「探したのよシドー」
青ざめたと言うか絶望の表情を浮かべる破壊神とは対照的に薄っすら涙を浮かべた歌姫(ゆるふわ)は安堵の表情がはっきり見て取れます。
それもそうでしょう。
いつぞやの女子会で生き別れの弟を探して世界中を旅していると言っていた。1人で寂しくて泣いてないか心配だと心を痛めていた彼女の姿を私は覚えていますから。
まさかその相手が破壊神だとは思いもよりませんでしたが。
「シドー。お姉ちゃんが一緒だからもう寂しくないからね?これからはいつも一緒にいるからね。」
大精霊たる私も眩しさに目が眩むような笑顔のゆるふわは両手を広げながら私たちの方へ、正確には破壊神の方へと歩いてくる。
一方で先程まで偉そうにしていた破壊神は後退っている。
「な、何で姉キがこんなとこに?」
「もちろん貴方(シドー)を探していたからじゃない。」
「そうじゃなくて、普通こんな所に来ないだろ!わざわざどうしてこんなダンジョンの最奥まで来たんだよ。」
「あぁそれね。お姉ちゃんね、シドーを探して世界中を旅していたって言ったでしょう〜。家族で色んなところに行ったからその時の家を使ったりしてたけど、全部の国にあるわけじゃないじゃない〜?宿屋にお泊りするにもお金がかかるし、寂しさを紛らわすのに歌っていたら何故か歌姫(ディーバ)なんて呼ばれちゃってたのね〜」
ずっと探していた弟が見つかった安堵からかずっと笑顔のゆるふわは、間延びした話し方でふわふわと話しています。それを聞いていたエスターク(ボッチ)が誰でも気付くようなごく当たり前のことをドヤ顔でのたまいます。
「確かにこんな絶世の美女が野宿なんて危険だもんな。それなりにセキュリティばっちりの宿屋が必要だよな。」
「てめえエスターク!オレの言おうとしたセリフを先に言いやがって!!」
「ふん!馬鹿め、マコトよりオレの方が彼女を心配しているからな。」
どうでも良いことで言い争うエスターク(ボッチ)と勇者(バカ)は取り敢えず後でお仕置きするとして、ゆるふわは頬を染めている。
なかなかあざといわね。
「絶世の美女だなんて…ありがとうございます。」
「姉キ、話しが途中だぜ。それとダンジョンがどう繋がるんだ?」
少しだけイラつきを見せる破壊神
「そうそう、そんな調子で世界を旅していたらね、いつの間にか歌を街で歌って欲しいと依頼が来るようになってね〜、その中に今回のランシールがあったの。」
「あぁそれで?」
「ハーゴンさんが熱烈にアピールしてて〜『必ず破壊神シドーを呼び出して見せますのでどうかランシールに来てください』って…」
「あのヤロウ!!結局オレじゃなくて姉キが目的だったのか!何が世界の再生の為に力を貸せだ。結局ヤツが姉キに会いたいだけじゃないか!オレを餌にしやがったな!!アトラスに任せてブッ飛ばすだけじゃなくオレが殺るんだった。今度見かけたら絶対に破壊してやる!」
破壊神(ゴミ虫2号)はそれはそれはお怒りでした。
半魚人(ハーゴン)がこの先出会うかどうかは分かりませんが、まぁきっとろくな事にはならないのでしょう。
「くっ…見つかっちまったものは仕方ねー。おいエスタークお前も力を貸せ。オレとお前で力を合わせれば敵わないまでも逃げるくらいは…おい、何でそっちに並んでるんだ?」
「なぜ?愚問だなシドー。ディーバちゃんが困っているなら助けるのは当然じゃないかなぁ?マコト。」
「おうよ!オレは勇者マコトだ。女の子を守るのは当然だぜ!覚悟しろ破壊神シドー!」
先程仲間になったばかりにも関わらず、ゆるふわと仲良くなりたいだけで仮にもパーティ仲間を切り捨てるとは…
ボッチはまだしも勇者がそれでは…頭が痛くなりますね。
「ちょっとマコちゃん、業腹だけど破壊神(ゴミ虫2号)は仮にもパーティ仲間でしょう?今の構図はちょっと問題あると思うんですけど…」
「おいルゥ。大事な事を教えてやる。」
真顔の勇者
「シドーより歌姫ちゃんの方が可愛いブゲッ!!」
しょうもない事を真顔で言うマコトの顔面にモーニングスターの鉄球をめり込ませました。
結局シドーは本性を現し大暴れしました。
激しい炎や4本の腕から繰り出される攻撃と激しく立ち回りを見せた。
