ああ勇者よ、死んでしまうとは何事ですか。   作:シズりん

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しかし毒ばりはもっていない

「あらルビアちゃんおはよう。」

「おはようございますルイーダさん。」

 

朝、仲間募集をかけるために再びルイーダの酒場に行くと女店主のルイーダさんが話しかけてきました。

 

「そういえばルビアちゃんもマコトくんの魔王バラモス討伐の旅に一緒に行くんだって?大丈夫なの?」

「はい、マコちゃんだけじゃ不安ですから。」

 

私の返答に笑うルイーダさんは少しだけ声を潜めて

「いいルビアちゃん?いつまでも幼馴染のままじゃダメよ?女の子も攻めるときは攻めないとマコトくんの心が離れちゃうわよ。そんなルビアちゃんにおばさんが男の子の心をゲットする秘策を教えてあげるわ。」

そう言ってウインクしてみせた。

精霊の私が人間の男の子と?しかも相手はヘタレでヘッポコなマコト?あり得ませんよ、本来ならぷーくすくすくす!って笑っちゃいますよ。やはり幼馴染として顕現したのは失敗だったのでしょうか。

しかしルイーダさんは酒場で多くの男性から言い寄られているのは事実、あくまでも…あくまでも今後の参考として私はルイーダさんの秘伝の技を冒険の書の端っこに赤文字で大事なこととしてメモしました。

 

 

「ところでルビアちゃん早朝から何か用事があったんじゃないの?」

「そうでした。やっぱり2人旅じゃキツいんで仲間を募集しようかなって。ルイーダさんこの募集のチラシを貼らせてもらっても良いですか?」

「もちろん良いわよ、そこの掲示板に貼ってちょうだい。」

 

私はルイーダさんの許可を得て掲示板に仲間募集のチラシを張ろうとするとダダダダダっと走る音とともにスパーン!!と頭に衝撃が走る。

 

「痛っ!何すんのよこのヘタレ!」

相手は言わずと知れるヘタレ…もとい勇者マコト。彼は私の後頭部を叩いたのだ。

「何すんのよじゃねーよ、何だよそのチラシは!!いつの間にかそんなもん作りやがって。」

「いつの間にですって?あなたが凄まじく悪い寝相で気持ちよく寝てる私にラリアットしたのよ!!おかげ様で時間はたっぷりありましたよ。」

この際ですから私の恨み節をぶつけてやりました。

何故か周りからはヒューヒューと囃し立てるような黄色い声援が冷やかしのように飛びますが、なんでしょうか若干不快です。

しかしいくらアリアハンがまだ比較的に平和だとはいえ昼間から酒場にいるような方たちですから無視することにしましょう。さしあたっては精霊である私の頭を叩いた目の前の勇者(バカ)への折檻です。

 

私がこん棒を構えると今度はルイーダさんが慌てて止めに来ました。

 

「2人とも喧嘩はダメよ?」

「「はい、ごめんなさい。」」

「ルビアちゃんも殺人はダメよ殺人は。アリアハンの暇を持て余した奥様方のワイドショーネタにされるわよ。良いの?海の近くの崖に追い詰められちゃうわよ。」

 

何を言っているのかよく分かりませんがそれは嫌です。

 

「それにマコトくん、ルビアちゃんがせっかく書いてくれた仲間募集のチラシの何が気にくわないの?」

そうです。私が夜なべして一生懸命書いた力作に何が問題だと言うのか。私とルイーダさんが勇者を見つめると勇者はチラシをバンッとテーブルに広げた。

「何が気にくわない?ルイーダさん読んでみてくださいよ。」

 

強い仲間急募!

【私たちと魔王を倒しませんか。】

募集要項

強く逞しくてお金を持っている方。戦闘の未経験の方もお金があれば相談に乗ります。私たちパーティを(主に私を)苦労ない旅に連れて行ってくれる方を探しています。

今なら美女と一緒に冒険ができるし、魔王を倒した暁には、勇者を名乗る権利と言う特典付き

 

先着2名様限定

 

 

「…」

ルイーダさんは何も言わずにチラシをたたみました。

「ほらみろ!こんなチラシで来る奴がいるわけねーだろうが!バカなのかお前は!!」

「仕様がないでしょお金が無いんだから。」

「だからってあんなあからさまな募集があるかってんだよ!」

「じゃあグランさんの息子のキーファくんとかは?彼は俺は王子様なんだーって言ってるくらいだから煽てればお金出してくれるんじゃないの?」

「あーアイツはダメだ。最近漁師の息子のセブンと世界を変える石版集めしてるーなんて厨二的なこと言ってやがったし。」

「それは寒いわね。じゃあ戦士のライアンさんは?」

「ダメダメ、あの爺さん最近ではすっかりボケちゃってホイミスライムを友達だと思い込んでいるみたいだし。」

「アリアハンにはロクな人がいないわね…じゃあやっぱり無料(タダ)で来てくれそうなツカサくんだっていいじゃない?」

「だって…アイツを連れて行くとなぁ…」

「そんなに嫌なら途中で捨てちゃえば良いじゃない。それに戦闘のときだって居るだけで壁になってくれるかもしれないじゃない。そうよ弾除けだと思えば良いのよ弾除けだと。」

「…お前本当に女神なのか」

ボソッと言いやがりました。それを言うのならカラスに殺られる勇者もどうかと思いますが。

「じゃあテリーくんは?」

「イケメンはダメ」

一言で片付ける勇者。もうラチがあかない。

2人で頭を抱えて悩む。

 

「よし、やっぱり2人で行こう」

「でもマコちゃん、私たち2人じゃスライムにも勝てないのよ?」

「だから敵に見つからないように隠れながら行こうぜ。」

 

胸を張って言えることではないと思います。

 

「魔王バラモスはどうすんのよ」

「バカだなぁルゥ、バラモスだって同じさ。背後から忍び寄って毒ばりかなんかでプシュッとやればいいんだよ」

「…なるほど要は魔王を暗殺すると言うわけね?盲点だったわ。確かに勇者だからって何も馬鹿正直に魔王と正面から戦う必要ないものね。マコちゃんなかなか頭良いじゃない。未来が明るくなってきたわ。プシュッといきましょうプシュッと」

「今日からオレたちのパーティのさくせんはプシュといこうぜだなワハハハハ」

「そうと決まれば明日からの為に今日はじゃんじゃん飲むわよ!!ルイーダさん、じゃんじゃん持ってきて!」

 

こうして明日から始まる希望の旅の景気付けにアリアハン中の人々と大宴会を開いた。パーティは深夜までつづき16才の勇者と同じ年の幼馴染に設定していた私たちは未成年の飲酒で兵士に捕まり牢屋に入れられた。そしてあくる日にはじめて二日酔いしたことは、そっと冒険の書から削除することにしました。

 

 

 

 

つづく

 




お酒は20歳からです
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