ああ勇者よ、死んでしまうとは何事ですか。   作:シズりん

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真夜中の女子会

バハラタ村を震撼させていた盗賊団の正体は、なんとロマリア国で討伐したあの覆面パンツ(カンダタ)でした。

相変わらずの装備センスに笑いを堪えるのに必死です。

 

妙に機嫌良さげな声ではあるけれど。覆面パンツは腰が引け気味に言う。

 

「お、おい新入り…おまえよくこの女を拐ってこれたな。この女はな…敵を殺る為に味方ごと皆殺しにするような女だぞ。」

「ッ!そ、そうとは知らず…。ただ真夜中に酔っ払って街中で腹出してイビキかいて寝ていたものでつい…。」

「あ?街中で寝てただぁ?」

何故でしょうか…。前にいるコソ泥より後ろの誘拐された二人の女性から冷ややかな視線を感じるんですけど…。

覆面の上からでも分かる冷ややかな目で私を見下ろした覆面パンツは

「おまえ…女子力低いな…。」

ボソッと言いやがりました。

何ですって…コイツ等あとで覚えていなさいよ。泣いて懺悔したって絶対に赦してやりませんからね。私は密かに決意した。

 

しかしそんな自身を討伐した私よりも覆面パンツは後ろの女性二人に視線を移すと

「それにしても今回はかなりの上玉な女を拐えたな。これは相当な金になりそうだぜ。黒髪の清楚系な女は、正統派美少女として値がつきそうだし、白銀の女は…何だこの女は、見ているだけで心が洗われそうだぜ。もしかしたら精霊神ルビスの転生かなんかじゃねーのか?売るのが惜しくなる気分だぜ。オレは神とかを信じちゃいねえが、この女を見ていると不思議と信じてしまいそうだ。」

 

などと、本人を前に言ってやがります。

 

「何が神を信じるよ!覆面パンツ(へんたい)なんてこっちから願い下げよ!早くあっち行って!早く行って!!へっ!!」

「グッ、何て嫌な女なんだ。まぁ良いおまえは人質だ。おまえがいれば勇者の方から来るな。絶好のリベンジの機会じゃねーか。この世界、舐められちゃ終いだからなガッハッハ。」

変態達は高笑いをしながら別の部屋へと去って行きました。

 

それにしても…確かにフローラさんは清楚系、男性受けの良さそうな女性だ。きっとマコトや…もしかするとボッチ(エスターク)までもが好むタイプかもしれない。私も認めましょう。

しかしです。

しかし本人を他所にもう一人の方の女性をあろうことか私(ルビス)の生まれ変わりとまで言われてしまっては私の立場がない。

ですが覆面パンツがそう言うのも仕方がないかもしれない。ポルトガではフードを深くかぶっていたから目元しかわかりませんでしたが、今回は違う。彼女の素顔は神の器と言われるだけあるエルフの容姿の中でも群を抜いているように思う。しかしなんだろう。以前に会った時にも見えたのだけど、彼女の魂が二重、三重にブレて見える。二重人格?二重存在?とにかく不思議な女性です。しかも片方はエルフの気配ですが、もう一つの…懐かしいと言うか何というか、よく思い出せませんがどこかで会ったことあるような気配をもっていました。

それにしても何か忘れている気がする。ハーフエルフと言うキーワードに何かあった気がするのですが何だったろう。まぁ…きっと大したことない話しだろう。そもそも女神たる私がいちいち人間やエルフの事などわかるはずもない。きっと気のせいだ。

気を取り直して彼女に質問を投げようとすると、一緒に捕まっているフローラさんが話しかけてきました。

 

「先程盗賊の方が言ってましたがルビアさんがいれば勇者様が来るとはどう言う事なんですか?」

「あぁあれ?私たちはね、貴女のお父様ルドマンさんから貴女の救出を頼まれたのよ。そして私は勇者のパーティってわけ。」

「お父様から?」

「大事な娘が拐われたって気が気じゃないみたいで、お店も休業中なのよ。香辛料を求めてバハラタに来たのに買えないとなると私たちも困るの。だから貴女を救おうって話しになったの。それと何て言ったかしら、若い男の子も心配していたわよ?」

