境界線上のホライゾン 理不尽壊しのリインカーネイション   作:橆諳髃

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「なぁ……これって某英雄王のセリフだよな? まさかこの作品に出るの?」

えっ? 何言ってるんですか? 出すわけないじゃあないですか!

「えっ? ならこのサブタイトル何なんだ? どう見たってあの有名なセリフだと思うんだが……」

まぁ……そこはある意味気にしたら負けですよぉ〜。

「いや、そこは気にしろよ……」

まぁまぁ良いじゃあないですか! という事で早速本編スタートです!



15話 雑種が……

今現在……教導院前は、自分でこんな事を言って良いのか分からないが……カオスになっていた。ん? もう梅組がいる時点でカオス? ……そうか。まぁ確かに、トーリにあれされたりトーリにあれされたり? はたまたトーリにあれされたり……

 

(最早トーリがいる時点でそうじゃあねぇか……)

 

まぁともかくとして現状はこうだ。武蔵側と聖連側の相対なのは別に問題ではない。ただ乱入者がそこに通神越しで相対に乱入している事。これこそが問題だ。それで誰が乱入してきたかといえば……

 

(何でインノケンティウスが乱入してんだよ? コイツは暇か? 暇なのか? はぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう殺めてしまおうか

 

まぁこの場では流石にしない。するとしたら聖連側と武蔵・三河の問題が終わってからだ。

 

で、何でこんな事になっているかを少し振り返ってみる事にしよう。そう、出来るだけ簡単に……

 

 

 

まず3回戦目の相対だが、聖連側は本多さんだけになった。ただ本多さんは論述、論議に長けている。だから彼女は聖連側の言う、何故ホライゾンが処刑されなければならないのかの論を展開するだろう。まぁ、もし仮に俺が本多さんの相手になったら……まぁ論破されて負ける未来しか見えない。そもそも俺は知略で誰かと競うんじゃなくて武力で競う方だからな。だからまともに議論もできないだろう。

 

(まっ、この場では愛護颯也としてではなく白騎士としているんだけど……)

 

だから武蔵側は誰が出るのだろうと……そう思っていたんだが……まさか……

 

「そんじゃ俺が行ってくるかな‼︎」

 

うん、まさかトーリが出るとは思ってなかった訳でさ……

 

(というかあれ大丈夫か? なんか相対行く前にアデーレさんに何か頼んでいた様だけど……)

 

それで相対が始まった。始まったんだが……

 

「やっぱりホライゾンを助けに行くの……やめね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……はっ?

 

いや、確かにそうだ。この場でのトーリの回答はそれが正解なんだ。何せホライゾンを救うか救わないかの、この2つの議題で今回は議論していくんだ。そしてトーリは議論をする際に先行を取った。そこからホライゾンを救わないと口にした。トーリが先行でホライゾンを救わないと明言した時点で、本多さんに残されたのはホライゾンを救う事を論じる選択肢のみ。もともとどちらが何の議論について行うかなんて最初から決めていないのだから、別にトーリがホライゾンを救わない論を取ってもルール違反しているわけではない。

 

そう、だからこそトーリのその行動は正しい。論議で劣る自分が論議で優れている本多さんに対して、真っ向からホライゾンを救う事を論じるよりもホライゾンを救わないと論じた方が確実にホライゾンを助ける事が出来る。その大義名分を取る事が出来る。

 

それは前世の知識でも分かっていた事だし、頭の中でも理解はしている。理解はしているんだ……だが……

 

(心が……どうしてもイラつきを、憤怒を覚えている……こんな事を防げなかった……自分が……腹立たしい‼︎)

 

握り込んだ拳から血が滲み出る。それはまた床へと落ちていく。その血はすぐに蒸発して消えてはいくがそれでも止めどなく拳からは血が流れ出ている。次から次へと掌を、拳を伝って落ちていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分を……責めないで」

 

「っ⁉︎」

 

颯也の手から力が抜ける。その声と、握り込んだ拳を優しく覆う様にして、颯也から握り込む力を抜けさせた。それは喜美だった。

 

「貴方は……何も悪い事なんてしてないんだから。だから責めちゃダメ」

 