普段なら姿を見ただけで逃げ出すマコトも、ゆるふわの前だからか必死に戦っているのが頼もしくもムカつきます。
エスターク(ボッチ)もまた然り、普段は寝てばかりの役立たずがゆるふわの前に立ち破壊神に対峙している。
破壊神からすれば、つい先程仲間になったばかりのパーティが突然襲いかかってくるのだから心中察します。まぁ魔族(ムシ)のことなど知ったことではありませんが。
長引くと『ベホマ』で完全回復する破壊神との永遠に続くかと思った戦闘はゆるふわによって終わりをもたらされた。
破壊神シドーの猛攻に押され始めた私たちパーティは、徐々に壁際まで追い詰められていきました。私の『ベホイミ』でも傷の手当てが追いつかなくなって来たのを見越した破壊神は、自身の勝ちを揺るぎないものにする為、ボッチを集中的に攻撃し始めました。
ボッチが厨二の如く本来の力なら…と言うのも強ち偽りでもないのかもしれません。破壊神が私たち3人にトドメとばかり大きな火球を作り出した。
『メラゾーマ』です。
せっかく大金を破壊神から貰いホクホクなのに、事もあろうかその渡したい破壊神によって半額になってしまうのかと思った瞬間でした。
「だめー!」
悲鳴のような声と赤い光線が、文字通り目にも留まらない速度で破壊神の『メラゾーマ』を貫き破壊し、ダンジョンの壁をも貫いた。
少し遅れて遥か遠方で大きなキノコ雲が上がり、轟音とともに突風が私たちの髪をオールバックにした。
さすがの破壊神もぶち抜いたダンジョンの壁から外が見え、遠くで上がるキノコ雲を見て唖然としている
「ち、ちょっと何したのよゆるふわ!?こんなダンジョンの地下深くで壁を外までぶち抜くなんて危ないじゃないのよ!!」
恥ずかしそうに赤面したゆるふわは、こいこいと手招きしている。
え?何ですって?
とてもか細く小さな声で私の耳元に囁いた言葉
「は?今のは『メラミ』です?」
そう言って再び貫いた壁から見える外を見て絶句する。
聞いた事ないです。ダンジョンの地下3階から外まで一直線にぶち抜いた挙句に遥か遠方でキノコ雲をあげる『メラミ』なんて…
私たちパーティと破壊神は何も言えなくなるのでした。
ランシールからガルナの塔に飛んだ私たち一行
麓の家に私たちはいます。
何かつい最近ここで何かあったように気がしますが…まぁそのうちに思い出すでしょうか。
「そっか…シドーも知らないのね。お父さんの行方は。」
暫くして気を取り直した私たちパーティ
歌姫(ゆるふわ)は、破壊神に姉弟の父親の行方を聞いていました。
しかしとうの破壊神も知らないそうでゆるふわも流石に残念そうな顔をしています。
「ゆるふわ、あなたの父親の行方が分からないままなのは同情するけど、ずっと探してた生き別れた弟を見つかって良かったじゃない。そのうち父親も見つかるわよ。」
「そ、そうですね。はい…ありがとうございます。」
少しだけ寂しさを残した笑顔…このゆるふわは中々にあざといわね。
「改めてオレは勇者マコトです。」
「オレはエスタークです。弟さんとは昔からの馴染みで…」
聞かれてもいないことまで其々がゆるふわの手を握って挨拶している。
なんだかモヤモヤしますね。
「そしてこっちがペット枠のルビアです。」
「誰がペット枠よ!マコトあんたいい加減にしなさいよ…。」
私と勇者のやり取りをみてクスクスと笑う。
なんでしょう…いちいち可愛い仕草ね子。エルフの見た目相まってマコトはおろか、エスターク(ボッチ)までもが目をハートにしています。
つまらなそうな顔しているのは私と破壊神と言う、何でしょう持ってはいけない相手に共感を覚えます。
「皆さんお久しぶりですね。改めまして私の名前はセ…」
「ところで歌姫(ディーバ)ちゃん。お義理父さま探しだけどオレたちと一緒にいきませんか?」
「おおマコトにしてはナイスアイデアだな。そうだぜ歌姫(ディーバ)女の旅は危険だ。オレたちのパーティと一緒に来るといい。」
彼女の話しを食い入るようにパーティへの加入を勧める2人。
白い目で男2人を見る私はふと頭の片隅を過ぎるものがある