「もしかしてアンディですか?」

「そうそうアンディよ。」

「はぁ…」

フローラさんの表情が少し曇る

「あら?アンディとは恋人同士なのではないの?」

「違います。」

 

彼女は即答した。

 

「アンディとそう言う関係にならないようにずっと修道院に入っていたんですけど、数年ぶりに家に帰ってもまだいるし…このままでは本当にアンディと結婚なんてのも実現しちゃいそうだったから、私、結婚に条件を付けようと思ったんです。」

「「条件?」」

私とエルフの女性は声を揃えた。

見れば彼女もフローラさんの話しに聞き入っている。エルフと言えど女性は恋バナが好きなようです。

 

「私ね、お父様に珍しい指輪を二つ買ってもらったんですけど、それを何処かに隠して二つの指輪を揃えた人と結婚しようと思うんです。」

「何でそんな事をするんですか?」

エルフの女性の疑問は至極当然だと思う。嫌なら嫌と言えば良いだけなのだから、何もそんな回りくどいことする必要が無いと思う。でもそんな私の考えをあざ笑うかのように

 

「ダンジョン深くに隠しておけば私より弱いアンディには無理だから。だってアンディっていつもケガしては私に看病させるんだもの。まぁ私もバハラタ近くのダンジョンに指輪を隠している最中に盗賊さんに拐われたのであまり人のことは言えないですけど。」

 

あの死体と見間違うほどの大ケガがいつも?そう言えば確かにフローラさんのお姉さんのデボラさんも手馴れたようにケガしたアンディさんを扱っていたように見えました。彼女の言う通りしょっちゅうケガしているのかもしれませんね。

「だったらちゃんとフってあげたら良いじゃない。その方がアンディさんの為にもなるし。」

となりのエルフも頷いている。

「ダメよそんな事したら。私バハラタでは優しく美しいお嬢様で通っているんですもの。悪い噂が立っちゃったら困るもの。それに最悪良い殿方に出会えなかった時の保険もほしいし…。」

 

「「……。」」

 

フローラさんのまさかの発言に私たちは絶句しました。見た目とは裏腹に黒いですこの娘。

 

「そ、そう…。じゃあ歌姫(ディーヴァ)ちゃん、貴女は何でこんなところに?」

「ディ、歌姫ちゃん?」

「知らないの?世間では貴女はそう呼ばれているそうよ?」

「そ、そうなんですか?まぁいいですけど。私は…生き別れた弟を探して旅しているんです。」

「へぇ〜弟さんを。」

「はい。あの子泣き虫だし弱虫だから…きっと私がいなくて寂しくて悲しくて泣いてると思うんです。世界中であの子が好きだった歌を歌っていれば、いつか再会出来ると思っているんです。」

「泣かせる話しですねディーヴァさん。早く見つかると良いね。」

フローラさんも薄っすらと瞳に涙を溜めている。

「ありがとうございますフローラさん。こちらへはバハラタ近辺で弟を探していたら、彼らが居場所を知っているから付いて来いと言われまして……。」

「まさかそれを鵜呑みにして付いてきたわけじゃないわよね?」

「あの…そのまさかです。」

歌姫は顔を真っ赤にして俯いている。バカと言うか世間知らずと言うか…普通の感性と違うあたりはやっぱりエルフだからでしょう。女王(ポワンちゃん)からして変だし、きっと種族的にオツムが足りないのでしょう。

 

「でもエルフの貴女なら強力な呪文で盗賊団なんて簡単に倒せるんじゃない?少なくとも逃げる事くらいはワケないでしょうに。」

「私、才能がないみたいで…呪文、下手すぎてダメなんです。」

「はぁ!?そんな訳無いでしょ?エルフは魔力に特化した種族なんだから。」

私が答えると彼女は悲しそうな表情で俯いてしまう。どうも大精霊である私が彼女を傷つけてしまったようです。居たたまれなくなった私は、お詫びも兼ねて彼女を大精霊の目でみた。

