今私たち勇者パーティ一行は最大のピンチを迎えています。
筋肉隆々の大きな体に、これまた成人男性くらいの大きな丸太を片手にソイツはニヤニヤしている。
巨大な一つ目で笑う笑顔はハッキリ言っておぞましいものがあります。
これは早々に引き返そう。
思うが早いか行動が先か私はエスターク(ボッチ)がご丁寧に教えてくれた『アトラス』とか言う邪神を背に走り出そうとする。
勇者も寸分違わずに同じ行動をとる辺りはさすがですね。
「アトラスだか何だか知らないがお前なんか怖くない!世界中の人々の為に魔界に帰ってもらう!!」
「そのうちなあぁぁぁぁ…」
前半のかっこいいセリフはどこに行ったのか声だけを残す程の逃げ足で入ってきた扉へ走り出す私たち一行の目の前に黒く禍々しい魔力の吹き溜まりが現れました。見ればもう一体魔物がこちらに来ようとしています。
エスターク(ボッチ)の言葉が正しいならこっちも悪霊の神々の1柱でしょう。
「ちょ、ちょっとマコちゃん、もしかしてこれはかなりヤバいんじゃないかしら。」
「もしかしなくてもヤバいだろこれ!おいエスターク!お前の友達だろ?あいつ等何とか出来ないのか?」
「誰が友達だ誰が。1柱ならまだしも…ほらみろ、3柱めもこちらに来ようとしてやがる。しかし何でハーゴン如きの失敗した儀式で3柱ともが顕現できるんだ?」
「知らないわよ!魔族(害虫)は害虫どうしで何とかしなさいよ。」
「別に知り合いじゃねえよ…それにしてもさすがにヤバいぞこの状況。」
私たちは3柱の悪霊の神々に囲まれて絶望していた時でした。
「おいルゥ、今俺たちの所持金はどのくらいだ?」
「…大丈夫よ。私たちの所持金は1000Gちょっとよ。ダメージはあるけど最低限ですみそうね。」
私たちが見合ってお互いに親指を立てるとエスターク(ボッチ)はため息吐いて白い目でみていますが無視です。
避けられないダメージなら、被害を最低限に抑えるのは当然のダメージコントロールです。何せ全滅したら人間に持ち金半分も奪っていくシステムがある以上心配はとうぜんです。
「さぁ殺すなら殺せ!でも出来るだけ痛くしないでね。」
情け無い懇願をする勇者は正直カッコ悪いですが、痛いのは私も嫌ですから激しく同意します。
3柱の魔神がニヤニヤと笑いながら迫り来る。
向こうの影にはその様子を楽しそうにみているハーゴン(半魚人)がまぁムカつく顔して見てやがります。
いよいよ勇者パーティ一行も全滅かと思われたその時です。
私たちのすぐ後ろから少年のような…それでいて声に力でもあるんじゃないかと言った声がひびく。
「なんだお前たち、久しぶりに会ったと思ったら随分と情け無いことやってるじゃねえか。」
振り向いたそこには1人の少年が立っていました。
大きな木づちを担いだ少年は鋭い目つきに、エルフのように尖った耳、黒髪を後ろで束ね二本角のように跳ね上がった前髪という独特な外見の少年は、赤い瞳をしています。
歳はまだ12〜3歳くらいにしか見えませんが、その佇まいは明らかに普通の少年には見えません。おそらくはエスターク(ボッチ)と同じ類の魔族かなんかなのでしょう。
目の前の3柱に背後の魔族?に更に状況が悪くなったと思いましたが、少年から発せられた言葉は意外なものでした。
「寄ってたかって弱っちい人間なんか虐めて情け無…ん?お前エスタークじゃないか?何やってんだお前、人間なんかとつるんで。」
私たちをみて首を傾げる少年。
「お前シドーか?なんでそんな人間の姿になってんだ?ポルトガの時は本来の姿だったじゃないか。」
「何だ見かけたなら声くらいかけろよ。」
可愛くない笑顔で笑うシドーと呼ばれた少年は応えますが、私たちとしては関わり合いになりたくありません。
ごめん被ります。
何だか言い淀む少年。エスターク(ボッチ)の口振りからすると少年はやはり魔族のようです。
「オレはこいつ等(勇者一行)とパーティ組んで『進化の秘宝』を探す旅をしてるんだが。これがなかなか見つからなくてな。シドーお前何か情報はないか?」
「なんだお前まだ強さを求めてるのか?今でも充分強いのに何でそんなに強さを求めるのか理解できんな。」
「破壊神のお前には分からんさ。それよりお前こそ何してんだ?」
