『こっちは大丈夫だ。』
口パクと身振り手振りで合図する勇者を見て草むらの中を
確かに隠れながら進もうと決めはしましたが、女である私に匍匐前進させるのは配慮が足りないと思う。そんなに腕力があるわけがないじゃないですか。そう言う細やかな気配りができない男の子は絶対にモテないと思います。旅の中で勇者の教育も必要だと認識したのですが、
「おいルゥ、もう少し早く匍匐前進出来ないとモンスターに見つかるだろうが。たいして抵抗になるような胸がある訳じゃ無いんだからさっさと来いよ。」
「ぶっ殺すわよ!!」
もう少しで女神にあるまじき心の中の気持ちを口にしてしまいそうでした。
「いやお前、思い切り言葉に出てるからな?」
勇者が呟いたのですが私は聞こえないフリをしました。
背後を見るとスライムたちがまだアリアハンの方を向いて旅人を物色している。私たちは顔をみわせむごんで頷くと、背後からそっと忍び寄りマコトはどうのつるぎで、私はその辺で拾ったひのきの棒でスライムの核をめがけて思い切り突いた。
背後から襲われたスライムたちは『ピギー』とか断末魔の悲鳴をあげながら水へと還っていく。なんか…モンスターとはいえ少し可哀想な気がするのですが
「よっしゃー!!勇者の力を見たか!ヌハハハハ、チョロすぎてあくびが出るぜ。」
よほど自分の敵討ちが出来たことが嬉しいようで高笑いをして喜んでいる。たかがスライム相手によくもまぁそんなに喜べるものだと思いますが、まぁかたちはアレですが私たちパーティの記念すべき初勝利には違いありません。
もう少し喜ばせてあげましょう。
なんて出来た女なのでしょう私。
マコトたちはスライムを倒した。
「ん?なんだこりゃ。」
スライムを倒した事の喜びが一通りし改めてレーベの村へと行こうとするとマコトがスライムだった水たまりから光るものを手に入れました。
それは4G
きっとスライムに襲われた人が持っていたであろうお金だと思う。
「これはきっとこのスライムが襲った人間の持ち物だったんだろうな。」
「ええ、きっとそうだと思います。」
「スライム程度でも普通の村人たちにとってはモンスターはモンスターだからな…倒せて良かったよ。」
「そうですね。きっと襲われた人も浮かばれることでしょう。」
私はそう言って言わば形見の品(4ゴールド)をお財布にしまいました。
「おいルゥ、それって形見の品だろ?貰っちゃっても良いのか?」
「良いんじゃないの?文句を言おうにも当人はもう亡くなっているんですから。死人に口なしってやつです。」
「それってそんな使い方だっけ?」
「もう細かいなぁ、良いマコちゃん私が良い事を教えてあげます。死人にお金は必要ありません。精霊たる私が有効に使ってあげた方が供養と言うものです。」
「…まぁそれもそうか。それにしてもよ、本当に上手くいったな。オレたちには背後から隙を突くのが似合っているのかもな」
大笑いしていますが決してカッコいい話しではありません。
しかし確かに初勝利したのですから否定もできませんが…今後も暫くは隠れながら旅をするのが良いかもしれませんね。
その後も私たちはコソコソと歩きました。
丘を壁を這うように登り、川を竹筒で息をしながら橋の上のモンスターをやり過ごしました。草の束を頭に括り屈んで歩き、カラスが来たらカカシのフリをして油断を誘い倒しました。
何度か戦闘に勝利したマコトはどんどん自信をつけていく。
しかし彼は私の予想の斜め上をいく。自分の戦闘経験や勝利に自信を持つのではなく、景色に一体化して敵に察知されない隠密行動に自信を持っていったのです。
案外彼は盗賊の方が向いていたのかもしれませんね…
流石としか言えない程に残念な子です。
私が思い描いていた勇者の戦闘は蝶のように舞って蜂のように刺す、と言った無駄のない美しい流れによるものだったのですが…
まぁ良としましょう。人には人のスタイルと言うものがありますし。
そして日も落ちかけた頃になってようやく私たちはレーベの村へと辿り着きました。なんでしょうこの言いもしれない達成感は。
たかが半日くらいで着くとなり村なのに…涙が出そうです。
私たちは7日目にしてようやく最初の目的を達成したのでした。
つづく
ようやく動き出す物語…?