「でも……俺は、こんなにも力があるのに……あの子1人を救うのに十分な力があるのに……ここにいる俺は、ただ見る事しか出来ない」

 

「いつも頑張り過ぎなのよ貴方は。いつも皆の為に動いてくれて、その分の痛みも負って……ホライゾンがいなくなった時も、貴方は頑張ってくれていたわ。それは皆……皆知っているのよ?」

 

「それよりも最初からもっと頑張っていたら、自分の力を少しでも過信せずに努力していれば……ホライゾンがいなくなるなんて事は無かった。あの時に……俺にもっと力があれば……」

 

「でも、そう悔やみながらも貴方は前を見続けて進んできた。誰よりも誰よりも強くあろうと……」

 

「そうですよ。そんな颯也くんの前向きな姿勢があったから、皆も強くなれたんですよ?」

 

そこに浅間も加わる。喜美が優しく覆っている颯也の手の反対側を優しく包みながら……

 

「私達、もう颯也くんが心配する程弱いなんてつもりはありません。ですから今は……今の私達でもホライゾンを救えるって事を見ていて下さい」

 

「喜美さん……浅間さん……」

 

「さぁ颯也。今昔の事を悔いるのは後にして、私の愚弟が、ここにいる皆があの頃よりどれだけ成長したかを見ましょう」

 

そう喜美に微笑みながら言われた。それが……凄く綺麗に見えた。

 

(あぁ……そうか)

 

周りを見渡す。ホライゾンを失った時よりもはるかに背も顔つきも身体つきも成長した皆……身体だけではなく内面もあの時よりも成長した皆がいる。

 

(もう……俺が心配しなくてもいい程成長してたんだよな)

 

若干名まだ心配する人物はいるが、それでもあの時よりも皆強くなった。

 

「うん、そうだね」

 

画面越しからでも分かるほど、颯也の顔は先程よりもずっと晴れやかでやらかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 成実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子にもあの場所で、私以外に癒してくれる存在がいるのね」

 

正直悔しい……私と私が認める以外で颯也の事を癒す事が出来る(存在)がいるという事を……でも

 

(今は感謝するべきなのかもしれないわね)

 

あの場で颯也を癒したいという気持ちは誰にも負けない。でも、私の今の立場ではあの場に介入出来ない。この立場さえなければと、さっきまでで何回も思ったし考えた。若しくは私が最初から無理矢理にでも武蔵に転入できていればと……けれど私には、この場で為さねばならない事がある。颯也がこれを聞けば怒るかもしれないけれど……これは私の命にかえてもやらなくちゃいけない事がある。だから……この場を離れる事ができない。

 

(そんな私の代わりに……今だけは颯也を癒す事を許可してあげるわよ)

 

なんとも上から目線なワガママ副長である……

 

「はっ? 何か言った? 言ったわよね?」

 

「と、突然どうしたのだ成実⁉︎ な、なんか怖いぞ……」

 

「えっ? あぁ……ごめんなさい。何でもないわ。なんかさっき私の事を小馬鹿にした様な発言が聞こえた気がしたから……」

 

「そ、そうか……それにしても成実を、本人に聞こえないとしても馬鹿にするなんて……もしいたとしたら命知らずなやつだな?」

 

「ふふっ、そうね」

 

(それと……帰ったら私が今映っている子達の倍癒してあげるからね♡ だから颯也、覚悟しておいて♡)

 

成実さんの脳内はまた桃色思考に落ちました……

 

そして成実さん専属の語り部さんは……また成実さんから罰を受ける事が決定しました……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーリと本多さんの議論を俺は見守っている。さっき大きな動きを見せた。トーリがアデーレさんから紙を渡されて、そこに書いてある内容を本多さんに読み上げて回答を待っている。これは、武蔵側と聖連側の相対がどうなるのかを見守っていた外野……具体的に言うならば本多さんのお父さんであったり商人の小西さんからの質問だった。

 

これに対して本多さんも答えるそぶりを見せる。自分のポッケからカンニングペーパーを取り出したのだ。そんな時に本多さんの後ろからいつのまにか木製の桶を持ったアデーレさんが……そしてその桶の中には、武蔵の排水を綺麗にしてくれる黒藻達が顔を覗かせていた。そして黒藻達は言ったんだ。ホライゾンを助けてと……それを言われて本多さんは、カンニングペーパーを黒藻に与えてトーリに振り返った。その時の本多さんの顔付きは……いつもよりも自身に満ち満ちた表情だった。

