ああ勇者よ、死んでしまうとは何事ですか。   作:シズりん

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第4章
ポルトガ編の始まりです。よろしくおねがいします(о´∀`о)


森の破壊神

鬱蒼とお生い茂る木々の隙間から月明かりが辺りを照らす。

どこかエルフの女王(ポワンちゃん)たちが隠れ棲んでいた森を彷彿とさせる神秘的な雰囲気のある森の中。

そんな森の中で頬を撫でる風のなかにほのかに潮の香りが混じる。

次の目的地であるポルトガがすぐそこだと言う事を潮風が教えてくれる。

時折吹く強い風の冷たさをしのぐように身を抱えながら焚き火の炎に枝をくべていると背後から勇者が声をかけてきた。

 

「おやおやルゥ、寒いのかい?」

「あらマコちゃんもう起きちゃったの?たまに吹く強い風がちょっとだけね。」

「まぁポルトガ目前で野宿しているの、おまえのせいなんだけどな。」

「……」

その時マコトのお腹の虫が鳴いた。

 

「あらあらマコちゃんお腹すいたの?そういえばイシス国からここまで何も食べてなかったものね。」

「そうだな。まぁそれもおまえが持ち金全部酒代で使っちまったのが原因なんだけどな。」

 

「「……。」」

 

「このバカが!何で全額飲み代に使ってんだ!」

「だ、だって馬女(ミーティア)が財宝を買い取るって言ったから…しかも一千万Gよ、一千万。そんな金額が手に入るなら……ってつい。」

「どう考えてもおかしいだろそんな金額!!常識で考えろ、この駄女神が!」

「わ、私が人間の常識なんて分かる訳ないじゃない。バカなの?」

 

駄女神と言い放つ勇者にささやかな仕返しをしてやると勇者は私の頭を叩きやがりましま。

 

「全く…確かにお金は欲しいけどミーティアと結婚はできねーよ。」

「あら意外ね。ああいう清楚な感じの女の子が好みだと思っていたんだけど。」

「まぁ好みと言えば好みだけど…おまえそれで良いの?世界とかおまえの本体がどうとか言ってなかったか?」

 

ちらちらと私の方を見るマコト。彼は意外にも本気で世界のことを考えているようで少しだけ見直しました。

そしてダメな方に見直すべき男がもう1人…

 

「なんでまだ寝てるのよこの男は!」

「散々昼間も寝てたのにな。」

 

私とマコトはスヤスヤと気持ちよさそうに寝息を立てる呑気な戦士(エスターク)に視線を移し少し前のことを思い浮かべてため息を吐いた。

 

「進化の秘宝を探すために大陸を渡ろう!」

エスタークが言った一言から始まった。

進化の秘法なんて危険なものをこの男に渡す気はないし、そもそも神々の間にある伝説の秘法を創れる者が人の世界にいるとも思えないのですが、私を救う(ついでに世界を救う)為には海を渡る手段である船はいずれ必要になるはず。

「船と言えば海洋国家ポルトガだろう」

マコトは大したことない知識を披露するけど

いくら私たちが勇者一行だとしても船をポーンと貰えるとは到底思えません。とは言え他に良い案があるわけでもないので、私たちはポルトガを目指すことになりました。

 

途中ロマリア国北西の関所があり、いかつい門兵2人が「ロマリア王の許可が無ければ通せない。」と行く手を遮りましたが、マコトが『だいじなもの』に隠し持っていたアリーナちゃんの♡な姿絵を差し上げたら喜んで通してくれました。

男って…ちょろいわね。

 

そして泣きながら予想以上の抵抗をするマコトの頭をぶっ叩き、引きずるように私たちは新天地ポルトガの地へとやってきたのです。

 

新天地は『さまようよろい』や『ドルイド』と言った強敵が多く、私たちの旅は苦労を重ねるかと思いきや戦士エスタークが思いの外強く、マコトは終始余裕の表情で道を行く。

そんな私たちを恐怖のどん底に落としたのは『マタンゴ』と言うキノコ型のモンスターでした。

奴らの吐く『あまいいき』は『ラリホー』並みの眠気を誘う。

私やマコトは抵抗できるのですが、戦力の要であるエスタークは毎回毎回眠りこけてやがるのです。

 

