「あ〜れ〜。誰か助けてたもれ〜。これでは美しい妾はヤマタノオロチに食べられてしまう〜。」
女の叫び声が何もない田舎のジパングに木霊する。
「…おいルゥ、本当にアレで大丈夫なんだろうなぁ。」
「あったりまえじゃない!フフン、どうよ私のカンペキすぎる作戦は。これならヤマタノオロチが捕獲されるのも時間の問題だわ。」
あきらかに不審な目で私を見る勇者。なんて不敬なのでしょう。
私たちはジパング中を恐怖に陥れているヤマタノオロチの討伐を女王ヒミコに頼まれたのですが、女神たる私の神々しさに恐れてかなかなか姿を現しません。
そこで私たちは月に一度生贄の美女を襲いに来ると言われている手がかりをもとに囮(えさ)を使っておびき出すことにしたのです。
「だからってヒミコ様をおとりにしなくても良かったんじゃねーか?」
「私だってそう思ったわよ。でもあのキラーエイ…侍女じゃ、ヤマタノオロチも逃げ出しちゃうかもじゃない。」
「…別におまえでも良かったんじゃねーか?」
「嫌よ!ヤマタノオロチだなんて、名前からして怖いじゃない。」
「おまえ…最低な女神だな。」
ぼそっと呟いたマコトの言葉を私はしっかりと『冒険の書』にしるしてやりました。
「にしても本当にアレでいけるのか?。言っちゃ悪いけどヒミコ様、セリフは棒読みだし演技もヘタだし、だいたい何で神殿の屋根に釣り竿で垂らしてるんだよ。」
「バカねマコちゃん。田舎なジパングではあそこが一番高いから目立つからに決まっているじゃない。まんまと餌(囮)に喰いついたヤマタノオロチが餌に気を取られているあうちに背後から討伐ってわけよ。これこそカンペキな作戦だわ。名付けてオロチホイホイ作戦ね。どうよマコちゃん、この美しい大精霊である私のカンペキな作戦は。感謝して崇めなさいよ。そして私に晩ごはんのおかずを捧げなさい。」
美しすぎる私の作戦に鼻を鳴らし満足げに私は屋根に吊るされたミコちゃんを眺めるのでした。
少し前にさかのぼる。
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※※※※※※※※
「のお、勇者様たちはいつになったらヤマタノオロチを討伐してくれるのかの。」
ジパングの女王たるミコちゃんがある日私たちの家へやって来るなり聞いてきた。それを聞いたマコちゃんはお茶をすすると一息吐き、
「ヤマダさんがなんだって?ルゥ、おまえまたなんかしたのか?」
と言いやがりました。
「またって何よ!またって。だいいちヤマダさんなんて知らないわよ。私が知らなくてマコちゃんも知らないのならボッチ(エスターク)がやらかしたんじゃないの?」
「俺はボッチじゃなくてソロだと何度も…まぁ良い。俺は魔物よりあの魔界の神を倒した人物が気になるがな。」
「おいエスタークやめろ。変なフラグ立てて余計な敵をふやすなよ。ただでさえヤマダのオロチとかいう怖そうなモンスター倒してとか無茶振りされてんのに。」
どこまでも情け無い勇者の発言ですが、私もわざわざ怖いモンスターに関わりたくないのも事実。
私としては早く本体を救い出してくれさえすれば文句ないのですから。
「ヤマダのオロチではのうてヤマタノオロチじゃ。名前の通り多頭種のドラゴンじゃ。まぁ妾も実際に目にした事は無いのじゃがな。」
「女王様も見たことないんですか?」
勇者の発言に私も頷く。
そもそも人的被害がそこそこ出ている程なのですから、ジパングの街中まで来ている筈です。そうでなければ街から出なければ良いだけなのですから話しが合わない。
聡明な女神たる私がミコちゃんの話しに疑問を覚えましたが勇者(おバカ)の発言で疑問も霧散しました。
「そのヤマダを倒さないで追っ払う作戦じゃダメっすかね。」
「勇者どのそれはどう言う事じゃ?」
「ヒミコ様は基本的にジパングにずっと居るわけじゃないですか。」
「そうじゃな。一応妾は女王じゃからな。おいそれと国を離れる訳にはいかぬな。」
「その女王様が被害が出ているにも関わらず未だその姿を見た事がない。」
「ふむ」
「もしかしたら気の所為で実は被害なんて無いんじゃ。本当はかくれんぼでもしてるとか。」
名推理したと言わんばかりのドヤ顔で胸を張る勇者(アホ)にちょっと悲しくなります。
「おいおいマコト。それだとダークドレアムが倒れた際に魔物が逃げ出したが辻褄合わないじゃないか。それにそんな魔物の一匹や二匹魔界の帝王たる俺が…」
「「よし任せた。」わ。」
私の勇者の言葉がハモる。
「いやぁこれでジパングも安心だな。良かった良かった。」
「そうよねぇ。私たちも苦しんでるジパングの民を救いたかったけど、世界には私たちを待っている人々が沢山いるものね。」
「いやちょっ…」
「だよなぁルゥ。ここはエスタークに任せて先に行こうぜ。ジパングも見捨てられないけど世界中の救済を待っている人たちも待たせられないもんなぁ。」
「でも俺たちはパーティなんだから…」
「さっすが魔界の帝王よねぇ。まさか1人じゃ倒せませんなんて言わないわよねぇ。魔族(うじむし)を待つなんて業腹だけど待ち合わせくらいはしてあげるわ。寛大な私の心に感謝なさい。」
「ふふ、相変わらず楽しいパーティじゃな。まぁヤマタノオロチを倒して貰えぬのじゃったら船の修理代とこれまでの呑み食いの金額を耳を揃えて返してもらうがの。なぁにほんの100万Gじゃ。」
目の笑ってないミコちゃんの笑顔が近付く
「や、ヤマタノオロチっすよね?大丈夫ですよお、大船に乗った気持ちでいてくださいよヒミコ様なぁルゥ?」
「そ、そうよ!美しく聡明な私が居ればヤマタノオロチくらい朝飯前よ。」
「あぁ、俺たちなら余裕だ。まぁオロチの方がびびって出てこないかもしれんがな。」
勇者の乾いた笑いに
満足そうに笑うミコちゃんの姿を見て胸を撫で下ろす。
「まぁ、実際の所倒すべきオロチが出てこない事にはな。」
「マコちゃんそれに関してだけど私に良い案があるの。」
「良い案?お前の作戦なんて不安しかねぇんだけど。」
「私に任せてちょうだい。」
借金は嫌ですし仕方ないのでここは女神の知恵を哀れな仔羊にあたえるのでした。
※※※※
現在にもどる
「こんの…ッバカが!!!」
ガツン!