 

そこからは本多さんの独壇場……ホライゾンさんが三河消失未遂に関わっていない事の説明と責任転嫁の無理矢理な指し示し。その未遂と、ホライゾンさんの中から大罪武装を取り出す事の関係性の結び付け……本多さんが口を開けば怒涛の勢いで今回の事の不可解な部分が出てくる。

 

そんな中だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『調子に乗るのはそこまでにしてもらおうか? なぁおい?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにインノケンティウスが通神で割り込んで来た。それからはインノケンティウスと本多さんの議論にシフトチェンジしてきた。そこまでは……まぁ許していたさ。だが……そこでインノケンティウスは完全に俺を怒らせた。

 

『お前……確か過去に手術をしているんだったよな? それも男になるための』

 

それは本多さんの過去だった……本多さんは過去に三河でとある人物に襲名しようと父親の指示で手術を行ったと聞いている。襲名を有利に進める様に行ったのだが……結果は襲名できず、手術も中途半端な形で終わってしまったと聞いた。それ故に……彼女はコンプレックスを抱いているとなんとなくわかっていた。

 

そこをついたインノケンティウスはベラベラと喋る。主に、自分を偽っておきながら誰が貴様の言論を信じるのかと……それに伴ってさっきまでの表情が嘘だったかの様に、本多さんは怯えの表情を見せていた。顔が青くなっている事がここからでも分かる。彼女の心が傷ついている事が分かる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雑種風情がっ‼︎

 

颯也から尋常ではないプレッシャーが放たれる。それも通神越しのインノケンティウスに向けて……

 

『ガッ⁉︎ な、何がどうなって……』

 

「えっ? いきなりどうしたの?」

 

「な、なんか苦しそうですよ? さっきまで副会長の事を好き勝手言ってたのに……」

 

この会話から察するに……武蔵の面々には何も影響がない。だが通神越しのインノケンティウスだけ通神画面から下の方向に、まるでスライドアウトするかの様に画面からはいなくなっていた。

 

『ハッ……ハッ……この感覚は……さっき以上のっ⁉︎』

 

(俺の大切な人の心を傷つけた罰だ……ありがたく……溺死しろ‼︎

 

仮面で見えないはずなのに……颯也の目が赤く光っている様に見えた。

 

(あぁ……颯也のやつヤベェなぁ〜……どうしよう?)

 

『愚弟、何とかして颯也の気をそらしなさい‼︎』

 

トーリはインノケンティウスが何故急に苦しみだしたのかを分かっていた。十中八九颯也が何かしたのだろうと。そんな中でプライベート通神で喜美が颯也の気をそらす様に言う。それを受けてトーリは……

 

『あぁ〜……よし! んじゃやってみっか‼︎』

 

「えぇっ⁉︎ セージュンって女だったのか! だったらこの場で確かめても文句無いよな‼︎ んじゃあご開帳〜‼︎」

 

そう言いながらトーリは正純のズボンの端を両手で持って引き摺り下ろした。

 

「えっ? なっ……キャーーーッ⁉︎」

 

「うーん‼︎ 良い女だぜ〜っ‼︎」

 

一瞬フリーズするも、正純はトーリがずり下ろしたズボンを履き直す。

 

「おいおい! お前らだってそう思うだろう‼︎ ここにいるのは紛れもなく良い女だ! こんな良い女が! 武蔵を救うために、ホライゾンを救うために頑張っているんだぜ‼︎ それを信じないなんてどうかしているぜ‼︎」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「「「っ⁉︎」」」

 

そのトーリの声に同調したのは、なんと白騎士だった。その事に周りにいた武蔵の住民達は驚く。そもそも梅組に至っては、正純が武蔵に来た時から女性である事は分かっていたので、今更正純が女性でしたと分かったからと言って驚きはしない。だが……まさかトーリの言を白騎士が肯定するとは思ってもみなかったのは事実でもある。そしておまけにインノケンティウスにかかっていたプレッシャーも解除された。