「今度この男が寝たらモーニングスターか何かで叩き起こそうかしら。」

「やめろルゥ、エスタークが永眠しちまう。」

 

振り上げたモーニングスターをマコトが止めにかかったその時でした。

辺り一面の様子が一変した。

実際に変わった訳ではありませんが、夜の黒い景色が真っ赤に染まったような感覚とでも言うか、とにかく物凄く気分の悪いプレッシャーが私たちを包んだ。

さすがに鈍感勇者のマコトも息を飲んだ。

 

距離はある程度離れている。

ソレは突如姿を現した。

 

緑色の身体は分厚い鱗のようなものがビッシリと埋め尽くしている。

コウモリのような二ついの羽をもち、身体は優に10メートルは越えるだろう。周囲の木々において尚その巨体を際立たせる。

6本の手足を持つソレが夜明け前の森に突如現れたのです。

 

私たちを察知されるかどうかは分からないが、幸いにも最悪逃げ出すことが可能な程度には距離がある。

 

 

「お、おいルゥ、まさかアレが魔王バラモスか?」

マコトが小声で話しかけてきた。

「違うわ。アレはバラモスのように群体じゃなく単体の魔物ね。」

「単体?」

「そうよ。魔物は通常階級が上位に在るものほど致死率が低いから、総じて出生率も低いの。ようは個体数が低いのよ。」

マコトの頭の上に?のアイコンが見えるような気がしますが、今はそれにかまけている暇はありません。

とにかく今の私たちはバラモスどころではないモンスターに出くわしている。息を潜めてやり過ごすしかないのです。

 

そんな私たちの背後から同じく小声でエスタークが話しに混ざる。

「アレは破壊神シドーだ。」

「あら起きたのね?」

「さすがに起きるさ。アレはオレの故郷の邪神の一柱だからな。さすがのオレも今奴と戦って勝てる自信はない。」

「はいはい厨二乙。」

「このクソ女、オレは厨二じゃないと…」

 

悔しそうに歯嚙みするエスタークの顔を見ているとスッとする。

 

「オマエら少し静かにしろって。見つかったらどうすんだ!」

マコトが青い顔して懸命に私たちを黙らせる。確かに今はボッチ(エスターク)に構っている時ではない。

しかし意外と落ち着いているエスタークは

「奴はまだ寝ぼけている。今ならオレらをわざわざ襲いには来まい。このまま静かにやり過ごそう。」

 

そう言って再び寝床に戻り毛布をかぶると3秒後には気持ち良さそうにイビキをかいている。

この図太さは中々のものですね。

やがて邪神はズシン、ズシンと地響きだけを残し何処かへと去って行った。

 

「それにしても…この世界は一体どうなっているのかしら。」

先程の邪神にしても、気持ち良さげに寝ているこの男(エスターク)も。本来居るはずのないモンスターが闊歩している。

「魔王バラモスの影響かもしくは…」

「あら、頭が残念なマコちゃんが何か分かったの?」

「残念とか言うな。だいたいどうなってるも何もルゥ、おまえのせいじゃないのか?」

「なんで私のせいなのよ。」

「だっておまえ一応この世界の神なんだろ?それが遊び呆けているからじゃないのか?」

「神?………!そうよ!私は女神なのよ。偉大なる大精霊なのよ!」

「おまえ、まさか忘れていたんじゃねーだろうな。」

「い、いやぁねー。忘れてる筈無いじゃないハハハ…」

 

乾いた笑いしかでません。

最近ではこの旅も面白おかしく思うようになっていたから。

 

ちょうど東の空が明るみを帯びてきた。

夜明け間近と言ったところでしょう。

 

太陽の光で伸びる影が、次の目的地であるポルトガの位置を教えてくれる。

私たちは海洋国家ポルトガへと辿り着くのでした。

 

 

 

つづく

 

 

 

 




9月はもう少し頑張ろっと
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