「い、痛い!ぶたないでよ。」
「ぬぁにがオロチホイホイだ!!あんな!棒読み丸出しな演技で!一番高い所に括り付けた女王様を狙うわきゃねーだろうがぁ!!」
「怒らないでよ!仕方ないじゃない。もうかれこれ数ヶ月現れないんだから。怒らないで!」
その時でした。
「ヒミコ様!一大事です。」
血相を変えたメガネをしたジパングの民が女王の前に跪く。
「なんじゃチャモロ騒々しい。そんな血相を変えてどうしたというのじゃ?」
「や、やよいが…私の大切なやよいが昨夜から見当たらないんです。」
「何じゃと?やよいが?…そういえば確かに今日は一度も見ていないのう…」
チャモロと呼ばれたビンぞこ眼鏡の民とミコちゃんが慌てている。
「やよいはジパング随一の美女ですから、まさかヤマタノオロチの生贄になったんじゃ…」
「慌てるで無いチャモロ。直ぐに妾たちも動き出すでな。」
「ありがとうございます。ヒミコ様。やよいを…やよいを助けてください!」
ミコちゃんに懇願する姿が痛々しい。でも大切な国民の為に直ぐに行動に移そうとするその姿勢は人のことは言え素晴らしく思います。
少なくともジパング随一の美女と言う言葉に反応してやる気を見せる勇者(ポンコツ)とは訳が違いますね。
「なぁルゥ早く助けに行こうぜ。ジパング随一の美女だぜ?ジパングの…いや、世界の損失だ。」
本気で言っているのが分かるから余計に腹が立ちますね。
そもそもそのヤマタノオロチが見つからないから滞在していると言うのに、美女と言う言葉で態度を豹変させているわけだ。
私はどうぐの袋から『こんぼう』で殴り飛ばそうとしたが意外にもそれを止めたのはエスターク(うじむし)でした。
「おい、大精霊で女神を自称する痛い女よ。ここは許してやれよ。男と言うのはほんの…ぺぎゃっ!」
振りかぶっていたこんぼうで殴り飛ばしました。
「エスターク(うじむし)のクセに私に意見するんじゃないわよ。」
気絶したエスタークの頭を踏んで吐き捨てる私に
勇者が怖ーよと言った言葉。ちゃんと聞こえてますからね。
「ルビアどの。今は仲間割れより妾の民が…やよいを救うのが先決じゃ。どうか争いをやめて妾に力を貸してたもれ。」
上目遣いで懇願するミコちゃん。
「そうだぜルゥ、これじゃどっちが女神だか…ひっ!」
私と目が合った勇者から小さく悲鳴が漏れる。失礼な男たちですね。
「助けるも何もヤマタノオロチが何処にいるかも知らないし、その随一の美女とやらも会ったことない私たちがどうやって探すと言うのよ。」
「それなんじゃが、もう一度荒ぶる神の眠る地に赴いて見ぬか?ヤマタノオロチは蛇の化け物じゃと聞く。蛇は巣に帰る本能があるからのぅ、案外神の墳墓か聳え立つ霊峰ブジヤマあたりが怪しいと思うのじゃ。それとソナタらはやよいと会っているぞ?」
「え?あっている?」
勇者とエスターク(ボッチ)がポカンとした表情で首を傾げた。
「やよいはほれ、ソナタらが散々ゴリ子だのキラーエイプなどと呼んでいる妾の侍女じゃ。」
「「何ー!!!」」
ドオオオォン!!!
2人の叫び声と私の笑い声が深夜のジパングに響き渡ると同時に
轟音を響かせ霊峰フジヤマが噴火しました。
大変な状況化ではありますが、2人の絶望した絵文字のような顔が私を楽しませてくれるのでした。
今日はとても満足できそうです。
つづく
携帯かえたら入り方が分からず日をあけたらネタを忘れました。
どうしよ…やめようかしら