 

「確か……副会長さんは去年に武蔵に来たばかりだと聞いた。そんな女の子がだ……まだ1年そこらしか過ごしていない武蔵の為に副会長の座に就いている。という事は……武蔵の事を、良い方向に持って行きたいと、彼女は少なからず思っているのではないか? 武蔵と、武蔵の民の方達を思いながら今の官職に就いているのではないか? 確かにこれは私の推察に過ぎない。それが違ったとしても……それが最終的には自分の為だったとしても、誰かの助けになりたいと願っていなければ絶対に就けない筈だ‼︎」

 

「そうだぜ! 白騎士の言う通りだ‼︎」

 

『な、何を馬鹿なことを! それに白騎士! 貴様また生徒間の抗争に介入したな‼︎』

 

黙れ雑種が

 

「「「っ⁉︎」」」

 

それには皆驚いた。インノケンティウスも、まさか教皇と呼ばれる役職に就く自分がまさか、雑種と呼ばれる日が来るとは思っていなかった。しかもアイドルという存在である白騎士にだ。

 

普通アイドルが汚い言葉遣いをしてしまったら、ファンであってもドン引きだ。

 

それをわかっている筈なのに……白騎士である颯也はそう口にした。いつも優しい言葉遣いの彼がだ……信じられないだろう。

 

「俺は今……汚い言葉遣いをしている事は理解している。俺の事をファンだと思っている人達にも……申し訳ないと思う。だが!」

 

「それでも俺は! 目の前で他のみんなの為に頑張っている人が侮辱される事が我慢ならない‼︎ こんな言葉遣いをする俺の事を……幻滅する人も出てくるだろう! それは仕方ない。だがこれだけはハッキリさせておくぞ! 俺は目の前で頑張っている人を侮辱する奴を許さない! そして雑種……貴様は俺を怒らせた。ここで宣言させてもらう……俺達アンフェア・ブレーカーズはK.P.Aイタリアを、いや、K.P.Aイタリアのローマ教皇であるインノケンティウスに対して! 宣戦布告する‼︎ これは脅しではない! 覚悟しておけ雑種‼︎」

 

それは……インノケンティウスに下された罰、否、死刑宣告である!

 

『なっ……な、ななななにぃっ⁉︎』

 

「当然だ。そもそもこれはホライゾンを救うか救わないかの討論だった筈だ。それを横槍を入れるだけではなく、勝手に本多さんと討論し始め挙げ句の果てに彼女を侮辱した。こんな素晴らしい彼女をだ!」

 

「そうだそうだ! セージュンは良い女だぞ‼︎」

 

「「「お前はそれしか言えないのか⁉︎」」」

 

「だけどそうだよな……1年しかここに住んでないこの子が俺達のために頑張ってくれたんだ! 俺はその子の事を信じるぜ‼︎」

 

「うちの子も副会長が授業を教えてくれて、しかも教え方も上手くて成績が上がったって言ってたわ。感謝こそすれど貶めるなんてそんな事出来るものですか!」

 

「胸が小さいからってなんだよ! 小さい子には小さい子なりに良いところがあるんだ! それを馬鹿にするなんて許せねぇぞ教皇様よぉ!」

 

「「「そうだそうだ‼︎」」」

 

「あんな馬鹿どもはほっとくとして……でも今の討論でも彼女が武蔵の為を思って動いてくれているのは、流石にわかるわよ。それを過去にあの子が何かしたから〜とかで疑心感煽るなんて、人として終わってるわ」

 

「そもそもあんたさえ何も邪魔しなかったら、白騎士様だって汚い言葉遣いなんてしなかったわよ! どう責任とってくれるのよ‼︎」

 

「「「そうだそうだ‼︎」」」

 

『ぬっ⁉︎ ぐぅ……』

 

確かに白騎士は汚い言葉遣いをした。それ自体は皆驚いてはいる。だが白騎士がいう事にも筋が通るのだ。そもそもこれは武蔵側と、聖連の代理である正純達とで相対をしていた筈だ。それがいつのまにか聖連の代表であるインノケンティウスが参加している。確かに正純は代理ではあるものの、3回戦目の相対で武蔵側と聖連側、どちらがホライゾンを救うか救わないかの議論を先に示した上で討論するのかは決まっていない。その中でトーリは先行で、ホライゾンを救わない方を選んだ。そして正純はなかった方で討論するしかなかった。相対上では何も問題がない。

