさかとは思うけれど本当に金目の物につられて私を捨てるんじゃ…

 

「すまないミーティア。やはりオレは世界を救わなきゃならないから。今は自分の幸せな未来とか考えられないんだ。」

意外にも勇者はその誘いを断った。

その決意を聞いたミーティアは少しだけ悲しそうな顔をすると、

「仕方ありませんよね。では全てが終わったその時は…いえ、やめときます。マコトさま、ルビアさま必ず魔王バラモスを討ち倒し世界を救ってくださいましね。お約束どおりピラミッドの中の財宝は好きにして頂いて構いません。」

 

そう言い残し彼女は従者を連れてイシス城へと帰って行った。

「意外だったわ。マコちゃんはああいう清楚な女の子が好きだと思っていたけど。」

「まぁ確かにどっかの駄女神よりはタイプだけど?」

「おいマコト、ちょっと表に出なさいよ。境界(ルビスのお説教部屋)で説教してやるわ。」

「待て待て待て、オレたちはやらなきゃならない事があるだろ?お前だって救わなきゃなんだしよ。オレだって出来ればイシスで贅沢三昧してたいよ。でもミーティアは戦えないんだろ?なら断るしかねーじゃねーか。だいたいお前が10年くらい前に適当なこと言ったのが悪いんじゃねーか。」

「……。」

 

おかしいわね。確かに子供相手と適当にあしらったのは確かだけれども、今日彼女を見てそれが全くの的外れってこともないように見受けた。しかし隣のヘタレが相手ってことも無い。

これはどう言う事でしょうか。考えても分からない事は無駄だ。

 

私たちは明日のピラミッド探索のために眠りにつくのだった。

 

それにしても最近本当に疲れます。

 

 

 

つづく




ほしふるうでわがあるとの書き込みを見て追加してみたお話しです。情報ありがとうございます♡
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