「なんか…寂しい街だな。」
ポルトガの街に着くなりエスタークが呟いた。
彼がそう言うのも無理はない。と言うのも、真っ昼間のメインストリートだと言うのに人が疎らにしかいない。
もっと言えば先ほどから老人から子供まで男性の姿をまるで見ないのだ。やはり海洋国家ともなると男は海に出るのでしょうか。
それとも船を一隻も見ない所から、よその国に出稼ぎに出ているのかもしれない。人の生活とはなんと涙ぐむましい度力の上に成り立っているのでしょう。少しはマコトも男の甲斐性と言うものを私に見せてもらいたい…のですが…間の抜けた表情で大きなアクビをしながら、何のためらいもなく自称地獄の帝王の後ろをのこのこ付いて行く勇者…どうなんだろう…泣けてくる。
いつの日かマコトに子孫ができたら私は彼の子孫にピッタリな名前を送ってやろうと思う。
「おいルゥ、ボサっとしてるとおいて行くぞ?」
「ちょっと待ちなさいよ『トンヌラ』」
ガツン!
「誰がトンヌラだ誰が!」
つい、名前を口にしてしまいました。それにしてもポンポンとよく頭を叩きやがりますね。そろそろ本気で神罰の一つでも落としてやりたい。そんな事を考えながら私たちはポルトガ城へと歩を進めた。
「ほーなかなか立派な城じゃねーか。」
城門に着くなりエスタークは見上げながら言う。
たかだか魔物の分際で随分と上から目線でものを言う。私の本体を救い出すのに使えそうだから仲間に入れてるだけだと言うのにだ。
ですが彼が言うのも少し分からないでもありません。往々にして人の王族と言うのは無駄に煌びやかにするのが好きなようですが、これはその中でもなかなかに立派な類いではないでしょうか。
海も見えて眺めも良い。
いつか私も人間に倣って海の近くに『ルビス城』を建てようかしら。密かに楽しみができました。
「オレたちは魔王バラモスを倒すために旅をしているのですが、ポルトガ王に面会させて頂けませんか?」
マコトがいつもの様に門の前に立つ女騎士に用件を伝えると、彼女らは互いを見合わせ、少しだけ困った様な顔で応えました。
「その頭上に輝く蒼い宝玉にその出で立ち、あなた様がたはアリアハンの勇者様ですね?」
「オレの事を知ってんの?」
「ええ、勇者様は私どもポルトガ国でも有名ですから。」
「くわしく。」
必要以上に格好つけた表情で話すマコトに少しイラつきました。しかし…
「アリアハンから来た勇者様は食い逃げやらその国の姫の○○な姿絵を撮るだのと、とんでもない鬼畜だから気をつけろと…」
マコトはだんだんと涙目になっていきました。いい気味ですね。
案の定女騎士たちの批評に涙目になったマコトは、もういいからと頼むようにして話を区切る。
「失礼しました。ポルトガ王ですが、現在外出中でございます。」
「え?いないんすか?」
「はい、ポルトガの街に噂の歌姫(ディヴァ)が現れたとかで街中の男どもが…」
そう言って女騎士は何とも表現しがたい表情をする。
歌姫?そんな存在私は初めて聞きましたが、隣にいる2人も知らないと言った顔をしていた。
結局私たちは船を借りるどころかポルトガ王も不在と言う事で出直すことになりました。
そして私たちが再び灯台近くの空き家で夜の団らんを過ごしている時でした。
バンッ!と勢いよく扉が開き、1人の女性が飛び込んで来ました。
深くかぶったフードで顔ははっきりとは分かりませんでしたが、その出で立ちや仕草から女性だと分かる。
フードの隙間から覗く白銀の髪、そしてほんのりと赤みを帯びた澄んだ瞳。そして瞳の輝き具合から彼女がまだマコトとそう変わらない若い年齢だと言う事が読み取れます。
しかし私が何より気になったのは…
「あれ?他の人が住んでいたのですね。突然申しわけありません。少しの間だけ匿っていただけませんか?」
彼女は透き通った声で言うと、嫌な予感は的中と言った具合にマコトとエスタークが彼女に駆け寄り即答で了承してしまう。
私の意見は聞かないのかといいたい。
それにしても匿うって…一体何に追われているのでしょうか。
私の疑問をエスタークも思っていたらしく、扉を開けて外の様子を見ようとするが、そんなエスタークの袖を彼女はちょこんとと掴み、蚊の鳴くような小さな声で言う。
「あの…何をしようとしてるんですか?」
「いや、外の様子を見ようかと。」
「今開けたら私が見つかっちゃうじゃないですか。」
「「そん時はオレがおまえを逃す手助けくらいはしてやるさ。」」
そこにマコトが加わり2人は口を揃えて言い放つ。そして互いの視線を交差させて火花を散らす。
確かに女の私からみても彼女は男ウケしそうにみえますよ…ですが、
マコトはこんなにも側に私(大精霊)という正に女神そのものがいると言うのに何だその反応は。それにエスタークおまえもだ。おまえはかりにも魔族だろうが。人の負の感情を餌にするようなウジ虫が一丁前に女の前で格好つけてんじゃないわよ。これは気のせいではありません。明らかに不愉快です。
それに彼女だって…
そんな事を考えていると、家の外がガヤガヤと明らかに騒がしくなる。どうやら彼女が追われているのは本当のようです。
それを察知し見つかると考えた彼女は、数日間住んでいた私たちさえも知らなかった隠し扉から裏手に出て、『ルーラ』を使って何処かへと飛び去って行きました。
「いやぁ〜良いもん(美女)を見たなぁ。」
「ああ、あれは間違いなく美女だな。オレのセンサーもそう言っている。」
マコトとエスタークがくだらない話をしている。
「ちょっとマコちゃんにエスターク。美女ならここにも居るんですけど?」
そう言うと2人は私に視線を移し
「「美女チェーンジ!!」」
声をハモらせやがりました。
「上等じゃない!あんた等2人とも表に出なさいよ。天罰を与えてやるわ。」
「わぁちょっとルゥ、指をパキパキしながら近寄るなって。」
「そ、そうだぞ。キサマ、勇者(マコト)の言う通りだ。それに男にだって選ぶ権利があるのだぞ。」
「言いたいことはそれだけかしら。」
悲鳴をあげながら逃げる2人に向かって唱えた『バギマ』。真空の竜巻は、ちょうど扉を開き入ってきた老人を巻き上げた。
「あ、ポルトガ王様!!」
周りにいた兵士姿の男や、数え切れないほどの町人(男ども)
の阿鼻叫喚を聞きいて青ざめた私たちの視線には目を回しながら竜巻でぐるぐる回るポルトガ王の姿が目に入るのでした。
続く
今回は区切るところが難しくて…中途半端になってしまいました(ーー;)