 

それをあろう事か横槍を入れたのだ。しかもいつのまにか討論の内容さえも拡大解釈をして、挙げ句の果てに正純を侮辱するような発言をしたのだ。

 

それに対して、簡潔に言えば白騎士はキレた。結果的には汚い言葉を使ってしまった。

 

しかしそれも……元を辿ればインノケンティウスが横槍さえ入れなければ、正純の心も傷付く事は無かったし、それを受けて白騎士が汚い言葉も吐く事は無かったのだ。

 

そしてこの中継は全国で放送されている。勿論白騎士のファンもいる。そんな時に彼が汚い言葉を吐いた事で……確かにファンの心は傷ついたかもしれない。だがそれもこれも途中で横槍を入れたインノケンティウスが悪いのだ。つまり白騎士から汚い言葉を出させたインノケンティウスが悪いのだ。

 

その結果何が起こったかというと、三河消失未遂が終わった後ぐらいから続々と教皇を辞めろとの苦情が入ったのだ。それも白騎士のファン達から……それは各国だけでなく、自国の教導院にいる者達からや民にまでその苦情が入る始末……胃薬と精神安定剤が手放せなくなった。

 

「さてと……ここはこれくらいにして……本多さん、まだ討論の途中だったでしょ? こんな空気にして申し訳ないんだけど、あの雑種と討論を続けてくれないかな?」

 

「あ、あぁ……それは構わない。それと……ありがとう」

 

「いや良いさ。私が好きでやった事なんだから」

 

そう言って白騎士は元の立ち位置に戻った。

 

「ふふっ、まさかあんな言葉遣いをするなんて驚いたわよ? でも気分がスカッとしたのも確かだわ」

 

「もぅ、颯也くん! ダメですよあんな言葉遣いをしては‼︎ 例え事実であったとしても口に出してはいけません‼︎」

 

喜美と浅間は周りに聞こえないように白騎士に言った。特に浅間は、どこぞの近所のお姉さんの如く白騎士である颯也を叱っていた。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「分かれば良いんです。今度からはそんな言葉遣いをしてはいけませんからね?」

 

「ぜ、善処します……」

 

白騎士、浅間に叱られて萎縮する……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ……颯也さんがあんな汚い言葉遣いを……これは帰って来たらしっかり叱りつけないといけませんね)

 

とある教導院の副長はその様に考えていたと言います……

 

(まぁ颯也がキレるのは……あの状況では普通だがな。しかし珍しいな……中々見れたものではない)

 

その傍でカタクリさんも今回の颯也さんのキレ具合に珍しがっていました……

 

「へぇ〜、珍しく颯也がキレているじゃない?」

 

「そうだな。それにしても下手をすれば見ているこちらもプレッシャーを受けそうだ」

 

「虞さん⁉︎ 項羽さんまで……どうしたんですか?」

 

彼女の目の前に現れたのは、虞美人と呼ばれる女性と項羽と呼ばれる男性だった。虞美人は長い亜麻色の髪をそのまま下ろし、赤い瞳を持つ。そして服装は……凄い軽装だった。最早「えっ? それ服?」と言えるくらい露出度マシマシである。そして項羽は、外から見ても分かるくらい鍛え上げられた肉体を持つ武人だ。漆黒の長い髪を持ち、その形相は普通にしていても睨みを利かせているといっても過言ではないもの。口髭を鋭角に伸ばし、装備もいつでも戦いに赴けるよう鎧を纏っていた。そして腰には6つの刀が指してある。

 

そして彼女の問いに虞は答える。

 

「いえ、あの子の事を中継で見ていたんだけど、なんかあなたと見たほうが良いなと思った気がしてね。まぁ気分よ」

 

「は、はぁ……」

 

「しかし虞よ、我らが義息子……立派な覇を纏っているな」

 

「そうですね項羽様。普段からは想像もつかない程の……立派な覇気にございます」

 

