「見たところ勇者様たちの装備に問題はなさそうですね。特にルビアさまの『天使のローブ』に至っては、どこで購入されたものか分かりませんが、この辺りでは間違いなく最高の装備ですわ。」
改めて私たちは装備を見直すことになったのですが、人間観察が趣味だと言う馬女は、観察をしまくったおかげと言うか何というか、装備の質まで見てわかるという。
つまり私たちは、問題は装備ではなく私たちの方にあると言うわけです。何となくそうかなぁ〜とは思っていましたが、第三者、しかも戦闘経験などあろうはずもない馬女に指摘されては認めざるを得ない。
「やっぱりそうか。オレも薄々は…」
なんて他人事のように言う勇者。あなたの戦闘経験不足が問題な気はしますが、これまであまり正面切って戦ってないのだから多少は仕方がない。男性は女性に否定されることを嫌うと何かの本で見た気がするので触れないでおいてあげよう。
ああ、私はなんて出来た女なのでしょう。
そんな私の寛大な気遣いを知りもしない勇者はよりにもよって私に向かって
「ルゥの攻撃手段があまりないのが悪いんじゃねーか?」
などとのたまいやがりました。
「ちょっとマコちゃん、それはちょっと聞き捨てならないんですけど。私は僧侶よ僧侶。女神に相応しく癒すのが私の仕事なの。」
「あ?女神?」
「あ、エスタークさんルビアさんのそこは触れないであげてください。女神を騙る痛い女だとマコトくんが言ってまして。」
エスタークの反応にトルネコが応える。誰が痛い女だ誰が。コイツもう一度死を見せてやろうかしら。
そんな私よりも早く反応したのはエスターク。
「オレは神や精霊とか言う奴らは嫌いなんだよ。奴らは信じるだけで幸せになれる〜だの、純粋なものの足元を見る、うさんくさい甘言で人の心を惑わし、寄付と称して金集めしている詐欺集団のような奴らだからな。よほど魔族の方が正直者ってもんだぜ。」
「なあああぁんですってぇ!ちょっとアンタ!それはさすがに聞き捨てならないんですけど!魔族なんて人間の心の悪意に巣食うウジ虫みたいなもんじゃない。それが気高くも美しい、高貴な精霊よりマシだなんて頭おかしいんじゃないの?」
エスタークの人生に何があったのかは知らないけれど、神に弓引くとはずいぶんと良い度胸をしている。
エスタークは私の言葉にほんの一瞬だけイラっとした表情をするが、すぐさま冷静な表情になり
「グヌヌ…だが奴らは口だけで人間を救おうとなんて考えちゃいないじゃないか。奴らの殺し文句はなんであったか…? そうそう、“神はいつでもアナタを見守っていますよ”…、だったか?見守るだけじゃなく実際守れってんだ。」
「ちゃ、ちゃんと大精霊の慈愛に世界は満ちているじゃない。あんたズッとボッチだったから知らないだけじゃないの?プークスクス」
「ボ、ボッチじゃねー!オレはソロで強さを求めていただけだ。だれもオレの強さに肩を並べられる者がいないからな。それに何が大精霊の慈愛だ。だったらバラモス如きなんとかしろってんだ。大方面倒くさいから適当に人間から勇者を作ってソイツにやらせようって感じだろうぜ。あのルビスとか言う名前のグウタラ女神は。」
「な、な…ちょっとマコちゃんアンタ勇者を否定されて…るわ…よ…って、何でそんな白い目で私を見てるの?何でそんなに呆れた目で私を見るの?」
隣の勇者に援護をしてもらおうとしたら、なんだか不愉快な目を私に向けているじゃありませんか。
「……上等よ、アンタら2人とも表に出なさいよ!大精霊の怒り見せてやるわ!!」
「まぁまぁルビアさん、いくら貴女が僧侶だからルビス様を悪く言われて怒るのは分かりますが、夜中なので抑えて抑えて。それにエスタークさんの言い分も完全に的外れって訳でもないんですから。ここは仲間同士仲良くしましょうじゃありませんか。」
トルネコのその言葉ははっきり言って的外れです。
それにエスタークはマコトが勝手に仲間にしてしまいましたが、トルネコは仲間にした覚えはありません。
そんな私たちのやり取りを見ていた馬女(ミーティア)は、ひとしきり楽しそうに笑った。そして
「それで、やはりピラミッドにはまた行かれるのですか?」
などと聞いてくる。
私的には全滅してお金は半分にこそなりはしたけれど、踊る宝石やらから宝石類をたくさんゲットしたし、目の前のボッチ(エスターク)から仲間に入る際に沢山の財宝を私に献上させた。
しばらくの路銀が集まった以上、あまり要はないのですが…
「お父様(トロデ前王)から聞いた話では、世界に二つと無い秘宝があると聞いていますわ。先程皆様の装備を見る限りそれを手にしたようには見えませんが。。」
などと、マコトやエスターク、トルネコと言った守銭奴供の興味を引くような事を言うこの女はやはり腹黒い。
案の定ボッチ(エスターク)は世界に二つと無い秘宝の言葉に食らいつく。まぁ大精霊である私は彼の求める『進化の秘法』がものじゃない事くらいは知っていますが、ムカつくので教える気はない。