「何がお義理父さまよ。あれ…あなた確かハーフエルフよね。確かまえに呪文は苦手とか言ってなかったっけ?」
「あ、はい。覚えていてくださったのですね。そうなんです、私呪文がヘタで直ぐに暴走させちゃうんです。」
「あれは暴走なんてレベルじゃねーけどな…」
破壊神がボソッと呟く。
「ですので主に呪文を使わない職業に就いていますね。ね?シドー」
笑顔で話しをするゆるふわに破壊神は不貞腐れた様にそっぽ向いて無視をする。
「シドー?」
ゆるふわは破壊神の顔を覗き込むと何故か破壊神は背筋を伸ばして
「はい。姉キ…お姉様の言う通りです。」
そう応えた。
あの破壊神が…なかなか面白い関係性ですね姉弟(きょうだい)と言うのも。
ハーフエルフで何か重大なことを思い出しかけていましたがスッカリ頭の中から抜け落ちた。
まぁ大精霊たる私が人の世界の事なんていちいち覚えていません。
きっと気のせいでしょう。
「まぁそうね。ボッチの意見は置いておいてもマコちゃんの言うことは最もよ?モンスター蔓延るこの世界を女の子の一人旅は危険よ。ただでさえエルフと言う目立つ容姿なんだから。」
「…危険なのは世界の方だがな…」
ボソッと小さな声で破壊神が呟きますがゆるふわは破壊神の足を踏んで黙らせたのを私は見逃しません。
「でも私は『遊び人』ですからパーティに入れていただいても役にはたたないですよ?」
「大丈夫です!歌姫のことはオレが…オレたちがしっかり守りますから大船に乗った気でいてください。なぁマコト」
「そうだぜ!オレたちが歌姫ちゃん、オレたちがバッチリ『におうだち』して守るさ。」
勇者が勇者っぽい事言っていますが何か胸のあたりが先程からモヤつく。
しかしゆるふわが『遊び人』?
エルフなのに?
どう言った経緯でそんな職業を選んだのでしょうか。
呪文を暴発させるから?
さっきから私の頭の中で警鐘が鳴り響く。
思い出しては消えて…消えてはまた何か恐ろしく何かを思い出しそうになる。
そこで私は再び大精霊の瞳で彼女を見る。
そこにはやはりボヤけて見渡せないゆるふわがいた。
ゆるふわのレベルはおろかステータスも何も見えない。大精霊の瞳で見渡せないなんて事はこれまでただの一度もありませんでした。
横でゆるふわに目尻を下げる勇者(ポンコツ)とエスターク(ボッチ)はおろか、拗ねた顔した破壊神(ゴミ虫2号)はステータスもレベルもはっきり見える。
何なら心の中まで♡になっている心情まで見えます。
だと言うのにゆるふわはと言うと、見たまんまの姿以上に見えるものが無い。
そんな私の大精霊の瞳に一冊の手記帳が目に入りました。
赤く光るように見える手記帳には覚えがある。
そうだ思い出した。
どうして私たちはそれを見落としていたのでしょう。
私たちの旅路の行く先々で様々な破壊をもたらしたデストロイヤー一家。
ある時は国を滅ぼし、ある時は緑豊かな大地を砂漠化し、魔界の神を滅ぼした闇の根源の如き者…その名は確か…
「セレシア…」
「呼びましたか?」
そこにはゆるくふわふわした笑顔を浮かべた彼女がこちらを見ていた。
やっぱりかーーーー!!!
「ちょっちょっとマコちゃん、あの子はセレシアよ?ちょっと仲間にするのは考えなおした方が良いんじゃないかしら…。」
「おぉ歌姫ちゃんの名前はセレシアさんと言うのですか。」
「セレシアか…名前まで美しい」
ダメです。
脳みそまで花畑になっているこの色ボケ勇者と悪魔っ子にはことの重大さがまるで伝わっていない。
こうなったら仕方がありません。
私たちと破壊神も連れていって、いざとなれば…
「あ、姉キ。オレはここで親父の帰りを待っているからな。ひょっこり帰って来るかも知れないしな。」
私と目が合った破壊神の顔には『行きたく無い』とハッキリ書いてあります。
ちっ、どうやら私の考えをいち早く察したようね。
「ルゥ、何を難しい顔しているのか知らねえけど心配するなよ。ちゃんとお前も構ってやるからさ。」
「何の心配してんのよ!!」
私の鉄拳制裁が勇者の顔面を捉えるのでした。
何にしても勇者一行は最強(凶)の仲間と大きな不安わ抱えながらを
私たちの旅路はまだまだ続くのでした。
つづく
勇者パーティはこれで4人です♡