「あ、あれ?変ね。」

「?」

 

通常大精霊の目で見れば相手のレベルから職業と言ったステータスが見えるのだけれど、歌姫からは何も見えない。私疲れているのかしら。目を擦って見直してみるがやはり何も見えない。となりのフローラさんは普通に見えるのにです。

 

「……まぁそんな事もあるわよね。」

私は一人呟いた。

 

「ところで勇者様、遅いですね。」

話がひと段落したところでフローラさんが言う。確かにもうそろそろ来てもいい頃だろうに。ちょっと遅すぎやしないだろうか。マコトも今頃私がいなくて大慌てしているに違いありません。あまり心配かけてもかわいそうですし、帰ったらたまには優しくあげよう。

そんな考え事をしていると歌姫ちゃんが小さな小さな声で

 

「ルビアさんがいない事に気付いてなかったりして。」

 

なんて事を呟いた。

「ま、まさか。今頃はきっと半ベソをかきながら必死に私を探しているわよ。あの子(勇者)は私がいないと何にもできないもの。」

それを聞くと今度はフローラさんが尋ねてくる。

「もしかしてルビアさんと勇者様はお付き合いされているのですか?」

「いやいやいや、彼が一方的に私を好きなだけよ。まぁ今後考えを改めて私に優しくして、崇めて甘やかしてくれるならちょっとは考えなくも無いけど。」

私が笑いながら応えると、二人の女性は異口同音、口を揃えて「良かった」と呟いた。

何だろう、最近よくわからない感情になります。

 

 

※※※※※

 

 

……どうしよう、マコトが来ないんですけど。

何だかアリアハンで勇者の登城を待っていたときを思い出しました。

待てど暮らせどいつまでたっても来ないあの時の記憶…。ちょっと泣きそうです。

二人もそんな私を気遣ってか、そのことに触れなくなっています。

 

その時でした。

隣で激しい戦闘が始まったようです。耳を澄ませば

 

『ウオラー!!ウチの駄女神返せー!!』

 

マコトの怒号と盗賊たちの悲鳴が聞こえる。駄女神と言う呼び方は少しだけイラッとするけど、勇者が私を助けに来てくれたってだけで胸が熱くなります。

目頭も熱が帯びる。覆面パンツを倒してマコトがこの牢屋に来たら抱きしめてあげよう。もう少しだけ彼に優しく接するのもいいかもしれない。

 

程なくして彼はこの牢のある部屋に入ってきた。今のマコトなら覆面パンツなど取るに足らない相手なのはレベル差で判る。今のマコトはロマリアの頃に比べて十分に強いのです。

 

「あなたがフローラさんですね?ルドマンさんの頼みであなたを助けに来ました。もう安心ですよ。そして……ルゥ、待たせたな。」

 

本当ですよ。ちょっとだけ来ないかもって思っちゃいましたよ私。両手を広げて駆け寄ってくるマコトを迎え入れる。そんな私の脇をヒョイと交わした勇者は白銀の美女、歌姫を抱きしめ

 

「ルビア、もう離さないからな。」

「あ、あの…私ルビアさんじゃ…。」

 

今にも頬ずりをしようとしている。

歌姫もさすがにおどろきとまどっている!

 

「ゴッドブロー!!!!」

 

大精霊の愛と哀しみを乗せた拳が勇者の顔面にめり込む。

 

そして生と死の境界(ルビスのお仕置き部屋)に来た勇者に、私はお決まりの言葉を投げかけるのでした。

 

「あぁ勇者よ、死んでしまうとは何ごとですか」

と。

 

 

 

 

続く

 




歌姫のイメージボイスは能登麻美子さんです(笑)
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