「オレか?オレはあるヒトから逃げているんだ。」
「は?破壊神であるお前が逃げるって…冗談はよせよ。」
「冗談なら良いんだけどな。ともかくオレは姉キに捕まらないように逃げているんだ。お前は知らないだろうが故郷の神がこちらの世界にいるらしいからな。助けを求めに探しているんだ。」
「…神って…アレか?ダークドレアムのことか?」
「あぁそうだ。ダークドレアムを味方に付けてそこにオレが加わればさすがの姉も諦めてくれるだろ。そうだ!エスタークお前も組まないか?お前が仲間になれば最強だ。そこにいる3柱の部下より余程頼りになる。」
そう言って高笑いする少年シドー
彼は分かっていません。このエスターク(ボッチ)が魔界(肥だめ)でどれほど有名かは知りませんが、頼りになると言われたその男はまさに今私たちとともに逃げ出すところだったんですけどね。
「あー…残念だけどなシドー。ダークドレアムは死んだぜ?」
「は?バカ言え、あのダークドレアムだぞ?オレとお前が組んだって倒せるかどうかのあの荒ぶる神だぞ?死ぬわけないだろ。」
少年シドーは笑いながら言いますがエスターク(ボッチ)の顔を見て慌てる
「そ、そんな訳ないだろ、あのダークドレアムだぞ?」
「お前の言いたい事は分かるが事実だ。オレたち一行はヤツの墓を見たからな。」
ボッチのくせに私たちがまるで仲間のような言い振りに虫唾が走ります。
私たちがパーティに仕方ないから入れたのであって、決してあなたの仲間に頼んだ訳じゃありません。
しかし何だか流れ的に私たちにとって悪い流れではなさそうに見えます。
「なぁルゥ、これはもしかして見逃してもらえそうな雰囲気じゃないか?」
勇者もそんな空気を感じたようです。
「そうね、何かいい感じじゃない。ボッチがあの破壊神と話している内に『リレミト』か何かで逃げると良いと思うの。」
「エスタークはどうすんだよ」
「彼は…私たちの魔王討伐の礎として立派な最期を遂げたと『冒険の書』に記録しておくわ」
「…お前等最低だな。」
「おいマコト、そこのポンコツはまだしもお前までそりゃないぜ。オレたちは仲間じゃねえか。」
魔物2人にそんな目で見られるとは不敬ですね。
「まぁポンコツはさておきこいつ等どうにかならないか?」
「この3柱も神々とは言われてるけどお前ならたいした相手じゃないだろ?」
「こっちにも事情があってな。」
そう言ってきょどるエスターク(ボッチ)はハッキリ言って気持ち悪い。
正直ゴミ虫の心情なんて知りたくもありません。ですが少年シドーのおかげで全滅は避けられそうですから今は静かにしておきましょう。
となりの勇者(マコト)は既に気を抜いた顔をしています。どうやら話の流れ的に助かりそうです。
しかし空気の読めない者はどこにでもいるものです。
ずっとポカンと口を開けてマヌケな顔で放心していたハーゴン(半魚人)は気を取り戻したかのように話しかけてきます。
「破壊神シドー様!あなた様の顕現をずっと待っておりました。この『ちきゅうのへそ』に冒険者を1人で向かわせては死なせて、多くの生贄をささげたこのハーゴンの願いを受け入れ賜え。」
「何勝手なこと言ってんだ?ハーゴンと言ったか?お前の言う生贄なんか何の役にも立たないぜ?こいつ等3柱だってオレがこの地に来るのを察したから出迎えに来ただけだ。お前のようなザコな1魔族に用はない。さっさと立ち去るがいい。」
「そんな…破壊神よそれはあんまりじゃ…」
「立ち去れと言ったぞオレは」
少年シドーの赤い目が怪しい光を灯したかと思った刹那、ハーゴン(半魚人)のすぐ後ろにいたアトラスはその巨大な棍棒をぶんまわし半魚人をぶっ叩いたのです。
棍棒(バット)の芯に当たった半魚人は天井を突き破り、遥か北の方へと飛んで行きました。
勇者一行?はハーゴンを倒した。
まぁ結果良しです。それにしても私たちも棍棒の餌食にならないで良かったと心底思いました。
「さて、邪魔なハエは片付けたわけだがダークドレアムが死んだとなるとどうするか…。」
「お前もオレ達と来るか?」
「!!ちょっと何勝手なことをモゴモゴ…」
大反対しようとした私の口を手で塞ぐ勇者はそっと耳元で囁いた。