「……久方振りに我が義息子と交えたいものよ」

 

「それはお控え下さい。この前の事をお忘れですか項羽様? 嫌がるあの子と戦った結果、負けたのは項羽様ですよ?」

 

「た、確かにそうではあるが……あれの敗因は……そう! 我が酔っていたからであってな! だから「項羽様!」は、はい……」

 

「あの時の項羽様はお酒など口にしておりませんでしたが? 項羽様が戦いに赴かれる前に何を召し上がったかなどはしっかりと把握しております。そんな言い訳を考えつくくらいなのなら、あの子の全力の半分を出せるくらい武を磨いてはいかがですか? あの子とまた交えるのはそれからです」

 

「う……分かった」

 

項羽さんは虞美人さんの尻に敷かれていたといいます……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

そこからまた話は進んだ。どうにか周りが落ち着き始めたところで正純とインノケンティウスは討論を続ける。特にインノケンティウスはさっきよりも言葉を選んで不況を買わないように……

 

そして結果としてはこう纏まった。ホライゾンを助ける事と、ホライゾンが感情を取り戻すために各国と平和的模索をし、ホライゾンの感情である大罪武装を回収しつつ末世から世界を救うために武蔵は行動すると。

 

『そうか……結局は平行線になるのだな?』

 

「その様ですね。ですが私は……いえ、私達はこの結果に後悔はしません。全ては……末世を救う為なのですから!」

 

『……ならば致し方あるまい。本当ならばもう少し穏便に解決もしたかったところではあるが、そちらがその答えなのならば……K.P.Aイタリアも総力を持ってお前達を潰しにかかろう。その前座にだ……』

 

『やれ、ガリレオ』

 

インノケンティウスがそう言うと、まるで瞬間移動をしたかの様にガリレオが現れたのだ。

 

「そろそろ君の口を塞がなければならないのである。悪く思わない事だ」

 

そう言いながらガリレオは正純に近付こうとするが……

 

「行かせぬぞ! この異端者め‼︎」

 

ウルキアガがガリレオに拷問道具を突き付けながら突撃した。しかしそれはガリレオに当たる前にバラバラに分解されてしまう。

 

「大罪武装か⁉︎」

 

「そうだ。大罪武装『淫蕩の御身』はあらゆる武装を無力化する」

 

「ふっ、そんな事は考慮していた! 行け! ノリキ‼︎」

 

「分かっている‼︎」

 

ウルキアガの影からノリキが現れ、ガリレオに拳をぶつけた。

 

「その程度かね? 天動説!」

 

「「ぐあっ⁉︎」」

 

ガリレオにはノリキの拳が通じず、逆にウルキアガと共に反撃を食らってしまう。ガリレオの天動説で2人は地に這いつくばるような形で倒れ込んでしまう。

 

そしてガリレオはその間にも移動術で正純の目の前に移動し、正純にも攻撃を加えようとした。それに対して目を覆う事しか正純はできなかった。非戦闘系の彼女からしてみれば、ただの攻撃も大ダメージを負ってしまう。そして正純に攻撃が当たろうとする時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれだ……」

 

「なっ⁉︎」

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんと白騎士が正純の前に立ち、ガリレオの手を真正面から掴んでいたのだ。魔神族である彼の、数倍はあろうかと言う手を普通に片手で……しかも

 

「『淫蕩の御身』が発動しているのに何故力をふるえるのだ⁉︎」

 

通常稼働している『淫蕩の御身』が発動して、敵の武装も敵の力も解除されて皆無になるはずなのに……

 

「白騎士! また我々の邪魔をするのであるか⁉︎ しかも宣言を破ってまで⁉︎」

 

「宣言? 俺は別に破ったつもりはないが?」

 

『と、惚けるのも大概にしろよ白騎士! お前達は確かに言ったのだ‼︎ 武蔵間と聖連間の生徒間での相対に介入しないと‼︎』

 

「あぁ、確かに言ったな。だが……俺はそのルールにも破ってはいないぞ?」

 

『キッ、サッ、マァーッ‼︎ ふざけるのも良い加減にしろぉーっ‼︎』

 

「そうか。そこまで言うなら答え合わせといこう……何故俺が堂々とこの場に参加しているのかもな」

 