残る2人も別な物を想像しているのでしょう、目を輝かせて行く気満々です。男性は本当に夢見がちですね。仕方がありません。私が冷静に3人を諭してあげましょう。
「そうだ勇者様、その世界に二つと無い秘宝を持って帰って来てくださった暁には、ミーティアからこの上ないプレゼントを差し上げますわ。」
私はピタリと動きを止めた。
「この上ないプレゼント?」
「はい、私にソレを持って来てもらえたら、この額で買い取らせていただきます。」
そう言って懐から取り出した四角い箱(電卓)をポチポチと軽快に打ち込んで私にそっとソレを見せた。
こっ、国家予算レベルだ…と。
「ほら何をやってんのよ2人とも。宿屋なんかでノンビリしている暇はないわ。早くピラミッドに戻るわよ、ほら早く!」
さすがは元とは言え経済大国イシスです。私とて見たこともないような金額が提示してありました。
「ルゥ、おまえ何急にやる気出してんだよ。もう夜なんだから明日でいいだろ?」
「ダメよ!こうしている間に盗賊とかに先を越されちゃったらどうすんの!ほら早く行くわよ!」
「いや『進化の秘宝』程のものが盗賊ごときに見つけられる筈があるまい。それにあれだけのモンスターに罠だ。まず先を越されることもないだろう。今日のところはゆっくり休んで明日にしよう。」
「反論するなボッチ!!アンタなんかマコちゃんが仲間にしちゃったから仕方なく連れて行くけど、本来なら置いて行くとこよ!」
「まぁまぁルビアさん、ところで私は…?あの、数に入ってないようなきがするのですが…。」
「うっさいわね。アンタはイシスに着くまでの仲間よ。もう関係ない人はあっちに行って!!まぁ…モンスターの囮になるんなら?連れて行ってあげても…痛い!!」
後ろから勇者が私の頭を叩いた。
「痛いわね、何すんのよ。」
「…おまえ、さっきからなんか怪しいんだよな。なんか隠し事してるだろ。」
そう言ってマコトが私の顔を覗き込む。ちょっと近い近い、顔が近いんですけど。そんな私のドキドキとは裏腹にマコトは冷ややかに
「おまえ、ちょっとオレたちの財布を出してみろ。」
「え?な、何を急に…」
「良いから早くだせ。」
※※※
「何でこれしかねーんだよ!この宿屋だってミーティアが出してくれてるから良いけど、普通の宿屋にも泊まれないじゃねーか!」
「それはその…」
「早く言え」
「あのね…イシスの滞在費はミーティアが持ってくれるって言ったじゃないですか。」
「ああ。それで?」
「武器はポワンちゃんの所(エルフの隠れ里)でほぼ揃ったし、アッサラームからイシスまではトルネコさんが出してくれてるじゃないですか。」
「…続けろ」
「どうせピラミッドで財宝が手に入るなら今あるお金は…使っちゃっても良いかな…ってその…昨夜お酒を飲んで使っちゃっい…ました。」
「このバカが!」
怖い怖いです。勇者が私をモンスターかなんかを見る冷たい目で見ています。
「ルゥ、おまえ1人で行け。」
「うおぉ願いよ!助けて、私を助けてよ。私、今回は頑張るから、全力で頑張るから私を見捨てないで。」
泣きながら勇者の足元に縋りつきました。
すると勇者は深い溜息を吐くと
「まぁ良い、0になったならまた稼げば良いだけさ。」
そんな優しい声を掛けてくれたのですが、そんな私たちに冷水をかけた男がいた。
「0なんかではない。その女は我がサザンビーク家が経営する酒場で一番高い酒を飲みまくった挙句、酔って酒場内で『バギマ』を唱えホールを滅茶苦茶にしたのだ。0どころか我がサザンビーク家に借金だってあるのだ。見よ!コレがその念書だ。」
私、ルビアは手持ちのお金以上に飲んだ挙句、店の中を滅茶苦茶にしてしまいました。つきましては、私ルビアと勇者マコトはクラビウス様に弁償金五千ゴールドをお支払いいたします。
「何でオレの名前があるんだよ!」
「借金をする時は連帯保証人が必要だったのよ。」
その後私は勇者に散々怒られた。
そして夜があけた
「仕方がない。ほら行くぞルゥ。」
「ありがとマコちゃんありがとね。」
「わかったわかったから鼻水をつけるな。しかし…あの広いピラミッドで財宝を探すのはかなり苦労しそうだな。せめて地図でもらあれば良いのにな。」
勇者がポツリとつぶやく。
それに馬女はポンと手を叩き何でもないかのように答えた。
「ありますわよ。ピラミッド内部の地図。」
「え?あんの?地図」
「もちろんですわ。最初にも申しましたけどピラミッドには我がイシス国の財宝が眠っています。あとで必要になるかもしれませんでしょう?ですから財宝の位置や罠の仕掛けた場所も網羅した完ぺきな地図がございますわ。」
「ミーティア…」
勇者が笑顔で馬女に近づく。
何をする気よこの男は。馬女も頬を染め瞳を濡らしている。
何よ何よこの空気は!
私はそっと『バギマ』を唱えようとする
のですが、次の瞬間
「そんな物(地図)があるなら最初からよこせー!!!」
勇者は叫び
「いやん」
なぜか怒鳴られているのにハアハア言っている馬女がそこにはいました。どうもこの女もロクなもんじゃないようですね。
こうして私たちは再びピラミッドを目指すことになりました。
つづく
暑い…