ああ勇者よ、死んでしまうとは何事ですか。   作:シズりん

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ジパング

「お父さん土左衛門がいるよ。」

「おお、三人ともまだ若いのに不憫な。」

 

枝のようなものでツンツンされる感覚で私は目を覚ました。ムクリと起き上がる私に驚き腰を抜かす親子をよそに辺りを見回すと、どうやら私たちは何処かの国の漁村に漂着したようです。

大精霊たる私への細やかな供物を貰っただけだと言うのに、まさか一個師団が総出で呪文をぶっ放してくるとは……ポルトガの王様も器が小さいですね。

 

私は近くで倒れている勇者達に近寄ると、水を大量に飲み込んだお腹を押して『ザオラル』を唱えた。するとピューっと口から海水を吹き出し二人は生き返る。

 

「…ここはどこなんだ?」

目覚めた勇者は開口一番、お腹をさすりながら言う。何度も生き返っている勇者は、なるほど、さすがに慣れた様子です。慌てる事もなく冷静に状況把握をしています。それでこそ私が懸命に導いてきただけはありますね。

もう一人、ボッチ(エスターク)はと言えば、私の蘇生魔法を無効化しやがります。生意気にもこのクラスの魔物となると、呪文無効化の能力を有している者が多い。

これはチャンス……コホン!ここで生き返えりを受けられないのも人間の言葉を借りれば運命なのでしょう。立派なお墓に埋葬してあげよう。

私は彼の亡骸にスコップで砂浜の砂をかけようとすると…

 

「zzz…。」

地鳴りのような豪快な重低音が響く。つまりこのボッチは私の有り難い『ザオラル』を無効化したのではなく、そもそも死んでいるわけでもなくただ寝ているだけだと言うことだ。そう考えると腹が立ってきました。私は装備していたモーニングスターを振り上げると勇者が羽交い締めで止めてきました。

 

「で、結局ここはどこなんだ?」

勇者の問いに、腰を抜かしていた原住民の親子が気を取り直したのか答えた。

「ここはジパングです。貴方がたは外国から来なすったガイジンさんかね?」

「ガイジン?なんかよく分からないけど、オレたちはアリアハンから来ました。」

「アリアハン?知らないなぁ…まぁ何にしても船が難破して大変なめにあったみたいですね。この漁村では何もオモテナシはできませんが私どもの家で今日はゆっくりと休んで行くといい。」

 

そう言って親子は私たちを漁村に迎え入れてくれた。

 

 

 

「何にも無い国だな。」

「ちょっとマコちゃんそれは失礼よ?辺境の地だと私の有り難い教えや庇護も届かない場所もあるのよ。だから文明が少し遅れているんじゃない?」

「…キサマも十分失礼だと思うぞ。」

 

私たちのやりとりを見て村人は大きな声で笑う。

「面白いガイジンさん達だな。改めて紹介しよう。この国はジパングと言って、今はヒミコ様がご統治なさっている。」

「ヒミコ様?」

マコトが聞き返す。

「王様みたいなもんじゃないの?」

それに私が小声で返す。

 

「ヒミコ様は混乱していたジパングを再び纏め上げた凄い女王様なんだ。」

村人はまるで我が事のように自慢気に話し始めた。

 

村人の話によれば、かつてこのジパングには数多の頭をもつ蛇の凶悪な魔物がいたんだそうです。蛇は美しい娘を攫っては食べてしまい、ジパングは混沌としていたんだそうです。

そんなジパングに何処からか一人の怪し気な男が現れたそうです。男はそのいでたちこそちょっとアレですが、それはもうは凄まじい強さで、あっという間に凶悪な蛇の魔物を退治してしまったそうです。

ジパングの人々は男を戦神、荒ぶる神と崇め奉り、このジパングは平和だったそうだ。

 

「その凄い神さまが居なくなったーーーって言うわけか?」

「はい。普段は神殿の奥で寝ているか武器を振り回し鍛錬に励むかしておられたのですが、いつの頃からか、そのお姿をお見せにならなくなりまして……。しかも荒ぶる神さまが居なくなった途端にかつての凶悪な蛇の魔物が復活し、再びジパングを混乱させました。そんなジパングを再び纏め上げたのが…」

「そのヒミコ様ってワケか。」

「はい。」

 

村人の話にいつになくシリアスな顔で受け応える勇者。何でしょう、変なものでも食べたのかしら。とても似合いません。

それにしても私を差し置いて神さま?

 

「この国には偉大な大精霊ルビスの加護はないの?ちゃんと教会で毎日崇めれば見落とすことなんて…」

「大精霊ルビス?あぁ、あの頭のおかしい連中が崇めてた女神か。」

「は?頭のおかしい連中ってどう言う意味よ。」

「このジパングにもたびたび船に乗って外国から宣教使がやって来て教えを広めようとするんだよ。その連中っていうのがまた酷くてな、『あなたの為なんですー!!』とか言って妙な石鹸を買わせようとしたり、『今ならポイントが2倍!』とか訳の分からない事を言っては精霊ルビス信仰に入信させようとする…それはもう頭のおかしな連中でした。」

「……。」

「おいルゥおまえ…」

「い、いやいやいや、私じゃないから。」

マコトが私を白い目で見ている。はっきり言ってトバッチリです。

 

「まぁ要するにこの国は現在では平和ってことだろう?ならオレたちは船に乗って旅を続ければ良いんじゃないか?まぁその荒ぶる神さまってのがまだいるのなら手合わせ願いたいものだが。」

「ハイハイ、戦闘狂乙ね。アンタの頭は脳まで筋肉なの?まぁ次の地へ行くってのは私も賛成だけど。」

「あー…言いにくいんだけど、アンタらが乗っていたあの船な、損傷が激しくて今のままではすぐに沈むぞ?幸いこの村は漁村だし、ジパングは職人が多い国だから修理できる者はいるんだが…金と時間がかかるなぁ。」

「マジっすか。」

私たちはそれを聞いてテンションを下げた。

そんな私たちを見て村人は

「まぁ何にせよ、暫くこの国に滞在することになるワケだから神殿に行ってヒミコ様に挨拶をしておいた方がいい。」

 

そう言って何がそんなに可笑しいのか高笑いをしていた。

 

要するに私たちの船は修理が必要。

そしてそれにはお金と時間がかかる。だから神殿に行ってこのジパングの女王に挨拶に行けと言うわけです。

 

「…おいルゥ、おまえ…金あるか?」

ボソボソと小声で話しかけてくるマコトに私も小声で答える。

「無いわね。全部飲み食いしちゃったもの。」

「つかえねー…」

そんな事言う勇者の頭を無言でモーニングスターのえのぶぶんで叩いてやりました。

そして私とマコトは2人でボッチ(エスターク)をみると、共に深いため息を吐いた。

「き、キサマら、それは幾ら何でも酷すぎないか!?悪魔も時には泣くぞ?」

「まぁ…金は後から何とかなるだろ。とりあえず神殿に行ってみっか。」

「マコちゃん…アンタ…踏み倒す気ね。」

「…。」

マコトは何も応えない。

 

結局ギャーギャー喚くボッチを他所に、お金もないし、特にすることもないので暇つぶしがてらに神殿に私たちは向かう事になりました。

 

 

 

 

つづく




すみません。1月は忙しくて…ハイ、言い訳です。
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