「まず第1に……俺は武蔵の住人である」

 

「「「えっ?」」」

 

『なっ⁉︎』

 

「第2に……俺は武蔵アリアダスト教導院の生徒である」

 

「「「はっ?」」」

 

『ななっ……』

 

「第3に……俺は……武蔵アリアダスト教導院梅組の生徒にして、そして……」

 

片手で自分の付けている仮面に手をかけた。そしてゆっくりと取り外す。仮面に付いていた金髪のカツラも一緒に被っていた主人の頭から離れる。しかし離れてもその主人の髪の色は変わらなかった。何故なら本人の髪もカツラと同じ金髪なのだから。

 

焦らすかの様に仮面が主人の顔を徐々に徐々に離れていき、主人の輪郭を晒していく。白騎士は仮面から顔が全て離れたと同時に、手に持っていた仮面を横に放り投げた。そして露わになったのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「えぇぇぇぇっ⁉︎」」」

 

『ま、愛護颯也だとぉっ⁉︎』

 

それには武蔵の住人も、通神越しのインノケンティウスも、はたまたこの中継を見ていた全ての人々が驚きの声をあげた。今日1番の驚きである。

 

「さて、それはそれで……覚悟はできているだろうなガリレオ? 俺の目の前で俺の友人を傷つけようとしたんだ。この場で……腕の一本は覚悟しておけ!」

 

「ぬぉっ⁉︎」

 

ガリレオはそう言われたと同時に颯也に片手だけで投げ飛ばされた。

 

「天候満つる処に我は在り……」

 

一方で颯也の方は何か詠唱をし始める。颯也の立つ地面に魔法陣みたいなものが描かれ始め、そこから眩い光が発せられる。

 

「黄泉の門開く処に汝在り……」

 

魔法陣から発せられる光はとどまることを知らず、更に溢れていった。それと同時にガリレオが吹き飛ばされたところにも変化があった。ガリレオが投げ飛ばされてどうにか着地した地点の足場、4方向の地面から何らかのエネルギーが上空に撃ち出される。そして上空には赤と青を纏った巨大な雲が形成されていた。そして撃ち出された4つのエネルギーは、その雲に吸い込まれる前に1つに纏まり1つの大きなエネルギーとなるとそのまま雲の中へと吸い込まれた。雲はそのエネルギーを吸い取ったと同時に雷雲となった。吸い取った雲の口は拡大されていき、倍の大きさに広がる。次第にその大きな雷雲の穴からも眩い光が灯る。

 

「ぬっ⁉︎ なんだこの術式は⁉︎」

 

「貴様が今回過ちを犯した罰だ。なに、殺めたりはしないさ……ただ……」

 

「さっきも言った様に腕の一本は覚悟しておけ‼︎ 出でよ! 神の雷‼︎ インディグネイション‼︎

 

赤と青を纏う巨大な雷雲から巨大な雷がガリレオ目掛けて降り注いだ。そう……まさに神の裁きである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「なんか終わってみたら……結果的に俺がキレて暴れた話じゃあないか?」

えぇ、そうとも言いますね。

「あぁ……そうか〜……あんな汚い言葉遣いが全国に中継されていたという事は……成実さんにも聞かれた……嫌われる……」

そ、颯也さん⁉︎ き、気を確かにした下さい! 例え汚い言葉遣いをしてしまったとしても成実さんは颯也さんの事を嫌いになんてなりませんから‼︎

「えぇそうよ。私はそんな事で嫌ったりはしないわ」

「な、成実さん⁉︎」

「だって私は貴方の姉兼恋人だもの。だから……ね?」優しい笑みを浮かべながら両手を広げる態勢をとる。

「うぅっ……成実さぁーんっ‼︎」

「ふふっ、よしよし……いい子いい子」抱き着いてきた颯也を優しく抱きしめ返して頭をナデナデする。

……あれっ? まだ本編ではそんなに颯也さんと成実さんはこんな風に甘えた描写とか聞いてないんですけど……

「なら作者さん、さっさと書きなさい」

あっ……はい……

という事でここからは解説入ります!