「ちょっとマコちゃん何すんのよ?まさかとは思うけどあの破壊神たちを仲間になんかしないわよね?」
「仕方ないだろ。エスタークを抜いてもあの4体と戦うとか無理だろ。」
「それは分かってるけど私は嫌よ!あんな魔族(ゴミ虫)と仲間なんて真っ平ごめんよ」
「じゃあお前戦うんだな。あの4柱の悪霊の神々と。オレは戦わないからな。お前1人でやれよ。」
「私1人じゃ無理よ。ねぇマコちゃんお願いよ!一緒に戦って死にましょうよぉ」
「嫌だよ!第一死ぬの前提じゃねーか!」
「全く…エスタークも変なのとパーティを組んでいるんだな。安心しろ、別にお前達を破壊する気なんてオレにはないから。ただ…あのダークドレアムがいないとなると…どうやって姉キから逃れるか。」
「破壊神であるシドーの姉か…そうぞうできんな。」
首を傾げるエスタークと同時に私もその姿を想像します。
ポルトガであったあの姿が正体なら、その姉も…身震いします。
「まぁエスタークの言う通りか。取り敢えずの目的が頓挫しちまったからな。次の手立てが見つかるまでお前等について行くとするか。」
「ちょっと待ちなさいよ!少年の姿のシドー(ゴミ2号)ならまだしも、後ろの3柱は無理よ!街にも入れないじゃない!!」
「あー…確かに人化のできるオレはまだしもお前たちは無理か…」
「そうよ!だから早くどっか行って!早く行って!!」
私がそう破壊神たちに現実を諭すと、なんでしょうか歯ぎしりして恨めしそうに私たちを見る4柱の悪魔っ子
なんでしょうか…少しだけスッキリします。
「さっきからこの女ムカつくな。エスターク、お前の女か?」
「ふっざけんじゃないわよ!!上等よ、破壊神だかなんだか知らないけど、そんな木づちを担いだ子供なんか怖く無いわ。女神の悪魔特効の力見せてあげるわ。」
指をポキポキならして臨戦体制に入る私をみたシドー(ゴミ2号)は笑いながら臨戦体制を解く。
「まぁ待てポンコツ。何もタダで仲間に入ろうとは思っていない。これでどうだ?」
そう言って懐から10万Gを取り出し私たちに手渡した。
「ほら何やってんのよ。早くこんな所(ちきゅうのへそ)なんて出てパーティするわよ!新しい戦力をカニパーティで祝いましょ」
「ルゥ…お前あっさり買収されんなよ…」
シドーが仲間になった
「さて、話もついたしお前等も好きにしてていいぞ?」
そう言って3柱の部下に暇を出す。
まぁあの見た目じゃ仕方ないでしょう。街は愚か平野を歩いていたって目立ちそうですから。
彼らは各々顔を見合わせる
ベリアルとパズズはリレミトで何処かへ去っていき、アトラスは壁に埋まり顔だけ出している。
そして「帰れ」と、バカの一つ覚えのように繰り返す。
「何はともあれ一件落着だな。改めて宜しくなシドー。オレは勇者マコトだ」
「あぁ、宜しく頼む。そうだこれも拾ったんだが必要か?お近付きのしるしにお前にやる。」
勇者一行は『ブルーオーブ』を手に入れた。
こうして私たちは探していた『賢者』ではないですが貴重な戦力を手に入れるのでした。それにしても勇者のパーティに地獄の帝王に邪神…どうなんでしょうか。
戦力アップに気を良くしたのかなは歌まじりに隣りを歩く勇者に一抹の不安を私は覚えるのでした。
「やっと見つけた…」
しかし何が起こるか分からないのが人の世
私たちが生贄の祭壇の部屋のドアを開けると目の前に1人の少女が笑顔で立っていた。
白銀の長い髪を揺らす。陶器の如く滑らかな白い肌は汚れの一つもない。ほんのりと赤みを帯びた澄んだ瞳。
あぁ私は、私たちはこの女性を知っている。
それぞれが同時に言葉を発する。
「「歌姫(ディーバ)ちゃん!!」」
「ゆるふわ!」
「ゲッ!姉キ!!!」
何かあってはいけないワードが混ざっているようですが、それが気にならないようなまさかの人物が目の前にいた。
それはポルトガやバハラタであった少女。
歌姫が相変わらずのゆるふわな微笑みを浮かべて立っていたのでした。
続く
最近またリアルが忙しい…
ってか初めてドラクエ3をやってみましたが恥ずかしくなるくらい私のが適当すぎると気付いてしまいました。
どこまで続くか分かりませんが、これからもお付き合いいただけますと嬉しいです♡