WARNING
ここからはfgo第2部3章も少し触れて書いてありますので、fgoをやっていてまだそこまで行ってない! クリアしていない‼︎ という方に関しましては、ネタバレ要素を若干含みますので項羽さん、ならびに虞美人さんの解説を見ない事をお勧めさせて頂きます……
それでも大丈夫だという方はご覧下さい。



項羽

中国史に出てくる武人。中国史というと三国時代などが知名度がありすぎて残念ながら項羽という武人はマイナー扱いされてしまう。(作者もfgoで出てくるまでは知らなかった)しかしながら知略、武力は折り紙つき。秦王朝を滅ぼした劉邦と次の天下を競い合う。

今回この話から登場した項羽はfgo出身。本来人馬一体の機械の様な姿なのだが、颯也と一緒に着いてきた項羽は、作者がイメージした人の姿となっている。イメージしやすい人物で挙げるとするならば「不思議な海のナディア」に登場したネモ船長である。

また颯也の事を義息子と呼んでいる件については、颯也が転生者見習いの際、偶々fgoの項羽がまだ最前だった時代に飛ばされた事と、その際記憶を失ってしまい、身寄りがない所を保護、一緒に生活をし始めてから颯也の事を義息子と呼んでいる。
そしてサーヴァントとなってfgo2部3章の人知統合真個国シンでは、カルデアと人理をかけて戦いを挑む。その際カルデア側に付いていた颯也と再会……過激なバトルを展開する。
その後、カルデア側はその時代……2500年も続いた秦の王である始皇帝と凌ぎを削り、カルデア側の勝利。本来破れたはずの秦も消える運命ではあったが、そこは何でもかんでも御都合主義に事を運ぶことができる颯也の力によってその秦を残したまま、地球の周りを漂う月以外の衛星を創り出してそこに秦を移転した。
そのため本来の話とはえらぬ沿ってしまったものの、秦という時代は残った。それに伴い颯也が別の世界の人間であり、また違う世界に行ってしまう事を知ると、自分も付いて行くといって女神に直談判……結果この世界に来た。
尚妻である虞美人も一緒であり、ホライゾンの世界では虞美人に尻を敷かれている……

虞美人
こちらもfgo出身。項羽の妻である。fgoの世界では死ぬ事ができず、項羽が死んだ後は死にたくても死ぬ事ができず現代にまで生きた。本来カルデアのトップチームに所属するマスターではあったものの、とある事故によってカルデアの敵に回る。fgo第2部3章「人知統合真国シン」にてカルデアのマスター達と対峙する。颯也が現れるまでは普通にカルデアと争っていたのだが、颯也が現れてからは急に戦意を失う。その世界でも項羽と会い、項羽との時間をもう失わないためにこの秦を残そうとした。しかし予想外に颯也も現れてしまったためにその決意は揺らぐ……

結果的に颯也の御都合主義的な能力で万事解決とはなったが、その時未だに颯也に矛を向けてしまった自分を悔やんでいた。しかしそれも仕方ない事だから気にしないで欲しいと颯也に悲しそうな顔で言われたために、もう気にしない事にした。

因みに虞美人が颯也の事を義息子と呼んでいるのは項羽と同じ理由で、項羽が生前記憶喪失の颯也を保護して一緒に生活し始めてからである。そこから颯也にも愛着が湧いた。もう溺愛しているといっても過言ではない……。本来表には出さないが、2人きりの時や項羽と3人の時には溺愛ぶりを発揮する……らしい。





インディグネイション

テイルズシリーズでよく使われる最上位呪文(テイルズシリーズによって異なる)の1つに数えられる。本編の詠唱もキャラクターによって変わる。今回のインディグネイションの演出としては、「テイルズ オブ ジ アビス」に登場するジェイド・カーティスと呼ばれるキャラクターの秘奥義で使われるインディグネイションと同じである。詳しくはYou Tubeなどを参照。巨大な雷が範囲内にいる敵に容赦なく降り注ぐ。




以上です。また、成実さん専属の語り部は、今回も学習しなかった様で、次の出番もお休みとなっております! 成実さん専属の語り部さんのファンの皆様には大変申し訳ない(笑)と思いますが、まぁ今後ともよろしくお願いします。それではまた次回、乞うご期待くださいませ。

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